労務ニュース スマイル新聞

2019年11月23日 土曜日

令和元年11月23日第494号

年金生活者支援給付金とは

 2019年10月から消費税率引き上げ分を活用し、年金生活者支援給付金の制度が始まりました。この給付金は、公的年金を含めても所得が一定基準額以下の方に、生活の支援を図ることを目的として、年金に上乗せして支給するものです。
1.老齢基礎年金を受給されている場合
支給要件...次の要件をすべて満たしている方が対象です。
1)65歳以上の受給者であること
2)同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
3)前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計金額が879,300円(毎年度の老齢基礎年金の額を勘案して改定)以下であること
給 付 額...月額5,000円を保険料納付済み期間等に応じて算出され、次の1)及び2)の合計額になります。
1)保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,000円×保険料納付済期間/480月
2)保険料免除期間に基づく額(月額)=10,834円×保険料免除期間/480月
<給付額の例>
被保険者月数480月のうち納付済月数が480月、全額免除月数が0月の場合
1)5,000円×480/480月=5,000円
2)10,834円×0/480月=0円
合計 1)5,000円+2)0円=5,000円(月額)
2.障害基礎年金を受給されている場合
支給要件...障害基礎年金の受給者であり、前年の所得が462.1万円+扶養人数の数×38万円以下の方が対象です。
給 付 額...障害等級が2級の方:5,000円(月額)
障害等級が1級の方:6,250円(月額)
3.遺族年金を受給されている場合
支給要件...遺族基礎年金の受給者であり、前年の所得が462.1万円+扶養人数の数×38万円以下の方が対象です。
給 付 額...5,000円(月額)
ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,000円を子の数で割った金額がそれぞれに支払われることとなります。
給付金の受給には、認定請求を行う必要があります。添付書類は不要、代理人による代筆も可能なので、お気軽にお申し込みください。

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2019年11月 8日 金曜日

令和元年11月8日第493号

あらためて助成金とは

1.助成金とは
 助成金は、融資とは異なり返済不要なお金です。主に、企業が納付する雇用保険料をその財源とし、従業員を新たに雇用したり、能力開発(人材育成)、職場環境を改善する(処遇改善)等を行ったりした場合に、そのご褒美として助成してくれるというものです。
2.助成金を受けるメリット
厚生労働省が取り扱う助成金は使い道が自由です。それに対し、主に経済産業省が所管する補助金は税金を原資にしているために使い道は厳しく限定されます。例えば補助事業実施の際に対象経費から外れた支出をすると補助金は1円も支給されません。
また、助成金の支給申請を行うにあたっては、就業規則の作成・変更・届出、労務管理面でのコンプライアンス遵守が求められます。したがって、助成金を受給したいと考えれば必然的に、就業規則や労務管理をしっかり整備することになります。そして、助成金を受給できれば、「国(厚生労働省)が求めるクリーンな基準を満たす企業である」と認められていることと同義となり、企業の社会的信用が得られます。
人材を確保し長く働ける環境を整備することは、企業を成長させるうえで大変重要なことだと思います。
3.助成金を受けるデメリット
助成金を受給するためには、新たな雇用や賃金アップ、人事制度の導入等が必要になります。助成金受給のために無理をして制度を一度導入すると廃止することは困難が伴い、従業員にとって不利益変更となります。「助成金ありき」で「もらえるものは、もらっておこう」的な考え方は失敗のもとです。
また、助成金は原則後払いです。申請から、お金が入金されるまで時間がかかります。
支給要件を満たしており、なおかつ実際に要求される状態を一定期間継続した後で、はじめて支給されます。申請から入金までは6ヵ月から1年超ほど時間がかかる場合もあるので、その間に発生する必要経費は自前で用意する必要があります。
4.それでも助成金は全額が純利益である。
たとえば百万円の助成金を受給したとすると、本業でそれだけの利益を出すため
に売上をどのくらい上げればよいでしょうか。営業利益率を仮に2%で見積もれば五千万円の売上が必要です。これだけ経営的にインパクトのある助成金を活用しない手はありません。上記メリット・デメリットを良く考えて、メリットの方が大きいとなれば、受給申請を考えてみてはいかがでしょうか。  

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2019年10月23日 水曜日

令和元年10月23日第492号

年5日の年次有給休暇取得の義務化

「働き方改革」の一環として、労働基準法が改正され今年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日について、確実に取得させることが義務付けられました。
条件の該当する全ての従業員に対し、年5日の年次有給休暇の確実な取得のため、再度ポイントを確認していきましょう。

1.対象者
年次有給休暇が10日以上付与される全ての労働者が対象です。
法定の年次有給休暇付与日数が年10日以上の労働者に限ります。
対象労働者には、管理監督者や有期雇用労働者、パートタイマー等も含まれます。
2.年5日の時季指定義務
使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時期を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
1)時季指定の方法
使用者は、時季指定にあたっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を希望するよう努めなければなりません。
 2)時季指定を要しない場合
既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。
3.年次有給休暇管理簿の作成と保存
使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
4.就業規則への規定
休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者による年次有給休暇の時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。
5.罰則
上記2及び4に違反した場合には労働者1人につき30万円以下の罰金が科せられることがあります。            

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2019年10月 8日 火曜日

令和元年10月8日第491号

従業員間のパワハラ事案で企業が負う責任

1.パワーハラスメント(パワハラ)とは
 厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の提言によると、パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」指します。具体的な行為類型は、(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)、(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)、(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する等)、(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる・仕事を与えない等)、(6)プライバシーの侵害(私的なことに過度に立ち入る)、の6種類とされています。
2.パワハラ事案における加害行為の違法性の評価
 職場におけるパワハラは業務上の指導との線引きが難しく、違法性については、当該言動が正当な教育指導等と評価できるかという観点から検討することになります。
 正当な教育指導等と評価できるかは、(1)指導を行う必要性、(2)言動内容(人格非難や侮辱的な内容を含む)、(3)回数(執拗さ)、(4)態様(多数人の面前で行う、閉鎖環境で行う、指導後のフォローの有無等)、(5)日常的な関係性(信頼関係構築の有無)、等に基づき判断されます。注意や叱責の度合いが社会通念に照らして許容されるものであるか、という観点から判断されます。
3.パワハラに対する法的責任
(1)民事上の不法行為責任(民法第715条第1項)...民法上、従業員が「職務の執行につき」第三者に損害を与えた場合、使用者である企業も使用者責任として、加害者の従業員とともに損害賠償責任を負います。
(2)債務不履行責任...企業は労働者に対し、労使間の雇用契約に基づく付随義務として、労働者の労働環境を調整し、快適な環境を提供する義務があります。したがって、パワハラを認知したにもかかわらず放置したような場合は、この義務を怠ったものとして債務不履行責任を負うことがあります。
(3)労災補償責任...企業がパワハラを放置ないし黙認したことで労働者が精神疾患等のメンタル不全を招来した場合、仮に企業に過失がなくとも、労災補償責任を負うことになります(無過失責任)。
 企業と職場環境を守るため、パワハラを防止し、万が一起こってしまった場合も適切な事後対応をしましょう。              

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2019年9月23日 月曜日

令和元年9月23日第490号

治療と仕事の両立支援助成金


1.両立支援助成金は環境整備コースと制度活用コースの2種類
 治療と仕事の両立支援助成金は、事業者の方が労働者の疾病の特性に応じた治療と仕事の両立支援制度を導入、または適用した場合に事業者が費用の助成を受給できます。
 環境整備コースは、事業者が両立支援環境整備計画を作成し、計画に基づき制度の導入を行い、かつ、両立支援コーディネーターを配置した場合に費用を助成します。助成金額は1企業当たり将来にわたり1回を限度とし一律20万円です。
 制度活用コースは、事業者が両立支援制度活用計画を作成し、計画に基づき両立支援コーディネーターを活用し、両立支援制度を用いた両立支援プランを策定し、実際に適用した場合に費用を助成します。助成金額は環境整備コースと同様に一律20万円です。ただし、対象労働者が有期契約の場合、対象労働者の雇用期間に定めのない場合、将来にわたりそれぞれ1回ずつ助成されます。
2.両立支援はなぜ必要?
 社員が病気になってしまった時、無理なく働き続けてもらうためにはどうしたらよいでしょうか?大切な人材に辞められるととても困りますね。
働く世代で病気の人は大変多く、病気を理由に1ヵ月以上休業している労働者がいる企業の割合はメンタルヘルスが38パーセント、がんが21パーセント、脳血管疾患が12パーセントです。仕事を持ちながら、がんの治療で通院している人は、32.5万人もいるのです。
そして、診断技術や治療方法の進歩から、かつては「不治の病」であった病気も生存率が向上し、「長く付き合う病気」に変化しつつあります。
 病気になっても働き続けたいとする人は92.5パーセント。生計を維持するためや治療費のためはもちろんですが、自分の仕事に期待してくれる人々がいることは、病気と闘う励みになり、生きがいにもなります。
3.両立支援は事業者・働く人ともにメリット
 両立ができると、貴重な人材資源の喪失が防げ、継続的な人材の確保や定着につながります。また、労働者のモチベーションアップから労働生産性が維持・向上され、健康な経営が実現されることでしょう。働く人は治療に関する配慮が受けられ、病気の悪化を防ぎ治療を受けながら仕事が続けられます。何よりも継続して収入が得られ、生活への安心感が生まれます。ひいては仕事による社会貢献や自己実現につながるでしょう。
助成金をうまく活用して、安心できる職場づくりを行いましょう。

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2019年9月 8日 日曜日

令和元年9月8日第489号

自転車事故について

1.高額な損害賠償
 自動車やオートバイ等の車両を事業に使用しておられる事業所は多いことでしょう。全ての車両は自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)への加入が義務付けられており、交通事故等のいざという時に備えていなければなりません。
 ところが「自転車」には、保険への加入義務は現在ありません。ただし2015年に兵庫県の条例で自転車保険の加入が義務付けられて以降は、全国の自治体で自転車保険の加入を義務付ける動きがあります。
 2008年、11歳の小学生が自転車で走行中に62歳の女性に衝突、頭を強く打った女性はその後意識が戻らず、2013年には神戸地裁が少年の母親へ9,521万円の損害賠償金の支払を命じています。しかし少年の母親は自己破産を申請し、被害者側は慰謝料等の支払を受けることができませんでした。他にも、高校生が自転車で走行中に同じく自転車で走行していた24歳の男性と衝突、男性に言語機能喪失の障害が残り、9,266万円の損害賠償の判決認容額が出ています。
2.加害者になったら
 一般的に自転車保険の補償範囲は、個人賠償責任保険と傷害保険をセットにしたものがほとんどです。個人賠償責任保険は、被保険者が日常生活において偶然な事故で他人を死傷させたり、他人の物に損害を与えたりした結果、法律上の損害賠償責任を負うことによって被った被害を補償します。支払限度額は保険商品によって異なりますが、1億円や無制限など、上記のような高額の損害賠償に対応できるものも存在します。
3.被害者になったら
 自転車同士の事故の被害者となれば、当然に被害者は加害者に損害賠償を請求するわけですが、加害者が適切な保険に加入していない場合、十分な補償を得ることが難しかったり、自分自身の過失分の金銭を受け取ることができなかったりします。
そういった場合は被保険者自身の偶発的外力による死亡や治療を主に補償する障害保険等での対応も考えられます。また自動車保険の人身傷害保険は原則として契約自動車に搭乗中の死傷や後遺障害を補償するものですが、自転車事故が補償範囲に入るオプションもあります。事前に確認しておきましょう。

 誰しもが交通事故の加害者にも被害者にもなる可能性があります。従業員や経営者のもしもの時に備えることは、非常に重要です。 

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2019年8月23日 金曜日

令和元年8月23日第488号

労働白書平成30年版から見た労働者の状況について

1.日本の労働力の状況
 「人手不足」と言われる昨今ですが、「平成30年版厚生労働白書」によると、平成29年、男性の労働力人口(15歳以上の人口のうち、就業者+完全失業者を指す)は3,775万人と前年から2万人増加しています。同様に女性においても、労働力人口は45万人増加し2,936万人となっています。就業者は、男性は3,717万人、女性は2,946万人で、男性が45万人増加、女性は87万人増加となっています。労働への参加は、女性を中心に着実に進んでいるといえます。
 非労働力人口のうち、就業希望者(369万人)に多い非就職理由を見ると、男性は「適当な仕事が有りそうにないため」、女性は「出産・育児のため」でした。
 正規雇用労働者数も平成27年以降は増加に転じており、平成29年の増加数は、男性が23万人、女性が34万人と大幅です。一方、非正規雇用労働者は男女ともに65歳以上が大きく増加しています。これは定年退職後は継続雇用等により非常勤等の非正規雇用で働き続ける高齢者が増加していることが一因であると思われます。
2.若年層を中心とした完全失業率の低下
 平成30年の完全失業者は166万人です。前年度に比べ24万人減少し、9年連続の減少となりました。また完全失業率についても、全体で前年度より0.4ポイント低下し2.4%となりました。こちらも8年連続の低下です。
3.失業率の国際比較について
 失業率を国際的に比較してみます。統計では、平成29年度の失業率OECD平均は5.8%ですが、我が国は2.8%と最も低い水準です。リーマンショック等の影響で、各国で失業率は上昇しました。近年は改善傾向にありますが、イタリアとフランスは相対的に改善が遅れています。OECDにおける平均失業率を年代別に見ると、15~24歳は11.9%、25~54歳は5.3%と、若年層の失業率が特に高い状態です。15~24歳の失業率はイタリアで34.8%、フランスでは22.3%ですが、我が国では4.7%と、OECDの中で最も低い水準にあります。
4.数字では読み解けない労働者の現況
 日本は正規雇用労働者が年々増加しており、失業率は諸外国と比較して低い水準にあります。しかし労働環境は数字だけで推し量れるものではなく、改善が必要とされる企業や体制も少なくありません。今後も、従業員がより活き活きと働き、長く定着できる環境づくりが求められます。

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2019年8月 8日 木曜日

令和元年8月8日第487号

相続法の改正と特別寄与制度の創設

 約40年ぶりに相続法が改正されたことに伴い、令和元年7月1日から特別寄与制度が創設されました。相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護を行っていた場合、相続人に対して金銭の請求をすることができるというものです。
1 創設の経緯
 相続人でない者は、どんなに被相続人の療養看護に努めたとしても相続人ではないため、被相続人の死亡に際し相続財産の分配にあずかれません。一方、相続人である限りは、被相続人の療養看護を全く行っていなかったとしても相続財産を取得することができます。
 以前から問題視されていたこのような不公平を解消するために創設されました。
2 制度のポイント
 (1)特別寄与の対象
 特別寄与者は、上記の通り相続人ではない親族です。なお民法において親族とは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族を指します。事実婚の場合は、配偶者とはみなされません。
 なお特別の寄与とは、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことによって被相続人の財産を維持又は増加させたことをいいます。
 (2)特別寄与料の上限額
 相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額が、特別寄与料の上限です。例えば「全財産を特別寄与者以外に譲る」という遺言があれば、特別寄与料の請求権はあったとしても、請求することができません。
 (3)請求をすることができる期間
 特別寄与料の支払いについて、当事者間で協議が調わないときや、協議ができないときは、相続の開始を知ったときから6ヵ月又は相続開始のときから1年以内に家庭裁判所に請求することができます。
 (4)税制における特別寄与の取扱い
 相続税の課税対象です。相続人ではない親族が財産を取得するため、「相続税額の加算(いわゆる2割加算)」の対象となります。
 遺産を受け取ることのできる人の範囲が広がることは大変喜ばしいことです。しかし、この制度が新たに争いの火種を生むことも想像に難くなく、今後より具体的な整備が必要となる制度ともいえます。

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2019年7月23日 火曜日

令和元年7月23日第486号

パワハラ防止措置義務と実務への影響

 令和元年5月29日、職場におけるパワハラ防止措置を企業に義務付ける「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立しました。
法制化により、企業が行うべきパワハラ問題への取組みにはどのような影響が出るのでしょうか。
パワハラは従前から社会問題として周知されており、法制化によって新たな概念が生まれるわけではありません。しかし事業主にとっては、これまで講じてきたパワハラ防止措置の見直しと改善を行う必要があります。
 現状、厚労省においてパワハラの定義や6類型は示されているものの、パワハラ防止措置に関する労働施策総合推進法においては、具体的に何がパワハラに該当し、事業主がどのような措置を講じるべきかは明確にされていません。
そして今後も、パワハラと業務上の指導の境界線は様々な要因により異なるため、明確な線引きは困難であることが予想されます。
したがって企業には、パワハラか否かをはっきりと線引きすることよりも、「これはパワハラに当たらないだろうか」と「考える癖をつける」ことが求められます。
企業内におけるハラスメント認識を共通化していくことで、パワハラを企業全体で考える問題とし、企業側と従業員の双方が納得のいく認識を持つことが理想です。
 法制化に伴い、企業がこれまで以上に注意すべきなのが「パワハラ相談対応」です。セクハラ事案とは異なり、被害者側にも業務上のミスや落ち度、勤務態度の不良等の問題があるケースも想定され、事実確認にはより慎重な対応を要するためです。
また相談後に配置転換等を行う場合は、相談者側が「相談をしたことによる不当な扱いだ」と誤解しないよう意見聴取や転換理由の説明等の丁寧な対応が求められますし、さらに加害者から相談者への報復行為にも注意しなければなりません。
今後はパワハラ相談に対する対応の在り方がより一層重要になります。パワハラ相談があった際の調査や事実確認の方法を明確にルール化しておくことが必要と言えます。
 また、そもそも相談に対応するだけではなく、パワハラを未然に防ぐための「パワハラ教育」も非常に大切です。単に実施するだけでは意味がないという意見もありますが、繰り返し実施し、回数を重ねることで、従業員にパワハラ問題に向き合ってもらう機会を作り続けていくことが重要ではないでしょうか。

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2019年7月 8日 月曜日

令和元年7月8日第485号

働き方改革の本来の目的


1.働き方改革関連法の適用開始
 この4月から、昨年成立した働き方改革関連法の適用が始まりました。
企業に義務付けられる内容をまとめると、「年次有給休暇5日間の消化」・「労働時間(残業)の削減」・「同一労働同一賃金」などがあります。中小企業はこれらにどう対応していけばよいでしょうか。
 現状、ほとんどの中小企業は人手不足です。業績が上がっている会社であればなおのこと人手は足りず、働き方改革にまで手を付ける余裕はあまりないと思われます。
 とはいえ、法制化された以上は上記内容を進めなければなりません。
2.残業削減や年休消化だけが目的になっていませんか?
 仕事量が今までと変わらないまま、頭ごなしに「残業ダメ」「年次有給休暇をとりなさい」と言っても、社員はタイムカードを切った後に自宅に仕事を持ち帰ってしまうだけです。しかし大多数の企業は「働き方改革」の本来の目的を見失い、その手段であるはずの残業削減や年休取得のみに取り組んでいます。
3.「働き方改革」の本来の目的とは?
 「働き方改革」の本来の目的は、人手不足の解消と労働時間の是正を「生産性向上」によって実現することです。働く人の視点に立ち、働きやすい職場・働き甲斐のある職場にするために、まずは社員の生活・健康・やりがいを考えた制度や仕組みをつくることが大切です。最終的には、従業員に「この会社で働けて幸せ」と幸福感を感じてもらうことこそが、「働き方改革」の本来の目的なのです。
4.企業が最初にすべきことは何か?
 第一に「社員が離職しないようにすること」です。社員の入れ替わりが激しいと、スキルが向上せず生産性も下がります。逆に辞めずに働き続ける社員は経験値もスキルも上がり、生産性を上げてくれます。そこから業務改善が進み、年休も取得しやすい環境が整い始めます。いきなり「年休を取れ」と言っても、不可能です。
 では社員が辞めない職場づくりには、何が必要でしょうか。例えば、社内の課題解決を社員自らが行うことで、職場の環境・雰囲気が向上し、離職率が低下することがあるそうです。結果、生産性が向上し、残業削減や年休消化にもつながります。
 形式だけの「働き方改革」を取り入れる前に、まずは自社をよりよくするためには何が必要なのかを考えてみてはいかがでしょうか。

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2019年6月23日 日曜日

令和元年6月23日第484号

電子申請について


社会保険等のe-Gov電子申請がリリースされて、早くも10年以上が経ちます。当初はなかなか普及しませんでしたが、システムが改善されメニューも増えた現在は、以前に比べ随分と使われるようになりました。来年度には、一部で電子申請における義務化も開始されるようです。電子申請が作業効率を向上させることは間違いなく、今後は急激に需要も高まっていくものと思われます。京都府社会保険労務士会に所属する社労士の中でも、すでに半数以上が電子申請を使っています。また、ソフト会社から電子申請に連動した各種商品が販売されるようになり、企業における使い勝手が一段と向上することも、更なる普及率の向上の一因となっているようです。
来年度からの義務化はまだ明確に確定されたものではないようですが、資本金あるいは出資金が1億円以上の企業を対象に、一部の申請手続きからスタートをするようです。この流れはおそらく数年内にほとんどの企業へと浸透するものと思われます。今後、国あるいは自治体への申請手続き等については、社会保険関係に限らず、すべてがネット化へ移管されていくのでしょう。
しかし多くの企業が強い関心を持って電子申請に取り組んでおられる一方、相変わらず電子申請の案内をしても頑なに抵抗をされる企業もあります。その要因は、おおよそ以下の数点に集約できるようです。
・「申請書を作る際、ハローワークや年金事務所へ出向いて、職員に聞きながら作成しているから」
・「うちはハローワークが近いので、電子申請なんて必要ない」
・「全国展開している企業だから、本部の方針があり勝手に当事業所だけで電子申請を行うことはできない」
・「国が推進する電子申請で、費用(電子認証)が発生するのは納得できない」
・「電子認証取得許可を得る社内稟議を作るのが面倒だ!」
「稟議書作成が面倒だ」という理由は別として、確かに各企業それぞれにそれなりの事情があるのでしょう。ただ、現行のやり方を最善として事務作業の改善を試みないのは、大変勿体無い損失であるように思います。従業員の採用が難しくなってきた昨今、こうした簡単な方策でその状況が一部でも改善できるのであれば、企業としては、積極的に取り組むべきだと考えます。

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2019年6月 8日 土曜日

令和元年6月8日第483号

セクハラで企業が負う責任


 女性活躍推進法の施行日(平成28年4月1日)から3年が経つにもかかわらず、後を絶たないセクシャルハラスメントに関わる企業の法的責任についてお伝えします。
1.セクシャルハラスメント(セクハラ)とは
男女雇用機会均等法では、職場におけるセクハラの定義を「(1)職場において行われる(2)性的な言動に対する雇用労働者の対応により(3)労働者がその労働条件につき、不利益を受け、または当該性的な言動により(4)当該労働者の就業環境が害されること」と規定しています。
2. セクハラに当たるかどうかの判断基準
「意に反するものであったか」「就業環境を悪化させるものであったか」が重要な判断基準となります。本人が明示的に反対せず、応じているように思えても、その言動が相手の望まない言動であった場合、セクハラとなることに注意が必要です。また、その判断基準は、客観的に判断しなければなりませんので、「平均的な(男性・女性)労働者が通常どのように感じるか」で判断されることになります。
3. セクハラに対する企業の法的責任
(1)民事上の不法行為責任(民法第715条第1項)
民法上、従業員が「職務の執行につき」第三者に損害を与えた場合に、使用者である企業も使用者責任として、加害者である従業員とともに損害賠償責任を負うことがあります。
(2)債務不履行責任(民法第415条)
企業は、労働者の労働環境を調整し、快適な環境を提供する義務があります。セクハラを認知したにもかかわらず放置したような場合には、この義務を怠ったものとして債務不履行責任を負うことがあります。
(3)男女雇用機会均等法上の責任
何ら対策を講じず、是正指導にも応じない場合には、企業名が公表されます。厚生労働大臣が、事業主に対して報告を求めたにもかかわらず、報告を行わない場合や、虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料に処せられるとされています。
(4)労災補償責任
企業がセクハラを放置ないし黙認したことにより、労働者が精神疾患等のメンタル不全を招来した場合には、仮に企業に過失がなくとも、労災補償責任を負うことになります(無過失責任)。   

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2019年5月23日 木曜日

令和元年5月23日第482号

特定技能外国人


1.新たな在留資格「特定技能」
 平成30年12月14日に、在留資格「特定技能」の創設等を目的とした「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が公布され、平成31年4月1日から、特定技能外国人の受入れが開始されることになりました。
 これまで就労が認められてきた在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」などの専門的・技術的分野と「技能実習」という非専門的・非技術的分野でした。ただ、専門的・技術的分野では学歴や実務経験が求められており、人材が限られていました。非専門的・非技術的分野の技能実習は本来の目的が日本の技術を移転して発展途上国の経済発展を助けることにあり、労働力の需給を調整するものではありませんでした。
 そこで、日本国内で人材不足が顕著な業種を対象に、一定の技能をもった人材を対象としたのが新たに創設された「特定技能」という在留資格です。
2.対象業種
 「特定技能」には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、前者は特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものをいい、介護業や外食業など、人材が顕著に不足している特定産業分野に指定されている14業種が対象となっています。後者は建設業と造船・舶用工業の2業種が対象となっています。今後は特定技能1号の在留資格が増えるものと見込まれます。
 特定技能の在留資格を取得するには、特定技能評価試験に合格するか、技能実習2号を修了することが必要となります。特定技能評価試験は、「技能水準」と「日本語能力水準」の試験に合格する必要があります。試験は業種ごとに順次行われる予定です。
3.導入手続
 特定技能外国人を受け入れるために雇用する事業者は、支援計画を作成し、申請の際に出入国在留管理庁に提出することになります。これらを自社で行えない場合、一定の基準を満たした登録支援機関に支援を委託することができます。
 また特定技能外国人を自ら探せない場合には、職業紹介事業の許可を取得した事業者から紹介を受けることが必要となります。今後は登録支援機関が職業紹介の許可を取得し、または、職業紹介事業者が登録支援機関の申請登録を行い、ワンストップで特定技能外国人のサポートを行うことが考えられ、利便性が向上する可能性があります。
 人材不足に悩む事業者には朗報ですが、そこにつけこんだ悪質なブローカーなどが仲介する可能性もあるので、導入する際には注意が必要です。

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2019年5月 8日 水曜日

令和元年5月8日第481号

人生100年時代と雇用環境


1.高齢者の定義が変わる?
いよいよ、令和の時代が始まりました。昨年、「ライフシフト100年時代の人生戦略」という本がベストセラーになりました。また、日本老年学会・日本老年医学会では、65~74歳を準高齢期、75~89歳を高齢期、90歳以上を超高齢期と定義の見直しを提言している時代です。もちろん、人の価値観は百人百通り、おかれた環境も百人百様。他人は他人、自分は自分かもしれません。しかし、こんな統計があります。「何歳まで収入を伴う仕事をしたいですか?」(平成30年度内閣府調査)に、実に42%の人が「働けるうちはいつまでも」が最も多い回答になっています。前書「ライフシフト」でも、今までは「教育・就職・老後」の3ステージモデルだったが、今後は4ステージ以上になるだろうと想定されています。
2.60歳以上の雇用環境
ご承知の通り、少子高齢化を背景に、昭和22年制定の労働基準法を中心に大きく法律が改正され、平成31年4月から次々と「働き方改革法」が施行されています。なぜ働き方を変えるのでしょうか。前掲内閣府調査で60歳以上の就業状態は、男性60~64歳で約79%、65~69歳で約54%、女性で同約53%、同約34%という数字が出ています。また、改正高年齢者雇用安定法の施行もあり、定年を「65歳以上」とする企業は約18%と、この10年で3倍に増えています。
3.高齢者雇用の課題
  ある企業は「定年制なし」として、従業員の方も80歳代で生き生きと働いておられるケースもありますが、現実には勤務体制や賃金設計をどうするのかは企業にとって大きな問題です。改正高年齢者雇用安定法後、企業では、従業員の定年後は責任と権限を限定するというケースが主流であり、雇用管理は調いながら、報酬や評価システムは追い付いていない状態ではないでしょうか。
今後、高齢従業員の戦略化、知識・スキル・ノウハウの伝承等を期待するなら、バリアフリー化、AIの活用、時差出勤、短時間勤務、テレワーク、また、賃金カーブの見直し、リカレント教育の実施、ノウハウや経験の伝承につながる職務開発等細かな配慮と取り組みが必要になります。また、従業員も年金の繰り下げ受給の検討、雇用保険の給付など、利用できる制度を活用してスキルアップや資格取得に取り組み、自身が戦力として期待されるような努力も必要になるでしょう。

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2019年4月23日 火曜日

平成31年4月23日第480号

平成31年度の労働保険について


1.平成31年4月1日 以降の一括有期事業について
事業主負担を軽減するための取組として労働保険の事務手続きが簡素化されます。
(1)一括有期事業開始届の廃止について
  建設事業で一括有期事業を行う事業主は、それぞれの事業を開始したとき、翌月10日までに一括有期事業開始を提出する必要が有りましたが、平成31年4月1日以降に開始する一括有期事業については提出する必要が無くなります。
(2)一括有期事業の地域要件の廃止について
  一括される有期事業については、地域要件が定められており、定められた地域の範囲外で行われる事業は一括されず、個別に有期事業として成立させる必要がありましたが、平成31年4月1日以降に開始する有期事業については、この地域要件が廃止され、遠隔地で行われる事業も一括することができるようになりました。
  ただし、事務処理上の手続きとしては次の点に留意する必要が有ります。
ア.平成31年3月31日以前に、労災保険関係が成立している有期事業の一括の要件については、同年4月1日以降も引き続き地域要件が適用されます。
イ.一括有期事業に係る地域要件の廃止については、本社及び支店ごとに成立している一括有期事業を本社に一括することではなく、地域要件により、一括されなかった有期事業が、労働保険料の納付事務を行う事務所で一括されることで、労働保険料の納付事務を行っていた事業所を変更することではありません。
有期事業が一括されるには、概算保険料が160万未満、請負金額が1億8千万未満の建築事業であることが必要でこれらの要件に変更は有りません。
2.労働者死傷病報告書の様式改正について
  労働者が4日以上労災事故で休業する場合に労働基準監督署へ提出する、労働者死傷病報告書の様式が改正され、外国人である労働者が負傷した場合は労働者死傷病報告書の下段に「国籍・地域」と「在留資格」の記入が必要となりました。ただし、「特別永住者」など、外国人雇用状況の届出制度の対象外となっている方については、記入の必要はありません。
3.65歳以上の雇用保険加入者について
  平成29年1月1日以降、65歳以上の高年齢労働者が雇用保険の適用対象とされ、平成31年度まで保険料が免除されていますが、令和2年4月1日以後は雇用保険料の納付が必要となります。

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2019年4月 8日 月曜日

平成31年4月8日第479号

尊厳死宣言~自分らしい最期とは?~


尊厳死、尊厳死宣言とは、どのようなものでしょう?安楽死との違いは何でしょう?
1.尊厳死、尊厳死宣言、安楽死との違い
(1)尊厳死とは
「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え、又は中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせること」。つまり、「自然死を迎えること」とされています。
(2)尊厳死宣言とは
「個人が、意識の正常な間に自ら尊厳死を選択する宣言のこと」とされています。
(3)安楽死とは
耐え難い苦痛から解放するため、「医師などの第三者が、薬物などを使って患者の死期を早めること」とされています。
2.現状と宣言方法
(1)日本公証人連合会が公表した統計によりますと、2018年1月~7月に作成さ
れた尊厳死宣言公正証書の件数が、1000件近くに上ったということです。
(2)尊厳死宣言をする主な方法としては、次のようなものがあるとされています。
ア.公証役場で「尊厳死宣言公正証書」を作成する方法
千葉県の松戸公証役場では文例を紹介しています。
http://www.matsudo-koshonin.jp/songenshi/index.html
イ.一般財団法人日本尊厳死協会のリビング・ウイルで宣言をする方法
同協会では、延命治療を望まないという「終末医療における事前指示書(リビング・ウイル)」を作成することが出来ます。
ウ.エンディングノートで延命治療に関することや尊厳死について触れておく。
3. 問題点など
(1)政府は2007年に厚生労働省が発表した、「終末医療の決定プロセスに関する指針」に基づき、尊厳死を選択する際の最低限のルールと手続の明確化を図っており、人工呼吸器の装着や、胃ろうの造成など生命を維持するためだけになされる延命治療につき、本人が拒否する意思を表明していると認められる場合は、本人の意思が尊重されます。
(2)2016年には尊厳死法案の提出も検討されるようになりました。
(3)障害者団体・難病患者団体などでは安易な法制化に反対する動きもあります。

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2019年3月23日 土曜日

平成31年3月23日第478号

年次有給休暇の時季指定に関する扱い


2019年4月1日、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律により労基法が改正され、使用者は5日の年次有給休暇の時季指定権を1年間に行使しなければならなくなりました。従来から労使協定を作成し、計画年休制度を導入している事業所は、さらなる時季指定が必要なのでしょうか。また、事業所が時季指定したにもかかわらず、社員が出社して就労した場合でも罰則の適用はあるのでしょうか。
1.使用者による時季指定
使用者による年5日の年次有給休暇の時季指定義務が定められます。(新労基法第39条第7項および第8項)これは、年次有給休暇の付与日数が10労働日以上である労働者に係る年次有給休暇の日数のうち、5日については、基準日(継続勤務した期間を同条第2項に規定する6ヵ月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定め、与えなければなりません。(新労基法第39条第1項から第3項)
2.計画年休が付与されている場合
使用者が時季指定し、与えなければならない年次有給休暇は5日ですが、労働者が時季指定した日数と、計画年休で付与された日数は、時季指定義務のある5日から控除することができます。
例えば、労働者による時季指定が2日、計画年休による時季指定が1日の場合には、使用者は2日分の時季指定をすれば足りることになります(新労働法第39条第8項)
3.労働者が年次有給休暇日に出勤した場合
 使用者が時季指定した場合でも、業務の繁忙等を理由に労働者自らが出勤してしまうこともありうると思われます。当日については労働者には労務提供義務が免除されているのですから、使用者としては帰宅させることが必要であることはいうまでもありません。しかし、使用者が労働者の労務を受領した場合で、結果的に年5日の年次有給休暇が付与できなかった場合、かつ、当該労働者に計画年休や労働者による時季指定もない場合には、労基法に違反すると考えざるを得ないでしょう。
使用者が新労基法第39条第7項に違反した場合には、罰金(30万円以下)が予定されております。(新労基法第120条第1項第1号)

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2019年3月 8日 金曜日

平成31年3月8日第477号

叱るコーチング


1.「叱る」上司のもとで部下は成長する
近年「叱らない上司」が増加しています。「叱る」ことによりパワハラと捉えられたり、叱られたことを原因として、部下が簡単に退職する場合もあり、叱れないのでしょう。でも、「叱る」という行動なくしては部下の成長は望めません。
2.「怒る」と「叱る」は別物
  「怒る」とは、部下が上司の思い通りに行動しない、結果を出せない等の場合に、冷静さを失い腹を立て、怒りの感情をぶつけることを指します。一方「叱る」とは、相手の間違った行動や望ましくない行動に対して、現状での問題点や改善点を考え、今後の成長のために強めにアドバイスすることです。よって、「怒る」上司は、自分の気持ちが中心となってしまい、冷静に部下を見ることができません。怒ってばかりの上司を持った部下は、決して「この人に認められたい」という気持ちにはならないでしょう。
 3.効果的な叱り方
叱る目的は、部下の間違った行動や望ましくない行動を改善して仕事の生産性を上げることです。叱られた側がその内容を素直に受け止め、自ら反省できるような叱り方をする必要があります。
(1)その都度、リアルタイムで叱る
   その場で直接叱るのが一番伝わるタイミングです。後になって「あの件だけど」と過ぎたことを蒸し返すのは真意が伝わりにくいです。
 (2)主観を入れず、事実の確認をする
   まずは起こった事実、行動について共通認識になるまで確認します。
 (3)ポイントをきちんと説明する
   同じ失敗を繰り返すことのないよう、何がいけなかったのかを明確に部下に伝えて理解してもらう必要があります。
 (4)人前ではなく別室で叱る
   みんながいる場所で叱ると、相手のプライドを傷つけ、恥をかかせることになり逆効果になります。
4.まとめ
部下や目下の人に対して、褒めて伸ばすことが今主流になっています。「褒める」ことは人を育てるうえで欠かせませんが、「叱る」ことも重要です。できたときは、きちんと「褒める」、ルールや指示を無視したり、やらない部下に対しては真剣に「叱る」というバランスをとれる上司が、本当の意味での良い上司といえるでしょう。

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2019年2月23日 土曜日

平成31年2月23日第476号

勤労統計調査の不正による影響


毎月勤労統計調査の不適切な取扱から、労働者の平均賃金額が現実とは異なる金額で集計されていました。これにより、平均賃金額を基準として支給されていた雇用保険、労災保険、船員保険、事業主向け助成金に影響が出ています。
雇用保険関係の給付金は、例えば基本手当(失業給付)であれば、基本手当の日額に給付日数を乗じて算出しますが、この基本手当の日額は上限額・下限額が定められており、その限度額を超える部分についてはカットされます。上限額・下限額は毎年、その時点で適用される上限額・下限額に、毎月勤労統計調査における労働者の平均賃金額の前々年度から前年度への変化率を乗じて算出されるので、この上限額・下限額が事実と異なる金額であれば、支給される金額も変わってくることになります。
毎月勤労統計調査は、事業規模に応じて実態調査を行っています。大企業については、全事業所を調査する決まりになっていたのですが、実際は、その3分の1程度の事業所数しか調査していなかったという不正が発覚しました。賃金の高い大企業の分が少なかったということは、当然、平均賃金も少ない額となります。従って、上記の雇用保険の基本手当の上限額が、実際より低く定められたことになり、受け取る給付額が少なくなる可能性が出てくるのです。
政府は調査をして追加給付を行うとしていますが、それには多くの難関があるようです。現在、該当者と追加給付金額を抽出するべく、コンピュータシステムを改修していますが、時間はかかりそうです。
下記の制度に影響している可能性があります。
1.雇用保険関係(2004年8月以降の受給)
基本手当、高年齢求職者給付、特例一時金、就職促進、高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付、教育訓練支援給付、就職促進手当、政府職員失業者退職手当等
2.労災保険関係(2004年7月以降の受給)
 傷病(補償)年金、障害(補償)年金、遺族(補償)年金、休業(補償)給付等
3.船舶保険関係(2004年8月以降の受給)
 職務場災害による障害年金、遺族年金等
4.事業主向け助成金
 雇用調整助成金の支給決定の対象となった休業期間の初日が2004年8月から2011年7月の間か、2014年8月以降の受給分

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2019年2月 8日 金曜日

平成31年2月8日第475号

商標(商品名・ロゴ)をめぐるトラブル


シンガポールのティラミスを真似た商品を、全く同じ商品名やロゴで売ろうとし、シンガポールの会社と関係のない会社が日本で商標登録したため、シンガポールの会社が困っている、という問題が少し前にありました。
シンガポールの会社は何もすることが出来ないのでしょうか?
1.商標が無効になる場合
問題となっている商標が、商標法第4条第1項が定める「商標登録を受けることができない商標」に当たる場合は無効となります。
具体的には、その商標が、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」(商標法第4条第1項第10号)に当たらないか。
又は「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするもの(第4条第1項第19号)」に当たらないかが、本件では問題となります。
2.本件事例の判断基準
本件で商標が無効になるかどうかは、その商標がどこまで日本国内やシンガポールで需要者の間に広く認識されていたのかがポイントとなります。
本件では、さらに、過去の裁判例に照らし、シンガポールの法人の商標と類似であることを知りながら、無断で出願したなどとして公の秩序又は、善良の風俗を害するおそれがある商標(第4条第1項第7号)ではないのかとの指摘もできそうです。
3.手間ひまを考えると先んじて商標登録を
特許庁に無効審判請求をするなどをし、その商標が「登録を受けることができない商標」に当たるかどうかを立証する手間・労力は多大です。
また、問題の会社が、シンガポールのティラミスヒーローに対し、商標権侵害で商標使用の差止や損害賠償請求をすることもあり得ます。商標は無効であるなどの反論が考えられますが、その対応には手間がかかります。
他者から自分の使っているロゴについて商標権侵害だと言われないようにするためには、他者に先んじて商標登録をしたり、すでに商標登録がされていないかしっかり調べたりしておくことが大切です。

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2019年1月23日 水曜日

平成31年1月23日第474号

統計不正問題から得る教訓


1.統計不正問題
 昨年の年末から今年1月初めにかけて、厚生労働省による毎月勤労統計の不適切調査が明るみになりました。毎月勤労統計では、従業員500人以上の事業所を全て調べると決まっています。ところが、厚生労働省は、東京都で調査対象となる約1400のうち、3分の1しか調べていなかったのです。現段階では調査中であるものの、基幹統計という性質からすでに各方面に大きな影響を与えています。  
2.問題の原因
 この抽出調査は2004年から行われ、内部の調査手法の手引きに記載され、長年続けられてきたといいます。不正は、昨年の12月に総務省統計委員会と厚生労働省との打ち合わせで発覚しました。その際、厚生労働省の職員が「神奈川、愛知、大阪も抽出調査に変えたい」と説明したとも言われています。さらに、抽出調査の不正発覚後に、全数調査に近づけるための加工をしたというのです。このことから、問題の原因として、厚生労働省の職員が調査手法を理解していなかったこと、全数調査が職員の過度な負担となっていたこと、不正が見つかった場合の対処方法が適切になされていなかったことが推測されます。
 昨年、厚生労働省に関連する同様の不祥事として、裁量労働制のデータ問題、障害者雇用者数の水増し問題が話題となり、もっとさかのぼれば「消えた年金問題」にたどり着きます。今回の不適切調査は偶然起こったものではなく、組織全体として体質そのものを改善しなければならない問題でしょう。
3.教 訓
 国の行ったことを批判することは簡単ですが、自社で不正が行われないような体制はとられているでしょうか。従業員個人レベルでは、与えられた仕事がどのようなルールに基づいているのかを、理解することが必要です。過去の慣習やマニュアルに従うだけではなく、ゼロベースで考えることも必要です。また、管理職レベルでは、部下の職務内容が質・量・責任において、適切である能力なのかを、見極めることが必要となります。さらに、会社のトップは不正が発覚した場合、どのような対処をすべきかあらかじめ危機管理マニュアルを作成し、迅速に対応できるようにすべきでしょう。この対応を間違えて評価を落とした企業はニュースを見ていても枚挙に暇がありません。他人の不祥事を、自己を振り返る機会にしてみてはいかがでしょうか。

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2019年1月 8日 火曜日

平成31年1月8日第473号

労災保険と健康保険との関係


1.労災保険法
戦後いち早く制定された労働基準法(昭和22年)に基き、業務上の負傷、疾病、障害、死亡に対する使用者の補償責任が定められ、(1)療養補償、(2)休業補償、(3)障害補償、(4)遺族補償、(5)葬祭料が義務付けられ、同時に(昭和22年)その補償責任を担保するため労災保険法が制定されました。
我々が日々対応する事業主の方や従業員の方の業務災害、通勤災害に、費用の負担や、労働福祉の面で日常的に大きな役割を果たしている制度ですが、やはり、時代や働き方に沿って幾度もの改正がされているところです。
2.法改正による解決
ところが、労災保険は「業務上」、健康保険は「業務外」に対し保険給付を行うことを要件としたため、労働者が副業として行った請負業務での負傷、学生のインターンシップやシルバー人材センターの業務の場合なども労災保険と健康保険の間に挟まり、保険の保護がおよびませんでした。平成25年健康保険法の改正で対象領域が「業務災害以外」の災害に変更され、労災が否定されると健康保険の給付対象となるよう改正されました。ただし、法人格を持たない5人未満の労働者を雇用している事業所は健康保険の強制適用ではないため、業務外の災害について健康保険の適用から漏れる労働者があり、国民健康保険が適用されるケースもあります。
3.もう一つの問題
  もう一つの問題は、本来は労働災害であるのに健康保険で受診してしまった(あるいは受診している)場合です。
この場合、健康保険で受診してしまった(あるいは受診している)事案を労災保険に切替えるわけですが、いったん健康保険で全額を立替えて清算したうえで、労災保険に費用請求するというのが従来の方法でした。
この方法ですと、被災労働者に一時的な経済的負担が生じましたが、新しく、労災保険と健康保険の保険者間で調整し、労災保険給付額を返還額に相当する療養の費用として、健康保険の保険者あて直接振り込むことができるようになりました(「労災認定された傷病に対して労災保険以外から給付等を受けていた場合における保険者等との調整について」平成29.2.1基補発0201第1号)。
なお、新しい方法によるためには、労災事案であることが必要ですから、調整前に労災認定を受けたものであることが前提です。
後で調査が入り、ちょっとの事故と思っていても、立派な労災事故だった、ということがないよう気をつけたいものです。

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2018年12月23日 日曜日

平成30年12月23日第472号

人生100年時代の資産形成とETFについて


1.人生100年時代はすぐそこに
現在の平均余命は男性84歳、女性89歳です。人生100年時代は意外に早く訪れ
ます。少子高齢社会において100年の人生を安心に生活するための基本は健康と資産形成でしょう。1億総活躍社会と言われ高齢者の就業が増加しています。働く年限は、厚生年金の加入上限である70歳までと考えられます。それ以後、100歳までの30年間は、年金と資産の取り崩しで生活することになります。
2.夫婦2人の年金と生活費
 平均年収700万円程度と専業主婦の組み合わせ世帯の年金は約22万~25万円となり、必要生活費は35万円(生命保険文化センター)と言われています。毎月の不足額を10万円と見積もると30年間で3,600万円の貯蓄が必要になります。
3.投資 お金に働いてもらうとは
 3,600万円の貯蓄があれば、貯蓄は充分なので投資の必要ありません。しかし、
貯蓄が不足するなら、お金に働いてもらう必要があります。つまり、投資はお金がある人がする事ではなく、お金が不足する人がする行為といえます。
投資のポイントは、対象の分散、時間の分散、長期投資です。そうすると、危険な投
資の典型は、1つの投資対象に対し、まとまったお金(仮に100万円)を一度に投資することです。
4.非課税制度を利用する
 国の制度であるNISA、積立てNISA、小規模企業共済、掛金の全額が所得控除
の対象であるIDECOは、メリットが大きいため多くの利用が有ります。
非課税枠は、ハイリスク・ハイリターンを避けて、確実性の高い商品を中心に選ぶこ
とが大切です。その際、手数料の高低の比較も重要です。
5.E.T.F(上場投資信託)について
 ETFとは、日経平均株価や東証株価指数など、特定の指数の動きに連動するように運用される投資信託の種類です。取引所に上場されているので、株式と同様に売買できて指値注文や成り行き注文ができ、一般的な投資信託よりも信託報酬が低いといった特徴があります。
 その他の特徴としては、一般的な投資信託は基準価格が有るのに対して、ETFはその時々の取引価格で売買されます。一方、リスクとしては、組み入れられた有価証券の価格変動によりETFの価格が変動します。資産形成は、安全で使い勝手の良い資産を選択することが重要です。

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2018年12月 8日 土曜日

平成30年12月8日第471号

所有者不明の土地が公園や道路に利用出来るように


所有者が分からない土地を有効に活用することが出来るようにするために「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が本年6月6日に成立しました。

1.所有者不明土地の問題
『所有者不明土地問題研究会』(座長:増田寛也元総務相)の推計によると、所有者不明土地の総面積は九州の面積である約368万ヘクタールを上回る410万ヘクタールとされています。
2.特別措置法の概略
(1)利用権を設定できるのは次のような土地です。
ア.土地上に建築物がない
イ.反対する権利者がいない
(2)公益目的を条件にNPO法人等が直売所や駐車場等を造ることが出来ます。
(3)持ち主が現れた場合は期間終了後に原状回復して返すことになりますが、現れなければ期間を延長することも認められます。
(4)期間は最長で10年とされています。
(5)道路や町づくりの妨げになっている土地について、都道府県の収用委員会の審理を経ずに取得できるような対策も作られました。
3.施行日
この法律は所有者不明土地問題の第1弾とされており、公布日の6月13日から1年を超えない日を定めて施行されます。
4.今後の動き
(1)第2弾としては2020年までに土地所有者の把握を進めると同時に、新たな所有者不明土地を発生しないようにするため、国土調査法や土地基本法の改正を視野に入れた施策を進めるということになっています。
(2)具体的には次の通りです。
ア.所有者不明の土地について登記官に調査権限を与える
イ.自治体が管理する所有者の死亡情報と国の登記情報を結びつける
ウ.相続登記を義務化する
エ.土地所有権を放棄できる制度の創設

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2018年11月23日 金曜日

平成30年11月23日第470号

資格取得費用の取扱い


従業員が、研修という名目で業務に必要な技能習得、資格の取得をする場合、その費用を会社で負担することも多いと思います。それらの費用は、研修を受講した人への給与となるのでしょうか。
資格取得費用の基本的な考え方は、従業員の資格取得等に要する費用で、会社が負担したものは、従業員に支給された経済的利益に該当し、原則として給与所得として課税されます。ただし、会社が自己の業務上の必要にもとづき、仕事に直接必要な内容であること、そして次の要件すべてを満たしており、その費用が適正な金額であれば、給与所得として課税しなくてもよいことになっています。
(1)技術や知識を、役員または従業員に習得させるための費用であること
(2)免許や資格を、役員または従業員に取得させるための研修会や講習会などの出席費用であること
(3)関係分野の講義を、役員または従業員に大学などで受けさせるための費用であること
具体例
(1)従業員に対して、業務を遂行するために必要な資格である調理師免許を取得させた場合
・給与所得として課税されない。
(2)新入社員に対して、業務を遂行するために必要な資格である調理師免許を、会社へ入社する前に取得させる。試用期間中に退職した際には、全額を返金させる予定である場合
   ・給与所得として課税されない。試用期間中に退職した場合も、本人に費用返還を求めるため、給与所得として課税さない。
(3)来年度から入社することが内定している者に対して、ビジネスマナー講座を受講させる。内定者が入社しなかった場合には全額を返金させる予定である場合
   ・給与所得として課税されるが、内定者が入社しなかった場合は、本人に費用返還を求めるため給与所得として課税されない。
役員、従業員に対して、仕事に直接必要なものであれば、給与所得として課税はされないが、仕事に直接必要のない、自己啓発的な知識習得や、モチベーションアップのための費用を、会社が負担すると給与所得として課税されるということです。

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2018年11月 8日 木曜日

平成30年11月8日第469号

財産承継について


被相続人の死亡により、被相続人の権利義務の一切を相続人が承継することを相続といいます。被相続人の財産は、相続が開始されると相続人全員の共有状態となり、個々の相続分は、遺言を優先し、遺言がない場合は相続人の協議による遺産分割、または法定相続分によります。法定相続とは、配偶者及び一定の血族に対し民法でその順位及び配分率が定められています。
1.配偶者は、法律上の配偶者を指し、常に相続人となります。婚姻届を出していない事実婚の配偶者は含まれません。
2.子(及び子の代襲相続人)は、配偶者を除き第1順位の相続人となります。既に子が死亡している場合は、孫が第1順位の相続人となります(代襲相続)。既に孫が死亡している場合は曾孫が代襲相続します。
3.直系尊属(父母、父母がいないときは祖父母)は、第1順位の血族相続人がいないときに相続します。
4.兄弟姉妹(及びその代襲相続人)は、第1順位および第2順位の血族相続人がいないときに相続人となります。既に兄弟姉妹が死亡している場合は、兄弟姉妹の子までは代襲相続します。兄弟姉妹の孫が代襲相続することはありません。
5.その他、相続開始時に胎児であった者は、実際に生まれた場合には相続権が認められますが、死産の場合は相続権がなかったものとされます。
兄弟姉妹以外の相続人には、法定相続人の遺産継承を確保するため、一定割合の遺産
を確保できる遺留分を認める制度があります。
法定相続分と遺留分の割合は次のとおり決められています。
・第1順位 配偶者と子      法定相続分は1/2、遺留分は1/4
・第2順位 配偶者と直系尊属   配偶者の法定相続分は2/3、遺留分は1/3
直系尊属の法定相続分は1/3、遺留分は1/6
・第3順位 配偶者と兄弟姉妹   配偶者の法定相続分は3/4、遺留分は1/2
兄弟姉妹の法定相続分は1/4、遺留分はなし
・配偶者のみ           配偶者の法定相続分は全部、遺留分は1/2
・子のみ             子のみの場合法定相続分は全部、遺留分は1/2
・直系尊属のみ          配偶者も子もいない場合は、直系尊属が相続人と
なり、法定相続分は全部、遺留分は1/3

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2018年10月23日 火曜日

平成30年10月23日第468号

運送業における有期労働者との差別について


 労働関係に関する重要な判決「ハマキョウレックス(以下「会社」という)事件」のご紹介です。会社は、運送事業等を目的とする株式会社で、有期労働者である原告は、トラック運転手として配送業務に従事していました。
 原告と正社員間のどのような差が「不合理な差別」として、違法となるのでしょうか?
1.無事故手当 →不合理である
無事故手当は、乗務員が1ヵ月間無事故で勤務したときに限り、無事故手当として1万円が支給され、優良ドライバーの育成や、安全な輸送による顧客の信頼の獲得を目的とするものと解されるところ、優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得といった目的は、正社員の人材活用の仕組みとは直接の関連性を有するものではなく、むしろ、正社員のドライバーと契約社員のドライバーの両者に対して要請されるべきものである。そうすると、正社員のドライバーに対してのみ、無事故手当月額1万円を支給し、契約社員のドライバーに対しては、同手当を支給しないことは期間の定めがあることを理由とする相違であり、労働契約法第20条にいう「不合理と認められるもの」に当たると認めるのが相当である。
2.作業手当 →不合理である
会社は、作業手当は、元来、乗務員の手積み、手降ろし作業に対応して支給されていたものであるが、現在は、正社員に一律に支給されており、実質的には基本給としての性質を有しているものであるから、その支給不支給の区別が不合理であるということはできない旨主張した。しかし、過去に手で積み降ろしの仕事をしていたドライバーが正社員のみであり、契約社員のドライバーがその仕事に従事したことがないことを認めるに足りる証拠は見当たらないし、作業手当が現在は実質上、基本給の一部をなしている側面があるとしても、本件正社員給与規程において、特殊業務に携わる者に対して支給する旨を明示している以上、作業手当を基本給の一部と同視することはできない。そうすると、正社員のドライバーに対してのみ、作業手当月額1万円を支給し、契約社員のドライバーに対しては同手当を支給しないことは、期間の定めがあることを理由とする相違というほかなく、労働契約法第20条にいう「不合理と認められるもの」に当たると認めるのが相当である。
3.その他の手当差
全てについてご紹介できませんでしたので、また引き続きご紹介したいと思います。

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2018年10月 8日 月曜日

平成30年10月8日第467号

労働者派遣法2つのタイムリミット


1.特定労働者派遣事業の完全終了
  平成30年9月29日をもって届出制の特定労働者派遣事業が完全に終了し、許可制の労働者派遣事業に一本化されました。許可制への切り替えを行っていた旧特定労働者派遣事業者は、許可されるまでは従前の労働者派遣事業を行うことができますが、切り替えを行っていない事業者は、9月30日以降労働者派遣事業を行うことができなくなりました。許可制へ切り替えることで特定労働者派遣では認められていなかった常用雇用以外の労働者派遣や登録制度を採用することができるため、派遣労働者の受け入れ側(派遣先)のニーズにより適した形の派遣が可能になります。
  一方派遣先は、以前から旧特定労働者派遣事業者と取引をしている場合、すでに許可を取得しているのか、または上述の切り替え申請をしており、審査中なのか確認する必要があります。許可の取得は「人材サービス総合サイト」で確認することができます。確認をせずに許可申請をしていなかった事業者と取引を行った場合には、労働者派遣法第40条の6の「みなし制度」(派遣先が派遣労働者に労働契約の申込をしたものとみなされる制度)の適用を受ける可能性があるので要注意です。
2.抵触日の到来
  改正労働者派遣法が平成27年9月30日に施行され、3年が経過しました。気を付けなければならないことは、派遣事業者については、就業先の同一の組織単位の業務について継続して3年間派遣する見込みがある有期雇用派遣労働者に対して雇用安定措置を講じなければならないことです(派遣法第30条1項各号及び同条2項)。
また、法改正日以降派遣事業者と派遣契約を締結した派遣先は、初めて派遣労働者(一部例外を除く)を受け入れた日から3年を超えてその事業所で受け入れることができません。延長することは可能ですが、抵触日の1ヵ月前までに派遣先事業所での意見聴取手続を終えている必要があります。また、これとは別に就業先の組織単位において同一派遣労働者を、3年を超えて受け入れることはできません(この場合延長の手続はなし)。これに違反すると前述と同様「みなし制度」の対象になりますから、すでに派遣労働者を受け入れていて、これから抵触日が到来する事業者については、適切な意見聴取手続を経て派遣契約を結んでいただきたいと思います。派遣契約に不備があると、派遣元事業者と派遣先事業者双方が労働局による是正指導の対象となりますので、お互いに迷惑をかけないためにも今一度契約内容を確認することが必要です。

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2018年9月23日 日曜日

平成30年9月23日第466号

働き方改革法案成立


1.残業時間の上限規制は罰則付き
働き方改革関連法が平成30年6月29日に可決・成立しました。この関連法案は労働基準法、じん肺法、労働安全衛生法等8つの法律を一括改正するものとなっています。主な改正内容をご紹介しますと、まず残業時間の上限規制が導入されます。労働基準法に「1日8時間、週40時間」と定められている法定労働時間、これを超えて仕事をさせることができるいわゆる「36協定」において、月45時間、年360時間という基準を明確化し、かつ臨時特別的事情のある場合でも45時間を超えての残業は6ヵ月まで、年間の上限は720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間(休日労働を含む)と定められ、違反には罰則が適用されます。ただし、自動車運転や、建設、医師等に対しては、適用は5年後、新技術・新商品の研究開発には適用されません。施行期日は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日となります。

2.長期間労働抑制・年次有給休暇の取得促進
  月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について中小企業への猶予が廃止されます。施行期日は2023年4月1日です。また、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、5日について毎年時季を指定して与えなければなりません。この施行期日は2019年4月1日です。

3.高度プロフェッショナル制度の創設
  年収1075万円以上の高度なスキルを持つ社員を、労働時間の規制対象から外すもので、一般的には研究職等、年収、専門性の高い職種が該当します。ただし、具体的な額等については省令で規定することとされています。施行期日は2019年4月1日からです。

4.同一労働同一賃金
  短時間労働者、有期雇用労働者について正規雇用労働者との待遇格差が不合理か否か、その性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨、が明確化されます。施行期日は2020年4月1日です。(中小企業は2021年4月1日)

5.まとめ
  今回の働き方改革は「戦後からの労働関係法による労働行政」の大改革の様相を呈しています。どの企業においても、適切に対処、対策の検討が急がれるところです。

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2018年9月 8日 土曜日

平成30年9月8日第465号

選択制確定拠出年金について


1.老後の生活資金は自助努力が求められる時代
 公的年金(国民年金・厚生年金)は現役世代から徴収した保険料を元に老後を迎えた人に給付を行う世代間扶養の方式をとっています。個人年金の様な個人別の口座等の必要がなく合理的に運用することが可能である反面、出生率の低下による高齢化率の加速・平均余命の延長から、年金額の減少や支給開始年齢の引き上げが予想され、公的年金だけでは退職後の生活資金の確保が難しくなってきました。
2.確定拠出年金のテコ入れ策
  中小企業や個人への導入を進めるため確定拠出年金法が改正、平成29年1月1日から施行されました。そのポイントは、(1)加入対象者の拡大(2)投資教育の充実(3)企業の選択肢を充実(4)手続きの簡略化です。このうち加入者の拡大については個人型に「iDeCo」と愛称をつけ加入対象者の拡大が図られました。
3.選択制確定拠出年金の導入
  選択制確定拠出年金とは、給与の一部を切り離し、企業型確定拠出年金とするか、退職金の前払い(給与)とするかを従業員に選択させる制度です。
(1)導入するメリット
  ・ 人事評価と給与の一部を切り離して考えることができる。
  ・ 従業員自身が老後の資産形成を考える機会となる。
  ・ 社会保険料・労働保険料、所得税・住民税が減額となり、事業主の経費削減と従業員の節税が同時に可能になる。保険料掛け金の拠出額は標準報酬が1等級以上下がるよう設定するのが望ましい。
(2)導入するデメリット(主に従業員側)
  ・ 掛け金が給与に含まれないことから、雇用保険の賃金日額や社会保険の標準報酬が下がるので、老齢厚生年金の額や、失業した際の基本手当が減額となる。
・ 確定拠出金年金の掛け金は労働基準法上の割増賃金の算定に入らない。
・ 確定拠出年金の掛け金として拠出した部分は60歳まで引き出せない。
・ 退職予定者、出産が近い者、病気休職予定者は健康保険の傷病手当金や雇用保険の基本手当が減額となる。
(3)導入の手続き
   企業が単独で年金規約を作成し、厚生労働大臣に承認を得る単独型と既に厚生労働大臣から承認され年金規約を持っている企業を代表事業主とし、当該制度の実施事業主として相乗り参加する統合型が有ります。導入には、労働組合の同意書や、就業規則の変更及び、選択制確定拠出年金規程の作成等が必要となります。

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2018年8月23日 木曜日

平成30年8月23日第464号

『改正民法』について(相続が変わる?!)


相続分野の規定を約40年ぶりに見直す改正民法など関連法が7月6日に成立しました。

1.配偶者居住権の創設(公布日から2年以内の施行)
住宅の権利を「所有権」と「居住権」に分割し、配偶者は居住権を取得すれば所有権が別の相続人や第三者になっても住み続けることが出来るようになりました。
この権利を公示するため「配偶者居住権」の登記制度を設け、建物の所有者は配偶者に対し登記義務を負うことになりました。
また、相続開始時に無償で居住していた場合、遺産分割協議が終了するまでか相続開始から6ヵ月のいずれか遅い日まで無償で住める「配偶者短期居住権」も設けました。
なお、被相続人が居住建物を配偶者以外の者(夫と長男など)と共有していた場合には配偶者居住権が発生しませんので、注意が必要です。

2.婚姻20年以上の配偶者の優遇策(公布日から1年以内の施行)
婚姻20年以上の夫婦で配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居は「遺産とみなさない」という意思表示があったとして遺産分割の対象財産から除外することになります。

3.自筆証書遺言の見直し
(1)財産目録については、パソコンで作成しても良いことになりました。(公布日から6ヵ月以内の施行)
(2)法務局が自筆証書遺言を保管する制度を作りました。この制度を利用した遺言書の検認は不要です。(公布日から2年以内の施行)

4.特別寄与者制度の創設(公布日から1年以内の施行)
相続権のない6親等内の血族と3親等内の配偶者が介護などに尽力した場合に、相続人に金銭を請求することが出来る制度を設けました。(事実婚、内縁等は除く)

5.金融機関における「仮払い制度」の創設(公布日から1年以内の施行)
遺産分割協議が終わる前に生活費や葬儀費用の支払いなどのために被相続人の預貯金を金融機関から引き出すことが出来る「仮払い制度」を創設しました。
仮払いをすることが出来るのは「被相続人の預貯金額×1/3×法定相続分」としますが、別途、法務省令で一行あたりの上限額について定めを設ける予定です。

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2018年8月 8日 水曜日

平成30年8月8日第463号

日本型司法取引について


改正刑事訴訟法の「司法取引」制度が、2018年6月1日から施行されました。事件解決に向け重要な供述を得るために活用される司法取引は、欧米諸国で広く採用されていますが、日本で導入される「司法取引」制度とは、どのようなものなのでしょうか。

1.司法取引とは
「司法取引」制度は、特定の財政経済犯罪及び薬物銃器犯罪(法第350条の2第2項各号の「特定犯罪」)について、検察官と被疑者・被告人が、弁護人の同意がある場合に、被疑者・被告人が、共犯者等他人の刑事事件の解明に資する供述をし、証拠を提出するなどの協力行為を行い、検察官が、その協力行為の見返りに、被疑者・被告人に有利に考慮し、これを不起訴にしたり、軽い罪で起訴したり、軽い求刑をするなどを内容とする「合意」ができるとし、このような両当事者間の協議・合意を通じて、他人の犯罪行為の訴追・処罰に必要な供述証拠等を獲得しようとするものです(法第350条の2以下)。

2.メリット
 ・被疑者らから真実を引き出すことができるのであれば真相解明に有効である。
 ・供述者の協力が得られるから、事件の迅速な処理を図ることができ、費用、時間と労力の節約になる。
・他人の犯罪に関する動機などの証拠が不十分な場合、確実な証拠を持っている者の刑を減免する約束で供述を得ると、他人の犯罪の発見が高められ、より重要な犯罪の捜査に役立つ情報が得られる。
・捜査機関が、被疑者・被告人の刑事処分に手心を加える代わりに、他人の犯罪を聞き出すことが容易になり、組織的犯罪等の解明に威力を発揮することが期待できる。
・密行性の高い組織的犯罪等について、首謀者や背後者などのような真に処罰すべき者を処罰することができる。

3.デメリット
・虚偽供述の可能性による冤罪が危惧される。(司法取引は、冤罪を惹き起こしやすい)
・被疑者・被告人が重罰を避けるため、あるいは自分の罪を軽くするために司法取引を行い、関係のない他人を巻き込んだり、犯罪の役割の軽い者に罪をなすりつけるように偽証したりする可能性がある。
・捜査機関は協力を取り付けようとし、他方、被疑者・被告人は特典の付与を期待するため、利害が一致しやすく、虚偽供述が一層起きやすくなることが懸念される。

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2018年7月23日 月曜日

平成30年7月23日第462号

シェアード会社による社会保険手続等の代行について


企業グループ内で主に経理や総務などの各社共通する業務を一つ企業に集約し、経費の削減や業務の効率をはかる経営手法をシェアードサービスといいます。そのために作られた会社をシェアード会社と呼びます。
日本国内では、2000年以降急速にシェアード会社が増え、特に従業員1万人以上、関連企業50社以上の大手製造業での導入比率が高いようです。シェアード化する部門は、経理・人事・総務・IT等の間接部門が大半を占めています。
ここでの注意点は、社会保険や労働保険の代行を業務として行うには、社会保険労務士または社会保険労務士法人の資格が必要だということです。社会保険労務士法第27条に「社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じて報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。」とあります。グループ会社内での行為であったとしても業として行う限りは当法律に抵触するものと思われます。
平成29年に厚生労働省主催で規制改革の一環として、グループ企業内でのシェアードサービスにおける「社会保険に関する手続」について各専門委員からヒアリング形式による検討会を開催しております。その時の議事録及び論点に対する回答書が内閣府のホームページに掲載されています。この回答が結論となるわけではありませんが、社労士もしくは社労士法人でないシェアード会社が社会保険等の手続業務の代行を業として行うには否定的な見解のように思われます。ただ、検討会の回数が進むにつれその雰囲気が多少変化しているようにも思われますが、この行為を肯定するには至りません。
社会保険や労働保険は、過去からの変遷を含んだ内容であり手続きであっても煩雑で難しい部分を含んでいます。また、労働者にとって生活に直結する重要なバックボーンとなっています。この制度の運用に過ちがあってはなりません。国がそれを行う者に対し知識の担保を求めることは当然であり必要なことと考えます。

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2018年7月 8日 日曜日

平成30年7月8日第461号

成年年齢の引き下げによる注意点


 平成30年6月13日、民法の成年年齢を、20歳から18歳に引き下げることなどを内容とする、民法の一部を改正する法律が成立しました。2022年4月1日に施行されますので、あと4年もしないうちに、成年の年齢は18歳ということになります。
 これによって、気をつけなければいけない点は何でしょうか?
1.有効な契約をすることができる年齢が18歳
 未成年者(18歳、19歳)が、契約といった法律行為をするためには、親権者の同意が必要です(民法第5条1項)。そのため、遠方の大学に進学して、アパートを借りるとか、ローンを組んで車を購入するといった場合には、親の同意が必要です。
そして、未成年者が親権者の同意を得ずに行った法律行為については、未成年者であることだけで取り消すことができました。(民法第5条1項)
しかし、成年年齢が引き下げられることにより、これらのことが学生でも単独で有効に出来るようになります。
消費者被害の拡大が懸念されているところですので、注意が必要でしょう。
2.親権に服することがなくなる年齢が18歳
成年年齢の変更により、18歳以上の子どもについては親権者を定める必要がなくなりますので、18歳以上の子どもについては親権を争う紛争は生じなくなります。
問題となるのは、養育費です。既に、離婚協議書などで養育費の取り決めをしている場合、その終期を「子が成人に達する月まで」という形で決められている場合には、作成時の20歳なのか、改正後の18歳なのかについて疑義が生じる可能性があります。
今後は特に、離婚協議書などで養育費を定める場合には、一義的に明確な終期(〇〇年〇月)を定めておくことが大切でしょう。
3.その他の改正
今回の改正から、女性の婚姻可能な年齢を引き上げ、婚姻開始年齢は男女とも18歳に統一されることになりました。

「成人」の定義が変わることで、学生であっても、責任を持った行動が問われることになります。親としても注意が必要になるでしょう。

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2018年6月23日 土曜日

平成30年6月23日第460号

2つの最高裁判決(同一労働同一賃金)


1.2つの待遇格差
 平成30年6月1日、正社員と非正社員との間の賃金格差が労働契約法第20条の禁
じる不合理な格差に該当するかという問題で、最高裁判所が初めて2つの判決を下しま
した。正社員と契約社員の待遇格差の問題(ハマキョウレックス事件)と定年前の正社
員と定年後再雇用の契約社員との待遇格差の問題(長澤運輸事件)でした。
2.判決の内容
 ハマキョウレックス事件の最高裁で争われたのは、住宅手当と皆勤手当でした。とも
に就業規則上正社員には支給され、契約社員には支給されないものとされていましたが、
この点について、最高裁は住宅手当の格差は不合理ではないとし、皆勤手当の格差は不
合理であると判示しました。
 その理由として、住宅手当は住宅に要する費用を補助する趣旨で支給されていること
から、転居を伴う配転が予定されている正社員は、就業場所の変更が予定されていない
契約社員に比べて住宅に要する費用が多額になりうることを挙げました。
一方、皆勤手当については、皆勤を奨励する趣旨で支給されていることから、職務内
容が異ならない正社員と契約社員とで差異が生ずるものではないとしました。
 長澤運輸事件の最高裁では、能率給及び職務給、精勤手当、住宅手当及び家族手当、
役付手当、超勤手当並びに賞与の格差が問題となりました。精勤手当と超勤手当につい
ての格差はハマキョウレックスと同様の理由で不合理であるとしましたが、それ以外に
ついては不合理でないとしました。
 その理由として使用者が賃金格差を縮める努力をしたことや定年後再雇用の契約社
員は老齢厚生年金を受給できることなどが考慮されました。
3.今後の企業対応
 今回の最高裁の判断は、支給項目の趣旨から個別具体的な判断をしており、事案によ
って結論は変わりうると思われます。今後法改正が行われ、行政の通達や指針という形
で最高裁判決の趣旨を踏まえた対応を使用者側に求めることが予想されます。企業の対
応としては、社員間の待遇差がある場合に予め理由を説明しておくべきでしょう。また、
手当を見直し、給与体系をシンプルにすることで、無用な労使紛争を起こさないことも
必要になってくると思います。今から検討を始めていきましょう。

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2018年6月 8日 金曜日

平成30年6月8日第459号

時間外労働の上限規制の導入


1.時間外労働の上限規制の導入 
働き方改革関連法案の1つとして時間外労働時間の上限規制の導入がされる予定です。働き方改革関連法案とは、8つの労働法の改正を行う、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の通称です。平成30年に国会に提出され、衆議院で審議が行われています。

2.現状
法定労働時間を超えて、時間外労働や休日労働をさせる場合、あらかじめ労使間で時間外労働の上限時間等を取り決め、「時間外・休日労働に関する協定届」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第36条)。その際の時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間です。
しかし、特別条項を適用させれば、臨時的な特別な理由がある場合に限り、年間6回までの範囲内で、月45時間を超えて時間外労働させても良いことになっています。特別条項を適用させた場合の年6回までの月の上限は青天井であり、実質的に無制限状態です。そのため、今回の法改正で規制されます。

3.変更内容
時間外労働の上限時間数は次のように制限されます。
<原  則>月45時間 年360時間(変更なし)
<特別条項>
次の全ての条件を満たす場合にのみ、特別条項が適用可能となります。
(1)月100時間以下(休日労働時間を含む)
(2)2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内
(3)年720時間以下
(4)月45時間を上回る月数は年6回まで(変更なし)

 法律が可決されれば、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されます。人材不足が叫ばれている昨今、時間外労働は簡単に削減できるものではありません。そのため、働き方の見直しや風土改革などが必要な場合は早めの対策をお勧めします。

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2018年5月23日 水曜日

平成30年5月23日第458号

国民年金法の新しい年金額改定ルールについて


1.年金額の自動改定 
年金額は改定率を改定することで毎年度自動的に改定されます。この、改定率の改定には、原則的な改定とマクロ経済スライドによる改定の2種類の方法があります。
(1)原則的な改定は、68歳に達する年度前の受給権者は名目手取り賃金変動率、
68歳に達する年度以後にある受給権者は物価変動率を基準として計算されます。ただし、名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回る場合は、全年齢に共通して同じ基準で変化の少ない方の基準で改定されます。
(2)マクロ経済スライドによる改定とは、賃金や物価の変動に加えて、被保険者の減少及び平均余命の伸びという年金財政にとってマイナスの要素を年金額に反映させる(以下「調整率」という)ものです。
   マクロ経済スライドは、賃金・物価が上昇した場合に行い、その際、上昇率が調整率を下回るときは年金額は据え置かれます。賃金・物価が下落した場合は、原則的な改定を行い、マクロ経済スライドは適用されません。
2.原則の改定率の算定式
 マクロ経済スライドによる年金額の調整期間における改定率の改定
(1)68歳に達する前の年度(以下「基準年度」という)の受給権者:
名目手取り賃金率×調整率(年金被保険者数変動率×平均余命伸率)×前年度からの特別調整率(前年度に調整できなかった繰越部分)
(2)基準年度以後の受給権者: 物価変動率×調整率×前年度からの特別調整率
調整率及び特別調整率を年金額に反映させ、賃金又は物価の上昇率を年金に反映させることにより上昇率を抑制した率が算出率となり、年金額が抑制されます。
3.平成30年度の国民年金額と年金額の新しい改定ルール
賃金が-0.4%、物価は+0.5%であったので、例外規定が適用され、年金額は前年度と同じになります。満額の国民年金は、年額779,300円です。
平成30年度から、年金額で過去に調整できなかった部分が繰り越され、累積されることとなりました。賃金・物価の変化によってマクロ経済スライドが適用された後でも更に下げる余地があるときは、累積部分を積み増しし、さらに年金額を押さえる仕組みが導入されます。つまり、マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない様に維持しつつ、賃金物価上昇の範囲内で前年度の未調整部分の調整を行うこととされました。

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2018年5月 8日 火曜日

平成30年5月8日第457号

『住居表示制度』について


市街地では、住所のほとんどは地番ではなく住居表示というものが利用されています。
1.住居表示とは
住所は、元々、地番を利用していましたが、土地を分筆や合筆することで、枝番・欠番・飛び番などが生じて、町がわかりにくくなったり、郵便の配達が遅れたりするなど様々な弊害が生じてきました。
そこで昭和37年に「住居表示に関する法律」を作り、建物に対して番号を付けることになり、この住居表示を住所とすることにしました。
2.住居表示の対象は
市街地を対象にしています。市街地の基準としては「4,000~5,000人/1平方kmの人口密度」とされています。
3.住居表示の方式
街区方式と道路方式の2つがありますが、道路網が整然としている京都市などを除き、ほとんどの市町村が街区方式を用いています。大阪市中央区の一部分でも道路方式を用いているところがあります。
街区方式とは、町の境界を道路・鉄道など恒久的な施設または河川・水路などにより区画し、その中の建物に住居表示のための番号を付けて表示することをいいます。
4.住居表示の方法
住居を表示するには、都道府県、市(区)、町村の名称ならびに町名、街区符号、住居番号を用います。(例:○市○区○丁目「町名」〇番「街区符号」〇号「住居番号」)
5.地番との違い
地番は、一筆ごとの土地に番号を付けたものです。不動産の登記簿謄本「登記事項証明書」を取得する際には、この地番が必要になります。
住居表示が実施されていない地域や、住居表示が実施されている地域でも区画整理事業が実施されたりしている地域では、地番と住所が同じということもあります。
6.住居表示実施基準
住居表示を実施する基準(街区符号を振る基準など)は、各市町村が定めています。
ちなみに、大阪市は「大阪城」、堺市は「宿院」を基準としています。
(大阪城に近いところを起点として街区符号を順序よく付けています。)

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2018年4月23日 月曜日

平成30年4月23日第456号

持ち帰り残業の労働時間該当性


自宅での労働は労働時間に該当するのか
会社が労働時間短縮を促進するため退社時間を早めたため、帰宅後や休日に自宅で業務を処理する社員がでてきました。その社員に対し、時間外労働、深夜労働、休日労働として取扱い、賃金の支払い対象の労働時間に該当するのかという点が問題となりました。
労働基準法上「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」と定義されています。
そこで、自宅で行った仕事が使用者の指揮命令下のもとになされたか否かを考える必要があります。自宅で「仕事」を行えばどのようなものでも当然に指揮命令下にあると判断されるものではありません。労働者が労務を提供する時間という事ではなく、使用者の指揮命令下で行われることが必要だからです。そうしますと、たとえば、自宅での業務がどのようになされているのかを考えてみます。
(1)テレビやパソコンで動画を観ながら行っている。
(2)いつ仕事を行うか、いつ仕事を終えるのかも本人次第である。
(3)食事をしながら、場合によってはビールを飲みながら作業を行う。
このようなことを踏まえると、自宅での「仕事」は、会社に出社した状態での勤務とは大きく異なることが明らかでしょう。そうすると、原則として、自宅で「仕事」を行ったとしても使用者の指揮命令下におかれたものとは言えないと考えられ、労基法上の労働時間ではないと考えられるため、時間外手当、深夜労働手当及び休日労働手当を支払う義務はないと考えます。
しかし、上司が部下に自宅で仕事を完成させるように指示した場合や、携帯電話や電子メールで上司が自宅にいる部下に対し、作業を指図している等の事実関係があった場合には、指揮命令下にあるものと考えられ、労働時間と判断されることが多くなります。もし、そのような社員がいる場合には、管理職等からどのような経緯で社員が自宅で仕事を行ったのかを確認する必要があります。
また、業務を持ち帰っていることを知りながら、その行為を黙認するような場合は、労働時間と判断される可能性が高くなり、社員が健康を害した場合の労災や損害賠償のリスクも使用者側に生じることがあるので注意しましょう。

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2018年4月 8日 日曜日

平成30年4月8日第455号

有機契約労働者の無期転換について


1.現状
平成24年に改正された労働契約法第18条は、有期契約で働いている労働者を反復契約し5年を超えて雇用すると労働者の希望に基づき、無期契約での雇用に転換することが記載されています。平成25年4月以降に締結された有期契約から対象となり、早ければ今年の4月から無期転換が発生します。企業によっては、最近の求人状況等を考慮し有期契約を無期契約へ積極的に切替えることで労働者の囲い込みを進めている会社もでてきています。規模の大きな企業ではこうした積極的な雇用方針の変更を探る会社も見受けられますが、中小企業においては、無期転換への対応策がまだ定まらないでいる会社が多いのではないでしょうか。
正社員は既存の定年制度によって雇用の終了が決められていますが、「無期転換ルール」に基づき、雇用の終着点が無くなった労働者を企業側としてどう対応するかを定めなくてはなりません。自社の雇用状況をよく理解し役割と待遇に不合理性が無く、差異に対してはきちんと説明できる就業規則とする必要があります。第18条では無期契約期間とする旨の記載であり、他の条件の変更を要求しているものでないからと、無期転換者の労働条件を個別の雇用契約で定めたとしても、正社員の就業規則に劣る内容であれば第12条により雇用契約の定めは無効となり就業規則の定めが適用されます。
また、無期契約転換の申入れは口頭でも成立しますが、後々のリスク回避を思えば無期転換権について会社側から労働者へ事前に周知しておくべきです。有期社員用就業規則があればそこに、無ければ有期雇用契約書に無期転換申込の手続きを明記し周知しておくのが良いでしょう。労働者に無期転換申込の権利を放棄させる誓約書等を書かせたとしても、これは法の趣旨に反するものとして無効となる可能性が高いと思われます。

2.対応策
勿論、企業ごとに雇用されている労働者の状況によるところが大きいのでしょうが、一般的には、第二定年制を取入れている企業が多いです。その場合、第二定年を何歳で設ければよいかは、有期契約者の人数や年齢層さらに正社員の定年年齢との比較等をした上で定めることになります。場合によっては、第三・第四の定年制を設けることもあり得るやもしれません。

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2018年3月23日 金曜日

平成30年3月23日第454号

民法改正による保証債務の変更


1.保証契約について

民法改正(2020年4月1日施行)によって、保証契約に大きな変更があります。
例えば、不動産賃貸をしている方であれば、借主が家賃を滞納した場合のために保証人
をたててもらうのが通常です。
このとき、多くの場合「根保証契約」をしています。
このような根保証契約の典型は、銀行と事業者との貸金取引など継続的な取引契約が
結ばれる場合です。この根保証契約は、例えば、100万円借りる際に保証人になった
ところ、その後追加で借りた1000万円まで責任を負うことを知ってトラブルになっ
てきたというような経緯があります。
そこで、平成16年の民法改正では、こういった貸金等根保証契約について保証人保
護のための規定が設けられました。
しかし、不動産の賃貸借から生じる賃借人の賃料債務の保証に関する「根保証契約」
については規定がなく、トラブルになる事例もありました。
(雇用契約における身元保証も、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とするので、根保証契約に当たりますが、身元保証については、昭和8年に身元保証に関する法律が制定されています)
それでは、実務への影響が大きいと思われる改正部分について見ていきましょう。

2 個人根保証における極度額の設定義務

改正法により、極度額を書面で定めなければ、その効力を生じないとされます(新法第465条の2以下)。
「極度額」とは、保証人が負う責任の上限額のことです。
個人根保証契約の場合は、この極度額を、書面で定めなければ、契約自体が無効とな
ってしまいます(保証会社のような法人であれば大丈夫です)。
この書面は、公正証書である必要はなく、契約書で足ります。
つまり、改正後は、賃貸借契約において賃借人の親族などの個人に根保証を求める場
合には、契約書の中で極度額を定めておかなければならないということになります。
この極度額は、一定の金額を定めておく方法や、賃料の2か月分といった定めであっ
ても、賃料の額が特定されていて上限額を確定できるのであれば有効です。

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2018年3月 8日 木曜日

平成30年3月8日第453号

労働生産性の国際比較からみる働き方改革


1.働き方改革
  「働き方改革」という言葉を聞かない日がないほどニュースなどで見聞きするようになりました。政府によれば、「働き方改革こそが、労働生産性を改善させるための最良の手段である。」としています(平成29年3月28日付、働き方改革実行計画より)。労働生産性を向上させることによって、企業は収益力を向上させ、労働者はその収益の分配を受けることにより所得の拡大、ワークライフバランスの実現ができ、日本の経済成長が達成される好循環が期待されているのです。
2.労働生産性の国際比較
  日本は、国際的に労働生産性が低いと言われますが、では労働生産性とはどのようなものなのでしょうか。
  労働生産性は、一般に就業者1人当たり、あるいは就業1時間当たりの成果(GDP)で比較されます。労働生産性=GDP/就業者数(または就業者数×労働時間)
  公益財団法人日本生産性本部の発表によると、平成28年の日本の就業者1人当たりの労働生産性はOECD加盟35ヵ国中21位で米国の概ね2/3程度の水準です。詳しくみると、上位の国には法人税を下げることで多国籍企業の本社機能を自国に移転させた結果GDPを押し上げている例もあり、外国の労働者が日本の労働者よりも効率的に働いているとは一概に言えない部分はありますが、このまま何も手を打たなくてもよいとは決して言えないでしょう。
3.今後の課題
 労働生産性を向上させるためには、上の式からわかるように分母のGDPを上げるか分子を小さくすることしかありません。日本のGDPは最近20年ほとんど拡大していませんから、まず分子を小さくする方策として政府が労働時間法制の改革に着手しているというのは理解できます。
 しかしながら、前述の発表では分母を小さくするための業務効率化はある程度までいくと改善が難しくなると指摘しています。労働力を小さくしながら今までと同様の成果を生み出して生産性を上げ続けようとしても限度があるからです。そうだとすれば、今後は分子拡大のためのイノベーションがやはり必要となってくるでしょう。
 これを企業単位でみると、効率的な労働時間制度の導入や無駄を削減するための業務改善は必要ですが、それよりも新しい製品やサービスを生み出しやすい人事制度や企業風土の醸成にもっと注力すべきではないでしょうか。

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2018年2月23日 金曜日

平成30年2月23日第452号

労災保険の特別加入制度


1.特別加入制度創設の背景
昭和22年に労働基準法とともに、制定された労災保険法は労基法第75条以下の災害補償と同一内容・同一水準の補償内容を規定し、労災保険から給付が行われるべき場合、使用者の災害補償責任は原則免責されることから、労基法と労災保険法は、姉妹法であるともいわれていました。しかし、昭和30年代中頃より、労災保険法は数次の改正によって、しだいに労基法から乖離するとともにその独自性を強めるようになり、人的適用範囲の拡大として、昭和40年特別加入制度の創設、昭和51年海外派遣者の特別加入制度が導入されました。
2.特別加入制度とは?
   労災保険は「労働者」を一人でも使用している事業には、その業種・規模に関係なく強制適用されます(任意適用事業を除く)が、特別加入制度は、いわゆる労基法で保護の対象としない「労働者以外の者」を保護の対象とする制度で、次のような方が特別加入者となります
(1)中小事業主などの特別加入
金融業、保険業、不動産業、小売業で常時従業員50人以下、卸売業、サービス業で常時従業員100人以下、その他の業種にあっては常時従業員300人以下の事業主が加入できます。また、家族従事者や法人の代表者以外の役員等も包括加入できます。ただし、「労働保険事務組合」に事務を委託していることが条件です。
(2)一人親方などの特別加入
一人親方とは建設業の事業主のイメージですが、他に個人タクシ―業者など職業ドライバー、自営農作業者(加入対象事業場、加入対象作業などの加入要件があります)、労働組合などの一人専従者、家内労働者などが加入できます。ただし、都道府県労働局長の承認を受けた「特別加入団体」を通じて加入ができます。
(3)海外派遣者の特別加入
国内の事業場から、国外の事業場へ「派遣」される労働者が対象となります。
3.まとめ
   事業主、法人代表だから、労災は加入できないとお考えの方、特別加入制度に加入すると労働者とほぼ同内容の労災補償が受けられます。ただし、一人親方などには、一部通勤災害が適用されない業種がありますが、一度検討されては如何でしょうか。

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2018年2月 8日 木曜日

平成30年2月8日第451号

教育訓練給付の改正について


教育訓練給付が手厚くなります。政府は労働力の質的向上を図り、一億総活躍社会の実現を掲げています。労働者の中長期的なキャリアアップを、より一層支援するため、教育訓練給付の受講機会の拡大、専門実践教育訓練給付金の拡充及び、教育訓練支援給付金の充実等の改正が行われ、平成30年1月1日から施行されています。
受講延長措置の改正
妊娠、出産、育児等により引き続き30日以上教育訓練を開始できない場合の受講開始期間の延長措置の期間が4年間から最長20年に延長されました。これは、一般被保険者及び、高年齢被保険者でなくなった日から1年(受講開始の延長措置を受ける場合は最長20年)以内にある人又は、教育訓練を開始した日に一般被保険者、高年齢被保険者である人に適用されます。
専門実践教育訓給付金の拡充
(1)支給要件期間の緩和
   専門実践教育訓練を受け、終了した場合(終了とみなされる場合を含む)に支給されますが、この支給要件期間が雇用保険の被保険者だった期間が10年以上から、3年以上(初回の2年以上は変更なし。)に緩和されました。
 (2)給付水準の引き上げ
   受講中の給付率が受講費用(入学料及び受講料)の40%から50%に、上限額が合計96万円から120万円,年間上限額は、32万円から40万円に引き上げられました。
    資格取得等をし、受講終了日の翌日から1年以内に一般被保険者又は、高年齢被保険者として雇用された場合は、さらに、追加支給として20%、上限48万円が支給されます。追加支給と合わせると、給付率は70%、上限額は168万円、年間56万円となります。
教育訓練支援給付金の充実
 教育訓練給付を受けている人が失業している場合に支給されます。ただし、一般被保険者の資格喪失後1年以内に専門実践教育を開始し、45歳未満でありかつ、初めて教育訓練給付金の支給をうける等の要件をすべて満たすことが必要ですが、支給額が基本手当日額の50%から80%に引き上げられました。
 教育訓練給付金は、労働者の能力向上に役立つばかりでなく、事業所にとっても業務拡大に有効です。ただし、受給するには細部要件の確認が必要ですので、専門家に相談してください。

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2018年1月23日 火曜日

平成30年1月23日第450号

『買戻特約について』

登記簿謄本で記載されているときがある『買戻特約』とは、どのようなものでしょう?
1.買戻特約とは?
買戻特約とは、売主が売買代金と契約にかかった費用を買主に返して、一旦、売却した不動産を買い戻すことです。買戻権は売買契約と同時に特約の形で行います。
2.買戻しの要件
(1)目的物は不動産に限定されます。
(2)買戻しの特約は売買契約と同時にしなければなりません。
(3)買戻代金は売買代金と契約費用を超えることが出来ません。
(4)買戻しの期間は10年を超えることが出来ません。
(ア)10年を超えるときは10年とします。
(イ)期間を定めたときは、その後にこれを伸長することが出来ません。
(ウ)期間を定めなかったときは、5年以内に買戻しをしなければなりません。
3.買戻しの効力
(1)買戻特約を第三者に対抗するためには、売買による登記と同時にその特約を登記
しなければなりません。
(2)買主から不動産を貸借して登記をした者については、その残存期間中、1年を超
えない期間に限って、売主に対抗することが出来ます。
(3)買戻権の譲渡
(ア)登記された買戻権は、買戻権移転の登記をすれば、買主への通知は不要です。
(イ)登記されていない買戻権は、買主に対抗するには債権譲渡の方法によります。
4.買戻しが利用されるケース
(1)公的機関(市町村や住宅供給公社など)が宅地分譲するときに、一定期間転売を禁止したり、利用目的を限定したりすることがあり、これらを守らなければ買い戻すという特約をつけることがあります。
(2)買戻特約付売買という形で、買戻し期間までに売買代金を返済すれば、不動産を買い戻すことが出来るようにするという手法で、融資の担保として利用されることがありますが、債権者からすれば、売買代金と契約費用だけで買い戻されては、あまりメリットがないので、利用は限られているようです。

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2018年1月 8日 月曜日

平成30年1月8日第449号

大人の発達障害


昨今、マスコミ等で「大人の発達障害」について
取り上げられることが増えてきました。


全国の発達障害者支援センターに
寄せられる発達障害に関する相談は

平成17年度が
12,826件であったのに対し、

平成28年度は63,172件と
約4.9倍に増加しています。


同センターには児童や生徒の養育等に
関する相談も持ち込まれますが、

着目すべきは就労支援に関する相談が
この間に24.7倍に増えている点であり、

就業や就業継続に困難を感じるいわゆる
「大人の発達障害」が増えている証拠と言えます。



発達障害の代表例の主な特徴


1.自閉症、アスペルガー症候群を
含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)


・相手の表情や態度などよりも、
文字や図形、物の方に関心が強い。


・見通しの立たない状況では不安が強いが、
見通しが立つ時はきっちりしている。


・大勢の人がいる所や気温の変化などの
感覚刺激への敏感さで苦労しているが、
それが芸術的な才能につながることもある。


2.学習障害(限局性学習障害)


・「話す」「理解」は普通にできるのに、
「読む」「書く」「計算する」ことが、
努力しているのに極端に苦手。


3.注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害)


・次々と周囲のものに関心を持ち、
周囲のペースよりもエネルギッシュに
様々なことに取り組むことが多い。


4.その他の発達障害


・体の動かし方の不器用さ、
我慢していても声が出たり
体が動いてしまったりするチック、

一般的に吃音と言われるような話し方なども、
発達障害に含まれる。


発達障害は、職務や作業について
抽象的な指示が理解できなかったり、

一度に複数のことを指示されると
混乱するなど、職務課題はあります。


これらの特徴を把握し、本人が自分の特性に
一定の理解を持つことを促し、

本人を良く知る専門家や家族に
サポートのコツを聞くことなどが、
就労を受け入れる側に不可欠な配慮です。

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2017年12月23日 土曜日

平成29年12月23日第448号

高額療養費制度と限度額適用認定証


医療費が高額になった場合には、
健康保険の高額療養費制度を使うと

自己負担限度額を
超えた分が戻ってきます。


でも一旦は請求の全額を
病院へ支払う必要があります。


これは被保険者にとって負担が
大きく高額になるほど大変です。


保険者から還付されるのも
3~4ヵ月も先になります。


そこで、

「限度額適用認定証」を事前に
取得し病院へ提示することで、

病院窓口での支払いである
療養費が高額になっても

自己負担限度額で
済むことができます。


今回は、

高額療養費制度と
限度額適用認定証について

簡単に説明します。


1.高額療養費制度


高額療養費とは、

同月内に同一病院
(入院と通院は別さらに歯科と歯科以外は別)で

支払った医療費
(差額ベッド代や食事代、保険外負担分を除く)が、

自己負担限度額を超えた場合に
申請することで払い戻しされる制度です。


あるいは、

同一世帯内で上記条件で支払った医療費が、
自己負担限度額を超えていなくても

21,000円以上であれば、
世帯内で合算し自己負担限度額を

超えた差額が申請することで
払い戻しになります。


さらに、

70歳上の方の場合には、
21,000円以上という
制限が無くなります。


自己負担限度額は、
被保険者が70歳未満の場合は

所得状況により5段階に、
70歳以上は3段階に分かれます。

(但し、75歳以上は後期高齢医療制度が適
用されますので当制度は適用されません。)


また、療養を受けた月以前12ヵ月以内に、
同一世帯で高額療養費の支給を

3回以上受けた場合は、
多数該当となり

自己負担限度額がさらに
低くなることがあります。


2.限度額適用認定証


入院・手術等で医療費が
高額となることが事前に分かっていれば、

70歳未満の場合、
申請書を保険者へ提出し

「限度額適用認定証」を発行してもらって
病院へ提示することで、

どんなに高額な療養費となっても、
病院への支払いは自己負担限度額以内となります。

70歳以上の場合は、
「限度額適用認定証」の代わりに

「高齢受給者証」を提示することで
同様の扱いとなります。

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2017年12月 8日 金曜日

平成29年12月8日第447号

事業承継を促す施策


1. 事業承継5ヵ年計画


中小企業庁では、
今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間とし、

支援体制、支援施策を抜本的に強化する、
としています。


その施策は主に5つです。

(1)事業承継プレ支援の
プラットフォームの構築・・・

5年間で25~30万社を対象に
プッシュ型の事業承継診断を実施


(2)早期承継の
インセンティブの強化・・・

後継者による新機軸・業界転換等の
経営革新を支援・事業計画作成支援等


(3)小規模M&Aマーケットの形成・・・
事業引継ぎ支援センターの強化等


(4)サプライチェーン・地域における
事業統合等の支援・・・

中小企業の事業再編・統合・共同化を
促進する制度的枠組みの検討等


(5)経営スキルの高い人材を
事業承継支援へ活用・・・

経営人材の後継者不在企業への
参画を促進するための

人材紹介会社と
事業引継ぎ支援センターとの連携等



2.プラットフォーム構築事業


事業承継ネットワークを
2年かけて全国に展開し、

事業承継診断を
実施しようとしています。


地域の将来に責任を有する都道府県の
リーダーシップのもと、

地域に密着した支援機関
(よろず支援拠点・事業引継ぎ支援センター・
金融機関・商工会議所・商工会・各士業等)を

ネットワーク化し、途切れのない
事業承継支援が出来るように取り組んでいます。


実際に、各都道府県でネットワーク
構築事業が進んできており、

勉強会の開催、地域
の専門家リストの作成がされてきております。



3.この2年は掘り起こしの年


まずは、事業承継の必要性に経営者が
「気づく」ことが大切とされ、

今年、来年の2年間は、
支援機関側から中小企業を訪れて

事業承継診断をしていただき(プッシュ型支援)、
その必要性に気づいて戴くことに力を入れています。


中小企業の経営者に普段接触のある
士業等の支援者の方、また、

中小企業の経営者の方には、
是非意識して戴けたらと思います。


事業承継ガイドライン(平成28年12月公表)では、
60歳を事業承継の着手時期と考えています。

事業承継の促進のため,必要な費用に関する
補助金は来年以降も継続されそうです。

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2017年11月23日 木曜日

平成29年11月23日第446号

期間の計算

1.問 題

契約書の中で、
「〇ヵ月間」という表記で期間を定めるとき、

例えば4月30日から3ヵ月間という場合、
契約の期間満了日はいつになるのでしょうか。


契約書を作成する上で普段あまり
意識していないかもしれませんが、

場合によっては契約違反に
問われかねない非常に重要な問題です。


では、
(1)7月29日

(2)7月30日

(3)7月31日

のどれが正解でしょうか。


2.法律の根拠

以下の条文が法律上の根拠となりますが、
これを使って考えてみましょう。

民法第140条(期間の起算)
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、
期間の初日は、算入しない。

ただし、
その期間が午前零時から始まるときは、
この限りでない。


民法第143条(暦による期間の計算)
1 週、月又は年によって期間を定めたときは、
その期間は暦に従って計算する。

2 週、月又は年の初めから
期間を起算しないときは、
その期間は、最後の週、月又は年において
その起算日に応当する日の前日に満了する。

ただし、
月又は年によって
期間を定めた場合において、
最後の月に応当する日がないときは、
その月の末日に満了する。


3.解 答

まず起算日を考えます。

民法第140条の初日不算入の原則から、
5月1日が起算日となりそうですが、

通常契約書は事前に作成されるため、
4月30日の午前零時から
カウントすることが可能で、
同条但書により4月30日が起算日となります。


次に期間満了日です。

その応答(「対応」くらいの意)する日(7月30日)の
前日である7月29日が
3ヵ月の契約期間満了日となり、
正解は(1)です。


しかし、
4月30日に契約を結び、
その日から3ヵ月の契約とした場合、

午前零時から始まらないので、
初日不算入の原則により起算日が5月1日となり、

応答する日(8月1日)の前日である
7月31日が期間満了日となります。


さらに、
2月のように最後の月に応答する日が
ない場合には月末を満了する
(民法第143条2項但書)
ことや

月末が日曜日や国民の祝日等にあたるときで
取引をしない商慣習がある場合には
その翌日に満了する(民法第142条)ことがあり、

考えてみると意外に
難しいことがわかると思います。


この機会に契約書を見直して
みてはいかがでしょうか。

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2017年11月 8日 水曜日

平成29年11月8日第445号

LGBT施策の推進について


1.近年の傾向

「LGBT」という言葉をご存じですか?

同性愛者のレズビアン(L)やゲイ(G)、
両性愛者のバイセクシャル(B)

心と体の性が一致しないトランスジェンダー(T)
の頭文字をとった総称です。


近年は国際人権法などの議論で
「SOGI」(ソジ)という呼称が使われ始めました。


日本では、「パートナーシップ証明」や
「パートナーシップ宣誓」、

「パートナーシップ登録」といった言葉が
ニュースにしばしば登場するようになりました。


2015年11月、同性カップルなどの
当事者の二人がパートナーであることを示す

パートナーシップ証明を渋谷区が発行するサービスを
開始したことは記憶に新しいと思います。


他に世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、
沖縄県那覇市、北海道札幌市などの
自治体も証明を発行しています。


2.雇用におけるハラスメント対策

1985年に制定された男女雇用機会均等法は、
2007年の改正には女性に対する

セクシュアル・ハラスメントだけでなく
男性に対するセクシュアル・ハラスメントも
対象としました。

2016年に改正された厚生労働省

「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に
関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」

においては、

「職場におけるセクシュアル・ハラスメントには、
同性に対するものも含まれる。

また被害を受けた者の性的志向又は性自認に関わらず、
当該者に対する職場における

セクシュアル・ハラスメントも、
本指針の対象となるものである。」

ということが明言されています。


したがって、

事業主が性的言動によって
就業環境が害されることのないよう

講ずべき措置には性的少数者に
対するものも含まれると解されます。


3.企業対応

取り組みとしては、性的指向や自認を事由とする
解雇・いじめ、自認する性別の服装での出勤の可否、

社員旅行、トイレ利用等への相談窓口の設置、
福利厚生の見直し等、が考えられます。

また、取り組まないと、人格権侵害としての
損害賠償義務やその使用者責任、

また職場環境配慮義務違反という法的リスクや、
当事者、非当事者の生産性やモチベーションの低下、

職場への忠誠心の減少という悪影響をもたらします。


従業員に気持ちよく働いて、
職場で能力を十分に発揮してもらえるよう、

是非とも管理職や労務担当者だけでなく、
社員にもきっちりとした正しい
基礎知識を学ぶ機会を設けましょう。

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2017年10月23日 月曜日

平成29年10月23日第444号

労災請求書の記入上の留意点について


10月1日から7日まで
厚生労働省等の主催で全国衛生週間が設けられ、

「働き方改革で見直そう みんなが輝く 健康職場」をテーマに
安全衛生に関する行事が全国で開催されました。


安全な労働環境を作ることが
企業の発展には不可欠ですが、

勤務中に災害が発生した場合は
労災保険にて治療することになります。


労災保険の様式は
種類別に用意されていますが、

不完全に記入されると給付が
遅れますので注意が必要です。


労災保険の留意点

(1)
「療養補償給付たる療養の給付請求書」
の記入について

(ア)
労災保険で治療を受ける際に
病院経由で所轄の労働基準監督署へ
提出する書類です。

業務起因性と事業主の支配下にある
業務遂行性の2要件が求められます。

治療費、入院料、移送費等通常の
療養のために必要なものが対象ですが、

負傷者の判断で薬局で購入した
包帯や湿布薬は対象外です。


(イ)
様式の上部にある労働保険番号は
必ず記入します。

治療中に事業所の労働保険番号が
変更になった場合でも、
受傷時の番号を記入します。

氏名の下の職種の欄は
具体的に記入します。

例えば、
「薬品製造業の製品検査員」等
分かりやすく記入しましょう。

(ウ)
災害発生状況欄は、場所、作業内容、
作業状態と事故発生の因果関係を
具体的に記入します。

既往症が有る場合や、
従前からの負傷は対象外ですが、

審査で認められれば、
業務が原因で悪化した部分は
労災保険の対象になります。

しかし、左足を負傷し、
それをかばう行為で右足が
負傷した場合の右足は、

業務との因果関係がないため、
対象とされません。


(エ)
事業主の証明欄は、発生した災害が
業務による災害であると事業主が認めて社
印を押印する欄です。

  
(オ)
最下段の療養の給付を請求する、
住所、氏名の記入欄は労働者が記入します。
署名のみでなく必ず押印してください。

  
(カ)
派遣労働者の場合は、
事業主欄は派遣元であり、

派遣先の事業主は裏面
の証明欄に押印します。
  
(キ)
裏面にある削除・加筆の捨印欄は、
記入上に訂正した本人の印を使いますので、
事業主印、本人印等です。


(2)
労災保険に使用する各様式は、
厚生労働省のホームページから
ダウンロードできます。


事業所にあらかじめ揃えておくことをお勧めします。

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2017年10月 8日 日曜日

平成29年10月8日第443号



『法定相続情報証明制度』について


5月29日から、
相続手続を簡素化する
『法定相続情報証明制度』が始まりました。


1. 制度の概要

(1)相続人が登記所に対し、
次の書類を始めとする必要書類を提出する。

(ア)被相続人が生まれてから
亡くなるまでの戸籍関係の書類等

(イ)上記の書類等の記載に基づく
法定相続情報一覧図

(被相続人の氏名・最後の住所・生年月日
及び死亡年月日並びに相続人の氏名、

生年月日、及び続柄/登記に
利用するものとは様式や内容が異なる。)

(2)登記官が内容を確認して、
認証文付きの法定相続情報の
一覧図の写しを交付する。


2. 手続の流れ

(1)申出(法定相続人又は代理人)

(ア)戸籍謄本・除籍謄本等を収集する。

(イ)法定相続情報一覧図を作成する。

※放棄や遺産分割協議は対象外とする。
※数次相続の場合は、1人の被相続人ごとに作成する。

(2)確認・交付(登記所)

(ア)登記官による確認と
法定相続情報一覧図を保管する。

(イ)認証文付き法定相続情報一覧図の
写しの交付を受ける。


3. その他

(1)不動産がない場合でも利用可能。
必要な範囲で複数通数発行可能。

(2)代理人となることが出来るのは、
法定代理人のほか、民法上の親族と資格者代理人。

(弁護士・司法書士・土地家屋調査士・
税理士・社会保険労務士・弁理士などに限る。)

(3)登記所の管轄は次の通り。
郵送による申出も可能。
(登記官の交付手数料は無料。)

(ア)被相続人の本籍地

(イ)被相続人の最後の住所地

(ウ)申出人の住所地

(エ)被相続人名義の不動産の所在地

(4)5年間は再交付可能。
但し、当初の申出人に限る。

(5)被相続人や相続人が日本国籍を
有しないなど戸籍謄抄本がない場合は利用不可。

(6)死後認知や、制度利用後に
廃除があった場合等は再度、申出が出来る。

(7)登記申請と同時でない場合は、
出生からの証明が必要。

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2017年9月23日 土曜日

平成29年9月23日第442号

改正育児・介護休業法のポイント


平成29年1月1日に施行されました
育児・介護休業法がさらに改正され、
10月1日から施行されます。

以下改正のポイントをご紹介いたします。


1.保育所に入れない場合など、2歳まで育児休業が取得可能に


育児休業期間は、原則として子が1歳に達するまで、
保育所に入れない等の場合に、

例外的に子が1歳6ヵ月に達するまで延長できましたが、
子が1歳6ヵ月に達する時点で、

次のいずれにも該当する場合には、
子が1歳6ヵ月に達する日の翌日から

子が2歳に達する日までの期間について、
事業主に申し出ることにより、
育児休業をすることができるようになります。

(1)育児休業にかかる子が
1歳6ヵ月に達する日において、
労働者本人又は配偶者が育児休業をしている場合

(2)保育所に入所できない等、
1歳6ヵ月を超えても休業が特に認められる場合

この2歳までの休業は、
1歳6ヵ月到達時点でさらに
休業が必要な場合に限って申出可能となり、

原則として子が1歳6ヵ月に達する日の翌日が
育児休業開始予定日となります。

1歳時点での延長は子が1歳6ヵ月に達する日までです。
ご注意ください。
育児休業給付金の給付期間も延長した場合は、
2歳までとなります。


2.子どもが生まれる予定の方などに
育児休業等の制度などをお知らせ


事業主は、労働者もしくはその配偶者が
妊娠・出産したことを知ったとき、

又は労働者が対象家族を
介護していることを知ったときに、

関連する両立支援制度について
個別に制度を周知するための措置を
講ずるよう努力しなければなりません。

この措置は、
労働者のプラバイシーを保護する観点から、

労働者が自発的に知らせることを
前提としたものである必要があります。

そのためには、
労働者が自発的に知らせやすい職場環境が重要であり、

相談窓口を設置する等の育児休業等に関する
ハラスメントの防止措置を事業主が講じている必要があります。


3.育児目的休暇の導入促進


事業主は、小学校就学までの子を
育てながら働く方が子育てしやすいよう、

育児に関する目的で利用できる休暇制度を
設ける努力義務が創設されます。

「育児に関する目的で利用できる休暇制度」とは、
配偶者出産休暇や、入園式、卒園式などの

行事参加も含めた育児にも利用できる
多目的休暇などが考えられますが、

失効年次有給休暇の積立による
休暇制度の一環として

「育児に関する目的で利用できる休暇」を
措置することも含まれます。

各企業の実情に応じた整備が望まれます。

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2017年9月 8日 金曜日

平成29年9月8日第441号

働き方の改革について


昨年、厚生労働省は、
約20年後の2035年頃を見据えて多様な働き方に向け、

有識者による懇談会を開催し、
「働き方の未来2035~一人ひとりが輝くために~」と
題した報告書をとりまとめました。

今回はその報告書の提言内容を簡略に紹介します。


1.技術革新は、大きなチャンスをもたらす

AI等の技術革新により働く場所や時間の制約を無くし、
充実感のある働き方を求め、

障害があってもすべての人が、
より自由で自律的である働き方を可能とします。


2.チャンスを生かすには、新しい労働政策の構築が不可欠

企業の変容スピードが速くなり
機動的に変化せざるを得なくなっています。

働くという活動に対して民法(民事ルール)も
根本に立ち返っての検討が必要です。


3.働き方の変化に伴うこれからのコミュニティのあり方

コミュニティにおいてもその担い手が
企業から居住地域へと変遷し、
働く人の意識も会社から職種へと変化します。

また、

SNSやAI、VRなどの技術革新も多様な働き方を
支援できるように進化していくことが求められます。


4.人材が動く社会と再挑戦可能な日本型セーフティネット

個人が望むより良い働き方ができるようにするための
セーフティネットを日本の実態に合わせて
充実させていくことが必要です。

人材が企業間を動いていくことを積極的に捉える視点と、
やり直しや再挑戦を可能とする仕組みを
政府は整えていく必要から、
職業教育や訓練を充実していくべきです。


5.働く人が適切な働き場所を選択できるための情報開示の仕組み

働き方の選択にあたっては、
必要な情報が比較可能な形で提供されるための
枠組みづくりが求められます。

企業は「どんな働き方を求めるか」を正確に提示し、
働く人が簡単にそれを入手し、

比較検討可能な情報プラットホームを
整備することが重要です。


6.これからの働き方と税と社会保障の一体改革

働き方に関する変化と多様性をできるだけ妨げないような、
税と社会保障のあり方を考えていく必要があります。

例えば、

男女が共に働くことが一般的となっていくことを考えると、
世帯主が配偶者を扶養することを
前提とした家族を単位とする社会保障制度を、
個人単位に置き換えることも重要になるでしょう。


7.早急に着実な実行を

こうした変化が、
働くすべての人に恩恵をもたらすためには、

新しい労働政策を考え、
構築していく必要があります。

しかし、

法律や制度の変更には、
かなりの時間を要することを考えると、

早急かつ着実に労働政策のあり方を
検討していく必要があります。

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2017年8月23日 水曜日

平成29年8月23日第440号

障害者虐待防止法への対応


「障害者虐待の防止、障害者の擁護者に対する支援等に関する法律」
(以下、「障害者虐待防止法」という)
をご存知でしょうか。


障害者虐待防止法ができた背景には、
障害者のもつ特性に対する周囲の理解不足や、

本人の成長を願ってちょっとした
「注意」や「指導」が、
「暴言」や「無視」に発展したり、

心理的虐待や身体的虐待などにつながったりする
可能性があるという点があります。


1.虐待の定義(障害者虐待防止法第2条第8項第1号から5号)

(1)身体的虐待
 障害者の身体に外傷が生じ、
もしくは生じるおそれのある暴行を加え、
または正当な理由なく障害者の身体を拘束すること

(2)性的虐待
障害者にわいせつな行為をすることまたは
障害者をしてわいせつな行為をさせること

(3)心理的虐待
障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な
対応または不当な差別的言動その他の障害者に
著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

(4)放置等による虐待
障害者を衰弱させるような著しい減食または
長時間の放置、当該事業所に使用される他の
労働者による上記3つの虐待行為と同様の
行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと

(5)経済的虐待
障害者の財産を不当に処分すること
その他障害者から不当に財産上の利益を得ること


2.障害者虐待への対応の留意点

虐待をしている人、虐待を受ける人に
自覚があるとは限りません。

当事務所の顧問先様においても、
障害者と認識していない従業員から
市町村に障害者虐待があった旨を
通報したということがありました。

労働条件について苦情申入れをしてきた
従業員の方が激高されたので、
その方の顔の前に手を出して阻止しようとした、
現場主任の方の行為を指してのことです。

会社側は、その従業員の方が障害を
お持ちであったことも知らないし、
気づいてもいませんでした。

思いがけないことも起こりますからご注意ください。

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2017年8月 8日 火曜日

平成29年8月8日第439号

職業安定法改正


1.改正の概要

平成29年3月31日に
「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立し、
同日公布されました。

今回は、その中の職業安定法について
解説したいと思います。

内容は、ニュースなどで話題となっていた
「ブラック求人問題」に対処するものが
主になっています。

法律は成立しましたが、
まだ施行されていない内容ですので
施行前に是非知っておいていただきたいと思います。


2.職業紹介の機能強化及び求人情報等の適正化


(1)求人不受理

公共職業安定所及び職業紹介事業者は
求人の申し込みはすべて受理しなければならず、
例外は一部にすぎませんでした。

今回は、
求人を不受理とすることができる範囲を拡大し、

一定の労働関係法令違反の求人者による
求人及び暴力団員による求人のすべてを
受理しないことができるとされました。


(2)虚偽求人申し込みへの罰則の強化

虚偽の条件を提示して、
公共職業安定所又は職業紹介事業者に
求人の申し込みを行った場合、

6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の
罰金に処せられます。

申し込みをしただけで罰則の対象に
なることに注意が必要です。


(3)求人サイト、求人情報誌等への指導監督


職業安定所や職業紹介事業者を通じて
労働者を募集する場合に限らず、

求人サイト運営事業者や自社のサイトで
求人募集をする場合も指導監督が及ぶことになります。

これまで、
職業安定所に苦情が寄せられていた
民間の求人情報について対処することが
可能となりました。


(4)労働契約締結前の労働条件等の明示


事前に労働条件を明示しておきながら、
労働契約を結ぶ際に以前明示したものと変更がある場合は、
きちんとそのことを相手に伝えることが義務付けられました。


3.募集内容の見直し


2の(1)については公布から3年以内の施行、
(2)~(4)については
平成30年1月1日施行となっています。

今回の改正内容は、
職業安定所が労働市場の
需給調整機能重視から
監督規制強化へと舵を切ったと
みることができます。

求職者の目を引く求人情報とするあまり、
募集内容と実際の条件が異なっていて
法令違反に問われることのないよう
一度見直してみる必要がありそうです。

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2017年7月23日 日曜日

平成29年7月23日第438号

年金受給資格期間が10年に短縮されます


1.これまでの経緯


低年金者の増加や、納付意欲低迷等の議論の中、
平成24年8月に、年金受給資格の「10年」への
短縮の法案が成立しました。

平成27年10月の消費税率引き上げと同時に
行うことになっていたところ大幅に延期され、

その後、平成28年11月「年金機能強化法改正法」が
可決・成立されました。

これにより期間短縮に係る施行期日が
平成29年8月1日となり、

平成29年9月分の年金から支給(支払いは10月)
されるようになります。

10年への短縮で、
老齢基礎年金の受給権者が約40万人、

特別支給の老齢厚生年金の受給権者は約24万人と、
合わせて64万人の方が
受給権を得ることができると言われていて、

日本年金機構は今年2月末から
7月にかけて対象者に年金請求書を送付しています。


2.受給資格者とは

では、実際に対象者となるとは、どういうことでしょうか。

まず、
ア)国民年金保険料送付済期間、

イ)国民年金保険料免除期間、

ウ)被用者年金加入記録

をあわせて10年から25年未満の方です。

また、前記のア)~ウ)の期間が10年ない場合、

合算対象機関(いわゆる「カラ期間。」
を探す必要がありますが、
なんとか120ヵ月分以上を確保したいところです。

なお、この合算対象期間は多岐にわたるため、
専門の社会保険労務士や、年金事務所、
「街角の年金センター」等に相談されるとよいでしょう。


3.後納や任意加入も活用しましょう

国民年金の毎月の保険料の納付期限は翌月末日ですが、
2年前まで遡って納付することができます。

さらに、平成27年10月から
平成30年9月までの3年間に限り、

過去5年分まで遡って
納めることができる後納制度があります。

また、年金受給期間10年を満たしていない方は
手続きを行うことによって最長70歳まで
国民年金に任意加入することができます。

振替加算や寡婦年金の対象に
なるかもしれないことについての
確認もしたいところです。

ただし、
10年加入の年金を受給していた人が
死亡した場合でも、
その遺族に遺族年金は支給されません。

あくまで今回の制度改正は、
老齢基礎年金などの老齢年金であり、
遺族年金、障害年金の受給要件に変更はありません。

企業の従業員の方から、質問があった場合、
適宜相談にのれるよう準備できればよいでしょうし、
また身近な専門家を活用してみては如何でしょうか。

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2017年7月 8日 土曜日

平成29年7月8日第437号

労災保険特別加入と適用関係について


1.1億総活躍社会の実現と労災保険特別加入

平成29年度、
1億総活躍社会の実現に向け、

政府は中小企業事業主の
労災保険加入を促進するとともに、

安全な作業環境の整備と公平な
競争を確保するため、

建築作業の一人親方の特別加入の
促進を掲げています。

労災保険は、
事業主に使用される労働者に対して
補償を行う制度ですから、
自営業者は補償の対象とはなりません。

しかし中小企業事業や個人事業主、
建築の一人親方等は、

勤務の実態が一般の労働者と大差なく、
労災保険法で保護すること必要がある場合があり、

これらの人々に労災保険への加入を
認めるのが特別加入制度です。


2.労災保険特別加入制度の種類と適用関係

労災保険は、
一般の労働者が対象となる部分と
特別加入部分とは補償内容の異なる部分があり、
保険制度の適用や実務処理も異なります。

(1)中小企業事業主の特別加入(第1種特別加入者)

常時300人、卸売サービス業は100人、
金融・不動産・小売業は50人以下の
労働者を使用する事業主であり、

労働者に係る保険関係が成立しており、
労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託する者です。

労働者を1人でも雇用する場合は対象となりますが、
年間を通じ延べ100日以上になることが必要です。

請負による建築事業の下請けを行う事業主の場合、
自らの直営工事は徴収法第7条の「有期一括」の
保険関係を成立させておき、
その関係に基づき事務組合に委託します。

これにより、元請工事の中に従事する場合と同じく、
自らの請負工事でも労働者と同様の
業務についても補償されるのです。

ただし、事業主としての業務は対象外です。

(2)一人親方等及び特定作業従事者(第2種特別加入者)
一人親方とは、
(ア)個人タクシー
(イ)建築業
(ウ)漁船
(エ)林業
(オ)医薬品配置
(カ)再生資源取扱業
(キ)船員の事業
などです。

いずれもアルバイト等を雇用する場合は、
延べ年間100日未満である必要があります。

製造業の一人社長は一人親方とはなりません。

特定作業従事者等とは、
(ア)比較的大規模の農業や大型機械を使用する農業
(イ)家内労働とその補助者で、プレス機を使用する作業等の従事者
(ウ)労働組合の常勤役員
(エ)家事使用人としての介護者等が該当しますが、
ボランティアは含まれません。

(3)海外派遣者(第3種特別加入者)
日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から
派遣されて海外支店等の事業に従事する労働者です。

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2017年6月23日 金曜日

平成29年6月23日第436号

『売主が外国人または海外在住日本人の不動産登記』について


日本に不動産を所有する海外居住の
外国人または外国企業が、

その不動産を売却する場合や、
海外で居住する日本人が、

その不動産を売却する場合の
不動産登記に必要な書類や、
その他の留意点についてまとめてみました。


1.海外居住の外国人または海外在住日本人が
日本の不動産を売却する際の登記の書類


(1)権利証書は、通常の不動産取引と
同じように必要となります。


(2)印鑑証明書は(印影を証明するということを
制度としている国や地域は限られていますので)
「サイン証明書」によることになりますが、
次の2通りの方法があります。

(ア)署名すべき書類に対して
サイン証明書を綴り合わせて割印をし、
一体の書類としたものに対して、
証明権者が奥書証明するもの(奥書証明方式)

(イ)申請者のサインを、単独で証明するもの
(単独証明方式)


(3)登記用委任状について、
奥書証明方式の場合は一体化していますが、
単独証明方式の場合は、
全く同一のサインであると登記官が認める必要があります。


(4)法人の場合、資格証明書が必要になりますが、
実務上では[宣誓供述書]を利用して
手続を進める方法が多く採用されています。


(5)固定資産評価証明書も、
通常の取引と同じように必要になります。


(6)外国人が登記名義人のときの住所や
氏名が変更されているときは、
その内容や原因を記載した「宣誓供述書」を
利用することになります。


2.サイン証明書について


(1)外国人の場合の証明書

(ア)当該外国の在日大使館・領事館における証明権者

(イ)当該外国の本国の公証人や弁護士等


(2)日本人の場合の証明書

(ア)在外日本大使館・領事館における証明権者

(イ)日本の公証人


3.買主の源泉徴収義務について


(1)源泉徴収義務は買主にありますが、
個人が自己または親族の居住用に取得した土地等で、

その対価が1億円以下の場合は、
源泉徴収義務が生じません。

(ア)買主が法人の場合、対価の額に関わらず、
源泉徴収義務が生じます。

(イ)買主が個人の場合でも居住用でない場合は、
源泉徴収義務が生じます。


(2)手付金や中間金でも、それぞれの支払時に
源泉徴収する義務があります。


(3)源泉徴収の税率は、
源泉所得税及び復興特別所得税の合計で
10.21%です。

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2017年6月 8日 木曜日

平成29年6月8日第435号

労災で健保から給付を受けたときの取扱いの変更


傷病等の治療のために労災保険から
給付を受けるべきところ、
健康保険から給付を受けてしまうことあります。

その際の調整規定が変更されました。


1.労災保険と健康保険の間で直接調整を行うことが可能に

労災保険から給付を受けるべきケガや病気で
健康保険から給付を受けた場合は、

従来、健康保険から労災保険に切替えの際、
従業員が健康保険から受けていた給付を
健保組合等に全額返還してから、

改めて労働基準監督署に対して
労災保険申請を行う必要がありました。


給付額が高額の場合は
従業員にとって大きな負担となっていました。

これに対し厚生労働省が発した
2017年2月の通達によると、

従業員が労働基準監督署に申し出ることで、

労災保険の支払先として健保組合等を
指定することを可能とし、

労働基準監督署から健保組合等に対して
直接支払いを行うことで、

労災保険から健康保険への切替えを
行うことができるようになりました。


2.新しい取扱いによる切替え手順

(1)被保険者が、労働基準監督署に、
いったん全額を自己負担することなく
労災保険を請求したい旨の申出を行い、

健保組合等から労働基準監督署に
レセプト等を提出することの同意書を提出

(2)労働基準監督署と健保組合等の調整

(3)被保険者が、支払先を健保組合等とした
「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を作成し、
健保組合等から送付された返還通知書と
労災保険給付の受領を健保組合等に
委任する旨の委任状を添付し労働基準監督署へ提出

(4)提出された請求書に基づき、
労災保険から被保険者と、健保組合等へ給付


3.従来の取扱いによる手続きは今後も可能
新しい取扱いが可能となりましたが、

今後も、いったん健保組合等に
費用の全額を返還したあとで労災保険から
給付を受ける従来の手続きも可能です。

新しい取扱いは、従業員の金銭的負担が大きく
軽減された一方、以下の理由から、
従来の取扱いよりも手続きが煩雑になったといえます。

・労災申請を行う前にあらかじめ労働基準監督署
への申出を行わなければならない。

・同意書や委任状を作成して提出する必要がある。

・健康保険から給付を受けている7割部分自己負担の
3割部分でそれぞれ労災保険請求書を作成しなければならない。
そのため、健康保険から受けた給付の金額が少額のときは、
従来の取扱いに基づいて労災保険への
切替えを行ったほうが都合がよい場合もあります。                    

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2017年5月23日 火曜日

平成29年5月23日第434号

電子申請の紹介


平成18年度から運用を開始した電子申請ですが、
これまで思うように浸透していません。

そこで少しでも皆さんに知ってもらおうと、
今回は電子申請の簡単な紹介をさせていただきます。

1.電子申請とは

 e-Gov電子申請システムとは、
様々な行政への申請・届出を
インターネットを使って行うものです。

電子申請を行う際には、事前準備として
電子証明書の取得が必要となります。


2.メリット

(1)これまで行政機関へ申請・届出の際は書類を
持ち込んだり郵送したりしていましたが、
電子申請は会社や自宅のパソコンから
24時間いつでも行うことができます。

(2)行政機関の窓口が閉まっている夜間でも
休日でも申請が可能です。

(3)年金事務所やハローワークへと
異なる場所へ提出しなければいけない場合でも、
パソコンの前に座ったまま
幾つもの行政機関へ提出することができます。

申請書を作る手間も簡易な機能があり、
更に作った書類の内容をチェックする機能も
付いていて精度の高い申請・届出になります。

(4)提出した後も審査過程の進捗を
確認することができます。

審査が終われば、メールで知らされ、
e-Govサイトから返戻資料を
取り出すことができます。
従来の紙ベースでの返戻資料を
希望される申請者へは、
郵送で送り返してくれます。

(5)申請後の手続書類はすべて
データ化されるのでペーパーレス化が促進されます。

(6)マイナンバーの漏洩のリスクヘッジができます。


3.デメリット

(1)e-Gov電子申請対応のソフトがないと
一括申請に対応できず、ひとつひとつ会社データや
添付ファイルを入力しないといけない点は手間がかかります。

(2)添付書類をPDFやJPEGなどの
電子ファイルをいちいち添付する必要があります。


以上、システム上の手間はありますが、
業務の効率は向上しますので是非ご活用ください。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2017年5月 8日 月曜日

平成29年5月8日第433号

今、事業承継が熱いです


1.これから10年間が勝負

平成28年4月に
中小企業財務課が作成した資料によると、
以下の通りの記載があります。

・65歳以上の経営者が約4割を占め、
今後5年以内に、
いわゆる団塊世代を含む多くの経営者が
事業承継のタイミングを迎えるものと考えられる。

・一方、事業承継に向けた準備を行っている会社は
4割程度にとどまり、
経営者が60歳以上の会社のうち、
後継者が決まっている会社も4割に満たない。

・このような状況を踏まえ
~中略~
中小企業経営者、支援機関及び
行政機関の認識・取組の方向性を
共有することにより、
今後5~10年間の
事業承継支援策の強化に繋げる。


このようなことから、
今後10年間で約半数の経営者が
引退期にさしかかるため、
国としては、
事業承継問題を避けて通れない、
と考えています。


2.事業承継ガイドライン改訂の方向性

まずは、これまでの取り組みについて、
事業承継を取り巻く状況の
客観的な整理・分析を行う、
としています。
そして、見直すべき点を洗い出し、

(1)事業承継に向けた取組の重要性を
経営者が再認識すること、

(2)早期取組の重要性とその周知を徹底すること、

(3)支援体制の整理・改善を図ること、

(4)事業承継には事業価値の向上が
極めて重要であること等に
分類・整理して進めていく方向のようです。


3.事業承継の取り組みの重要性

弁護士として倒産案件に関わる中で、
実際に事業承継がうまくいかなかったことを
倒産の理由として挙げている企業もありました。

中小企業は日本の企業数の99%以上を占め、
地域経済・社会を支える存在として
日本の経済活動の基盤となっています。

各地方の中小企業が存続することで、
地域が賑わい、地域で働く場所も
確保されると思います。

公的機関で事業承継問題にも
関わらせて戴いているので、
「事業承継」が円滑にできなかった、
という理由での「廃業」を
出来るだけ防げるよう、
事業承継の取り組みの重要性など、
これからもお伝えしていきたいと思います。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2017年4月23日 日曜日

平成29年4月23日第432号

派遣労働者活用のすすめ


1.改正労働者派遣法


派遣労働者というとどんなイメージがありますか。
「非正規労働者」、「弱い立場」、「代替要員」、
「派遣切り」などネガティブなイメージが
先行しているのではないでしょうか。

実際にも「労働者の使い捨て」との批判を浴び、
平成27年9月30日に改正派遣法が施行されました。

そこでは、派遣労働者のスキルアップや
雇用の安定を図ることなど
派遣労働者の保護に重点が置かれ、
派遣業界を取り巻く環境が
以前と大きく変わることとなりました。


2.派遣労働者活用のメリット


最近、報道では人手不足が
深刻になったといわれています。

厚生労働省の発表によると、
2016年の平均の有効求人倍率は
1.36倍と7年連続で上昇、
1991年以来25年ぶりの高水準となっています。

新規求人倍率も2.04倍となっており、
人手不足の傾向は当分続きそうです。

このような環境の中で人材を確保するのに
多額の費用と時間がかかってしまい、
中小企業にとっては優秀な人材を
採用することは容易ではありません。

そこで、人手が足りない期間のみ、
必要なスキルを有している派遣労働者に
仕事を任せることは合理的だと言えます。

また、直接派遣労働者に指揮命令を
することができる点で業務委託の
場合と異なり、よりきめ細かな仕事を
してもらうことができます。

さらに、
その人材が優秀であれば
直接自社で雇用することで
組織力を上げることも可能となります。

他方、
優秀な人材を直接雇用するために
派遣労働者を受け入れる
「紹介予定派遣」という方法もあります。

6ヵ月以内の派遣契約の中で
それ以降直接雇用するかどうかを
判断することができます。

初めから正社員雇用をした場合の
解雇のリスクを回避することができますし、
ミスマッチによる離職を防ぐことが
できることからも検討に値する制度だと思います。


3.助成金の活用


派遣労働者を直接雇用する場合には、
厚生労働省の助成金を活用して
人材確保を容易にする方法があります。

「キャリアアップ助成金」では、
派遣労働者を正社員雇用することで、
通常よりも助成金額が多くなっています。

これまで採用に悩んでいた方は
一度検討してみてはいかがでしょうか。

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2017年4月 8日 土曜日

平成29年4月8日第431号

「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」について


1.制度概要

本助成金は、
労働時間等の設定の改善を図り、
過重労働の防止及び長時間労働の
抑制に向け勤務間インターバル
(休息時間数を問わず、
就業規則等において
終業から次の始業までの休息時間を確保
することを定めているもの)
の導入に取り組んだ際、
その実施に要した費用の一部を助成するものです。


2.支給要件

(1)支給対象事業主

次のアからウのいずれかに該当する
事業場を有する中小企業事業主であること

ア.勤務間インターバルを導入していない事業場

イ.すでに休息時間数が9時間以上の
勤務間インターバルを導入している
事業場であって対象となる労働者が
当該事業場に所属する労働者の
半数以下である事業場

ウ.すでに休息時間数が9時間未満の
勤務間インターバルを導入している事業場

※その他、「資本又は出資額」や
「常時雇用する労働者」
に関する要件があります。


3.成果目標と支給対象となる取組み
次の取組みのうち、
いずれか1つ以上を実施し、
成果目標として、
事業主が事業実施計画において
指定したすべての事業場において、
休息時間数が
「9時間以上11時間未満」または
「11時間以上」の勤務間インターバル
を導入すること

(1)労務管理担当者に対する研修

(2)労働者に対する研修

(3)外部専門家
(社会保険労務士、中小企業診断士など)
によるコンサルティング

(4)就業規則・労使協定等の作成・変更
(時間外・休日労働に関する規定の整備等)

(5)労務管理ソフトウェアや
労務管理用機器の導入・更新 等


4.支給額
取組みの実施に要した経費のうち、
謝金、旅費、借損料、会議費、
雑役務費、印刷製本費、備品費、
機械装置等購入費及び委託費の
合計額に4分の3を乗じた額が
成果目標の達成状況に応じて支給されます。

・休息時間数9時間以上11時間未満:
上限40万円

・休息時間数11時間以上:
上限50万円

※申請受付:平成29年12月15日まで

※「新規導入」に該当する取組みがなく、
「適用範囲の拡大」または「時間延長」に
該当する取組みがある場合は
上記助成額の半額が支給されます。

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2017年3月23日 木曜日

平成29年3月23日第430号

「退職金制度」について


1.退職金制度は見える化されていますか?

実は、会社にとって退職金制度の設置義務はありません。
しかし、就業規則等で会社が社員との間で
退職金の支払いをルール化すれば、
会社にとっては社員と契約した制度になるため、
支払いの責任が生じます。

では、何が問題かというと、
先代の決めた制度が未だに残っているケースです。

景気が良い時代に、急ごしらえで作った制度、
なんとなく同業者の社長から聞いて、
こんなもんだろと決めた制度であったならば、
この際制度改革に着手すべきです。

退職一時金制度の場合は、
支払い義務が生じてから減免を求めることもできず、
定年退職者、中途退職者が予想以上に多かった期は、
赤字転落などという事態は
絶対に避けなければなりません。


2.退職金・企業年金の4つの類型

退職給付制度はたくさんの制度や法律がありますが、
大きく4つの種類に分けて
整理すると理解しやすいです。

一つ目は「退職一時金制度」。

実際の支払いの段階で全額を損金算入出来ますが、
事前準備金に対しては税制上の
メリットはありません。

かつ、
退職給付会計
(実際積立額-将来支払う退職給付支払額=退職給付債務)が
適用され、会社にとって債務とされます。

これは二つ目の「確定給付企業年金」
にも言えることです。

ただ、この「確定給付企業年金」は
事業主掛金は全額損金算入できます。

これは三つ目の「共済型」
(たとえば中小企業退職金共済制度)も同じ。

また、四つ目の「確定拠出年金」も
事業主掛金は全額損金算入されます。

勿論税金面だけでなく、運用責任はだれが負うのか、
自己都合退職時に減額できるのか、
中途退職時に一時金支給が出来るのか、
年金支給開始年齢は何歳からか等、
金融機関からの制度提案を受けたり、
中退共本部への相談等により
退職金制度を固める必要がありますが、
何より、
従業員の方の納得を得られ、
会社への貢献や仕事へのインセンティブを
高めてもらうことが一番大事なことではないでしょうか。


3.労使交渉の開始

新制度の採用については基本的に
既得権の保障と期待権他についての
労使合意が必要になります。

社員説明会を行い、きちんとした情報公開と、
制度の目的と方針の説明、
旧制度との不公平感、
世代間の不公平感等に配慮し、
出来れば全従業員から同意書を
取り付けておくのが無難です。

社会保険労務士等の外部専門家を上手に使い、
客観的視点からの解説を加えるのも
有効ではないでしょうか?

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2017年3月 8日 水曜日

平成29年3月8日第429号

各種経済指標について


米国の大統領選挙後から、
今後の経済動向に関心が集まり、
各種の経済指標が話題になっています。

景気ウォッチャー、日銀短観等、
様々に解説されていますが、
それぞれの指標には特徴が有ります。

その特徴を踏まえ参考にすると、
これらの調査を興味深く見ることができます。

「経済指標」は、
景気に先行して動く指標が先行系列、
一致して動く指標が一致系列、
遅れて動く指標が遅行系列
と分類されています。


1.景気ウォッチャー調査

家計動向、企業動向雇用等各分野の動向を
観察できる業種(タクシー運転手等)から選定され、

その協力を得て地域ごとの景気動向判断の
基礎資料とすることを目的としています。

調査主体は内閣府であり、
全国ではなく地域ごとの先行きの
5段階評価の判断に点数を与え、
調査は、2・3ヵ月先の身の回りの
景気動向を質問するもので景気の先行きは
2・3ヵ月先を指したものです。

毎月末の調査結果は
原則翌月の第6営業日に発表されます。


2.日銀短観

全国企業短期経済観測調査です。

調査は、約1万社の企業を対象に、
3,6,9,12月に実施され、
速報性に重点が置かれています。

調査時点の判断と、3ヵ月先の判断を
調査するもので経営者の近い将来の
動向をどうみているかを知ることができます。

短観の中でも注目されているのが
「業況判断DI」です。

これは、「良い」と答えた企業から
「悪い」と答えた企業を減じたもので、
数値の変動を観察することが大切な指標です。

景気の天井が落ちた時、
景気の底を打ったときの
見極めに活用されています。


3.経済・物価情勢の展望(展望レポート)

日銀が担当しており、
毎年4・10月に公表されます。

政策委員会・金融政策決定会合で決定され、
実質成長率・国内企業物価・消費者物価の上昇見通し、
不安要因の分析等を行い公表します。


4.家計調査
総務省が担当し、全国で9千世帯を対象に、
家計収入・支出、貯蓄・負債等を
毎月調査し公表されます。

消費動向が判断でき、又、
過去1年間の収入・貯蓄・負債の状況等が調査され、
実額と共に名目増減率が公表されるので
物価変動を考慮した消費増減の動向も判断できます。

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2017年2月23日 木曜日

平成29年2月23日第428号

『自筆証書遺言』について


自筆証書遺言は、
筆記用具と紙と印鑑があれば
作成することができるため、
普通方式の遺言の中では
最も簡単に作成することができる遺言と
されています。


1.自筆証書遺言とは

遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書し、
これに押印することによって成立する
遺言のことをいいます(民法第968条第1項)。


2.自筆証書遺言の長所と短所

(1)長所
・遺言の内容や存在の秘密性を保持できます。

・証人の立ち会いが不要です。

・作成費用が不要です。

(2)短所
・字の書けない人は利用できません。

・要件を備えないと無効になるおそれがあります。

・偽造・変造・紛失・隠匿・不発見のおそれがあります。

・家庭裁判所による検認の手続が必要になります。


3.自筆証書遺言の作成のポイント

(1)遺言者が全文を自書すること

(2)作成日付の記載、氏名の自書、押印があること

(3)加除訂正があるときは所定の方式に従っていること


4.家庭裁判所による検認手続

(1)遺言書の保管者や遺言書を発見した
相続人は相続の開始を知った後、
遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して
検認の請求が必要です。
(民法第1004条第1項)
なお、検認の申立書には
『申立人・相続人全員の戸籍謄本』及び
『遺言者の戸籍謄本
(全相続人を把握するため8才頃から死亡まで)』
を添付することを要します。

(2)検認手続を経ない自筆証書遺言に基づく
相続登記申請は受理されず、却下されます。
(平成7年12月4日民三第4344号民事局第三課長通知)
金融機関においても同様の取り扱いが
なされる場合がほとんどです。

(3)検認の性質は、後日における
偽造・変造・毀損を防ぐ一種の
検証手続・証拠保全手続とされており、
遺言の内容の真否を審査し、
その効力の有無を確定するものでは
ありませんので、後に遺言の効力を
争うことは可能です。

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2017年2月 8日 水曜日

平成29年2月8日第427号

特定受給資格者の判断基準の見直し


平成29年1月1日以降の離職者から、
特定受給資格者の範囲が見直されました。


1.特定受給資格者とは

特定受給資格者とは、倒産や解雇等の理由で退職した
雇用保険加入者だった者のことであり、
この場合、労働者が再就職の準備をする時間的余裕もなく、
離職を余儀なくされたことから、失業給付の取扱いが
自己都合退職よりも有利な扱いになります。

また、失業給付受給に必要な雇用保険加入期間については、
通常は離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して
12ヵ月以上必要ですが、特定受給資格者の場合は、
離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して
6ヵ月以上ある場合でも可能となっています。

以下、今回から拡大された特定受給資格者の内容をご紹介します。


2.妊娠、出産、介護等を理由とする不利益な取扱いによる退職

(1)育児介護休業法の規定に基づき、
育児休業、介護休業、看護休暇、介護休暇の申出をしたが、
正当な理由なく拒まれたため、休業開始予定日までに
休業または休暇を取得できなかった場合

(2)妊娠・出産をしたこと、産前休業を請求し、
または産前産後休業をしたこと、並びに育児休業、
介護休業、看護休暇、介護休暇の申出または
取得したことを理由とする不利益な取扱いを受けた場合

(3)事業主が、育児・介護休業法、労働基準法、
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の
確保等に関する法律の労働者保護法令に違反し、
または措置されなかった場合


3.賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった場合

(1)現実にその月(賃金月)中に
支払われた額(何月分であるかを問わない。)が
その者が本来その月(賃金月)中に支払を
受けるべき額の3分の2に満たない月が1ヵ月以上あった場合

(2)毎月決まって支払われるべき賃金の
全額が所定の賃金支払日より遅れて
支払われたという事実が1回以上あった場合

上記いずれかに離職した場合は特定受給資格者に該当します。

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2017年1月23日 月曜日

平成29年1月23日第426号

同一労働同一賃金


去年12月20日に
「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」の
中間報告として
「同一労働同一賃金ガイドライン案」が公表された。

雇用における正規・非正規間の格差問題是正に
大きな期待が寄せられる。

中間報告の内容を見る限り、
実現には多くの問題が横たわっている。

諸外国と比較をしても、各国ごとの歴史の上に
成り立って構築されてきた労働市場の構造には、
同一労働同一賃金の実現のさせ方に大きな違いが
あるとのことである。

日本においては、
諸外国と比べ労働者の流動性が低く、
それ故か企業ごとに労働条件が定められることが多く、
欧州のように産業別労働協約により
同一労働同一賃金が保たれていない。

そうした状況を踏まえて検討会では、
下記3点を柱にして長期的に
改革を進めるとのことである。

(1)正規・非正規社員両方の
賃金決定ルール・基準の明確化、

(2)職務や能力等の賃金など
待遇水準との関係性の明確化

(3)能力開発機会の均等・均衡による
一人ひとりの生産性向上

また、ガイドラインでは、具体的な事例として
「問題とならない例」
「問題となる例」
を載せているので、その一例を掲載する。

基本給について、労働者の
職業経験・能力に応じて支給しようとする場合

(1)問題とならない例
基本給については社員の職業経験・能力に
応じて支給しているA社において、
ある職業能力の向上のための特殊な
キャリアコースを設定している。

正規社員であるXは、このキャリコースを選択し、
その結果としてその職業能力を習得した。

これに対し、非正規社員であるYは、
その職業能力を習得していない。A社は、
その職業能力に応じた支給をXには行い、
Yには行っていない。

(2)問題となる例
基本給について社員の職業経験・能力に応じて
支給しているE社において、
正規社員であるXが非正規社員であるYに比べ
多くの職業経験を有することを理由として、
Xに対して、Yよりも多額の支給をしているが、
Xのこれまでの職業経験はXの現在の業務に
関連性を持たない。

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2017年1月 8日 日曜日

平成29年1月8日第425号

懲戒処分をするときの注意点


1.懲戒処分ができる場合(総論)

 懲戒処分が有効となるのは、
(1)就業規則に根拠があり、

(2)その懲戒事由に該当し、

(3)懲戒処分が社会通念上相当なものである場合です。
就業規則を作成する際、懲戒事由毎に処分を定めていることが一般的です。

それでは、具体的類型毎に、どのような点に着目し、
どのような処分を下せば「相当」と言えるのでしょうか?


相当性の判断は、一般論として、
(1)行為の内容、

(2)結果の重大性、

(3)頻度や期間、

(4)業務内容、

(5)過去の処分歴、

(6)反省の有無などを総合して判断されるべきものといえます。

以下、具体的な2つの類型を見ていきましょう。


2.経歴詐称

経歴は、採用のためのみではなく、
採用後に基本的資料となるものです。

そのため、偽ったことが判明した場合には、
たとえ採用後の勤務に非難すべき点が
なかったとしても労働契約上の信義則違反として
懲戒事由となり得ます。

判例は「重要な経歴」を詐称した場合に限り、
懲戒処分としての相当性を認める傾向です。

重要な経歴とは、例えば、最終学歴・職歴、犯罪歴
(但し、賞罰歴における罰とは一般的には
確定した有罪判決をいいます。)
がこれに当たります。
(最判平成3年9月19日...炭研精工事件)

3.勤務懈怠

無断欠勤、出勤不良といった勤務懈怠は、
それ自体は単に労務提供という労働者側の
債務不履行であり(損害賠償請求できるかどうかの問題)、
それが職務規律に違反したり、企業秩序を乱したと
認められる場合に、初めて懲戒事由となるものといえます。

よって、欠勤の頻度や継続性、その理由、企業の注意・指導の
有無やそれに対する労働者の対応、業務に与えた影響、
従来の取扱いを考慮して、懲戒処分の有効性を
判断する傾向にあります。

勤務懈怠について企業が注意・指導をしない場合には、
これを許していたと判断されてしまう可能性も
あるので指導書のような形で、「書面」にて、
勤怠不良について改善をするよう
注意・指導しておく必要があるでしょう。

「指導書」には、欠勤の頻度・これによって、
どのように業務に支障があったのか、など、
できるだけ具体的な記載があることが望ましいです。

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2016年12月23日 金曜日

平成28年12月23日第424号

雇用保険の適用拡大(平成29年1月1日施行)

1.満65歳以上の新規雇用者の加入義務
 現在、満65歳以降に新たに職業に就いた労働者は、雇用保険の加入者になる
ことはできませんでしたが、雇用保険の適用上限年齢が撤廃され、平成29年1
月1日以降満65歳以上で加入要件(週20時間以上かつ、31日以上の雇用見
込みの方)に該当する人を雇い入れる場合、雇用保険被保険者資格取得届の提
出が必要になります。また、施行日前にすでに満65歳以上の方(加入要件該当
者)は、施行日付で加入手続きが発生する可能性があります。この場合の届出期
日は特例で平成29年3月31日までとなります。ただし、この期日に遅れても
時効にならない限り加入手続きは可能です。平成28年12月末日時点で高年齢
継続被保険者である場合は、既に資格取得手続きは行われているので、届出は
不要です。なお、現在の高年齢継続被保険者とあわせ、65歳以上の被保険者
名称は「高年齢被保険者」となります。また、現在4月1日時点で満64歳以
上の雇用保険料は、現在保険料免除になっていますが、新たに被保険者となる
65歳以上の人も、平成31年3月31日までは保険料は免除になります。あ
わせて、高年齢被保険者には、育児休業給付金、介護休業給付金、教育訓練給
付金の支給対象となり、離職後、高年齢受給資格者となった場合、常用就職支
度手当、移転費、求職活動支援費も支給対象になります。

2.適用拡大の背景
厚生労働省「雇用保険部会報告」では、我が国の生産年齢人口は、既に減少局面
にあり、潜在的に人手不足のなか、65歳以上の新規求職者数、就職件数の増加、
また65歳を超える就労希望者の増加や、老後の収入に対する不安等があるとい
う背景の中、改正をした旨の報告をしています。

3.課題
(1)離職日以前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月必要という一般被保険者
に比べ、「6ヶ月」で高年齢求職者給付金の対象となり、計画的に離職と就職を
繰り返す循環的離職者となり、不正受給につながる認識が必要です。
(2)平成32年4月1日からは、現在保険料が免除されている人に加え、すべ
ての被保険者分、事業主分共に保険料が徴収され、会社の人員構成によれば、
新たなコスト増になります。

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2016年12月 8日 木曜日

平成28年12月8日第423号

改正された確定拠出年金法の概要と注意点について

 確定拠出年金法が本年6月に改正され、個人型確定拠出年金の対象が広がり、
来年1月からは公務員や主婦も対象になります。特徴は自己責任で運用するこ
と、転職後の持運びが可能なことです。法改正された個人型を中心に確認しま
しょう。

1.確定拠出年金の特徴
(1)いわゆる3階建て部分の年金。法改正に基き、平成29年から原則誰で
も加入可能
(2)自らの責任で運用し、運用結果に応じた年金額を将来に受け取れる。
(3)税制優遇のメリットは有るが、手数料が必要であり、原則60歳まで受
取り不可能

2.確定拠出年金の概要
(1)種類
  企業型と個人型があり、企業型は厚生年金適用事業所の事業主が実施者と
なり、加入者は実施事業所に使用される被用者年金被保険者で、掛金拠出は事
業主だが加入者も可能。一方、個人型は国民年金基金が実施者となり、加入者
は原則誰でも可能となり、掛金は加入者が拠出する。
(2)運営者と記録管理者
  ア 掛金運営者は、運営管理機関と呼ばれ、みずほ・三井住友・ゆうちょ
銀行等
  イ 記録管理は、記録関連運営管理機関と呼ばれ、加入者への各種通知等
を行う。
(3)給付
老齢給付金、障害給付金、死亡一時金の3種類で、老齢給付は掛金10年以上
で60歳から受取可能、1ヵ月以上2年未満の加入期間では65歳から受取可
能となる。ただし、70歳までに自身で申請手続きが必要で、手続きしなかっ
た場合は一時金となる。
(4)掛金額と変更について
個人型は、国民年金の第1号被保険者と60歳未満の厚生年金被保険者で、掛
金は前者が毎年6万8千円、後者は2万3千円までが拠出限度額となり、全額
が所得控除の対象となる。掛金額は毎年4月から翌年3月の間で年1回変更で
き、個人が運用商品を選択する。
(5)実施方法と注意点
運用商品は株や債券の投資信託が中心、運用商品の変更は可能。施行は公布日
の平成28年6月3日から2年以内で、公布日から2年以内に、加入者に提示
する3以上の運用方法について「内1つ以上は元本確保」という制限はなくな
る。個人型は運営管理機関から必要書類を取寄せ、受付金融機関へ申し込むこ
とから始まる。加入には手数料と口座管理料、投資信託の場合は信託報酬が必
要。途中換金は原則不可能で、60歳以降に老齢年金として受取りとなる。

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2016年11月23日 水曜日

平成28年11月23日第422号

法定相続情報証明制度(仮称)について


法務省は7月5日、相続手続を簡素化する「法定相続情報証明制度(仮称)を来年
度に新設する。」と発表しました。一体、どのような制度なのでしょう?

1.新設の目的
法務省の発表によりますと「相続登記が未了のまま放置されることは、いわゆる所
有者不明の土地問題や空き家問題を生じさせる大きな要因の一つであるとされてい
ます。(中略)そこで、法務省民事局では相続登記を促進するための新たな制度と
して当該制度を新設することとしました。」と、されています。

2.現状と問題点
(1)相続人は、遺産に係る相続手続に際し、登記所や金融機関に対して、被相続
人が生まれてから亡くなるまでの戸籍及び相続人全員の戸籍等の関係書類等一式を
揃えて、同じ書類を管轄の異なる登記所や各金融機関にそれぞれ提出しなければな
らず、煩雑で手間がかかっています。
(2)金融機関等においては、そもそも戸籍関係書類等一式を読み解いて相続人を
特定することや、書類が足りない場合に追加書類の提出を相続人に求めることなど
に多くの手間がかかっており、しかもこれらは1人の被相続人に対して複数の金融
機関等で重複して行われているため、膨大な社会的コストが発生しています。

3.新制度のあらまし
(1)相続人が登記所に対し、次の書類を提出します。
(ア)被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係書類等
(イ)上記(ア)の記載に基づく法定相続情報(被相続人の氏名・本籍・住所・生
年月日・死亡年月日と相続人の氏名・本籍・住所・生年月日・続柄・法定相続分)
を記した関係図である申請書
(2)登記官が(1)の内容を確認し、証明文付きの法定相続情報の写しを交付し
ます。
(3)相続財産たる不動産に管轄登記所が異なるものがある場合、上記の写しを添
付すれば相続登記の申請が可能となります。
(4)被相続人名義の預金の払い戻し等、他の相続手続に使うことも可能とします。

4.今後の見通し
法務省の発表によれば「年内にパブリックコメント(意見公募)を実施して、詳細
を決めたうえ、来年5月の開始を目指す」ということです。

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2016年11月 8日 火曜日

平成28年11月8日第421号

労働条件の相違の不合理性の判断基準

 ハマキョウレックス事件は、一般貨物自動車運送事業Y社に勤務する契約社員
(配送ドライバー)のXが、XとY社との間には、期間の定めのない労働契約が
成立している、また、仮に成立していないとしても、正社員と契約社員たるXと
の労働条件を比較すると、不合理な相違があると主張した事案です。

1.争点
 1)Xに期間の定めがない労働契約が成立しているか
  第1審、控訴審においては、採用の面接時、Xに対して半年、あるいは1年
後には正社員に登用する可能性があることを示唆した事実が認定されましたが、
入社時の契約書にはその旨の合意はなく、XのY社の正社員としての労働契約の
合意の事実を否定しました。
 2)労働契約法第20条(以下、「労契法」という)についての考え方
  ⅰ)第1審の判断
正社員と契約社員の業務自体に大きな相違は認められないが、正社員は、業務の
必要性に応じて業務内容や就業場所の変更命令を甘受しなければならず、管理責
任者等のY社の中核を担う人材として登用される可能性がある一方、契約社員は、
業務内容、労働時間、休憩時間、休日等の労働条件の変更がありうるにとどまり、
管理責任者等Y社の中核を担う人材として登用される可能性がある者として育成
されるべき立場にあるとは言えないとして、労契法第20条違反とは判断しませ
んでした。
  ⅱ)控訴審の判断
有期労働契約と無期労働契約との間の労働条件が単に相違するとういうだけで、
労契法第20条の適用があるものではなく、両者の労働条件の違いが「期間の定
めの有無に関連して生じたものであることを要する趣旨である」としました。
   労契法第20条に照らして不合理と認められるかどうかは、
(1)「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」、
(2)「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」と
(3)「その他の事情」を考慮要素として、「個々の労働条件ごとに判断される
べきものであると解される」として、1つひとつの労働条件ごとに、労働条件の
相違と言えるかどうかを検討するとの考え方を示しました。

2.不合理性の判断
 上記(1)~(3)は、一定の「要件」としてではなく、判断する「要素」と
して位置付けられており、これらに照らして総合的に判断するという手法をとっ
ており、「同一」か否かまで厳正な判断はしておらず、弾力的な判断ができる
ようにしています。

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2016年10月23日 日曜日

平成28年10月23日420号

年金機能強化法のまとめ

来年4月から、年金の受給資格期間が短縮され、これまで25年間の被保険者期
間が必要でしたが、無年金者を少なくする目的から10年で受給資格を得られる
ことになる予定です。
65歳以上の無年金者は現在90万人いると推計されます。国民年金に未加入の
人、加入していても保険料が払えずに免除されている人が、将来無年金者や低年
金者となる可能性が高いのです。今の推計では800万を超えると言われていま
す。
こうした制度を諸外国ではどうかと見ると
国名     年金支給開始年齢      受給資格期間
アメリカ    66歳           10年相当
イギリス  男65歳、女62歳5ヵ月   なし
ドイツ    65歳3ヵ月        5年
フランス   61歳2ヵ月        なし
他国と比べ日本の年金受給資格期間が随分長いことが分かります。これでは国民
皆年金制度そのものが崩れてしまいかねません。高齢化社会に向かって公的年金
を安定的に運用していくために、平成26年4月に施行された年金機能強化法の
下、以降これまで幾つもの施策が実施されてきました。
1.基礎年金の国庫負担を1/3から1/2に恒久化(平成26年4月施行)
2.産休期間中の社会保険料免除
3.遺族基礎年金を父子家庭へも支給
4.未支給年金を受け取る遺族の範囲を拡大
5.70歳に年金繰り下げた人が請求を遅れた場合でも、遡って年金の支給が可

6.国民年金の任意加入時の未納期間が受給資格期間に算入
7.所在不明の年金受給者について届出が必要
8.障害年金の額改訂請求が1年を待たずに請求可能
9.特別支給の老齢厚生年金の受給権を得たときに遡って障害者特例による支給
が可能
10.短時間労働者に対する社会保険の適用拡大(平成28年10月施行)
11.受給資格期間の短縮(平成29年4月施行予定)
これ以外にも、時効で納めることができなかった国民年金の未納保険料が平成
27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、過去5年分まで納める
ことができます。被保険者期間が不足して年金を受給できない人が受給資格を
得られる可能性が出てきます。
こうした施策の財源に、消費税を10%とする必要性が問われています。

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2016年10月 8日 土曜日

平成28年10月8日419号

マタハラ防止措置の義務

 平成29年1月1日施行にて、育児・介護休業法の一部制度の改定があります。
併せて、男女雇用機会均等法にハラスメント防止措置(育児・介護休業法含む)
が追加されます。今回は、追加されるハラスメント防止措置について触れます。
 男女雇用機会均等法第11条には、セクハラ防止対策義務規定が従前からあり
ます。今回新たに、第11条の2に「職場における妊娠、出産等に関する言動に
起因する問題に関する雇用管理上の措置」が定められ、同様に、育児・介護休業
法第25条に「職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇
用管理上の措置」が定められました(ハラスメント防止措置)。何れも、措置義
務で事業主は措置を講じる必要があります。
 厚生労働省によると、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの発生
原因の背景には、妊娠・出産・育児休業等に関する否定的な言動(他の労働者
の妊娠、出産等の否定につながる言動や制度等の利用の否定につながる言動。
単なる自らの意思の表明を除き、本人に直接言わない言動を含む。)が頻繁に
行われるなど制度等の利用又は制度等の利用の請求等をしにくい職場風土があ
り、また、制度等の利用ができることの周知が不十分であること、等が挙げら
れています。
 これらを解消していくことが、防止効果を高めるうえで重要であることを
留意し「講じなければならない措置」として挙げている措置内容は次のとお
りです。
1.事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備
3.職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントにかかる事後
の迅速かつ適切な対応
4.職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの原因や背景
となる要因を解消するための措置
5.上記措置と併せて、プライバシー保護に対する必要な措置及び周知、不利
益取扱いを行わない定め及び周知
措置内容は、従前からあるセクハラ防止措置(1.2.3.5)とほぼ同じで
4の項目が新たに追加されました。全てのハラスメントの防止措置として一体
化することも可能です。指針の中では「その他のハラスメントの相談窓口と一
体的に相談窓口を設置し、相談も一元的に受け付ける体制が望ましい」として
います。ハラスメント行為者となるのは上司・同僚です。上司の場合1回の言
動でもハラスメントとなります。リスク対策のためにも措置を講じ対策を取る
必要があります。

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2016年9月23日 金曜日

平成28年9月23日418号

「業務改善助成金」「キャリアアップ助成金」が拡充されます!

平成28年度の第二次補正予算案が8月下旬に閣議決定されました。
「最低賃金引上げの環境整備として、経営力強化・生産性向上に向けて、
中小企業・小規模事業者への支援措置を推進・拡充する」という国の方針
を踏まえ、予算案には業務改善助成金及びキャリアアップ助成金等につ
いて助成額等の拡充が盛り込まれています。

業務改善助成金及びキャリアアップ助成金の拡充内容(概要)は次の
とおりです。

1.業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上のための
設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内
で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げた場合に、
その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。

これまでは事業場内最低賃金が800円未満の事業場を対象としてい
たため、地域別最低賃金が800円以上の都道府県では利用できませ
んでした。今回の改正では、800円以上1,000円未満の事業場にも
対象が拡充されました。また、さらに大幅な事業場内最低賃金の引上
げ(90円以上)を行う事業場に対する助成措置が助成の上限額が増
額されたコースも新設されます。

なお、拡充後の本助成金の支給は、第二次補正予算の成立が条件と
なりますが、申請は予算成立前でも可能です。

2.キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定(処遇改善コース)」は、有期
契約労働者、短時間労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の
基本給の賃金規定等を2%以上増額改定し、昇給した場合に助成す
る制度です。

今回、中小企業が基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、昇給
した場合、助成額が加算されることになりました。さらに申請があった
企業において、生産性の向上が認められる場合は加算額が増額さ
れます。
生産性の向上については、決算書類から算出した労働者1人当たり
の付加価値から判断されます。
なお、本助成金の加算措置は第二次補正予算の成立と厚生労働省
令の改正等が必要となるため、現時点ではあくまでも予定です。

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2016年9月 8日 木曜日

平成28年9月8日417号

就業規則の不利益が認められる場合

1.原則は不利益変更には合意が必要
法律上、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、
労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」
ただし、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、
A.変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、
B.就業規則の変更が、
(1)労働者の受ける不利益の程度、
(2)労働条件の変更の必要性、
(3)変更後の就業規則の内容の相当性、
(4)労働組合等との交渉の状況
(5)その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは」

変更が許されています(労働契約法第9条、第10条)。
つまり、A「周知」とB「合理性」をクリアした場合には、例外的に不利益変更の効
力が生じるとしているのです。

2.合理性が認められた事例
 最高裁平成9年2月28日第二小法廷判決(第四銀行事件)では、実質的に
58歳定年制であったものを60歳に延長する措置に応じて、55歳以上の労働者
の賃金を引き下げることとした労働条件の不利益変更の合理性が認められました。

具体的には、
(1)就業規則変更による労働者の不利益は、従前の定年後在職制度の下で
得られると期待した金額を2年近くも長く働いてようやく得ることができるという
のであるから、不利益はかなり大きなもの、特に、高齢の行員にとっては相当
の不利益とみざるを得ないとする一方、

(2)定年延長の要請とこれに伴う55歳以上の賃金水準の見直しには高度の
必要性が認められること、

(3)変更後の55歳以上の労働者の労働条件内容は同業他社等ほぼ同様で
あり、賃金水準は社会一般の水準と比較してかなり高いこと、

(4)本件就業規則変更は、全行員の約90%(50歳以上の行員についても
約6割)で組織されている労働組合との交渉・合意を経て行われたものであ
るから変更後の就業規則の内容は労使間の利益調整がなされた結果とし
ての合理的なものであると一応推測できるといった事情から、「合理性」を
肯定しています。

3.合理性の基準
 他方で、特定の高年層(55歳以上)の労働者に集中的に不利益になる
という変更後の労働条件の不相当性が重視され、「合理性」が認められなか
った事例もあります。就業規則の不利益変更は、使用者側の変更の「必要性」
の程度と、労働者側の受ける不利益の大きさに応じ、「相当性」があるか、
比較衡量して「合理性」を決めると言えます。

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2016年8月23日 火曜日

平成28年8月23日416号

パワハラと言われないための7つのポイント

1.事実確認及び証拠収集は正確に行う
注意・指導の際の前提条件。先入観、決めつけで指導を行わない。

2.指導のタイミングが適切か否か
 指導・注意の対象行為と指導・注意までの期間が必要以上に長い場合には
効果は低い。また、そもそも指導・注意の必要がなかったのではないかと判断されることも。

3.指導場所は適切か
 他の従業員の前での指導・注意はその者の部下がいないか、などの配慮が必要。

4.指導時間や時間帯は適切か
 長時間にわたる注意・指導、遅い時間の注意・指導は避ける。

5.指導方法が適切か否か
(1)暴力行為は行わない。
(2)過度に大声は出さない。人格を否定する発言、名誉棄損、威圧的な発言も行
わない。
対象者の態度が悪くても冷静な対応が必要。対象者が録音をしていることも想定
しておく。
2名で行ったり、録音をしたりするのも対策の一つである。
(3)軽微なミスについて行き過ぎた注意・指導は行わない。嫌み、皮肉にも注意
する。
(4)メールでの指導は基本的に行わない。行うにしても他の従業員にCC等で送
らない。
長時間、起立させたままで、注意・指導を行わない。
(5)精神論のみで注意・指導は行わない。注意・指導は具体的に。
(6)特定の者に対して注意・指導を行うのではなく、同じミスをした他の従業員に
対しても平等に行う。
(7)対象者の様子、体調、健康状態への配慮を行う。特にメンタルヘルス不調者
への注意・指導には一層の配慮が必要。

6.指導後のフォローを行う
 指導対象者であっても評価すべきところはしっかりと評価する。強い注意・指導を
行った場合は特にフォローを行う。指導後のフォローによりパワハラ問題の顕在化
リスクは低減する。

7.指導日時、指導場所、指導者、指導内容、本人の発言などを正確に記録する
 正確、詳細な指導記録は今後の注意・指導につなげるために必要である。
特に別室において1対1で指導・注意を行うと、後に、言った言わないのトラブルに
なる可能性もある。特に厳しい指導の場合は2名で行うことや、場合によっては口
頭で録音することを告げて録音するといった対策も必要である。


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2016年8月 8日 月曜日

平成28年8月8日第415号

第三者行為災害届(労災保険)の留意事項

1.「第三者行為」とは?

労災保険では事業主体を「保険者」といい、一方、給付を受ける者を「被保険者」
または「被災労働者」といいます。各々の保険制度では目的に照らして保険給付
を行いますが、その給付の原因が保険者、被保険者以外の不法行為であった
場合、加害者は損害賠償の義務を負います(民法第709条)。

この加害者のことを第三者といいます。たとえば、勤務中の鉄道駅職員を殴った
お客(加害者)等です。

2.届の提出の必要性
労災保険給付が第三者の行為が原因であった場合、給付を受けるべき受給権
者は、労災保険法施行規則第22条の規定によって第三者行為災害届を労働
基準監督署長に行わなければなりません。これは同法第12条の4に定める求償
あるいは控除の調整に必要な情報を報告させるためのもので、第12条の4は、
同一の災害原因で第三者から損害賠償が行われた場合の控除と、保険給付した
場合の求償を定めています。

3.届出書を作成するうえでの留意点
(1) 事業主等(労働者でない)で「特別加入」(制度)の承認を受けていない者が、
業務中の交通事故で相手のない自損事故で被災した場合は、第三者行為災害に
該当しませんが労災保険、健康保険共に適用を受けられないので注意を要します。
健康保険では事業主も被保険者になりますが、労災では事業主のため適用除外
です。健康保険は業務上の給付は対象外で、その結果健康保険、労災保険共に
給付から除外されることになります。ただし例外的に、被保険者が5人未満である
法人の代表者等で、一般の従業員と著しく異ならない労務に従事しているもの
が、業務に起因して負傷した場合、適用されることがあります。

(2) 業務上の災害で、同僚の運転する車両に同乗しているときの事故の場合、
相手方と同僚の運転者が第三者に該当し2人の共同不法行為に該当しますが、
この場合保険者(政府)は一方の第三者が同僚(事業主の支配下にある)である
ことから、法の趣旨に添いかねることにより、求償権の実行を差し控えることに
なります。

(3) 被災者が労災保険を適用して受診した場合でも、被災者が法律に定めら
れた給付制限の重過失に抵触する場合は、保険者から既に受けた給付額の返
還命令を受け、休業(補償)給付は給付の都度(制限期間なし)、障害(補償)給
付、傷害(補償)年金は療養開始後3年以内の給付につき、30%減額されます
ので注意が必要です。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2016年7月25日 月曜日

平成28年7月25日第414号

保険外併用療養制度と患者申出療養制度について

我が国においては、国民皆保険制度によって国民は公的保険制度に加入し、
保険診療を一定限度の負担で受けることができます。また、保険適用が認め
られていない先進的医療については、安全性・有効性を確認した上で、
保険外併用診療制度として保険診療との併用が認められています。

今回は、保険外併用診療制度の中の次の制度をご案内します。

1.評価療養と選定療養

健康保険では、保険が適用されない保険外診療があると保険が
適用される診療も含めて医療費の全額が自己負担になる。

ただし、保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める
「評価療養」と「選定療養」については、保険診療との併用が認め
られており、保険外診療部分については全額自己負担だが、
通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の
費用は、一般の保険診療と同様に扱われる。

(1)評価療養:先進治療や医薬品等であり将来保険給付の
 対象とするべきかの評価を行うものである。先進医療は
 有効性・安全性が確認されれば保険適用となるが、
 確認されなければ除外される。

(2)選定療養:差額ベッド代、時間外診療費や予約診療費等

2.患者申出療養
平成28年4月から、国内ではまだ承認されていない医薬品等の
使用等を迅速に使用できる仕組みとし、患者の治療の選択肢を
拡大するものとして導入されました。

患者が臨床中核病院(厚生労働省が承認した質の高い臨床
医療を行うことができる医療機関)に申し出ると、病院は
厚生労働大臣に申請を行い、同大臣は速やかにこれの
安全性・有効性を確認し、検討した上で承認・非承認を通知します。

承認されれば患者はその治療を受けることができます。

患者が申出を行うに当たっては、大臣告示に規定する申出書を
医療機関と相談しながら作成し、以下の書類と共に臨床中核
病院を経由して、厚生労働省保険局医療課に提出することが必要です。
 
(1)被保険者証写し 
(2)臨床中核病院の意見書
(3)患者への説明時に用いた申出に関わる療養の内容及び費用にかかる
  説明文書 
(4)患者の同意書 
(5)申出に係る相談を実施した場合の面談記録 
(6)患者が申出に係る書類の確認を行ったことを証する書面

本制度により混合診療の範囲は広がるが、自由診療を推奨するものでは
ないこと、安全性が確認されない治療としての危険があることの理解は必要です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2016年7月 8日 金曜日

平成28年7月8日第413号

公正証書遺言について

公正証書遺言とは、民法第969条及び第969条の2に基づき
公正証書による遺言のことをいいます。

平成17年に約70,000件でしたが、平成26年には
約105,000件になりました。

1.公正証書遺言の長所と短所

(1)長所
・自筆の必要がありません。
・原本を公証役場で保存するため、変造・隠匿・紛失・破棄の恐れがありません。
・家庭裁判所による検認手続が不要です。

(2)短所
・作成手続が煩雑で、費用がかかります。
・証人2名の立ち会いが必要になります。

2.公正証書遺言の作成方法

(1)証人2人以上の立会人を決めること

(2)遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること

(3)公証人が口授を筆記し、これを遺言者と証人に読み聞かせ、又は閲覧
 させること

(4)遺言者と証人が、筆記が正確なことを承認の上、各自がこれに署名押印
 すること

(5)公証人が適識な方式に従って作成した旨を付記してこれに署名押印
 すること

※平成11年の民法改正で、聴覚・言語機能障害者に関する特則が設けられました。

3.公正証書遺言を作成する場所
原則として公証役場ですが、遺言者が外出困難な場合は公証人が出張して
くれます。

4.公正証書遺言の撤回・変更方法

(1)遺言の撤回・変更は、公正証書遺言はもとより、自筆証書遺言や秘密証書
 遺言など、他の方式の遺言によっても可能です。

(2)遺言内容の変更において、遺言の前後で内容が異なる場合、その異なる
 部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものと認められます。

5.公正証書等遺言登録検索システム

(1)東京の公証役場では昭和56年・他の全国の公証役場では平成元年以降に
 作成された公正証書遺言・秘密証書遺言についてコンピュータで検索すること
 が出来ます。
(2)生前は遺言者のみ、遺言者の死亡後は相続人などの利害関係人から利用できます。
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2016年6月23日 木曜日

平成28年6月23日第412号

出生時両立支援助成金について

出生時両立支援助成金とは、平成28年度から新たに新設された、
育児休業を取得しやすい職場風土づくりを行い、男性労働者に
一定の育児休業を取得させた場合に受給できる助成金です。

今や男性の育児参加は様々なメディアで取り上げられていますが、
男性の育児休業制度は根づいていないのが実情です。

短い期間でも育児休業を取得し、普段の業務から離れることは、
企業にとっても多くのメリットが考えられます。業種によっては、
男性が子供や女性目線での商品開発やサービスに積極的になる
可能性や、仕事と子育て等の両立支援を手厚くサポートする
企業には、くるみん認定が取得できるなど、魅力的で優秀な
人材が集まる力となっていきます。

<受給条件>
1.男性労働者が子の出生後8週間以内に開始する連続
14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得すること

2.過去3年以内に男性の育児休業取得者がいないこと

3.平成28年4月1日以後、育児休業開始前に男性労働者が
育児休業を取得職場風土作りの取組を行っていること
 ・男性労働者に対する育児休業制度取得促進のための資料等の周知
 ・管理職による子が出生した男性労働者に対する育児休業取得の推奨
 ・男性労働者の育児休業取得促進に関する管理者に対する研修  etc.

4.育児介護休業法に規定されている育児休業制度及び所定労働時間
短縮に関する制度について就業規則又は労働協約に明記していること

5.一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局長に届け出ていること

6.支給申請日以前1年間に育児介護休業法や次世代育成
支援推進法等について重大な違反をしていないこと
<支給額>
 取組かつ育休1人目:30万円(中小企業60万円)
 2人目以降:15万円 ※支給対象となるのは、1年度につき1人まで

男性職員が長期の育児休業を取得することは難しいところもあると
思いますが、大企業で14日、中小企業であれば5日以上を最初の
一歩として取り組んでみてはいかがでしょうか。

詳しくは、当事務所までお問合せください。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2016年6月 8日 水曜日

平成28年6月8日第411号

派遣労働者のキャリアアップ

去年9月30日から施行されている改正労働者派遣法については、すでに
当新聞(395号)で取り上げていますが、今回は、その改正の真髄である
派遣労働者のキャリア形成支援についてご案内いたします。

労働者派遣法第30条において、キャリア形成を念頭に置いた段階的な
教育訓練の実施が求められています。

現在のところ法律上では努力義務となっていますが、派遣業務の
許可・更新申請においては、そうした実施計画が必須となっています。

派遣事業者として、必然的に派遣労働者を雇用した段階から継続した
キャリアアップを目的とした教育訓練の対策をとらねばならなくなっています。
そのキャリア支援措置としては、次の内容となっています。


1.段階的かつ体系的な教育訓練の実施

第30条の2では、すべての派遣労働者に対し有給無償で年間8時間以上の
教育訓練を実施しなければならないとなっています。

また、実施する教育訓練は派遣労働者のキャリア形成に資する内容でなければなりません。

さらに、無期雇用の派遣労働者に対しては、実施する
教育訓練が長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容の
ものでなければなりません。

また、派遣労働者の採用時においても、入職時の教育訓練を
必要としています。

2.キャリア・コンサルティング窓口の設置

派遣元事業主は希望する派遣労働者に対して、労働者の
職業生活の設計に関する相談その他援助を行うための
キャリア・コンサルティングを可能とする窓口を
設けなければなりません。

以上、派遣事業を行う企業にとって、特に中小規模の会社に
おいては厳しい課題となるかもしれませんが、これによって
労働者に対し劣悪な条件で使い捨て同様な雇用環境で
あった会社が淘汰されていくものと思われます。

(スマイルグループ 社会保険労務士)


投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2016年5月23日 月曜日

平成28年5月23日第410号

労働基準法及び健康保険法の産前・産後休業

1.事例
労働基準法第65条には、産前6週間・産後8週間の「産前・産後休業」期間の
条文が設けられ、また、健康保険法第102条には出産した場合の保険給付
として「出産手当金」の定めがあります。今回は、上記法律の出産における
基準日について触れます。

 今回モデルケースとして、出産予定日9月1日(産前休業開始日7月22日)
の女性が、体調不良で産前休業開始日の数週間前から休みを取り、早産と
なり7月1日出産した事例で解説します。

2.労働基準法
労働基準法では「産前6週間の期間は出産予定日を基準として計算し、産後
8週間は現実の出産日を基準として計算する(出産予定日は産前6週間に
含まれる)。6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に予定された
出産予定日よりも遅れて出産した場合、予定日から出産当日までの期間は、
産前休業期間に含まれる」とあり、産前休業の基準日は「出産予定日」として
います。よってモデルケースでは産前休業は出産日(7月1日)の
1日だけとなり、出産日の翌日の7月2日から産後休業期間となります。

3.健康保険法
 一方健康保険法の出産手当金では「被保険者が出産したときは、
出産の日(出産の日が出産予定日後であるときは、出産予定日)
以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日までの
間において労務に服さなかった期間、出産手当金として、1日につき、
標準報酬日額の3分の2相当額を支給」とされています。
産前休業の基準日が「出産の日」であるため5月21日から
産前休業が始まり産後休業が終了するのは8月26日となります。

4.まとめ
このように法律の条文により産前休業期間の考え方が変わります。
モデル例の女性が産前休業前の休みに労務に服していなければ
出産手当金が支給されます(切迫早産などの理由で傷病手当金の
支給を受けていた場合、出産手当金の内払となります)。
結果、平成26年4月から始まった産前産後期間中の保険料免除
申請も可能です。

*通常、産前休業に入る前まで労務に服し休業に入るため、
出産予定日より早く出産した場合は産前休業期間が短くなります。
産前休業に入る前、年休など利用し労務に服していない期間が
あれば(出産手当金額は年休収入により調整あり)、
モデルケースほど出産日が早くない場合であっても、
保険料免除制度等の手続きには注意が必要です。


(スマイルグループ 社会保険労務士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2016年5月 8日 日曜日

平成28年5月8日第409号

平成29年1月1日から改正される育児・介護休業法

妊娠・出産・育児期や家族が介護の必要な時期に、男女ともが離職することなく
働き続けることができるよう、仕事と家庭が両立できる社会の実現を目指し、
雇用環境の整備に向けた改正が施行されます。その中でも今回はアベノミクスの
第3の矢である「介護離職防止」に向けた「仕事と介護の両立支援制度の見直し」
について紹介します。

1.介護休業の分割取得
対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業の分割取得が
可能となります。(現行は通算93日まで、原則1回が上限)

2.介護休暇(年5日)の取得単位の柔軟化
半日単位(所定労働時間の2分の1)の取得を可能となります。(現行は原則1日
単位。努力義務では時間単位の取得が可能)

3.介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)
介護休業とは別に、利用開始から3年間の間で2回以上の利用を可能とする
制度の導入が事業主の義務となります。事業主は次のいずれかの措置を
選択して講じなければなりません。
「所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)」「フレックスタイム制度」
「始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ」「労働者が利用する介護サービス
費用の助成その他これに準じる制度」

4.介護のための所定外労働の免除(新設)
介護終了までの期間について請求することのできる権利として新たに新設されます。
ただし、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等は労使協定で除外が
可能。1回の請求につき1ヵ月以上1年以内の期間で請求でき、事業の正常な
運営を妨げる場合には事業主は拒否できます。

5.有期契約労働者の介護休業の取得要件の緩和
「(1)当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること。
(2)93日経過から6ヵ月を経過する日までの間に、その労働契約
(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了する
ことが明らかでない者」と取得要件が緩和されます。
(現行では(1)は同様、(2)が「1年以上」、介護休業開始予定日から
93日を経過する日以降の雇用継続見込みは削除されます。)

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2016年4月23日 土曜日

平成28年4月23日第408号

従業員のミスに会社はどこまで責任を負わせられるのか?

1.運送会社において、労働者が交通事故を起こした場合
運送会社の従業員が、業務に関して、交通事故を起こし、第三者に損害を加えた
とき、会社は、使用者責任(民法第715条第1項)により責任を負うことになります。
しかし、会社の経営者としては、従業員のミスで交通事故となったのに、全て
会社が責任を負うのは、納得できない、という方も多いのではないでしょうか。
これについて判断した最高裁昭和51年7月8日判決をご紹介します。

2.事案の概要
石油等の運送・販売会社の従業員が、タンクローリーを運転していたところ、
追突事故を起こした。会社は、追突された車両所有者に車両修理費用等を
支払ったので、従業員に対して、求償・損害賠償請求をした事案。

<最高裁の判断>
「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接
損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を
被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の
業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは
損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、
損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、
被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと
解すべきである。」

3.報償責任の法理というもの
最高裁の判断の根底には、報償責任の法理(事業活動において利益を得ている
使用者は、その収益活動から生ずる損害については責任を負うのが公平)がある
とされます。これにより、使用者の労働者に対する損害賠償及び求償権の行使を
一定の割合で制限されることになります。
制限割合については、一律の判断基準はありません。判例に列挙されている
事情を総合的に見て判断されます。ちなみに、上記事案においては、会社が、
石油等の運送・販売という危険を伴う事業であること、会社が任意保険に加入
していないこと、労働者が特命により臨時的に加害車両を運転して業務中
発生した事故であり労働者の過失が重大なものでないこと、労働者の勤務成績が
普通以上であったことを考慮し、労働者に対し、求償ないし賠償請求できる
範囲は、信義則上損害額の4分の1が限度であるとした原審の判断を
相当として認めています。

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2016年4月 8日 金曜日

平成28年4月8日第407号

自己申告した労働時間を後日否定した残業代請求

人事担当者からこのような相談がありました

退職する従業員から過去の未払い残業代の請求をされています。残業はすべて
自己申告制となっており、本人からの申告に基づき適正に支払ってきました。
今回の従業員の言い分は「会社と上司からの売上アップ、経費削減の
プレッシャーが強く、とても実際働いていた時間を申告できなかった。」というものです。

会社としては適正な申告をすれば支払っているのにそれをしなかった従業員に
問題があると考えていますが、支払わなければなりませんか?

結論からいいますと、実際に残業をしていて未払い残業があった場合
「適正申告しない従業員が悪い」という考え方は通用しません。

申告しなかったことは「自己責任」であり、後日残業代を請求しても「会社側に
支払い義務はない」と考えてしまいそうですが、実際に時間外労働があって
残業代が未払いであるなら未払い残業代の請求権は発生します。

遡及できるのは最大過去2年分

労働基準法第115条には、賃金(退職手当を除く)の請求権は2年間と定められています。
従って、時間外労働賃金の時効は権利発生から2年となり、従業員側は
最大過去2年分の残業代遡及請求が可能です。この請求において
在職中か否かは問いません。

過去の労働時間の把握の仕方

ただ、過去の労働時間が正確に把握できていなければ実際に残業代の算出が困難です。
労働基準監督署でも客観的な記録がなければ支払命令などは出しようがありません。

このケースでは、日報として退社時刻近くに本社にメールを送っていました。
そこでこれを客観的な記録として労働時間を把握することが出来ました。
手書きの出勤簿では早く退社したことになっていたのですが、
実際残業していたということがこの記録から確認されたのです。

ほかにも百貨店などの入館退館記録、従業員本人による手帳への
記録なども労働時間の記録として認められることが多いようです。

自己申告制を採る企業の場合、手間はかかりますが日々の勤怠を適正に
把握していくことでトラブルを防止することができます。 
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2016年3月23日 水曜日

平成28年3月23日第406号

労働局から「あっせん開始通知書」が送られてきたら

1.個別労働関係紛争とは?

個別労働関係紛争とは、労働条件その他労働関係に関する事項についての
労働者と使用者間の争いです。具体的には、解雇、雇止め、配置転換・出向、
昇進・昇格、いじめ・嫌がらせといった事項についての労働者と使用者間の
争いで、使用者、労働者双方が、労働局での相談や、あっせん制度を
利用することができます。

2.労働局のあっせん制度

通常は、行政的解決の方法としては、都道府県労働局長による助言や
指導の後にあっせんに進む場合が多いのですが、最初からあっせんの
利用を求める労働者もいます。

手続きとしては、労働者が「あっせん申請書」を都道府県労働局長に提出し、
労働局で審査し、「紛争調整委員会」へあっせんを委任します。

その後「あっせん開始通知書」が労働局から送られてきます。ここで、
使用者は労働者と紛争状態になったことを意識するわけです。ただし、
あっせんに応じるかどうかは自由ですし、不参加でも不利益な取扱いが
なされるわけでもありません。

3.紛争調整委員会

「紛争調整委員会」とは、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の
専門家で組織された委員会で、都道府県労働局ごとに設置されています。

この紛争調整委員会の委員の中から指名されるあっせん委員が、紛争解決に
向けてあっせんを実施します。

あっせん委員は中立な立場であっせん案を出してくれますし、あっせん案に
同意できなければあっせんを打ち切りにできます。

4.あっせん当日

あっせんは、申請人と被申請人が別々の部屋で行われ、各々があっせん委員を
前に主張を行います。あっせんに要する時間は、約2~3時間で、顧問の弁護士や
特定社会保険労務士は代理人になることができます。費用は無料です。

あっせん開始の通知から、2ヵ月以内にあっせんが行われ、開催は1回のみで、
この1回で合意できるか否かを当事者が判断し、当事者双方が合意した場合、
その場で合意文書が作成されます。

5.メリット・デメリット

1回のあっせんで妥結できるので問題を早く解決できる等のメリットがある反面、
あっせんでの合意は民法上の和解契約なので、相手が履行してくれなくても
強制執行できないこと等があげられます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2016年3月 8日 火曜日

平成28年3月8日第405号

成年後見人制度について

 本年2月、成年後見人利用促進法の提案を政府与党が了承しました。
かつては、判断能力が衰えたり、喪失した人の法的関係を保護するために、
禁治産及び準禁治産の制度が設けられていました。

禁治産制度では、判断能力の程度が心神喪失の状況にある者を対象に
禁治産・準禁治産宣告が行われ、保護機関として後見人が置かれていました。

 しかし、この制度では、
(1)禁治産等の宣告が戸籍に記載されるので、本人・親族等関係者に
  避けられることが多かった。
(2)財産保護に偏っており日常生活の補助がない。
(3)行政機関に申立権がなく、身寄りのない人は制度を利用できない。等様々な
  問題が指摘され、平成12年4月に民法が改正されて、成年後見制度ができました。

1.現在の利用状況

 平成12年の申立件数は約三千六百件でしたが、平成26年の申立件数は
約3万4584件、当初の約9.5倍、制度利用者は27万9千人となりました。

今後、高齢人口の増大と一人暮らしの高齢者の増加により、利用者は増加すると
判断されています。日本の認知症高齢者は約300万人、
知的・精神障害者は約378万人にのぼります。

欧米では、人口の1割程度が制度利用の標準となっており、
我が国の潜在需要は120万人前後と推計されますが、
制度の内容が十分知られていないのが実情です。

2.制度の概要

(1)判断能力喪失の程度により、補助、補佐、後見の3類型で法定後見制度
  とした。
(2)戸籍への記載に代えて、登記することで登録して公示する制度とした。
(3)市町村長に対し、法定後見開始の審判申立権を付与した。
(4)複数の後見人、法人の後見人が選任できるようになった。
(5)将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人に代理権を
  与える契約を公正証書で作成する「任意後見人」制度が創設された。
(6)財産管理だけでなく、介護契約・施設入所等身の回りの契約が可能となった。

 将来、認知症等で判断力が低下した場合、財産の管理・介護サービス契約・
施設への入所契約・財産分割協議などの処置が必要となります。

現在、成年後見人の専門職受任機関として、弁護士、司法書士、社会福祉士、
行政書士、税理士がそれぞれの専門的な立場から受任、社会保険労務士も
介護保険や年金の専門家としての特性を生かして後見人活動を行っています。

親族にまさかの事態が発生することを予想して、予め対応策を立てておくことは、
安心な将来設計のために必要な準備と思われます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2016年2月23日 火曜日

平成28年2月23日第404号

公的証明書の有効期限について

重要な場面で提出を求められることが多い戸籍・住民票・印鑑証明書等
(以下「公的証明書」という。)ですが、その有効期限というのは、
どのように定められているのでしょうか?

1.主な公的証明書
(1)戸籍  ...人の親族法上の身分関係を公証するためのもの。
(戸籍法)
(2)住民票 ...居住関係の公証、選挙人名簿登録等のためのもの。
(住民基本台帳)
(3)印鑑証明書
印影があらかじめ届け出てある印鑑と同一であることを証明する官庁・公署の書
面。会社・法人については、根拠が商業登記法にありますが、個人については市区
町村長が条例や古くからの慣例に従って交付しているとされています。

2.公的証明書の有効期限
(1)一般法として有効期間・期限を定めた法律はありません。
(2)有効期限が求められるのは、個別に有効期限を定めている法律や
各地方自治体の条例等が存在するからです。次に例を挙げます。

ア.不動産登記での印鑑証明書     ...3ヵ月以内
イ.パスポート申請での戸籍・住民票  ...6ヵ月以内
ウ.古物商取得での住民票       ...3ヵ月以内
エ.一部市役所等の婚姻届出の戸籍謄本 ...3ヵ月以内

3.ある証明書が「3ヵ月」と定められている場合の具体例

民法第140条では「期間が、日・週・月・年を単位とするときは、(中略)初日は算入しない。」
と定められています。
また、行政機関の休日に関する法律第2条では「国の行政庁に対する申請・届出その他の
行為が行政機関の休日に当たるときは、行政機関の休日の翌日をもってその期限とみなす。」
と定められています。

(1)4月10日作成の場合 ...7月10日まで有効
(2)3月30日作成の場合 ...6月30日まで有効
(3)2月28日作成の場合
ア.うるう年でない場合 ...5月31日まで有効
イ.うるう年の場合   ...5月28日まで有効
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2016年2月 8日 月曜日

平成28年2月8日第403号

自転車通勤をめぐる問題とリスクについて

 平成27年6月1日に道路交通法が改正となり、自転車運転の違反を3年以内に2回行なうと自転車運転者講習を受けなければならなくなりました。エコブームや健康志向から自転車を利用する人が急増し、自転車と歩行者の事故が増えてきていることが背景にあります。また、自転車による事故が起こった場合、自転車通勤を容認する企業では、企業の「使用者責任」を問われる可能性を想定しなければなりません。自転車通勤を管理していくポイントと、企業に求められる対応について説明します。

1.従業員が加害者となった場合

 まず、従業員が加害者となった場合の損害賠償について考えましょう。損害賠償については、従業員がその責任を負うことになりますが、それが果たせない場合には、企業が責任を追及されることがあります。そのため、企業のリスク管理としては、従業員に民間保険への加入義務を課すなどの対策を講じておく必要があります。

2.自転車通勤途上の事故は、通勤災害と認められるか

 従業員が自転車通勤をする際に、まず心配されるのが通勤途上の事故の問題です。通勤災害として認められるためには、通勤と災害との間に因果関係がなければ保険給付の対象とはなりません。しかし、自転車通勤の場合には自由度が高いため、合理的な経路を外れる頻度が高いと考えられます。例えば、会社に届けている通勤経路ではなくても、日常生活上必要な行為として、子供の送迎のために保育園等へ行くことは、合理的な経路として取り扱われることになりますが、自宅から直接取引先に行くような場合は、通勤災害とはならず業務災害として取り扱うことになります。自転車通勤者に対し、通勤災害に関する基本的なルールを説明し周知徹底することが重要です。

 実際に自転車通勤を認めることになると、許可する際の手続などを明確に定めておく必要があります。併せて自転車通勤規程や許可申請書、誓約書の提出などのルールを定め、企業の実態に合わせた運用管理が望まれます。また、事故のリスクの高さから自転車通勤を認めないということも考えられます。認めない場合には、その旨を従業員に周知し、無断で自転車通勤をする者が出ないよう就業規則の服務規定の中に自転車による通勤をしてはならない旨を定めておくことが求められます。

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2016年1月23日 土曜日

平成28年1月23日第402号

フレックスタイム制度における欠勤の扱い等について

 先日、電話相談で「フレックス制度を使用しているが、従業員が就労日に欠勤をした。月間の総労働時間は満たしているが、欠勤として処理してよいか?ちなみにコアタイムは設けていない。」という質問を受けました。

 労働基準監督官が回答に対して常に参考にする「コンメンタール」の解説によると、年次有給休暇の出勤率の計算についての説明の中に次のように記載されていました。

1.コアタイムが設けられている場合
コアタイムはすべて欠勤し、フレキシブルタイムに一部労働した場合であっても、出勤率は、労働日単位で見ることとされているので、当該日は出勤したものとして取り扱わなければならない。
2.コアタイムを設けていない場合
コアタイムを設けていない場合には、出勤日も労働者の自由に委ねることとされている。この場合の「労働日」「出勤日」は、次のとおりである。

(1)清算期間における総労働時間労働している場合
当該清算期間における「全労働日」は当該労働者が実際に労働した日数とし、その全日出勤したものとして計算する。

(2)清算期間における総労働時間労働していない場合
当該清算期間における「全労働日」は所定休日を除いた日とし、そのうち当該労働者が労働した日を出勤日として計算することになる。

 つまり、コアタイムを設けている場合には、所定労働日が定められていますが、コアタイムを設けていない場合は、法定休日を確保するために所定休日を定めることはできても所定労働日を定めることはでないという、この違いが一般的には理解されず大きな誤解となるようです。よって、コアタイムを設けていない場合は、月間の総労働時間を満たしているのであれば、賃金上での欠勤処置はすべきでないが、従業員管理上での欠勤措置は必要の範囲内で行えばよいということになるのです。

 また、フレックス制度における総労働時間の過不足の処置について付け足すと、実労働時間が総労働時間を超えた場合には、その全額を当月に清算しなければ、労基法第24条に反することになりますが、実労働時間に不足があった場合、当月の賃金は全額支払った上で、不足する労働時間を次月の基準労働時間に上乗せすることは可能です。要するに先払いした賃金分を翌月に労働させることは問題ないという意味になります。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2016年1月 8日 金曜日

平成28年1月8日第401号

今年10月から始まる社会保険適用基準の拡大

 いよいよ今年10月からパートタイマー等短時間労働者の社会保険(厚生年金、健康保険)適用基準が拡大されます。現在の基準は、通常の労働者(正社員)の4分の3以上(週40時間勤務なら週30時間以上)勤務する者が社会保険加入対象ですが、新たな社会保険適用拡大の基準は、次のすべての基準を満たす必要があります。

(1)週20時間以上の勤務
(2)賃金月額8.8万円以上(年収106万円以上)
(3)契約期間1年以上
(4)現行の適用基準で適用となる被保険者が501人以上(学生は適用除外)

 現在、ご存じの通り所得税で「103万円の壁」、社会保険で「130万円の壁」があります。「103万円の壁」を超えると所得税が発生し配偶者控除も受けられなくなり勤務先の制度によっては配偶者手当も打ち切られる可能性があります。そして、健康保険の被扶養者や国民年金第3号から外れ、自ら社会保険料を支払う必要が出てくる「130万円の壁」が「106万円の壁」に変わろうとしています。

 労働者のメリットとしては、健康保険に加入することにより、子が生まれた場合「出産手当金」(産前・産後休業期間)、病気やケガで会社を休んだ場合「傷病手当金」(休業後4日目から1年6ヵ月を限度)が標準報酬日額の3分の2支給されます。また、厚生年金に加入することにより、老齢年金額が増加しますし、障害にあった時の障害年金、亡くなった時の遺族年金等受けられる保障が増えます。

 企業側としては、法案が審議されていた当時からパート労働者の多い流通、外食、医療・福祉関係の事業団体を中心に、社会保険料負担(平成24年3月厚労省の試算では事業主負担計800億円増)の重さに対し反対意見が多く出されていました。

 今後、働き手側からの選択肢としては、(1)従来以上多く働いて年収を増やす(正社員を目指す)(2)労働時間を減らす(3)500人以下の会社へ転職が考えられます。ただし、近いうち(施行3年後適用要件の見直し)に適用基準(4)の人数は大きく下がり、該当企業が拡大し、加入対象となるパート等は増えていくと思われます。企業側としては社会保険料負担をカバーすべく「より多く働きたい」質の良いパート労働者の確保に向け「短時間正社員制度」等の制度構築も検討する必要があると考えます。

一方政府は、平成28年4月から4年間、現行の「130万円の壁」対策として、パート等に対して大企業で2%、中小企業で3%以上賃上げ・週5時間以上の勤務時間を増やした企業に助成金を支給する制度を始めます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年12月23日 水曜日

平成27年12月23日第400号

ストレスチェックとは?

1.ストレスチェック制度の義務化
労働安全衛生法の改正により、平成27年12月からストレスチェック制度が義務化されました。
この制度は、定期的に労働者のストレスについての検査を実施し、自らのストレス状況についての気付きを促すことで、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、改めて職場のストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることを目的としています。

2.ストレスチェック制度の内容
事業者は、年に1回、労働者に対して質問形式でストレスチェックを実施し、実施者(医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士)が、ストレス状況を評価し労働者に通知する必要があります。ストレスが高い労働者に対しては、本人からの申出があれば、医師による面接指導の実施が義務とされています。
ストレスチェック実施後、面接指導を実施した医師からの意見聴取をおこない、必要があれば労働時間の短縮などの必要な措置を実施することも重要です。
また、労働者が安心して受検できるようにプライバシー保護や、不利益取扱いの禁止規定も定められています。
制度の詳しい内容については、厚労省のホームページで確認できます。「5分でできる職場のストレスチェック」という簡易ツールも公開されていますので、一度受検されてみてはいかがでしょうか。

3.ストレスチェック制度を実施しないことによる法的な問題
新たな制度が始まると聞くと事業者は、身構えてしまいますが、対象となるのは、従業員数50人以上の事業場です。50人未満の事業場は、当分の間、努力義務となりますので、多くの中小企業では、努力義務にとどまることになるのではないでしょうか。しかし、労働者のメンタルヘルス不調が社会問題化し、今回の法改正があったことは、十分に考慮しておく必要がありそうです。労働者が病気となった場合に、ストレスに配慮していなかったことが労働管理上の過失といわれる場合もあり得ます。労働者と会社というのは、中小企業にとっては車の両輪のような関係です。労働者が元気で輝いている会社は、事業も発展していくものです。これを機に、メンタルヘルスを考える「きっかけ」にしてみてはいかがでしょうか。
(スマイルグループ 弁護士)

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2015年12月 8日 火曜日

平成27年12月8日第399号

来年も実施される可能性の高い補助金

来年も実施される可能性の高い補助金をピックアップしました。
今後の国・自治体の動きによって追加・変動があると思いますが、ご参照ください。

公募開始時期(2015年)
 2月:小規模事業者持続化補助金(1次)
 3月:創業補助金(1次) ・
    :海外ビジネス戦略推進支援事業(1次)
 4月:創業補助金(2次)
 5月:小規模事業者持続化補助金(2次) 
    :海外ビジネス戦略推進支援事業(2次)
 7月:小規模事業者持続化補助金(追加)

<概要>
1.「創業補助金」最大200万円(経済産業省)
  募集開始:3、4月(2015年)
  対  象:個人事業主、株式会社、有限会社、合同会社、NPO法人など
  対象事業:賃料、人件費、コンサル料、改装費、備品代、
         HP製作費、広告宣伝費、登記費用など
  補助金額:補助対象費用の2/3(最大200万円まで)

2.「小規模事業者持続化補助金」最大50万円(中小企業庁)
  募集開始:2、5、7月(2015年)
  対  象:常時使用する従業員が20人以下
       (卸売/小売/サービス業等は5人以下)
  対象事業:コンサル料、改装費、HP制作費、広告宣伝費、展示会出展費など
  補助金額:補助対象費用の2/3(最大50万円まで)
  採 択 率:20~30%(非公開のため予想)

3.「海外ビジネス戦略推進支援事業」最大160万円(中小企業庁)
  募集開始:3、5月(2015年)
  対  象:海外拠点を検討している中小企業者
  対象事業:市場調査費、翻訳・通訳費、旅費、Webサイト構築費用
  補助金額:補助対象費用の2/3(最大160万円まで)
  採 択 率:(非公開)

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年11月23日 月曜日

平成27年11月23日第398号

打ち切り補償による解雇(地位確認等反訴請求控訴)事件

 本件は、業務上疾病により休職中で労災保険給付(療養補償給付・休業補償給付)を受けている従業員(X 男性)に対し、勤務先(Y)が労働基準法81条に基づき平均賃金の1200日分相当額の打切補償を支払って行った解雇について、解雇は無効であるとして、労働契約上の地位確認請求が認容されたことについての反訴です。

1.東京地裁、東京高裁の判決
 Xは平成14年ごろから首や腕に痛みが生じて頸肩腕症候群と診断され、平成19年に労災認定を受け休職した。Yは平成23年に打ち切り補償約1629万円を支払いXを解雇。X側が地位確認を求めて提訴した。一審(東京地裁)は「打ち切り補償の適用は、使用者による療養補償(労災給付ではない)を受けている場合に限られる」とし、解雇無効と判断。二審(東京高裁)も支持していた。

2.争点は?
 労働基準法は業務上のケガや病気で療養中及びその後30日間の解雇を禁止しているが、使用者が療養費を負担し3年が過ぎても治らない場合、平均賃金1200日分の「打ち切り補償」を支払って解雇できると規定している。
 一、二審の判決の結論が維持されたまま確定すれば、使用者が労災保険料を負担して労災給付を行っても打切補償の規定を適用した解雇ができないことになることから、実務に大きな影響を及ぼすものと注目されていた。

3.最高裁判決
 最高裁は、平成27年6月、「労災保険が給付されている場合、労働基準法が使用者の義務とする災害補償は実質的に行われているといえる」という拡張説を明らかにした。4人の裁判官の全員一致で「療養開始後3年が過ぎても治らない場合、打ち切り補償の支払いで解雇できる」という初判断を示し、高裁への差戻し判決が出た。

 近年、メンタルへルス疾患により長期間休職を行う労働者が増加しています。
 このたび打切補償を支払ってなす解雇有効判断がありましたが、一方、療養中なのに解雇されてしまう労働者の保護とどう調整するのか、今後の動向にも注目です。
 詳細は、学校法人専修大学(地位確認等反訴請求控訴)事件をご一読ください。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年11月 8日 日曜日

平成27年11月8日第397号

被用者年金制度の一元化について

 「社会保障と税の一体改革大綱について」(平成27年2月17日に閣議決定)を踏まえ、平成27年10月1日「被用者年金一元化法」が施行されました。

 民間サラリーマンに適用されていた厚生年金保険が、公務員及び私学教職員にも適用されます。今回の一元化のポイントは、かつての国鉄や電電公社の厚生年金への統合とは異なり、各共済年金機関が実施機関となることです。つまり、被保険者資格の管理、保険料の徴収、年金額の決定、年金支払い等は、種別ごとに各実施機関が行い、厚生年金法を改正し適用することにより一元化されました。

1.一元化後の被保険者の種別
            (従来の被保険者ごとに種別名称がつけられました。)
(1)第1号厚生年金被保険者:従来の厚生年金被保険者
                            (実施機関:厚生労働大臣)
(2)第2号厚生年金被保険者:国家公務員共済組合の被保険者
                                 (国家公務員共済)
(3)第3号厚生年金被保険者:地方公務員共済組合の被保険者
                                 (地方公務員共済)
(4)第4号厚生年金被保険者:私学共済制度の加入者
                            (日本私学振興共済事業団)

2.共済年金と厚生年金の制度の相違点の解消
 両制度の差異を解消するため、内容により共済年金と厚生年金制度のどちらか
の規定が適用されます。主な概略は次の通りです。
(1)共済年金の制度が、厚生年金にも適用されるもの
  ア 被保険者期間の計算 
   厚生年金の資格を得喪し、同月内に国民年金の資格を取得した場合、従来
  は両方の保険料の負担が必要でしたが、国民年金のみの負担となります。
  イ 在職老齢年金の期間
   在職老齢年金は、資格喪失の月まで被保険者でしたが、退職した月まで在
  職老齢年金となり、月末退職の場合でも翌月から年金の支給停止が発生しな
  くなりました。
  ウ 資格喪失時の年金額改定
   従来は資格喪失日から起算して1ヵ月を経過した日の属する月から年金額
  が改訂されていましたが、退職した日から起算され月末退職時の遅れが解消
  されます。

(2)厚生年金の制度が、共済年金にも適用されるもの
  ア 未支給年金の支給範囲
   厚生年金の支給範囲の他に相続人があった場合でも、厚生年金の規定とな
  ります。
  イ 在職老齢年金:激変緩和措置への配慮
   退職共済年金受給者が厚生年金被保険者となった場合、従来は別制度のた
  め、賃金+年金が47万円を超えた場合の支給停止でしたが、28万円超に
  緩和されます。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年11月 5日 木曜日

平成27年10月23日第396号

代襲相続

 相続が開始する以前に推定相続人が死亡・欠格・廃除などによって相続権を失った場合に、その者の直系卑属がその者に代わって同一順位で相続人となることをいいます。これは、直系卑属の期待権を保護するのが公平という考えに基づくものとされています。

1.被代襲者
 被代襲者は、被相続人の子及び兄弟姉妹で、被相続人の直系尊属及び配偶者は被代襲者とはなりません。
 
2.代襲相続人「子の代襲相続の場合」
(1)代襲相続人の限定
  代襲相続人は「被代襲者である子」の直系卑属(被相続人の孫・ひ孫など)また
 は「被代襲者である兄弟姉妹」の子(被相続人の甥・姪)に限ります。
(2)子についての代襲相続
  代襲相続人は、相続権を失った者の子であるとともに、被相続人の直系卑属で
 なければなりません。そのため、養子縁組前に生まれた養子の子は代襲相続人
 とはなりません。
(3)兄弟姉妹についての代襲相続
  代襲相続人は、相続権を失った者の子であると同時に、被相続人の血族(傍系
 卑属)であることを要します。養子の縁組前の子は養子を代襲して養親の他の
 子の遺産を代襲相続することができません。
(4)その他
  代襲相続人は、被代襲者が相続権を失ったときに存在している必要はなく、相
 続開始時に存在していればよいとされています。

3.代襲原因
 代襲原因は、被代襲者が相続開始以前に死亡(失踪宣告を受けた場合や同時死亡の推定の場合を含みます)しているとき・相続欠格・相続人の廃除の3つの場合とされており、相続放棄は代襲原因とはなりません。

4.代襲相続人の地位
 代襲相続人は、被代襲者に予定されていたのと同一の順序で、被代襲者に相当する相続分を相続します。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2015年11月 5日 木曜日

平成27年10月8日第395号

労働者派遣法改正

 派遣労働という働き方は、 臨時的なものであるという考え方のもと、常用代替を防止し、派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップを図るため、平成27年9月30日から労働者派遣法が改正施行されました。

1.派遣労働者と派遣先社員の均衡待遇の推進
 派遣先は、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、次の点で配慮義務が課され、具体的な行動を行う必要があります。
(1)派遣元事業主に対し派遣先の労働者に関する賃金水準の情報提供等を行う
 こと
(2)業務に密接した教育訓練を実施する場合は、派遣労働者にも実施すること
(3)派遣先の労働者が利用する福利厚生施設利用の機会を派遣労働者にも与え
 ること

2.期間制限のルールが変わります
 現在の期間制限を見直し、施行日以後に締結・更新される労働者派遣契約は、全ての業務に対して、派遣期間に次の2種類の制限が適用されます。
(1)同一の派遣先の事業所において、労働者派遣の受入れを行うことができる期
 間は原則3年が限度となります。  
※派遣先が3年を超えて受け入れようとする場合は、派遣先の過半数労働組合等からの意見を1ヵ月前までに聴く必要があります。
(2)同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位において 受
 け入れることができる期間は、原則3年が限度となります。

3.労働契約申込みなし制度
 平成27年10月1日から、労働契約申込みなし制度が施行されます。派遣先が次に掲げる違法派遣を受け入れた場合、派遣先は派遣労働者に対し派遣元と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。
(1)労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
(2)無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
(3)派遣可能期間を超えて労働者派遣を受け入れた場合
(4)いわゆる偽装請負の場合

 施行日時点ですでに締結されている労働者派遣契約については、その労働者派遣契約が終了するまで、改正前の法律の期間制限が適用されます。しかし、申込みなし制度適用のリスクを完全に排除するためには、専門26業務など、期間制限違反を主張されるおそれがある場合は、10月1日時点で新法適用に切り替え、また、継続している労働者派遣個別契約は、派遣会社と合意の上9月29日で終了し派遣期間を9月30日開始とする労働者派遣個別契約を締結し、申し込みなし制度の適用を受けないよう締結日は平成27年9月30日と記載する必要があります。

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2015年10月 1日 木曜日

平成27年9月23日第394号

定額残業手当額を下回った場合の差額繰越

 昨今、定額残業手当にまつわるご相談が多くなっています。事業主は定額残業手当を支払っているが、労働者は時間外労働の賃金未払を訴えるケースです。
 

 定額残業手当制度を採用する場合、事前に時間外の労働時間あるいは手当額がどの賃金項目にどれだけ含まれているかといった説明が必要であり、書面上(雇用契約書、労働条件通知書、周知された就業規則等)にも記載が必要です。

 定額残業制度がきちっと運用され、計算も正確に行われていれば、表題のように当月余った定額残業時間を翌月以降に繰り越すことが可能でしょうか。
 

 平成21年3月27日東京地裁『SFコーポレーション事件』では、「月8万円の管理手当は割増賃金の内払いと認められ、繰越分の翌月に繰り越す旨の規定により未払割増賃金は存在しない。」という判例があります。

 また、フレックスタイム制における通達昭和63年の基発第1号では、「精算期間における実際の労働時間に不足があった場合に、総労働時間として定められた時間分の賃金は、その期間の賃金支払日に支払うが、それに達しない時間分を、次の精算期間中の総労働時間に上積みして労働させることは、法定労働時間の総枠の範囲である限り、その精算期間においては実際の労働時間に対する賃金よりも多くの賃金を支払い、次の精算期間でその分の賃金の過払いを精算するものと考えられ、法第24条に違反するものではないこと」とあります。例えば、当月実労働時間が規定労働時間に10時間不足した場合は、規定賃金を支払えば、次月規定労働時間に10時間を上乗せ可能となります。

 これらの考え方からすれば、定額残業手当の過払い分を翌月以降の不足分に充当するという取扱いも同様に考えられることができるように思われます。

 しかし、『SFコーポレーション事件』の判決は、あくまで地裁レベルの判決であり、確定的な判断ではないことや定額残業手当過払い分の繰越ができるかどうかが争点の裁判ではなかったこと、この判決を受けて国から通達やコメント等がなく、行政指導の方針が変わったことを確認できていません。また、フレックスタイム制の通達は法定労働時間の総枠の範囲内であることと限定されており、残業時間の繰越しができるとはされていません。そのため、残業手当は月単位で支給される賃金であり、毎月賃金請求権が発生するため、月を超えて平均化することはできない、つまり定額残業手当の差額繰越はできないとする従来の見解のまま、毎月精算する制度にしておくことが無難です。

 また、定額残業手当制度であっても、時間外計算は毎月必要であり、繰越充当するのであれば、さらに繰越充当時間の管理も必要となってきます。このことを考えれば、企業における運転資金の資金繰りという点では平準化というメリットがありますが、事務の効率化という点では逆効果のようです。 

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年10月 1日 木曜日

平成27年9月8日第393号

報告聴取
 

 行政の事業所調査の中で、今回は各都道府県労働局雇用均等室が行う3つの「報告聴取」調査について触れます。

 雇用均等室で扱う主たる法律は3つで、「男女雇用機会均等法」(以下「均等法」)「パートタイム労働法」(以下「パート法」)「育児・介護休業法」(以下「育介法」)です。
 均等法第29条、パート法第16条、育介法第56条其々の条文に「厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる」と記載されています。労働局雇用均等室は、この条文を根拠に各事業所へ調査を行います。

 聞き取り・調査内容は、「均等法」では、母性健康管理対策・セクハラ防止対策(セクハラ相談窓口の設置含む)の規定整備状況又は社内掲示物の確認をし、ポジティブ・アクション(男女労働者間に事実上生じている格差を解消するための自主的かつ積極的な取り組み)の推奨等について説明をします。

 パート法では、パート社員の職務内容・人材活用の仕組み・正社員との待遇の格差が不合理となっていないか等を調査。また、正社員転換推進措置の整備状況、労働条件通知書(昇給、賞与、退職手当、相談窓口等の明示事項)の交付状況、雇入れ時の説明義務(賃金制度、教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換推進措置等)が果たされているか等を確認します。

 育介法では、各制度(育児6制度、介護5制度)の利用実績を聞き取りながら、育児・介護休業規程の有無、及び規程内容が現行の法の内容と合致しているか。また、各制度が法に則して運用されているか確認をします。

 各報告徴収の調査では、法律内容に即していない規定・運用があれば、その場で助言され、是正・改善(行政指導)が求められます。是正期日は各法律の是正内容で異なり、原則、短いもので1週間以内(均等法、パート法)、長いものでも1ヵ月以内(育介法)となっています。罰則としては、報告の求めに対して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料(行政罰で、刑事罰の科料とは異なります)とあります。各調査に掛かる時間は、均等法・パート法で約30分、育介法で約1時間位。法に則しての調査の為、拒否することは出来ず、日程の変更は求められます。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年10月 1日 木曜日

平成27年8月23日第392号

就業規則見直し~無期労働契約への転換と定年

1.無期労働契約への転換
 平成24年に「労働契約法」が改正され、パート、アルバイト、契約社員、嘱託、派遣社員など雇用期間の定めのある「有期労働契約」の社員を保護する取扱いが創設されました。有期労働契約が繰り返し更新された場合に、雇用期間が通算5年を超え、労働者側から無期契約を希望した場合には、無期労働契約(期間の定めのない契約)に転換されることになりました。この「労働契約法」の改正により「就業規則の見直し」が必要になる場合がありますので、その注意点についてご説明します。

2.定年を定める必要性
 これまで、有期労働契約者は期間が満了すれば退職となり、「定年」を定めておく必要がありませんでした。しかし、今回の改正により、無期労働契約に転換した場合には、「定年」がない限り、原則として雇い続ける必要があります。つまり、「正社員就業規則(無期労働契約)」、「非常勤社員就業規則(有期労働契約)」など、別々の「就業規則」を作成している場合には、「非常勤社員就業規則」にも、無期労働契約に転換した場合に備えた「定年」の定めをしてください。

3.具体的な対策
 具体的には、有期労働契約者の就業規則にも、「無期労働契約へ転換した社員の定年は、満60歳とし、定年の達した日の属する月の末日をもって退職とする」など「定年」の定めを明記をしてください。しかし、さらに、60歳以降も有期労働契約を続けていた方が、その後に無期労働契約への転換を希望された場合、終身雇用となってしまう可能性も考えられますので、「雇用契約は最長でも、65歳まで」など第2の「定年」を定め、かつ、定年後は無期転換申込権を行使できないとする無期転換ルールの特例を利用するなどの対策が効果的です。上記の無期転換ルールの特例を利用する場合、管轄都道府県労働局に計画認定・変更申請書の提出を要します。
 その他、有期労働契約の労働者にも無期労働契約者となった場合には、有期労働契約者に対しては規定されていなかった職種変更や、配置転換および賞罰などの適用があることも周知する必要があります。
 

(スマイルグループ 弁護士)

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2015年8月10日 月曜日

平成27年8月8日第391号

個別労働紛争解決制度

 平成13年に個別労働紛争解決促進法が制定され、個別労働紛争の簡易迅速な解決を促進するための行政上の制度(個別労働紛争解決促進制度)が整備され、運用されています。制度は次の3つあります。

1.総合労働相談コーナーによる情報提供・相談
 各都道府県労働局では、局内や労働基準監督署庁舎内、主要都市における駅周辺のビル内などに総合労働相談コーナーを設け、労働関係等に関する事項につき情報提供や相談を実施しています。労働関係についての相談等を広く受け付け、労基法・職安法などの法令違反とみられる事案については、管轄する機関を紹介したりしており、労働関係上のトラブルを広く、相談の対象としています。

2.都道府県労働局長の助言・指導
 行政機関が紛争の当事者に対して、紛争に係る事実関係を整理したうえで、法令や判例等に照らして問題点を指摘したり、解決の方向性を示たりすることにより助言・指導を行い、当事者による紛争の自主的解決を促進しようとするものです。例えば、解雇された労働者から申請があった場合、都道府県労働局長は、労契法16条(解雇権濫用法理)に照らし、当該解雇が解雇権濫用に当たるおそれが強いと判断されるときには、解雇を撤回したり再考したりするように事業主に助言・指導を行うことが考えられます。

3.紛争調整委員会によるあっせん
 個別労働関係紛争(募集・採用に関するものを除きます)につき、当事者の双方または一方から申請があった場合において、都道府県労働局長が必要と認めたときには、紛争調整委員会があっせんを行います。あっせんとは、当事者間による紛争の円満な自主的解決を図るため、紛争調整委員会が指名するあっせん委員が当事者の間に立って、話し合いを促進することを目的とする手続です。
 あっせん委員は、当事者双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決するように努めることとされており、事件の解決に必要なあっせん案を全員一致により作成し、当事者に提示することもできます。合意が成立した場合、その合意は、民法上の和解契約として取り扱われます。
 あっせん委員は相手方があっせん手続に参加する意思がない旨を表明したり、あっせん案を当事者が受諾しないなど、紛争解決の見込みがない場合には、手続を打ち切ることができます。つまり、あっせんは相手方に参加を強制することはできません。

 上記のいずれも費用はかかりません。簡易・迅速な労働紛争解決が実現されているといえます。                
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年8月10日 月曜日

平成27年7月23日第390号

年金分割制度とは?
 
 年金分割制度とは、離婚した場合、婚姻中の厚生年金保険(共済年金保険)記録を当事者間で分割することができる制度です。
 厚生年金は、世帯単位で構成されていて、年金受給権取得後は保険料を支払った被用者に対して支払われ、それによって扶養等されている配偶者も生活する仕組みです。そのため、被用者は離婚後も従前とさほど異ならない額の年金を支給され続けるのに対し、元配偶者は基礎年金及び自己の厚生年金加入記録に対する厚生年金のみしかもらえなくなります。これでは、元配偶者が長年専業主婦等をしていた場合に不公平であるため、婚姻期間中に会社員の被用者を支えた元配偶者の貢献度を年金額に反映させる等の主旨から、離婚時年金分割の制度が平成19年、20年から施行されています。

1.「合意分割」制度
 平成19年4月1日以降に離婚した場合で、当事者の婚姻期間を対象期間とし、それぞれの婚姻期間中に支払った保険料納付記録(標準報酬月額・標準賞与額)の合計額を分割する制度です。仮に合計額に対する支払比率が夫は80、妻は20なら、「按分割合」は20%を超え50%以下となります。この按分割合について、お互いに合意しなければなりません。当事者間で合意に至らなかった時は、家庭裁判所の家事調停等で決めることになります。

2.「3号分割」制度
 平成20年4月1日から離婚まで婚姻期間のうち配偶者が第3号被保険者であった期間(特定期間)を対象とし、被用者の標準報酬総額の2分の1が元配偶者に按分される制度です。当事者間での合意は不要で、婚姻期間を明らかにできる戸籍謄本等、請求者の基礎年金番号、標準報酬改定請求書等で手続きができます。ただし、平成20年3月以前の婚姻期間も対象にする場合は、平成20年3月31日以前の分割については上記の「合意分割」を請求することになります。
 
 両制度とも分割後の年金の支給を受けるには、必ず自己の記録で受給資格(原則25年)が必要です。事前に年金事務所に情報提供の請求ができ、また年金事務所への請求期間は離婚後2年以内です。
 年金分割は民法の財産分与の考え方を採用しながらも、年金には老後の生活保障という重要な役目があるため、その機能を蔑ろにする分割は認められないという制約(按分は上限2分の1)があります。また、分割は厚生年金部分のみで、夫が自営業者だった場合、夫は厚生年金には加入していないため、この制度では自営業者の元配偶者は年金の分割をしてもらえません。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年7月 8日 水曜日

平成27年7月8日第389号

雇用保険教育訓練給付金の拡充

教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者が自ら費用を負担し厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了した場合に、その教育訓練施設に支払った経費の一部を支給する雇用保険の給付制度です。従業員のキャリアアップや能力向上が、企業の持続的な成長を支える重要な要素と考えられ平成26年10月からは、従来の枠組みを引き継いだ「一般教育訓練の教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練の教育訓練給付金」の2本立てに拡充されました。

1.給付対象となる講座とは
給付の対象になるのは厚生労働大臣が指定する講座です。教育訓練給付金の指定講座は、近くのハローワーク又は、厚生労働省「教育訓練講座検索システム」でご覧になれます。

2.一般教育訓練給付金(従来のもの)
雇用保険の被保険者期間が3年以上(初めて受講する場合は1年以上)である者が指定講座を受講した場合は、受講費用の20%が支給され、上限は10万円で、4千円超えない場合は支給されません。基準日(教育訓練開始日)前3年以内に教育訓練給付金を受けたことがある場合も支給されません。

3.専門実践教育訓練給付金(新制度)
中長期的なキャリア形成のため専門的かつ実践的な教育訓練として厚生労働大臣が指定する助産師、看護師、放射線技師、理学・作業療法士、自動車整備士等の教育訓練が対象です。受講費用の40%(年間上限32万円)が支給されます。また、資格等を取得し、被保険者として雇用された場合には、さらに20%が追加支給され、合計60%、年間上限48万円まで給付されます。受講に必要な被保険者期間は10年(初めて当該教育訓練を受講する場合は2年)です。ただし、過去に教育訓練給付金を受給している場合には、10年以上経過している必要があります。申請は6ヵ月毎で、支給期間は2年間(専門職大学院等は3年間)です。

4.教育訓練支援給付金(新制度)
専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満の離職者が、専門実践教育訓練を受講するなど一定の条件を満たす場合には、さらに「教育訓練支援給付金」が支給されます。平成31年3月31日までの時限措置で、その間の所得保障として訓練期間の失業の状態にある日について基本日額の50%が支給されます。(基本手当が支給される場合は基本手当の終了後に支給されます)

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年6月23日 火曜日

平成27年6月23日第388号

限定承認について

限定承認とは、相続財産のうち積極財産(プラスの財産)と消極財産(マイナスの財産)の総額がプラスになるのかマイナスになるのかよくわからないときに「積極財産の範囲内で消極財産を相続します」という意思表示のことです。

1.限定承認の方式
(1)自己のために相続の開始したことを知ったときから3ヵ月以内に財産目録を調製して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨の申述をしなければなりません。(民法第924条)
(2)相続人が数人あるときは、共同相続人全員が共同してでなければ、限定承認をすることが出来ません。(民法第923条)

2.限定承認の効果
(1)債務は縮減されませんが、相続人の責任が相続によって取得した積極財産の限度に縮減されるということで、いわゆる物的有限責任を負うということになります。
(2)相続債権者や受遺者への公平な分配のため、相続財産と相続人の固有財産とは切り離され、相続財産について清算が行われることになります。よって、相続人が被相続人に対して有した権利義務は消滅しなかったものとみなされます。(民法第925条)
(3)家庭裁判所は、相続人が複数ある場合は相続財産管理人を選任しなければならず、また相続財産管理のため、相続財産管理人を選任することも出来ます。
(4)公告及び催告の後、換価を行い、定められた順序に従って弁済が行われます。売却を必要とする相続財産があるとき、原則としては競売によることになりますが、限定承認者は家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、相続財産の全部または一部の価額を弁済して、その競売を止めることが出来ます。(民法第932条但書)これを「先買権行使による競売停止」といいます。

3.限定承認者の責任
限定承認者が公告及び催告の手続を怠ったり、公告期間内に弁済する等により、他の債権者もしくは受遺者に弁済をすることが出来なくなったときは、損害を賠償する責任を負います。(民法第934条)

4.限定承認と、みなし資産譲渡所得課税制度
限定承認によって相続した資産については「相続開始の時に、相続時の価額に相当する金額により譲渡がなされたものとみなして、譲渡所得税を納めなければならない」と、されています。(所得税法第59条)なお、この場合の価格は路線価ではなく時価評価となります。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2015年6月 8日 月曜日

平成27年6月8日第387号

キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)について

キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)とは有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者のキャリアアップ等を促進するため、正規雇用への転換実施に対し、1人につき50万円(H28.03.31以降は40万円・年間15人まで)を事業主に助成する制度です。また、10万円の特別加算は平成28年3月31日までの転換が期限となっていますので、正社員(正規雇用)への転換等を予定されている事業所様におきましては、計画的にご活用いただき、従業員さまのキャリアアップと業績アップを図りましょう。

<受給条件>
1 有期契約労働者等のキャリアアップに向けた取組みを計画的に行なうための「キャリアアップ計画」を都道府県労働局長に届出ていること
2 事業主に雇用される期間が通算して6ヵ月以上の有期契約労働者を正規雇用に転換すること
3 正規雇用又に転換後、6ヵ月以上継続雇用(通常の勤務日数が11日未満の月は除く)すること
4 転換するにあたり、面接試験や筆記試験など適切な手続、要件(勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦などの客観的に確認可能な要件・基準などをいう)及び、転換の実施時期を就業規則等に明示していること

<申請の流れ>
キャリアアップ計画申請 → 正社員転換 → 支給申請
※支給申請は、6ヵ月分の賃金を支払った日から2ヵ月以内です。

正規雇用等転換コース以外にも、多様な正社員コース(雇用する労働者を短時間正社員に転換又は短時間正社員を新規で雇入れた場合)や有期契約労働者等を対象にした健康管理コース(パートや有期契約労働者等を対象とした健康診断制度を導入し、述べ4人以上実施した場合)などがあります。

詳しくは、当事務所までお問合せください。

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2015年6月 3日 水曜日

平成27年5月23日第386号

年次有給休暇について

労働基準監督署で労働相談をしていると日々いろいろなご相談を受けるのですが、その中でも年次有給休暇については頻繁にご相談があります。その大半は「年休を取らせてくれない・・・」といった内容のものですが、まれに即答しかねるような悩ましいご相談もあります。今回は実際にあった難しい年次有給休暇におけるご相談とその回答をご紹介いたします。
1.年次有給休暇の返還
(問)入社してまだ半年を過ぎない新入社員が、病気で会社を休むことになり、気の毒に思った事業主が、年次有給休暇として取り扱ったが、結局その新入社員は退職することになった。そこで、法定以上で与えた年次有給休暇の返還を新入社員に求めたいが、可能か。
(答)一旦与えた年休を返還させることは、賃金の返還を求めることであり、賃金の全額払いに反するように思う。しかし、むしろこうした事業主の求めは、新入社員の退職に対する足かせとなり、公序良俗に反するという観点から、返還を求めるのはよろしくないという結論にいたった。
2.再雇用従業員の年次有給休暇
(問)定年退職後、嘱託社員として再度雇用する予定の従業員が、1ヵ月ほど休養をしたいとのことだが、年次有給休暇をどう扱えばよいのか。
(答)一旦雇用が途切れるので、また新たな雇用として年次有給休暇を与えるという考え方もあるが、雇用の終了時に再雇用の約束等がなされていれば、ある意味雇用が継続されていると考え、それに伴い年次有給休暇も継続すべきと思われる。途切れた期間の長さで判断する具体的数値基準はないが、一般的には1ヵ月程度であれば前出の考え方も可能である。
3.月2回勤務の場合の年次有給休暇
(問)自治体からの委託で事業をしているNPO法人に所属する労働者について、業務を行うのは月に2回程度だが、年次有給休暇は発生するのか。また、その根拠は。
(答)週5日もしくは30時間以上の勤務に満たない場合は、年次有給休暇は比例付与にて与えられるが、その場合の付与日数の計算式は、「付与日数=標準付与日数×週所定労働日数÷5.2」となる。小数点以下の端数の扱いは、通達において切り捨てとなっているため、勤務日数が月に2回程度では、年次有給休暇は発生しない。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年5月15日 金曜日

平成27年5月8日第385号

マタハラ訴訟に伴う厚労省からの新たな通達

平成26年10月23日最高裁判決(広島中央保険生活協同組合事件)において、妊娠中の女性労働者に対する軽易業務転換(労基法65条3項)が男女雇用機会均等法9条3項(事業主は、女性労働者が妊娠、出産、産前産後休業を請求し取得したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない)違反と判断されました。
厚生労働省の新たな解釈通達についてご紹介します。
1.原則
妊娠、出産、育児休業等を「契機として」不利益に取扱った場合、原則、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法違反と判断されます。
※「契機として」は基本的に時間的に近接しているか否かで判断されます。時間的に近接しているかは「原則として、妊娠・出産・育児等の事由終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合」で判断されます。ただし、1年超えの場合であっても、事由終了後の最初のタイミングまでの不利益取扱いは「契機として」判断されます。
2.例外(不利益取扱いの例外)
1)業務上の必要性から支障があり、当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合に、その業務上の必要性の内容の程度が、法の規定の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いによる影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在する場合
※「特段の事情」には次のようなことが問われます。
経営状況悪化時-債務超過などにより不利益取扱いせざるを得ない事情があるか
不利益取扱いを回避する真摯かつ合理的な努力がなされたか
能力不足時  -妊娠等の事由発生以前から能力不足を指摘していたか
改善の機会を与えたか
2)契機とした事由又は当該取扱いに有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、有利な影響や内容の程度が当該取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切な説明がなされる等、一般の労働者であれば同意するような合理的理由が客観的に存在する場合
※合理的客観的理由には次のようなことが求められます。
・不利益取扱いの間接的な影響である降格、減給についても説明されたか
・適切な説明がされ、労働者が十分に理解し同意をしたか
・自由な意思の決定を妨げるようなことがなかったか
妊娠・出産・育休等の労働者に対して、安易な労働条件等の変更対応は禁物です。トラブル回避の為にも、十分な検討をしましょう。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年5月15日 金曜日

平成27年4月23日第384号

トラブルを防ぐ契約書のポイント

弁護士は、紛争が起きたときに仕事を依頼されます。そのため、どんなことで「トラブル」になるかがわかっています。その中から、「契約書」でトラブルにならないように、注意すべきポイントを3つ、お伝えします。今回は建築の際の契約を例にあげ、ご紹介します。
1.「何を」(目的物)を特定する!
「カントリー風の家」(目的物)を作ってください、という表現はトラブルを招きます。これは、建築業者の思う「カントリー風の家」と皆さんが思うものが違うからです。
トラブルを防ぐには、できるだけ、相対的な表現を避け、だれが読んでも、「同じ物」とわかる絶対的な表現にしなければいけません。
 素材は何か、何をどのように作るか、など言葉で表現することが難しい場合には、図面、写真をつけるなどして、「どんな家」を作ることを頼んだのか、頼まれたのか、お互いに確かめておくことがトラブルを防ぎます。
2.変更の場合も合意書作成!
家の建築をしていく途中で「やはり出窓にしてくれない?」と言われ、了解。建築業者は、出窓にしたことで、費用が増大したため、その分を「追加工事100万円」として費用請求したところ、「予算の範囲内でやってくれると思っていた」と言われるトラブルもよくあります。
トラブルを防ぐためには、「変更」も現場の口頭やりとり等ですまさず、建築業者とご依頼主との間で、「追加工事契約書」として、合意の内容をはっきりさせておく必要があります。
3.損害賠償額の定め(違約金)
建築の完成期限に、家が完成しなかった。そのために生じた損害を賠償請求したい、というご相談もよくあります。
 しかし、この損害は立証がとても難しいです。精神的な苦痛に対するお金の換算、細かい損害金(マンションの家賃代、通勤費など)の算出などが必要となり、とても手間がかかります。
そこで、あらかじめ「この契約の第○条に違反した場合には、金××円を支払う」という「損害賠償額の定め」をしておくと、このような細かい損害金の立証が要らなくなるので、トラブルを少なくできます。
契約を結ぶ際は以上のことをふまえましょう。    
(スマイルグループ 弁護士)

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2015年4月 3日 金曜日

平成27年4月8日第383号

生命保険の適正な金額

 会社経営者のほとんどが生命保険に加入しています。加入目的を明確にして適正な保険に入っている方もいるのですが、なんとなくお付き合いで内容もよくわからないまま入ってしまったという方も意外と多く見受けられます。
 そもそも生命保険加入の目的とはいったいなんでしょうか。
 (株)セールス手帖社保険FPS研究所「企業経営と生命保険に関する調査」によると、社長の生命保険加入目的(法人契約の場合)は「社長の死亡退職金・弔慰金の準備」がトップ、次いで「万一に備えた運転資金の確保」「社長の勇退退職金の準備」「税負担軽減対策」「事業承継資金の準備」・・と続きます。
会社の置かれた状況よって生命保険の加入目的はおのずと異なります。
今回は第一に準備しておきたい、経営者に万一があった時に会社を存続させていくための「企業防衛資金」についてご案内いたします。

企業防衛資金の必要額は借入や運転資金に応じて算出
(1) 借入金返済資金=(借入金)×(返済割合)
 経営者に万一のことがあれば、会社債務の返済を迫られる場合も想定されるため、借入金(支払手形、買掛金等含む)相当額程度を準備しておくことが必要です。
(2)当面の運転資金=(月額人件費等の一般管理費+月額販売費)×必要月数
 事業が滞らないよう、当面の固定費を準備します。必要月数は企業の状況によって異なります。後継者が経営者としての力量を備えるまでの期間を考え、6ヵ月から12ヵ月程度が目安となります。
(3)納税準備資金={(1)+(2)}×0.6※  
 法人が受けとった保険金は益金となりますので、法人税等の課税対象になります。生命保険で準備する場合には「納税準備資金」も考慮しておかなければなりません。(※保険金が全額益金計上され、実効税率36.5%の場合、約0.6を乗じて算出)
 
(1)、(2)、(3)の合計が企業防衛のために必要な金額です。この金額を確認しないまま生命保険に加入すると、いざという時に必要な額に満たず役に立たなかったり、逆に余分な保険料を支払い続ける結果になったりします。会社の状況は変わりますので、年に一度は必要保障額を確認しておくことをおすすめします。

(スマイルグループ 社会保険労務士・FP)

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2015年4月 1日 水曜日

平成27年3月23日第382号

改正パートタイム労働法の施行

 パートタイム労働者は近年益々増加傾向で、平成25年は約1,588万人と雇用者総数(5,399万人)の約3割を占めています。また、パートタイム労働者の半数以上が賃金や会社、仕事等に不満を持っている等の統計(厚生労働省)が出ています。
このようなことを背景として、平成26年4月公布の「改正パートタイム労働法」が平成27年4月1日から施行されます。大きな改正ポイントは次の3点です。
※「パートタイム労働法」の対象「短時間労働者」とは、「1週間の所定労働時間を比べて、同一の事業所に雇用される通常の労働者より短い労働者」です。

1.通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取り扱いの禁止
<改正前>
 次の3点を全て満たすパートタイム労働者は、賃金の決定、教育訓練、福利厚生施設の利用その他の待遇についてパートタイム労働者であることを理由として差別的取扱いが禁止されていました。
(1)無期労働契約
(2)職務の内容
(3)人材活用の仕組みや運用が通常の労働者と同一と見込まれる場合
<改正後>
 上記(2)、(3)が通常の労働者と同一であると見込まれた場合、通常の労働者との差別的取扱いが禁止されます。つまり、有期労働契約者について(2)、(3)が正社員と同様の場合は、正社員の各種手当の支給対象となります。

2.パートタイム労働者の納得性を高める措置
<改正前>
 事業主は、短時間労働者から求めがあった場合には、待遇決定にあたって考慮した事項を説明する義務を負っていました。
<改正後>
 「雇入れ時」(有期契約は更新の都度)に、次の項目等を速やかに説明する義務を負います。また、文書明示事項に「相談窓口(担当者名、役職又は担当部署)」が追加されます。
(1)どのような賃金制度になっているか
(2)教育訓練の実施
(3)福利厚生施設の利用
(4)通常の労働者への転換等雇用管理の改善等に関する措置

3.パートタイム労働法の実効性を高めるための新たな制度
(1)無報告や虚偽報告などをした事業主に対する過料(20万円以下)の新設
(2)厚生労働大臣の勧告(雇用管理の改善措置違反)に従わない事業主の公表制度
 4月1日からの施行に伴い、労働条件通知書の整備や、パートタイム労働者の雇用管理体制の見直しをしましょう。       
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年3月13日 金曜日

平成27年3月8日第381号

労働基準法改正案を国会に提出
 労働政策審議会は2月13日、厚生労働大臣に建議すべきであるとして、今後の労働時間法制のあり方について報告書をまとめました。
 主な骨子案は次のとおりです。平成28年4月の施行が予定されています。

1.年次有給休暇取得促進
 年次有給休暇日数が10日以上付与される労働者に対し、そのうちの5日分に
ついて、毎年時季を指定して与えることが企業に義務付けられます。
ただし、労働者が取得する場合や計画的付与により取得された場合の日数につ
いては、時季の指定は要しないとされています。これは、休みたい日に休めるメ
リットや、すでに年次有給休暇の消化に取り組んでいる企業の負担が増えない
よう配慮されています。
※年次有給休暇日数が10日未満のパートタイマー等については、対象に含まれ
ません。

2.フレックスタイム制の拡充
 フレックスタイム制の清算期間の上限を現行の1ヵ月から3ヵ月に延長します。
併せて、1ヵ月当たりの労働時間が過重にならないように、1週平均50時間を超
える労働時間については、当該月における割増賃金の対象となります。

3.特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)の導入
 職務の範囲が明確で、一定の年収(1千万以上)を満たす労働者が高度の専門
的知識等を必要とし、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常より高
くないとして省令で認められた業務(アナリスト、研究開発等)に従事させる場合は
労働基準法で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金の規定を適用し
ないとものとします。
 この制度の導入については、健康管理上の特別な措置を要すること、必要な休
日を確保すること等様々な制約があり、対象となる労働者は限定されるように思わ
れますが、この制度をきっかけとして、成果型の労働評価や賃金体系の取り入れ
が積極的になることが考えられます。

4.中小企業における月60時間超えの時間外労働割増賃金率の適用猶予廃止
 月60時間を超える時間外労働に関する割増賃金率(50%超え)について、中小
企業への猶予措置が廃止されます。こちらのみ平成31年4月1日施行予定です。

その他にも労働者の健康確保に向けた取組みや長時間労働の抑制、労働時間の設定改善等を促進する内容の改正が予定されています。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年3月13日 金曜日

平成27年2月23日第380号

「登記原因証明情報」とは

  不動産の権利に関する登記を申請する場合には、原則として「登記原因を証する情報」を提供しなければならない(不動産登記法第61条)と、なっています。これを「登記原因証明情報」といいますが、その要件や内容をみていきます。

1.登記原因証明情報の意義
(1)登記申請をするためには「原因」が存在します。その「原因」の存在を登記官
 が確認・審査する情報の提供を求め、登記申請の真正を担保することが目的
 です。
(2)平成17年に不動産登記法が改正されるまでは、住所移転や氏名変更に伴
 う登記名義人表示変更登記、真正な登記名義の回復や相続を原因とする所
 有権移転登記等の場合には、初めから登記原因証書が存在しないものとして
 申請書副本を添付していました。今後はこのような場合でも登記原因証明情
 報を提供することになります。

2.登記原因証明情報の要件
(1)登記原因証明情報は「登記の原因となる事実又は法律行為に該当する具
 体的な事実」を内容とするものでなければならないとされています。
(2)要件を満たすものであれば、処分証書(売買契約書、抵当権設定契約書
 等)でも登記申請のために作成した報告形式のものでも登記原因証明情報
 とすることができます。
(3)登記原因証明情報は、単一の情報に限られず、複数の情報の組み合わせ
 であっても、登記原因を証するといえるものであれば足りるとされています。
 ア)遺贈の場合...遺言書と戸籍の組み合わせ
 イ)売買の場合...売買契約書と領収書の組み合わせ
(4)単独申請による登記や、実体法上一定の権利変動について特定の書面等
 を作成して行うことが要求されているものに係る登記については、登記原因証
 明情報の内容が特定の情報に限定され、又は登記原因証明情報の一部とし
 て特定の情報を含むとされています。
 ア)確定判決による登記...執行力のある確定判決の判決書の正本
 イ)住所又は氏名の変更登記...住民票や戸籍
 ウ)相続による権利移転の登記...戸籍・遺言・遺産分割協議書等

3.登記原因証明情報に記載されるべき具体的な情報
(1)登記申請情報の要項
(2)登記の原因となる事実又は法律行為
(3)作成名義人の署名又は記名押印

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2015年2月12日 木曜日

平成27年2月8日第379号

社会保険料 当月徴収と翌月徴収
 社会保険料の徴収方法は原則翌月徴収ですが、当月徴収としている会社もあるようです。そこで今回は当月徴収と翌月徴収の違い、注意点をご案内いたします。

1.言葉の定義
社会保険料・・・健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料のこと。
 保険料は1ヵ月単位で徴収され、原則各月の最終日に資格を有している場合、保険料がかかります。つまり、入社(資格取得)月は1日に入社しても、末日に入社しても保険料がかかり、退職月は末日付で退職しない限り保険料はかかりません。
※同一月に入退社した場合のみ、1ヵ月分の保険料がかかります。

当月徴収・・・その月の保険料をその月の給与支払分から徴収していること。
        (例)1月分保険料を1月支払給与で徴収
翌月徴収・・・その月の保険料を翌月の給与支払分から徴収していること。
       (例)1月分保険料を2月支払給与で徴収

2.当月徴収の注意点(5日締め、当月15日払の会社を例に挙げます)
 1)入社時(社会保険資格取得月)
  前月6日~前月末日の間の入社従業員は、初めの給与で2ヵ月分の保険料の
 徴収が必要です。例えば、4/30に入社した場合、4月分から保険料はかかり
 ます。1回目の給与(4/30~5/5分、5/15支払)では、4月分と5月分の
 2ヵ月分の保険料の徴収が必要です。出勤日が少ない場合は保険料よりも給与
 が下回ることもあり、その場合の取決めをしておく必要があります。
 2)退社時
  前月の末日以外の日に退社した場合は前月分保険料の返還が必要です。
  例えば、4/29に退社した場合、4月分の社会保険料はかかりません。その
 ため、4月支払給与(3/6~4/5分)で4月分の社会保険料を控除している場
 合は、5月支払給与(4/6~4/29分)で社会保険料を返還しなければなりま
 せん。
 ※年末調整後の年末前の退職は1年の保険料額が変更となるため、留意が必
 要です。

3.翌月徴収の注意点
 1)社会保険料率が変更される月(3月、9月)に賞与を支払する場合
  賞与は支払月の保険料率を乗じて、保険料を算出するため、保険料率が新しく
 なる月は、翌月控除の場合、給与と保険料率が異なります。給与支払日より賞
 与支払日が早い場合は特に給与計算ソフトの設定に注意しましょう。
  当月徴収か翌月徴収か、その違いまでしっかりと把握したうえで、社会保険料
 の控除をしましょう。

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2015年2月12日 木曜日

平成27年1月23日第378号

産業保健総合支援センター
 産業保健総合支援センターは、産業医、産業看護職、衛生管理者等の産業保健関係者を支援するとともに、事業主等に対し職場の健康管理への啓発を行うことを目的として、全国47の都道府県に設置されています。
 産業保健総合支援センターの主な事業内容をご紹介します。特に小規模事業場の事業主や労働者にとっては大変心強い味方となりますので、ぜひご利用ください。

1.窓口相談・実地相談(事前予約が必要)
 産業保健に関する様々な問題について、専門スタッフ(産業医、労働衛生工学、メンタルヘルス、労働衛生関係法令、カウンセリング、保健指導)が窓口又は電話でご相談に応じ、解決方法を助言します。また、必要に応じ専門スタッフが現地まで赴き、具体的方法を助言します。

2.研修
 産業保健に関する専門的かつ実践的な研修を実施します。また、センター以外の団体が行う研修には、教育用教材の貸出、講師の紹介等の支援を行っています。

3.メンタルヘルス
 専門スタッフによる相談窓口や事例検討会の実施を行います。またメンタルヘルス対策の普及促進のため個別訪問支援や管理者向けメンタルヘルス研修を行っています。

4.情報提供
 産業保健に関する図書・教材等の閲覧・貸出、コピーサービスを行います。また、メールマガジンの配信でタイムリーな情報提供も行っています。
 
5.広報・啓発
 職場における健康管理の重要性を事業主に正しく理解していただくため、事業主セミナーを開催する等の広報・啓発活動を行います。

6.50名未満の事業場に対する産業保健活動支援
 脳・心臓疾患のリスクの高い労働者に対する健康相談・保健指導やメンタルヘルス不調の労働者に対する相談・指導を行います。また、健康診断実施結果に基づく医師の意見聴取・事後措置の実施支援や長時間労働者への医師による面接指導、更に個別訪問による産業保健指導等を行っています。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年1月15日 木曜日

平成27年1月8日第377号

マイナンバー制度

 平成25年4月8日、第335号で紹介したマイナンバー制度の続編です。
 政府発表によるマイナンバーとは、住民票を有する全ての人に対して1人1番号として、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認されるため活用されるものとされています。

 このマイナンバー制度が何故導入されるのか・・・政府発表によると、 
(1)個人ごとの所得や行政サービスの受給状況が把握しやすくなるため、負担を
 不当に逃れることや不正な給付防止をすることにより、公平・公正な社会を実現
 する。
(2)国民の利便性の向上を図ることにより、行政手続が簡素化され、添付書類の
 削減等により国民の負担を軽減。また、行政機関から様々なサービスのお知ら
 せを受け取ることができる。
(3)行政の効率化により、行政機関や地方公共団体で作業が重複している事柄に
 ついて無駄の削減により、時間・労力の大幅な削減ができる。
が主な目的とされています。 
                  
 平成27年10月、マイナンバー(個人番号)が市区町村から、住民票住所宛にマイナンバーが記載された「通知カード」が送られる予定です(中長期滞在者や特別永住者等の外国人にも通知)。「通知カード」には、氏名、住所、生年月日、性別、12桁のマイナンバーが記載されています。
 平成28年1月以降は、「個人番号カード」が各自の市区町村申請に基づき、交付が可能です。この「個人番号カード」は、本人の写真が表示されるとともにICチップが入り、身分証明証として利用できるほかe-Tax等の各種電子申請に利用できます。
 また、平成28年1月からは、社会保障、税、災害手続でマイナンバーが必要となります。雇用保険・社会保険の資格取得、年金の資格取得や確認・給付、税務署に提出する確定申告書、届出書等が該当します。その為、其々の事業所は各従業員のマイナンバーの取得が必要となります。マイナンバーは銀行預金口座にも適用され、当初は任意で登録を呼びかけ、その後義務化の是非について検討される予定です。

 マイナンバーは一生使用するもので、番号が漏洩し、不正に使われるおそれがある場合を除き変更されません。個人情報管理を含め適切な管理が必要となります。

 (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2015年1月15日 木曜日

平成26年12月23日第376号

退職後も競業しないように言えるのか?

1.原則は縛れない
 退職後、元職員には、「職業選択の自由」が認められています。そのため、例えば、会社が時間をかけ、教え込んだ金型製造ノウハウ、技術を用いて、元職員が会社と同業の金型製造業(競業)を始めることも原則として自由です。しかし、元社員が、会社が開拓した顧客に営業をし、顧客を奪っていったとしたら、納得できるでしょうか?

2.競業避止義務に関する合意の有効要件
 このようなことを防ぐためには、あらかじめ「競業避止義務」を定めた就業規則、合意をしておくことが大切です。但し、「職業選択の自由」との関係から、「合理的範囲」と言えなければ無効となってしまいます。

その際のポイントは、裁判例を検討すると、
(1)労働者の地位
(2)使用者の固有の秘密・ノウハウの保護を目的とすること
(3)競業制限の対象職種・期間・地域が不当な誓約にならないこと
(4)代償措置の有無に
あるとされます。

3.企業側の出来る対策とは 
 裁判例から2.のポイントをふまえて、具体的に競業避止義務の「合理性」の判断をしてみます。
(1)営業職の場合、内勤の職員に比べて、その「地位」から合理性が認められや
 すいでしょう。技術系専門職の場合、長期間その専門技術を身につけたのに、
 その専門を活かす仕事がまったく出来ないと、合理性が認められにくい方向に
 働きます。
(2)顧客台帳、技術、ノウハウが「秘密」として、特定の職員にしかアクセスできな
 いなど、保護、管理されている場合、「ノウハウ」の保護のため、競業避止義務
 が認められやすいでしょう。
(3)期間については、1年以内、最長でも2年以内を目途にした方がいいでしょう。
 地域、職種も限定しておかないと、合理性が否定されやすいです。
(4)競業避止義務を課すかわりに、金銭の支給があると認められやすい方向にな
 ります。職業を縛ることになるので、労働の対価とされる「退職金」に加えて「秘
 密保持手当」等の支給がある方が、よりよいでしょう。

 大まかに言うと、希望する職業が出来ないことによる元職員の不利益があまりに大きく、それに対して、会社側の守るべき利益が少ない場合には、合理性が認められません。合理的かどうかを迷う場合には、社会保険労務士、弁護士などに相談しましょう。

(スマイルグループ 弁護士)

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2014年12月11日 木曜日

平成26年12月8日第375号

 社労士に「出廷陳述権」が付与されました!

 平成26年11月14日、第8次社会保険労務士法が改正され、「出廷陳述権」をはじめとする社会保険労務士の業務範囲の拡大等が行われました。

1.ADRにおける紛争の目的の価格の上限の変更
 社会保険労務士が関与できる個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続(ADR)における紛争の目的の価額の上限が現行の60万円から120万円に引き上げられることとなりました。今までは、60万円を超える仕事は、弁護士と共同して行わなければなりませんでしたが、社労士だけで120万円までの仕事ができるようになりました。これにより、ハラスメントや賃金不払いなどが問題化する中、労働関連法に精通する社労士の業務範囲、役割が広がったといえます。
なお、行政型ADR(都道府県労働局や道府県労働委員会のあっせんなど)における特定社労士の代理権には今まで通り価格の制限はありません。

2.裁判所において弁護士の補佐人として出廷し陳述できること
 今までは、社労士があっせん等裁判外におけるADRで労働紛争の代理人として仕事をすることができていましたが、今回の改正によって地方裁判所以上の審級における社労士の出廷陳述権が新しく付与されるようになりました。非訴訟事件も対象となるので、労働審判の審判廷においても陳述権があります。ただし、弁護士が受任している側に立っての陳述に限られ、あくまで弁護士と共同して陳述権を述べる機会が与えられたという考えです。
裁判所で裁判長や労働審判委員会の許可が不要となったことから、今までのように個別に許可を得る必要がなくなり、社労士は権利として出廷し陳述することが可能となります。新しい業務が創設されることとなり、今後の社労士の活躍が期待されます。

※陳述権(出廷陳述権)とは、訴訟が提起された処分につき、裁判所の許可を得ずして当事者または訴訟代理人と共に裁判所に出廷して陳述する権利のことをいいます。社労士が、対象となる事件に対して、社労士として自ら意見を述べることができるということです。

3.社会保険労務士法人の設立方法の変更
 今までは2人以上の社労士が必要だった社会保険労務士法人の設立が、社労士1人でも可能となりました。

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2014年12月11日 木曜日

平成26年11月23日第374号

過労死等防止対策推進法が施行されました!

 過労死や過労自殺の防止を「国の責務」とした「過労死等防止対策推進法」が平成26年11月1日、施行されました。厚生労働省によると、平成25年度にクモ膜下出血や心筋梗塞などの脳・心臓疾患で労災認定されたのは306人、そのうち死亡に至ったケースは133人に達し、うつ病などの精神疾患でも436人が認定され、未遂を含む自殺者は63人にものぼります。また、日本の「過労死」は国際社会でも問題化され、2013年国連から日本政府に対して、過労死防止対策を強化するよう勧告も出ています。これらを背景に、厚生労働省が過労死対策を本格化させました。

1.目的(概略)
 近年、我が国においては過労死が多発し、大きな社会問題となっていること及び過労死が本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であり、過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与する。

2.過労死等の定義
 業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害。

事業主等の責務
 平成12年、最高裁までいった「電通事件(過労自殺)」。大手広告代理店Y社に勤めていたA(大卒新入社員)が、長時間に及ぶ時間外労働を恒常的に行っていて、うつ病に罹患し、入社1年5ヵ月後に自殺。最高裁は「Aが恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及び健康状態が悪化していることを認識していながら軽減措置を採らなかった。」として、Y社に民法第715条の使用者責任を認め、最終的には、会社が約1億6,800万円を支払うとの内容で和解が成立しました。
 また、平成22年の「日本海庄や事件」では、入社4ヵ月後にA(労働者)は急性心不全により死亡。Aの1ヵ月の最低支給額は、「月80時間の時間外労働をすることが前提となっている給与体系」で、会社に安全配慮義務違反を認めたことはもとより、会社の取締役にも「労働条件を改善することなく放置していた。」として不作為の責任を負わせています。
 今回の法律により、職場において、過重労働になっていないか、時間外労働や、従業員の健康等に再度、チェックし、配慮をするように努めましょう。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年11月14日 金曜日

平成26年11月8日第373号

「多様な形態による正社員」の普及拡大について

 近年、非正規社員が増加しており、正規社員と比較して、賃金等労働条件が低く、雇用が不安定であり、能力開発の機会が乏しいことから、正社員としての雇用機会を希望するものも多くなっています。しかし、企業の人材活用の仕組みや働き方が異なるため、現状のままで非正規社員の正社員化をすすめることは、企業にとってだけでなく、非正規社員にとっても困難な場合が多いです。働き方の2極化を緩和し、ワークライフバランスと優秀な人材確保の為、職務、勤務地、又は労働時間を限定した「多様な正社員」の普及が厚生労働省により検討されています。

1.多様な正社員の効果的な活用が期待できるケース
(1)勤務地限定正社員
  ・育児や介護の事情で転勤が難しい者について就業機会の付与と継続
  ・改正労働契約法に基づく有期雇用から無期転換の受け皿として活用する。
  ・非正規雇用からの受け皿として活用する。
(2)職務限定正社員
  ・金融やIT等で特定の職務等、高度に専門的なキャリア形成が必要な職務に
  おいて、プロフェショナルとしてキャリア展開していく働き方として活用する。
  ・資格が必要な職務、同一企業内で他の職務と明確に区別できる職務に活用
  する。
  ・高度な専門性を伴わない職務に限定する場合、職務の範囲に一定の幅を持
  たせ円滑に活用する。
(3)勤務時間限定正社員
  ・育児等の事情で長時間労働が難しい者に、就業機会の付与と継続可能とす
  る。
  ・労働者がキャリアアップに必要な能力を習得する際に自己啓発のための時
  間を確保できる働き方として活用できる。
  ・勤務時間限定の働き方の前提として、職場内の適切な業務配分、長時間労
  働を前提としない職場づくりが必要である。

2.労働者に対する限定部分の明示とその効果
 転勤、配置転換の際の紛争の未然防止のため、職務や勤務地に限定がある場合には、限定の内容について明示することが重要である。又、企業にとっては優秀な人材を柔軟に確保できる効果がある。
 「限定された社員」の待遇及び社内体制の導入準備については、給与・昇任に関する取扱い等専門家を交えて、自社に応じた制度の設計をすることが必要となります。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年11月14日 金曜日

平成26年10月23日第372号

「民法(債権法)改正」【契約ルールで消費者を保護】

 法制審議会の民法(債権関係)部会が平成26年8月26日に開催され「民法(債権関係)の改正に関する要項仮案」が決定されました。来年2月に法務大臣に正式に答申し法務省は来年の通常国会に民法改正案を提出する方針です。債権法の抜本改正は、明治29年に民法が制定されて以来、初めてで、消費者保護に軸足を置いた見直しになっています。

1.改正の目的
(1)民法を社会・経済の変化(現在の取引事情)に対応させること
(2)国民一般に分かりやすいものにすること
・判例ルールの明文化 
・不明確な条文の明確化
・書かれていない前提・原理・定義を補う

2.改正の主なポイント
(1)時効期間の統一・・・様々な時効期間を5年に統一。
(2)約款に関する規定を新設・・・契約成立後の一方的な内容変更を禁止など。
(3)意思能力の規定を新設・・・判断力が弱い人が結んだ契約を無効にできる。
(4)誤解していた契約は取り消し可能に。
(5)欠陥商品の修理・交換・減額などの請求・・・消費者の対処方法が広がる。
(6)敷金のルールの明確化・・・経年劣化の修繕は、借主に義務がない。
(7)連帯保証人の届出義務・・・個人が中小企業の連帯保証人になるためには公証人との面談が必要。但し、例外あり。
(8)殺傷事件などの損害賠償請求権を長期化・・・被害に遭ってから20年、損害賠償請求権を知ってから5年。
(9)法定利率を引き下げて変動制に・・・3%にして、3年に一度見直す。
(10)債権譲渡禁止特約の緩和・・・将来見込まれる収益を第三者に譲りやすくする。

3.身近なケースでは
(1)飲食店のツケ・・・時効1年→5年
(2)お金の貸し借り・・・時効10年→5年
(3)自動車保険料は値上げの可能性も・・・。
 法定利率の引き下げに伴い、交通事故等で生きていれば得られた利益(逸失利益)から、将来得られるはずだった利益(中間利息)を控除します。このときの「除額は法定利率による」(平成17.6.14最高裁第三小法廷判決)とされていますので、結果として、加害者が支払うべき補償額が増加することになります。 
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2014年11月14日 金曜日

平成26年10月8日第371号

両立支援の制度づくり 「介護離職」回避のポイント2
 
 スマイル新聞第367号では「介護離職」回避のため、親の介護と仕事の両立支援の制度づくりについてご案内しました。今回は補足説明いたします。

1.自治体が実施する介護サービス
 市区町村の介護保険制度や介護サービスについての相談先を知らせる各自治体の窓口を把握しましょう。

【窓口】
・各地域包括支援センター
・市区町村の介護や福祉関係の担当課
・社会福祉協議会

【サービス例】
・緊急一時入所サービス ・在宅訪問歯科保健診療 ・家事介護援助 ・電話訪問
・緊急通報器貸し出し ・給食の配達 ・日常生活用具購入補助 ・リフォーム補助
・徘徊検索 ・はり、きゅう、マッサージ券配布 ・紙おむつ支給 ・寝具消毒感想
・出張理美容 ・話し相手 ・成年後見制度利用支援 ・健康教室 ・賃貸支援
・家族介護慰労金支給 ・火災報知器設置支援 ・介護タクシー券配布

2.制度拡充を検討する際のポイント
 企業が両立制度の拡充を検討するポイントとしては次のようなことがあります。
・勤務地限定の正社員制度を採用する。
・介護休業の分割取得を認める。
・時間単位の年次有給休暇を採り入れる。
・実家に週末帰省した従業員が月曜日の朝に実家から出社することができるように月曜日の始業時間を繰り下げられるようにする。
・1月当たりの上限を決めて半日単位での在宅勤務を可能にする。

3.将来の介護に備えて検討しておくべきこと
 以下のようなことを各従業員が用意し、「介護しながら働き続ける環境を作るのは自分である」と意識啓発し、各々が認識しておくことも重要です。
・親が望む介護はどういうものか、兄弟姉妹や親戚も含め介護の役割分担を考える。
・地域包括支援センターに足を運んでどんなサービスがあるのか調べておく。
・親の変化に気づいたら、すぐに連絡が入るよう実家の近隣の人とつながっておく。
・宅配弁当や電気ポットなどの見守りサービスの利用を検討する。
・廊下や風呂場に手すりをつけるなど日常生活上の安全を確保する。

人財の損失をしないように制度の作成をしましょう。

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2014年9月29日 月曜日

平成26年9月23日第370号

パートタイム労働法が変わります

 平成27年4月1日からパートタイム労働法が改正され、施行されます。その改正内容を簡単にご紹介します。
 今やパートタイムで働いている人は、全労働者の25%を占め、日本の労働力に欠かせない存在となっています。しかし、その実態は、パートタイムというだけで正社員に比べ、劣った労働条件で働いているのが現状です。そうした状況を法によって守るべく今回の改正となりました。

1.パートタイム労働者の公正な待遇の確保
 (1)差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
                                           (法第9条)
  正社員と差別的取扱いが禁止される労働者の対象範囲に、これまで外されて
 いた有期契約労働者も含められます。
 (2)短時間労働者の待遇の原則の新設(法第8条)
  パートタイム労働者の待遇に関する考え方の原則規定が明文化されます。つ
 まり、職務の内容・人材活用が同じならその待遇に不合理は認めないというこ
 とです。
 (3)距離、経費に無関係の一律通勤手当は均衡確保努力義務対象
                                      (施行規則第3条)
   「通勤手当」という名称であっても、距離や実際かかっている経費に関係なく
 一律に金額を支払っているような職務の内容に密接に関連支払われている場合
 正社員との均衡を考慮し、パートタイム労働者の職務内容、成果、意欲、能力、
 経験等を勘案して決定するように努めなければなりません。

2.パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
 (1)パートタイム労働者を雇入れたときの説明義務の新設(法第14条1項)
  事業主は実施する雇用管理の改善措置の内容について、説明しなければなり
 ません。
 (2)説明を求めたことによる不利益扱いの禁止(指針第3の3の(2))
 (3)パートタイム労働者からの相談対応の体制設備を義務化(法第16条)
 (4)相談窓口の周知(施行規則第2条)
  パートタイム労働者を雇入れの際の労働条件通知書等の文書に相談窓口
 の明示が義務付けられます。
 (5)親族の葬儀のため、勤務しなかったことを理由とする解雇などは不適当
                                    (指針第3の3の(3))

3.パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
 (1)厚生労働大臣の勧告に従わない事業主の公表制度の新設
                                      (法第18条第2項)
 (2)虚偽報告などをした事業主に対する過料(20万円以下)の新設
                                          (法第30条)
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年9月11日 木曜日

平成26年9月8日第369号

介護休業
 
 育児介護休業法第11条では、「要介護状態にある家族を介護する従業員は、対象家族1人につき、通算93日間、1要介護状態ごとに1回」介護休業を取得することが出来るとされています。

1.行政通達上の定義
 「介護」...歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること
 「要介護状態」...負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
 介護保険制度における「要介護状態」と必ずしも一致するものではありません。
 また、介護認定とも関係ありません。

2.介護休業期間(通算93日間)の趣旨と介護休業取得の可否
 実は、法律における介護休業期間は介護施設への入所準備、介護認定の申請等の準備期間とし、従業員本人が直接介護をすることを目的としていません。仕事と介護の両立を準備する期間とされています。
 対象家族が特別養護老人施設に入所している場合、従業員による対象家族への歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与する必要がない期間と考えられますが、施設の方から家族の介護を求めているような場合、制度利用は可能と判断されます。
 しかし、「精神的支え」や「看取り」の様なときで、歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜供与を伴わない純粋な要件の場合、介護休業の対象には当たりません。

3.「1要介護状態ごとに1回」とは
 要介護状態が異なるという意味であり、要介護状態に該当した人がいったん要介護状態に該当しなくなり、その後再び要介護状態に該当した場合を指します。
 要介護状態にあった対象家族が、別の病気を併発し、更に症状が重くなった場合は、いったん要介護状態に該当しなくなったとはいえないため、「1要介護状態ごとに1回」には該当せず、介護休業制度の利用ができません。
しかし、会社の裁量により制度利用を認めることは法の介護休業制度を上回ることであり問題ありません。但し、雇用保険介護休業給付金は支給されない可能性があります。
 また、会社側から求める「異なる要介護状態」であることの証明は、介護休業申出の要件とはされていません。従って、異なる要介護状態かどうかは従業員本人からの申出に拠る場合で判断せざるを得ないかと考えます。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年8月29日 金曜日

平成26年8月23日第368号

みなし労働時間制が認められない場合とは
 労働基準法38条の2第1項では、「事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」と定められており、会社の外で働く営業職や新聞記者のような、労働時間を正確に把握するのが難しい事業場外の仕事につく従業員について、実際の労働時間にかかわらず、決めた時間を労働時間としてみなす、みなし労働時間制を認めています。
 しかし、みなし労働時間制が認められないケースもあります。

1.みなし労働時間制認められなかった事例
 (1)阪急トラベルサポート事件
  平成26年1月24日、最高裁判所は旅行添乗員の業務につき、労働基準法の
 いう「労働時間を算定しがたいとき」にあたらないと判断しました。
  つまり、みなし労働時間で賃金を計算することは認められないとの判決が出ま
 した。
(2)この事件のポイント
  この事案では、添乗員の業務は予め旅行日程が定められ、これに従って行動
 するように管理されていること、変更の場合には会社に確認がいることなどから、
 「労働時間を算定し難いとき」にあたるとはいえないとしています。
  つまり、単に事業場外で業務に従事したということだけでは、みなし労働時間制
 とは認められません。
  営業職で、何時まで営業するのか、何件営業するのかを従業員に一切任せて
 いるような「使用者の具体的な指揮監督が及ばないような場合」でなければ、
 「労働時間を算定」できると裁判所は考えているということがポイントです。

2.企業側の対策
(1)事業場外で働く従業員に具体的指揮、監督をしているかを検討すること
  細かな指示がある場合、みなし労働時間制は適用されないと考えましょう。
(2)みなし労働時間制の適用がない場合も考え、労働時間の把握をすること
  労働時間を把握し、所定労働時間に対する賃金と時間外労働に対する
 割増賃金とは明確に区別して賃金を支払いましょう。上記の判例でも、
 日当に割増賃金部分が含まれていると企業側が主張しましたが、日当に
 区別がないため認められていません。
(3)素早い対応・解決
  従業員から割増賃金等の請求があった場合、速やかに社会保険労務士、
 弁護士などの専門家に相談し、解決をはかりましょう。上記の裁判でも、
 賃金と同額の「付加金」が請求され、認められました。その場合、賃金の2倍
 の額を支払うことになってしまいます。
  裁判での見込みを素早く知って,できれば裁判前に対処しましょう。
                                                          (スマイルグループ 弁護士)

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2014年8月 8日 金曜日

平成26年8月8日第367号

両立支援の制度づくり 「介護離職」回避のポイント

昨今、急激な少子高齢化とライフスタイルの変化により、
親の介護が原因で離職をする方も少なくありません。
このような「介護離職」により、優秀な人財を喪失しないために、
企業には仕事と介護の両立支援の制度づくりが求められています。

そこで、両立支援の制度づくりについてご案内します。

1.両立支援には「お互い様」の風土づくりが大事

親の介護をする従業員の年齢は一般的に40歳代後半以降です。
そのため、そう簡単には他の従業員に任せられない業務を担当している人も多く、
たとえ企業に両立支援制度が整えられていたとしても、
実際に利用することが難しい人もいるでしょう。

そこで必要とされるのは職場全体の意識を変えることです。
誰もがいつ、どのような状況で時間制約を持つかわからないと考え、
「お互い様」の風土を作ることが大事であり、
企業は支援する方針を明確にし、全従業員に表明することが重要です。

2.制度づくりの手順

(1)現在の介護支援制度と介護保険制度の概要の周知
 介護休業、介護休暇、短時間勤務制度など
 企業の介護支援制度の仕組みを周知するだけでなく、
 市区町村の介護保険制度や介護サービスについての相談先を知らせると、
 従業員にとって介護しながら、働く自分を具体的にイメージしやすくなります。

(2)介護をしている(していた)従業員に対するヒアリング
 介護経験のある従業員に対するヒアリングや、
 全従業員に対するアンケートの実施などにより、
 その企業にあった介護支援の制度や取組みを検討することができます。

(3)現在の介護支援制度の拡充や運用面の工夫、その他意識啓発の取組の検討
 (2)の結果を踏まえて、勤務地限定の正社員制度や
 育児・介護中の転勤猶予制度などの制度の拡充や運用面での工夫を図ります。
 また、実際に利用することができるように、
 管理職研修やキャリアデザイン研修の実施や
 仕事との両立に対応できる相談窓口を設置するなど
 意識啓発の取組みについても検討します。

(4)両立支援の周知と意識啓発の実行
 制度導入を従業員に積極的に周知することで意識啓発し、
 職場風土を変えましょう。
 また、「介護しながら働き続ける環境を作るのは自分自身でもある」
 ということを意識啓発する必要があります。
 そのためには、会社全体でワーク・ライフ・バランスを意識し、
 業務や体制を見直し、社員間の良好なコミュニケーションを心掛けることです。

上記のように制度づくりを実施し、人財の損失を阻止しましょう。

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2014年8月 1日 金曜日

平成26年7月23日第366号

労働安全衛生法の改正と「ストレスチェック」
 化学物質による健康被害が問題となった胆管がん事案の発生や、職場から受けるストレスによる精神障害を原因とする労災給付の支給決定の件数の増加等、最近の社会情勢の変化や労働災害の動向に即応し、また、労働者の安全と健康の確保対策の一層の充実のため、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が平成26年6月25日に公布されました。
 改正は全部で7項目ありますが、なかでも改正の目玉であるストレスチェックについて記載します。労務管理や就業規則の見直し等が必要か、検討してみましょう。

 「労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師又は保健師による検査(ストレスチェック)」について(施行日は公布日から1年6ヵ月以内、今後政令で規定)
 (1)常時使用する労働者(厚生労働省は「基本的に健康診断の対象者と同様と
  想定している」とコメント。)が50人以上の事業場は、年1回、従業員にストレス
  チェックを実施することが義務付けられます。
 (2)検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本
  人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。
 (3)検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申出があれば医師による
  面接指導を実施することが事業者の義務となります。
 (4)面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を
  講じることが事業主の義務となります。
   また、(3)の申し出をした労働者に対し、不利益な取り扱いをしてはならず、
  (4)に関しては、今後事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るた
  めの指針が公表されます。
 (5)検査や面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た
  労働者の秘密を漏らしてはならず、これには、行為者も事業者にも罰則があり
  ます。

 しかし、医師の意見を聴いた上で、作業の転換、労働時間の短縮等の措置が必要となった場合、きちんと対応できるでしょうか?意図的とまでは言わなくとも特定の業務を忌避する労働者が出る可能性があったり、当該措置を実施した後に不調者の職場復帰プログラムを作成したりする必要があるかもしれません。また、ストレスチェックは無料ではないので、予算措置を行う必要も出てきます。
 50人未満の事業場は当分の間、ストレスチェックの制度は「努力義務」ですが、きちんとした制度を考える良い機会かもしれません。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年8月 1日 金曜日

平成26年7月8日第365号

労働災害を予防する方法について

 労働災害(以下「労災」と言う。)が発生すれば、労災保険から各種の補償給付がありますが、被災者本人の人生設計に支障が生じ、企業にも負担が生じます。
 勿論、事後の補償給付は大切ですが、いかに予防するかの工夫が最も大切です。
 過去の発生事例から予防方法を考えることができますので、参考にしましょう。

1.印刷会社オフセット印刷機に腕を巻き込まれた事案
 印刷機の配紙ローラーの埃を取り除くため、労働者がローラーを回転させ、刷毛で清掃作業をしていたところ、着衣の袖がローラーに巻き込まれたもので、厚さ1ミリ以下の隙間に腕を引き込まれ、肩関節まで巻き込まれたところで機械が停止した。
<負傷程度>  右腕挫滅、頚椎骨折
<災害の原因> 作業着の長袖のボタンが外れていたため、袖から巻き込まれた
           もの。
<予防方法>  安全管理規程において作業前の着衣点検の実施を定め、確実
           に励行する。

2.ひき肉製造機(ミートチョッパー)に指を巻き込まれた事案
 業務多忙で多量の原料肉を詰め込んだため、機械内部で詰まりが生じ、手を入れて詰まった肉を除去していたが、詰まりが除去できたところで機械が動いたため、刃に指を巻き込まれた。
<負傷程度>  右全指切創全治3ヵ月
<災害の原因> 電源を切らなかったため、機械内部の詰まった肉を取り除いた
           時点で、刃が作動したため、指が巻き込まれたもの。
<予防方法>  詰まった肉の除去作業時は、電源を切ることを安全管理規定に
           定めて徹底する。

 10人未満の事業所では、就業規則を労働基準監督署へ届け出る必要はありませんが、労災を予防するためには、就業規則に加えて安全管理規定を定め、作業開始前の準備の点検及び作業方法について、手順を定め、励行の徹底を図ることが必要です。
 就業規則は事業所と従業員を労災から守る大切な定めです。小さな規則が大きな安全を担保します。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年8月 1日 金曜日

平成26年6月23日第364号

主な相続財産の範囲について

 相続が開始した場合の、主な相続財産の範囲についてまとめてみました。
 民法では『相続人は...被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。』と、定められています。

1.親族法上・相続法上の権利義務
 (1)親族法上の権利義務(離縁請求権・認知無効確認請求権など)は、原則とし
  て対象となりません。但し、既に具体化している権利(内縁の不当破棄に基づく
  慰謝料・財産分与請求権・遅滞に陥った過去の扶養料など)については、相続
  の対象となります。
 (2)相続法上の権利義務も、原則として相続の対象とはなりませんが、相続の
  承認・放棄をする権利や遺留分減殺請求権などは相続の対象となります。

2.占有権
 民法上、明文の規定はありませんが、学説及び判例は占有権の相続を認めています。

3.保証債務
 (1)通常の保証債務は主に相続の対象となり相続財産に属します。
 (2)身元保証債務・包括的信用保証債務については、相続の対象となりません。

4.生命侵害による損害賠償請求権保証債務
 (1)財産的損害について、判例は損害賠償請求権の相続を肯定しています。
 (2)精神的損害(慰謝料)についても、『これを放棄したものと解する特別の事情
  がない限り』相続の対象となります。(最判.昭43.8.2)民法上、明文の規定は
  ありませんが、学説及び判例は占有権の相続を認めています。

5.生命保険金請求権
 (1)保険契約で、被相続人が自分を被保険者とし、かつ、自分を受取人としてい
  る場合は相続人が受取人たる地位を相続します。
 (2)保険契約で、被相続人が自分を被保険者として、受取人を別の特定人とし
  ていた場合には、その特定人が固有の権利として原始取得します。
 (3)保険契約で、被相続人が自分を被保険者とし、受取人を単に相続人として
  いた場合、死亡時の相続人が固有の権利として相続します。

6.香典
 香典は相続財産に属しません。遺族に対する慰謝と、葬儀費用の儀礼的分担を意味するものとされ、前者は遺族全員が、後者は葬祭の主催者が取得するものとされています。
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2014年6月 5日 木曜日

平成26年6月8日第363号

労働災害発生時に負う責任とリスク低減対策

 労働災害は態様によりリスクの深刻さは異なりますが、死亡等の災害発生時は企業の社会的責任が厳しく追及されることもあります。そこで、今回は企業が負う責任とリスク低減対策をみていきましょう。

1.民事・刑事上の責任
(1)安全配慮義務
  -使用者が従業員の安全や健康に配慮しなければならない義務
  過労死や過労自殺を含む労働災害の場合、安全配慮義務違反があったとして、賠償損害額が高額になる傾向があります。
(2)使用者責任
  -従業員が第三者に損害を与えた場合に使用者が負う責任
  企業は人を使用して利益を得ているため、従業員使用により生じた損害についても企業に責任を負わせるという考えであり、企業側に過失がなくても責任を問われることもあります。
(3)労働安全衛生法を遵守する義務
  労働災害における刑罰法規である労働安全衛生法では災害防止のため、多くの措置義務を課し、義務違反には罰則規定の適用があります。そのため、労働災害が起こっていない場合でも、法違反により刑事責任が問われることもあります。
(4)両罰規定による責任
  労働安全衛生法違反の場合、違反した該当者だけでなく、法人等も罰せられます。

 以上の責任以外にも、労働災害が発生時は機械設備や足場、建物等の使用停止命令などの行政処分を受けるリスクや労働者に対しての休業補償責任、社会的な信用や評価が失われる社会的リスクがあります。

2.労働災害の発生リスクを低減するためのポイント
(1)経営幹部がリスク感覚を持つ
  自社の災害リスクを認識し、普段から対策を講じることが大切です。そのためにも、経営幹部がリスク感覚を養っていることが必要です。
(2)安全衛生管理規程の整備
  緊急時に冷静に対応できるよう安全衛生管理規程で危機管理体制を定めましょう。
(3)非定常作業のリスク軽減対策
  通常作業と異なる作業をされる際に労働災害が起こるリスクは非常に高く、非定常時においても所定の安全衛生管理体制の下、作業管理することが求められます。そのため、非定常作業は許可制や届出制にし、作業計画・作業手順をしっかりと把握し、リスクアセスメントを行なうことが大切です。
 
 以上を踏まえ、安全な職場作り、労働災害のリスクヘッジをしていきましょう。

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2014年6月 5日 木曜日

平成26年5月23日第362号

割増賃金の計算の基礎単価について

 割増賃金を計算するとき、どの手当を計算に含めていますか?一般的には労働基準法第37条第5項で定められた7種類の賃金(家族手当、通勤手当、子女教育手当、別居手当、住宅手当、臨時に支払われる賃金、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金)以外の賃金を割増賃金の計算の基礎に含めているのではないでしょうか。しかし、それについては誤解しがちなケースもあります。

誤解1
 労基法第37条第1項及び第4項では、割増賃金は「通常の労働時間の賃金」を基礎とすると規定されており、上記7種類の手当の名称以外は全て割増賃金の計算の基礎に含まなければならないわけではありません。例えば、会社によって「扶養手当」など、名称は異なるけれど、実質的には家族手当と同様の手当を支払っていることがあります。このような場合は、名称にとらわれず実質的に判断し、割増賃金の計算の基礎から除外することができます。
 また、労基法で定められた7種類の賃金であっても、例えば
(1)扶養家族の有無やその人数に関わらず一律で支払われている家
 族手当
(2)実際の通勤距離に関わらず1日○○円と決めて支払われている
 通勤手当
(3)賃貸住居者には○万円、持ち家居住者には○万円と決めて支払
 われている住宅手当
など、従業員に一律に支給されているものについては除外することはできません。

誤解2
 深夜労働の場合、所定労働時間の労働であっても2割5部の割増賃金を支払わなければなりません。例えば賃金に「深夜労働手当」などという名目で深夜労働の割増分(2割5分)を支払っている場合、上記7種類の割増賃金から除外できる手当には当てはまらないので、時間外労働や休日労働の割増賃金の算定の基礎にこの割増賃金を含めて計算しなければならないと考えてしまいがちです。ですが、これはあくまでも深夜労働に対する割増賃金であり、労基法第37条に定める「通常の労働時間の賃金」には含みませんので、割増賃金の計算の基礎から除外することとなります。
 間違いやすい話ですが、通常はAという作業をして賃金を支払われている労働者が、特殊作業手当が支払われるBという作業を時間外に行った場合、その時間外労働に対する割増賃金の計算の基礎は、作業に対する賃金となり特殊作業手当を含めた賃金が計算の基礎となりますので、ご注意ください。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年5月 8日 木曜日

平成26年5月8日第361号

給与明細書

 労働相談における労働者側の事例として「会社から給与明細書が貰えない」と言う相談がよくあります。今回は給与明細書の法的根拠に触れてみたいと思います。

1.労基法上の根拠
 労基法上には定めが無く、行政通達(平成10年9月10日基発530号)により『使用者は、口座振込などの対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払いに関する計算書を交付すること』とされています。
(1)基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
(2)源泉徴収税額、社会保険料額等の控除額
(3)口座振込等を行った金額
※この通達は、「口座振込における通達」ですが、多くの会社が給与を口座振込みによって支給していることから、現金支給の場合も準用されるものと思われます。
尚、通達は法律ではありません。

2.各労働・社会保険法上の根拠
 労働・社会保険料の各制度をみると、次の各々の法の条文によりそれぞれ保険料を控除する際、明細書の発行が義務付けられています。
(1)雇用保険料の控除-労働保険の保険料に関する法律第31条第
  1項
(2)健康保険料の控除-健康保険法第167条第3項
(3)厚生年金保険料の控除-厚生年金保険法第84条第3項
 また、所得税法第231条では、給与を支払う者は支払いを受ける者に支払明細書を交付しなければならないと定められています。

 以上のごとく、労基法上では法的な根拠がなく行政通達ですので、給与明細書の発行について労働基準監督署へ相談をしても、監督署は「助言」はできても法的に罰することはできません。しかし、各法制度の中で保険料等の控除額を記載した明細書の発行が義務付けられています。
  民事上のトラブルがあった場合、困るのは使用者側であり、給与明細書を発行する方が無難なのは当然です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年4月25日 金曜日

平成26年4月23日第360号

懲戒処分が認められない場合とは

1.日本ヒューレット・パッカード事件
平成24年4月27日、最高裁判所は従業員の欠勤を就業規則所定の懲戒事由である「正当な理由のない無断欠勤にあたる」としてされた諭旨退職の懲戒処分が無効であると判断しました。つまり、無断欠勤を理由にした懲戒処分は認められない、と判断した、ということです。

2.この事件のポイント
  この事案では、従業員が同僚らを通じて嫌がらせの被害を受けているとして年次有給休暇を取得して出勤しなくなり、その後も約40日間欠勤を続けています。会社側は、調査するも、そのような被害事実は見受けられなかったため、就業規則所定の「正当な理由のない無断欠勤」として、諭旨退職の懲戒処分をしました。
しかし、裁判所は「使用者は、この場合精神科医による健康診断を実施するなどした上で休職等の処分を検討し、経過を見るべき」とし、このような対応をしなかった以上、「正当な理由のない無断欠勤にあたらない」としました。
 本件では「嫌がらせ」は幻聴であることが伺われるので、形式的、客観的には欠勤の「正当な理由」にはならない、と思えます。しかし、裁判所は、使用者として適切な対応をしない限り懲戒処分を認めるべきではない、という判断をしたことがポイントです。

3.会社側に出来る対策は
  第1は、欠勤の理由が精神的不調のためと見受けられる場合には、まず、精神科医等に受診させることです。しかし、使用者側から「受診を勧めても行ってくれなくて困る」という話も聞きます。無理に通院をさせることは難しいので、就業規則の中に「必要と認めるときには従業員に健康診断を行うことが出来る」などの規定が必要です。
第2に、段階的な処分を心がける、ということです。「退職」「解雇」などは、従業員の身分を奪う重い処分となるので、裁判所は簡単に認めません。まずは、戒告、減給、休職(停職)処分等を検討し、その上で、改善が無く、やむを得ない場合にとることになります。ただ、精神的な不調の場合、従業員ご本人の責任を追及することが難しいので、実際に取り得るのは休職処分となりそうです。
 一度、就業規則、懲戒処分のありかたを見直してみるといいですね。

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2014年4月10日 木曜日

平成26年4月8日第359号

業務改善助成金について

 厚生労働省が設けている中小企業最低賃金引き上げ支援対策費補助金(通称:業務改善助成金)が平成26年度から京都府地域においても導入されることになりました。上手く活用して事業場内の一層の業務改善を図りましょう。

<制度の概要>
 労働者の地域別最低賃金を引き上げることにより、大きな影響を受ける中小事業主の支援を目的として、次の2点を実施した場合に、業務改善に要した経費の内、最大で1/2(企業規模30人以下の場合は3/4)が助成されるというものです。
(1)事業場で最も低い賃金を800円以上に引き上げる計画を策定し、かつ、1年あたりの時給が40円以上となる引き上げを実施すること
(2)賃金制度の整備、就業規則の作成、労働能率の増進に資する設備・器具の導入、研修等(当事務所の研修も対象となります)といった業務改善をすること。

例えば、
・POSシステムを導入し、在庫管理の業務効率化を図る
・業務用食洗機を導入し、機械で洗浄することで、作業時間の短縮を図る
・新型工作機械を導入し、生産スピードの向上や不良品率の低下を図る
・賃金制度の整備、就業規則の作成・改正(事業場内最低賃金の明記が必要)
・板金加工用の大型の動力切断機を購入し、作業の効率化を図る。
・販売管理ソフトを購入し、仕入・売上などをデータ管理し作業能率を上げる
など、業務や作業の効率化にかかる費用に対して助成されます。
 支給対象となるのは事業場内最低賃金が800円未満の労働者を使用している中小事業主で、賃金改善計画や業務改善計画を策定して交付申請書を提出し、交付決定を受けた事業主が対象です(税金や労働保険の未納等がある場合は支給申請できません)。

<申請の流れ>
 助成金交付申請 →助成金交付決定 →計画実施(機器の購入など) →実績報告
助成金の交付決定通知書がおりる前に機器の購入などを行った場合、その購入費用について助成金は利用できませんので、申請の手順を間違えないように気をつけましょう。

 詳細については、当事務所までお問い合わせください。

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2014年4月10日 木曜日

平成26年3月23日第358号

平成26年4月からの国民年金・厚生年金の改正

1.産休期間中の保険料免除
 育児休業期間の社会保険料は、申し出ることで、本人も、事業主も免除されていましたが、それと同様に産前産後休業期間中(産前6週間(多胎妊娠は14週間)、産後8週間のうち、被保険者が労務に従事しなかった期間)の社会保険料が免除されます。
 また、産前産後休業終了後に育児等を理由に報酬月額が低下した場合は、子が3歳未満の期間中は、復帰後の3ヵ月間の報酬日額を基に、標準報酬月額が改定され、本人の負担が少なくなります。更に、養育期間標準報酬月額特例申請書を提出すれば、将来の年金額は、産前産後休業前の標準報酬月額で計算されます。

2.遺族基礎年金の父子家庭への支給範囲拡大
 一定の子がいる場合に支給される遺族基礎年金について、平成26年4月1日以後に死亡したことにより支給する遺族基礎年金からは、これまで支給対象が「子のある妻又は子」に限定されていたものが、「子のある夫」にも支給されるようになります。

3.70歳以後に繰り下げ請求をしても70歳からの年金を受給
 70歳に達した後に繰下げ支給の申出を行った場合に、申し出のあった月の翌月分からしか支給されなかったものが、改正後は70歳到達月の翌月分から遡って申し出があったものとみなし、70歳到達月の翌月分から支給されます。

4.未支給年金の請求範囲の拡大
 年金受給者が死亡した場合、死亡月分の年金については受取人がいないこととなり、その受給権者と生計を同じくする2親等以内の親族に限り、「未支給年金」として受給を請求することができていましたが、改正後は、その範囲が生計を同じくする3親等以内の親族にまで拡大されます。

5.付加保険料の納付期間の延長
 国民年金の上乗せの年金であり、任意加入である付加年金の付加保険料については、納付期日(翌月末日)までに保険料を納付しなかった場合、加入を辞退したものとみなされていましたが、改正により、予め付加保険料を申出ていることを前提に、過去2年分まで遡って納付することができるようになります。
※平成26年度の老齢基礎年金は0.7%引下げられ、満額で772,800円、平成26年度国民年金保険料額は15,250円(月額)となります。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年4月10日 木曜日

平成26年3月8日第357号

労働者派遣法の改正に向けての報告
 
 厚生労働省労働政策審議会の分科会が平成27年4月の施行を提言している労働者派遣制度の改正についての報告をまとめました。

1.労働者派遣における現状の問題点
(1)常用労働者の雇用確保に主眼がおかれ、派遣労働者の保護とのバランスが取れてないこと
(2)派遣労働者のキャリアアップを促進する仕組みの必要性があり、本人の希望に基づき正規雇用・無期雇用への転換やキャリア形成支援を行っていくことが重要であること
(3)労働者派遣制度が複雑で分かりにくいこと。特に派遣受け入れ可能期間の制限

2.派遣期間制限について
 派遣労働を臨時的・一時的な働き方と位置付け、派遣労働者が常用労働者の代替とならないよう、派遣労働を臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。
 26業務について、実際には派遣先の正規労働者が従事している業務が相当程度あり、26業務に該当するか否かで派遣期間の取り扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先に分かりやすい制度となるよう見直す必要がある。
※26業務とは秘書や通訳など派遣可能期間の制限を受けない業務

3.解決策としての改正
(1)製造業における派遣は経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があるため、禁止しない。ただし、有期雇用派遣労働者に対する雇用安定処置等を講じること。
(2)26業務の区分及び業務単位での期間制限は廃止とする。
(3)特定・一般の区別を撤廃し、すべての労働者派遣事業を許可制とする。
(4)労働者派遣制度は派遣労働者個人単位と派遣先単位の2つの期間制限を軸とする。ただし、60歳以上の者、育児休業の代替要員等は例外とする。
※個人単位とは派遣先の同一組織単位における同一派遣労働者の継続した受け入れ
(5)同一組織単位において、3年を超えて継続して同一派遣労働者を受け入れてはならない。ただし、過半数の労働組合から意見を聴取した場合は、さらに3年間派遣を受け入れることができ、その後3年が経過した時も同様とする。
※組織単位とは業務のまとまりがあり、その長が指揮監督権を有する単位とて契約上明確にしたもの          
 
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年4月10日 木曜日

平成26年2月23日第356号

不動産賃貸借契約等に係る消費税の適用税率

 4月1日から消費税及び地方消費税が5%から8%に変更となるにあたり、「賃貸借契約に基づく使用料を対価とする資産の譲渡等」に関する項目をご紹介します。

1.不動産の賃貸借契約に基づく使用料を対価とする資産の譲渡等について
 新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則2)。
(1)当月分(1日から末日まで)の賃貸料の支払期日を前月末日としている賃貸借契約で、平成26年4月分の賃貸料を 平成26年3月○日に受領する場合
→平成26年4月分の賃貸料であり、施行日以後である平成26年4月分の資産の貸付けの対価として受領するものなので、4月末日における税率(8%)が適用されます。
(2)当月分の賃貸料の支払期日を翌月○日としている賃貸借契約で、平成26年3月分の賃貸料を平成26年4月に受領する場合
→平成26年3月分の賃貸料であり、施行日前である平成26年3月分の資産の貸付けの対価として受領するものなので、支払期日を4月としている場合であっても、3月末日における税率(5%)が適用されます。
 消費税法基本通達では「賃貸借契約に基づく使用料等を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とする。」となっており、今回公表された事例によると、例えば4月分の賃料支払いの場合、法人税や所得税における資産の譲渡等の時期が平成26年3月であっても消費税の適用税率は8%となるため、結果として資産の譲渡等の時期と適用税率が必ずしも一致しないこととなります。

2.ファイナンス・リース取引について
 平成20年4月1日以後に契約を締結したファイナンス・リース取引は、「リース取引の目的となる資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時に当該リース資産の売買があったもの」(法人税法第64条の2)として取り扱われます。したがって引渡し時点(借受日時点)の消費税率が適用されます。これにより、借受日が改正法施行日前(平成26年3月31日まで)の場合は旧税率(5%)、改正法施行後(平成26年4月1日以降)の場合は新税率(8%)が適用されることになります。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2014年4月10日 木曜日

平成26年2月8日第355号

「タイプ別」残業の分類とその対策について

 会社は残業削減に向けて、様々な施策を講じていますが、なかなか狙い通りの成果を上げることが出来ず苦労しています。そこでムダな残業を見つけ、それらを排除することが重要となります。それではムダな残業とは一体どういうものなのか、大きく2つに分類し、さらにいくつかのタイプに分けて紹介します。

1.一見してムダだと分かる残業
 ・生活費を稼ぐために必要がない残業を行う「生活残業」
 ・成果を上げている人が遅くまで会社に残っているので帰りづらい「罰ゲーム残業」
 ・誰かが帰るまで会社に残ってしまう「付き合い残業」
 ・仕事の密度が薄く、ダラダラ仕事をしている「ダラダラ残業」
 ・計画性がなく締切前に遅くまで残業するのが当然になっている「成行任せ残業」
 
 これらについては、まず、残業は、業務が所定労働時間以内に終わらないから発生するものであり、残業代を稼ぐためにするものではないということを認識させます。そして、会社に長くいる=成果が出せていないことの責任を取る風土の確立、成果と結びつかない行動であればやめさせ、改善する、などを行います。
 また、上司は部下が残業して何をしているのかを把握し、残業を行なう場合にはどんな仕事をいつまでに行うかを事前に申請させ、上司がその内容を精査した上で残業を承認する仕組みを作ります。フォローの必要がなければ、上司が自ら早く帰ることも大事です。部下も締切間際に残業をしなくて済むように仕事のゴールや方向性、ポイントを押さえ、締切から逆算してスケジュールを立てていく必要があります。

2.むしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業
 ・すべてを完璧に仕上げないと気が済まない「自己満足残業」
 ・思い込みで仕事をし、納期間際に当初の狙いからズレていることが分かり、やり直せざるを得ない「独りよがり残業」
 ・自分の立場が奪われるという強迫観念から他人に仕事を渡せない「抱え込み残業」

  これらについては、仕事を請けた段階で仕事のゴールや方向性、押さえるべきポイントを発注者と擦り合わせた上で、どこに対して力を発揮すべきかを把握させる、ゴールまでの道筋、中間報告の日程を組み込んだ段取りも併せて描かせ、この道筋に沿って仕事に取り掛からせる、などを行います。
  日頃から職場の中で仕事の「見える化」、「共有化」を図り、万が一の時のフォロー体制及び仕事の継承体制を構築していくことも重要です。

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2014年1月24日 金曜日

平成26年1月23日第354号

【ブラック企業重点監督の結果】について
 
 前号(第353号)に続いて、厚生労働省から発表がありました表題についてもう少し詳細な報告を行います。
 厚生労働省は、去年9月に「若者の使い捨てが疑われる企業」への重点監督を実施しました。監督にあたっては、「時間外・休日労働が36協定の範囲か?」、「賃金未払残業(サービス残業)がないか?」、「長時間労働者について、医師による面接指導などの健康確保措置が講じられているか?」を重点確認事項とし、監督調査を行いました。
 その結果、重点監督を実施した5,111社のうち、82%にあたる4,189社で、何らかの労働基準関連法令違反が見つかりました。各業種での比率を見ると、特に接客娯楽業(87.9%)、運輸・交通業(85.5%)、保健衛生業(83.6%)、商業(83.2%)が全体平均である82%を上回る結果となっています。
 主な法令違反は、次の通りに分類されます。

(1)違法な時間外労働があった・・・2,241社、43.8%
特に運輸・交通業(56.8%)、接客娯楽業(52.0%)が全体平均を大きく上回る結果となっています。

(2)賃金未払残業があった・・・1,221社、23.9%
特に建設業(37.0%)、接客娯楽業(37.0%)、商業(32.5%)、金融・広告業(32.1%)が全体平均を大きく上回る結果となっています。

(3)過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかった・・・71社、1.4%
特に製造業(2.6%)、教育・研究業(2.0%)、その他の事業(1.9%)が全体平均を大きく上回る結果となっています。
厚生労働省は、違反事業場に対し是正勧告書を交付し、是正しない事業場に対しては、送検も視野に対応する方針です。
なお、重点監督時に把握したものとして、1ヵ月の時間外・休日労働時間では、80時間超が1,230事業場(24.1%)あり、うち730事業場(14.3%)で100時間超が明らかになりました。

厚生労働省は、今後も引き続き若者の使い捨てが疑われる企業等に対し、監督指導を行っていくこととしています。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年1月24日 金曜日

平成26年1月8日第353号

労働基準監督署、監督官の職務

 昨年9月、若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督の実施(いわゆるブラック企業の実態調査)が行われ、新聞紙上にも大きく取り上げられました。調査は全国5,111事業所で行われ4,189事業所で違法な時間外労働など労働基準関係法令違反がありました。
 京都労働局管内(調査対象事業所119、内違反事業所90)では、労働基準法第37条(割増賃金の支払い)違反で、過去に遡り、労働者計163名に約1億7,800万円の割増賃金が支払われることとなった事例があります。これらの違反があった場合、労働基準監督署から是正勧告が行われ、改善がない場合、送検、社名が公表されます。
 労働基準監督官は、行政指導に従わず繰り返し法違反を犯し、また労働災害の発生原因に労働関係法規違反があると、刑事訴訟法による「特別司法警察職員」の職務を行います。「特別司法警察職員」の職務とは、一般の警察官と同じです。違反が悪質な場合、書類送検・強制捜査取り調べ・逮捕・被疑者を身柄拘束のまま送検する権限が与えられています。
どの様な送検があるか、京都労働局の事例2つを紹介します。

(1)賃金不払いで書類送検・・・平成24年3月14日、最低賃金法違反被疑事件について、京都地方検察庁に書類送検。
 被疑者Aは、洋菓子製造・販売業を営む者であり、パート労働者1名に対して、平成23年4月分から同年6月分までの賃金合計183,131円をそれぞれの所定支払日である毎月末日に支払わなかった疑い。

(2)労災隠しで書類送検・・・平成24年3月22日、労働安全衛生法違反被疑事件について、京都地方検察庁に書類送検。
 A社は大阪府内で建築請負業を営む事業者であり、3次下請会社として京都市内の家電量販店新築工事現場においてシャッター等工事を請負っていたが、平成22年8月8日、同社の現場作業員が作業中にトラックの荷台から落下して、左踵骨(しょうこつ)骨折等の負傷をし、2ヵ月以上休業することとなったにもかかわらず、Bは2次下請会社C社元大阪支店長Dと共謀し、所轄労働基準監督署長へ労働者死傷病報告書を提出せず、労災隠しを図った疑い。

※「労災隠し」とは労災を隠すという意味ではなく、労働者死傷病報告書の未提出を指します。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年1月24日 金曜日

平成25年12月23日第352号

会社分割とうつ病
 
近年、仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した精神障害についての労災請求が増え、その認定を迅速に行うため厚生労働省では平成23年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準」を新たに定め、これに基づいて労災認定をしていますが、平成23年度の精神障害労災請求は1,272件(支給決定件数325件)と毎年増加傾向が止まりません。企業において、危機意識を持ったますますの労務管理、対応に配慮が必要です。

1.会社分割とは
 会社分割とは、平成12年の商法改正で認められた制度で、会社の一部を切り離して、設立会社へ移転するか(新設分割)、または、他の企業(承継会社)に吸収させるか(吸収分割)の方法により分社化を認める制度で現在は会社法に規定があります(会社法第757条~第766条)。いずれにしても消滅するA社の権利義務関係は包括的に、新設会社(C社)、または存続会社(B社)に承継されます。

2.会社承継法
 この会社分割に併せてその労働者はどのように取り扱われるのかが問題となります。労働契約も承継されるため、すなわち「承継強制の不利益」と「承継排除の不利益」が想定され、異議申し立ての制度が設けられています。

3.使用者の責任
 分割会社(A社)から、B社またはC社に移行後、短期間にうつ病に罹患したのであれば労災請求手続きはB社、C社が承継するとしても、その労働者が損害賠償を請求するのはA社なのかB社、C社なのかという問題になります。
雇用されている企業が異なっていても業務自体は一貫して継続しているのであれば使用者側に、それぞれ管理不十分として連帯して損害賠償ができると思われます。
 雇用されている企業が異なっていて、業務自体も一貫して継続していないとき、A社の業務でうつ病になったのか、B社またはC社の業務でうつ病になったのかは明確ではありません。理論的には、A社とB社またはC社に別々に損害賠償を請求することにならざるを得ませんが、うつ病という疾患上短期に罹患するとは考えにくく、やはり分割時には顕在化していなくても、分割会社にも大きく責任を問われることになるでしょう。
 安全配慮義務違反の債務が当然に承継されることは分割の際の計画書(契約書)の記載の有無もありますが、記載に有ると無いとにかかわらず、分割会社にも企業として責任は問われてくることになると思われます。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年12月16日 月曜日

平成25年12月8日第351号

振替加算の注意点について

1.振替加算とは
 振替加算とは、サラリーマンの夫が老齢厚生年金の配偶者加給年金額を受給している時、妻(大正15年4月1日から昭和41年4月1日まで生まれ)が65歳に達して老齢基礎年金を受給する際に支給額が上乗せされる制度です。もちろん夫によって生計を維持されている必要があります。
 夫に支給されている配偶者加給年金額は、妻が65歳になれば打ち切られますのでご注意ください。

2.振替加算の経緯と注意点
 なぜ振替加算という制度ができたのでしょうか。
 昭和61年4月1日に年金法の大改正までは、サラリーマン世帯は夫の年金で妻を扶養するという考えであったため、妻は国民年金への加入義務はありませんでした。もちろん任意で加入することはできたのですが、大半は加入せず、老後は夫の年金で生計を立てるというのが一般的でした。そのため、夫の年金には妻の分として加給年金額が加算され、独身の受給者よりも多めに年金が支給されていました。
 しかし、年金法の大改正以後、サラリーマンの妻は第3号被保険者として国民年金への加入が義務付けられました。これにより妻自身も年金がもらえる様になったのですが、今まで任意加入をしてこなかったサラリーマンの妻は60歳までに国民年金を満額でもらえる期間(40年)を満たすことができないため、もらえる年金額が少なくなってしまいます。この制度の変更による不公平を補うために妻の老齢基礎年金に一定額の加算を行う制度(振替加算)ができたのです。
 振替加算の額については夫に支給されている加給年金額に妻の生年月日に応じた一定の率を乗じて支給されます。例えば大正15年4月1日に生まれの妻は加給年金額に1を乗じるので、加給年金額の額がそのまま支給されますが、昭和41年4月1日生まれの妻は加給年金額に0.067を乗じた額となり、かなり少なくなります。
 夫の加給年金額がそのまま妻に支給されていると勘違いしてしまう方も中にはいらっしゃいますが、加給年金額よりも減額されてしまうことがほとんどですので、その点には注意が必要です。

 なお、わかりやすくサラリーマンの夫とその妻としておりますが、夫が主夫で妻が勤めている場合は、振替加算は夫に支給されます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年12月16日 月曜日

平成25年11月23日第350号

少額訴訟
 

 裁判といえば「簡単には終わらない」というイメージがあります。
しかし、訴額が60万円以下の金銭支払請求事件については、1回で結審してその場で判決できる裁判があります。

手続の特徴
(1)簡易裁判所が管轄となり、訴額は60万円以下、内容は金銭支払請
 求に限る。
(2)口頭弁論期日は司法委員立会のもと、ラウンドテーブル法廷で開か
 れ、その日に結審することが原則。被告からの反訴の提起は出来ない。
(3)証拠調べは、期日にその場で調べることが出来るものに制限される。
(4)判決に不服があっても地方裁判所に控訴することは出来ない。判決
 をした裁判所に対しの異議申立は出来るが、言い渡される判決には
 不服申立が出来ない。
(5)裁判所は、債務者の支払能力に応じて3年を超えない範囲内で支払
 いを猶予したり、分割して支払うことを認める。また、提起後の遅延損
 害金を免除する判決をすることがある。この条件に対して不服を申し
 立てることは出来ない。
(6)相手方からの申出又は裁判所の職権によって通常訴訟へ移行する
 ことがある。
(7)同一簡易裁判所に対しては、年に10回までという回数制限がある。
(8)請求を認める判決には必ず仮執行宣言がつくので、判決の確定を
 待つことなく、強制執行をすることが出来る。

少額訴訟の利用状況(「司法統計」(H20年度~H24年度)より)
(1)利用件数 年間に約12,700件~約17,100件
(2)訴えの種類(多い順)
 1)交通事故による損害賠償請求 2)売買代金請求 3)貸金返還請求
(3)弁護士等に頼まず、原告・被告の双方が当事者本人によってなされ
 たもの88.8%~89.3%

 少額訴訟を提起された場合の注意点としては、起こす訴訟や事件が複
雑でじっくりと事実認定をして欲しい場合は、通常訴訟への移行をすべき
とされています。また、訴訟を放置した場合等は、欠席のまま判決される
ことがありますので、注意が必要です。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2013年12月16日 月曜日

平成25年11月8日第349号

メンタルヘルスマネジメント
 「メンタルヘルス」は文字どおり、心の健康のことですが、近年特に注目されるようになったのは、それだけ心の不調を訴える人が社会に急増しているからです。
 平成20年から施行された労働契約法では、それまで事業者の努力義務であった「労働者の安全配慮」が明文化され、法的義務が課せられるようになり、メンタルヘルス対策は、すべての企業に必須となりました。

 リスク軽減の意識も重要です。特に経営基盤が脆弱な中小企業は会社の存亡にかかわるリスクといっても良いでしょう。対策が不十分で労使紛争や訴訟などが発生すれば、企業のイメージ低下、信用の失墜などにより、大きな痛手を負う可能性は高く、賠償責任が発生すれば致命傷になりかねません。精神障害の労災申請件数・同認定件数とも、ここ10年間で約5倍に急増していることも認識しておくべきです。
 単に体制を整備するにとどまらず、常に現状チェックを行ない、より高度な水準を目指す「メンタルヘルスマネジメント(心の健康管理)」の考え方が有効です。
企業のメンタルヘルス対策の主な実施項目として
(1)産業医の選任・推進審議機関(衛生委員会)の設定・運用
 ※産業医の選任は常時50人以上の事業場で義務づけられています。
(2)過重労働者への適切な対応
(3)不調者への適切な休職措置と復職支援
(4)相談窓口の設置
(5)教育・研修
(6)職場のハラスメントの予防・ルール化
(7)メンタルチェック
 
 定期健康診断も徹底し、受診だけでなく診断結果を踏まえた事後処理まで徹底することです。月100時間超の時間外労働をした人、(過重労働者)への十分なケアも大切です。これらは不調者の予防に加え、万一の紛争時のリスク軽減にも有効です。
 ラインの管理者の負担にも十分配慮しましょう。この層は部下のメンタルヘルスケアなど大切な役割を担いますが、もともと職務の負担が重く、管理者自身が不調に陥る恐れもあり、会社としての配慮が必要です。
 また、事業所外の専門機関として「産業保健推進センター」や「メンタルヘルス対策支援センター」などの公的機関があります。

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2013年12月16日 月曜日

平成25年10月23日第348号

欠勤時の通勤手当の取り扱い 
 通勤手当は、法律で支給が定められているわけではありませんが、通勤手当の支給が労働条件として定められていれば、実費弁償的に算定される出張の旅費等とは異なり、労働の対償として支払われる労働基準法上の賃金となります。したがって、支給条件が定められた通勤手当を、会社が一方的に労働者の不利益となる条件に変更することは、原則として許されません。また、個人ごとの支給に当たっては、通勤しなかった日の取り扱いにも注意を要します。

 労働契約法第8条には「労働者と使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することが出来る。」とあります。しかし、その一方、労働契約法第10条で定める例外を除いて、使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは出来ないとされています。
 労働契約法第10条で定める例外とは「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである」場合とされています。
 労働者からの合意を得るには、通勤手当を減額する理由の真摯な説明が必要ですし、合意が得られず就業規則の変更による場合には「通勤手当を減額しなければ、経営が立ち行かなくなる」ような、高度な必要性に基づく合理性が必要となります。
 
 通勤手当は、法的には賃金でも、実費弁償的な性格を有しています。そのため、出勤しない日に不支給にすることは合理性があるといえますが、適正な規定が備わっていることが前提となります。通勤手当が賃金である以上、その支給基準は、賃金の決定、計算の方法に当たり、就業規則の絶対的必要記載事項となるからです。
 労働基準法附則第136条で、使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、「賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」とされていますが、年次有給休暇の取得によって、通勤手当が日割り等で減額されることを就業規則等に明記しておくことで、年次有給休暇の取得日について賃金を減額することは可能となります。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年10月12日 土曜日

平成25年10月8日第347号

パートタイマー等の試用期間中の解雇

 パートタイマー等の採用の際、正社員の採用と同様に試用期間を設ける会社があります。試用期間を設ける契約は、一般的に「解約権留保付契約」とされ、試用期間中に不適格事由があれば本採用を拒否し、解雇するという労働契約(通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められる契約)と言われています。また、労基法第20条により、試用期間中採用後14日以内の解雇には解雇予告が必要ないとされています。その様な理由で、正社員と同様に試用期間を設けている会社が多いと想像できます。

 しかし、労基法第20条の試用期間中採用後14日以内に解雇予告なしに解雇できるのは、期間の定めのないパートタイマー等であって、期間の定めのある雇用契約締結者(以下、有期雇用者)は無理があると考えます。
 労働契約法第17条第1項に「使用者は、期間の定めのある労働契約について、『やむを得ない事由』がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」とされています。厚生労働省の「労働契約法のあらまし」には、『やむを得ない事由』であるか否かは、個別具体的事案により判断されるものであるが、契約期間は労働者及び使用者が合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、『やむを得ない事由』があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められる場合よりも狭いと解される、とあります。
 この『やむを得ない事由』は、契約期間満了を待つことなく直ちに雇用契約を終了させざるを得ない特別重大な事由が必要となります。従って、期間雇用者に試用期間を設けた場合も、その契約期間中に特別重大な事由がない限り、契約途中で解雇することは無理があります。

 期間雇用者にも試用期間を設ける必要があるならば、短期の有期雇用契約を締結し、その期間を試用期間とし、期間終了時点で契約の更新を判断する採用方法が有効な手段と考えます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年10月 2日 水曜日

平成25年9月23日第346号

労働条件変更と変更解約告知
 

 自民党政権に代わり9ヵ月が経とうとしています。アベノミクスと名付けられた経済政策が推し進められる中、いつになれば中小企業にまでその恩恵が回ってくるのか不明です。
 万が一、従業員の労働条件を下げざるを得ないとき、どんな方法があるのでしょうか。

1.労働条件の変更
 労働条件の変更は、労働契約法に基づき「労使間の合意により変更することができる」と規定され、合意があれば可能といえます。また労働者に不利益な変更をする際に合意のない場合は、就業規則を変えることでその変更が可能となり、(1)変更後の就業規則の周知(2)労働者の受ける不利益の程度(3)変更の必要性(4)内容の相当性(5)労働組合等との交渉の状況(6)その他変更に係る事情、といった要件に照らして合理的である場合は労働条件を変更することができると規定されています。

2.変更解約告知
 変更解約告知とは、労働条件変更のために従来の労働契約の解消と新たな労働契約の締結の申し込みを同時に行うことや、労働条件変更を申し込みつつ、それが受け入れられないときは労働契約の解約を行うこと等を労働者に対し告知する行為をいいます。
 これは、労働契約の解約自体を目的に行われるものであるのか、労働条件を変更する手段として行われるものであるのか意見が分かれるところですが、変更解約告知を認めた裁判例(スカンジナビア航空事件、東京高裁判決、1995・4・13)では、(1)労働条件変更の必要性(2)その必要性が労働者の受ける不利益を上回り、変更を伴う契約の申し込みに応じない労働者の解雇が止むを得ないこと(3)解雇回避努力が尽くされていること、の3点を変更解約告知が認められる要件としています。
 また、変更解約告知を認めない裁判例(大阪労働衛生センター事件、大阪地裁判決、1996・8・31)では、「労働者が新しい労働条件に応じない限り解雇を余儀なくされるとなれば、二者択一を迫られ、労働者は非常に不利な立場におかれることになるとして、変更解約告知は認められない」としており、いずれにしても変更解約告知には慎重の上に慎重であることが求められます。

3.「留保付き承諾」という課題
  ドイツでは変更解約告知に対し、労働者が変更した労働条件に合理性があるかどうかを法の判断を待ってから承認するとした上で、暫定的に変更後の労働条件に従って就労する「変更解約告知の留保付き承諾」の制度が導入されています。現在、日本では留保付き承諾は変更の申し出を拒否したものとみなされ、法的に認められていません。今後日本においても変更解約告知法理が労働条件変更法理へと成熟していくことが期待されます。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年9月10日 火曜日

平成25年9月8日第345号

特別加入給付基礎日額と新たな特定化学物質規制

1.9月1日から特別加入給付基礎日額の上限が引き上げられます。
 労災保険は、労働者の業務または通勤による死傷病に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外でも業務の実情、災害の発生などからみて、労働者に準じて保護することが適当であると認められる次の事業を営む事業主には特別に任意加入を認めています。これが「特別加入」です。

 ・中小企業の事業では、金融・不動産・保険・小売業で常時使用する労働者が
  50人未満。卸売・サービス業で100人未満。それ以外では30人未満の事業。
 ・個人タクシー等の運送事業や個人の建設業、漁船の船長及び林業等
  (一人親方)
 ・特定作業としての農業。
 ・海外派遣される者。

 現在、特別加入制度加入者は、本人が給付基礎月額(3,500円~20,000円までの13区分)を任意で選択し、労働局長の認定を受け、所定の保険料率を掛けた額を労災保険料として支払っています。
 特別加入者の給与の実態や本体給付との均衝を踏まえ、労働者災害補償保険法施行規則等が改正され、9月1日から施行されました。具体的には新たに22,000円と24,000円と25,000円の3区分が加えられ16区分となります。
すでに特別加入している方が給付日額の変更を希望する場合には、平成26年3月18日~3月31日、6月1日~7月10日に手続を行なってください。

2.10月1日から「1,2-ジクロロプロパン」が規制されます。
 安全衛生法施行令が10月1日から改正され、がん事案の原因物質の1つと考えられる「1,2-ジクロロプロパン」について、労働者の健康障害防止に関するリスク評価の結果に基づき、特定化学物質障害予防規則の措置対象物質に追加します。
洗浄や拭き取りの業務ではご注意ください。

 労災保険や労働安全衛生法施行令で気になる場面がありましたら、社会保険労務士にご相談ください。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年9月10日 火曜日

平成25年8月23日第344号

リフォーム補助金について

 「リフォーム空室1室あたり最大100万円の補助金」というものがありますので、ご紹介します。
 正式名称は「住宅セーフティネット整備推進事業」といいます。既存の民間賃貸住宅の質の向上と、空家を有効に活用することにより住宅確保要配慮者※ の居住の安定確保を図るとともに、災害時には機動的な公的利用を可能とする環境を構築するため、住宅確保要配慮者の入居等を条件として、空家のある民間住宅の改修工事に要する費用の一部を国が直接補助するものです。(※ 高齢者世帯等)

1.対象住宅の要件(次の全ての要件を満たす必要があります)
 (1)民間賃貸住宅を活用した住宅セーフティネットの強化に取り組む地方公共団
  体との連携が図られる区域内で、1戸以上の空家(改修工事着工時点で入居
  者募集から3ヵ月以上人が居住していないもの)があること
 (2)改修工事後に賃貸住宅として管理すること
 (3)原則として空家の床面積が25平方メートル以上であること
 (4)台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を有するものであること

2.改修工事の要件
 空家部分又は共用部分における以下の工事のうち、少なくとも一つの工事を含む改修工事を実施することが必要です。
 (1)耐震改修工事
 (2)バリアフリー改修工事
 (3)省エネルギー改修工事

3.補助額
 改修工事費用の1/3
 ※補助上限額  空家戸数×100万円

4.申請手続
 受付締切:平成25年12月27日(金)[必着]
 ※応募の状況によっては、申告期限以前に募集を締め切られる場合があります。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2013年8月23日 金曜日

平成25年8月8日号第343号

自転車事故を起こした責任は?

 警察庁交通局による平成24年の交通事故件数は約66万件、死者数は4,411人で昭和45年のピーク時と比較すると(昭和45年=16,765人)3割以下に減少しています。しかし、その中で目を引くのは自転車が加害者となる事故です。平成13年と平成23年の事故件数を比較すると、自転車対歩行者の交通事故は1,807件から2,801件に急増しています。
 道路交通法では、自転車は「軽車両」に分類され、自転車の運転者が事故を起こした場合は刑事責任を問われます。また、人に損害を負わせた場合は、賠償責任も負うことになります。下記は、実際に起こった自転車交通事故です。

1.損害賠償額6,779万円
 男性がペットボトルを片手に自転車で減速せず下り坂を走行後、交差点に進入。横断歩道を横断中の女性(38)と衝突、女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。

2.死亡事故を誘発した有罪判決
 加害者男性(96)は、国道交差点で、赤信号を横断していた、加害者男性が乗る自転車を避けようとしたトラックが道路脇の建物に衝突し、トラックの運転手が死亡。
 裁判官は、「信号に従って通行するのは自転車運転者の義務」としたうえで、「赤信号を見落として自転車で横断し事故を起こしたのは重大な過失」と自転車の過失を認定し、禁固1年4ヵ月執行猶予3年の実刑判決を下した。

3.親に9,500万円賠償命令
 小学校5年生の男子児童の自転車が神戸市北区の坂を時速20キロ~30キロで下った際、散歩途中の女性に衝突。女性が意識不明の状態になったとして、被害者の夫が男子児童の母親を相手取り、計1億500万円の損害賠償を求めて訴訟した。
 判決では、「母親が十分な指導や注意をしていたとはいえない。」と認め、母親から被害者に3,500万円、被害者が加入していた保険会社に約6,000万の賠償金の支払いを命じた。

 自転車事故では、車のように交通反則金制度はありません。従って罰金であっても、全て「前科」がつく刑事処分になり、刑事罰を受けると、医師、栄養士、調理師などの免許が与えられなくなることもあります。
 あなたは、自転車事故を甘くみていませんか?近年、自転車が加害者になるケースが増え、会社としても対応が問題となっています。そんなときに備えて、「自転車通勤規程」を作成しましょう。詳細は当事務所までお問い合わせください。

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2013年8月23日 金曜日

平成25年7月23日第342号

休日について
 
 休日は、労働基準法第35条第1項で「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と定められています。
 また、休日は、原則として暦日制で与えるものです。即ち、午前0時から午後12時までの24時間となっています。例え24時間勤務であっても、非番の継続24時間を休日とは認められません。ただし、業務上やむを得ないと認められる次の3つの場合について行政の解釈例規は例外を認めています。

1.8時間3交替制
 シフト勤務制で1週間ごとに勤務帯が替わる場合、暦日制だと勤務帯によっては、2暦日にまたがる休日付与の必要があり、週休制をとった立法の趣旨に合致しないことになります。
 そこで、シフトによる交替制が就業規則に記載されかつルールに則った勤務帯の交替となっている場合には、例外的に休日は継続24時間を与えることで成立するものとされています。

2.自動車運転者
 自動車運転者業務の特殊性から暦日の24時間を休日とすることが困難であるため、休息時間と休日について特別な取扱がなされています。休息時間に24時間を加算して得た労働義務のない時間、通常勤務の場合には連続した労働義務のない32時間を、隔日勤務の場合には連続した労働義務のない44時間を休日として取扱います。また、休息時間を分割して付与する場合、2人乗務の場合及びフェリーに乗船する場合については、連続した30時間の労働義務のない時間を休日として取扱います。

3.旅館業
 フロント係、調理係、中番及び客室係は、旅館業という特異性から1日の勤務帯は、顧客のチェックインからチェックアウトを基準として編成されます。従って、2暦日にまたがる時間帯となり、休日の付与や時間外の取扱が、一般業種と大きく異なります。旅館業においては、午前0時から午後12時を、正午から翌日の正午までの24時間と読み替えることが可能となり、その時間を含む継続30時間(当分の間、継続27時間)の休息期間が確保される場合、例外として認められています。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年7月 9日 火曜日

平成25年7月8日第341号

退職と解雇
 
 人が会社に雇用されて労働契約が結ばれる行為も民法における契約行為の一種ですが、その労働契約が終了する事由として「退職」と「解雇」があります。時に「退職」と「解雇」が混同して使用される場合がありますので、次に整理します。
 退職...労働者側から使用者に対し一方的な意思表示によって労働契約を終了すること。
 解雇...使用者側から労働者に対し一方的な意思表示によって労働契約を終了すること。
 また、退職日を指定するのは、あくまでも労働者であり使用者ではありません。労働者・使用者双方が「退職日」等合意することによって労働契約が終了する場合は「合意解約」となります。
  「解雇」をする場合、解雇予告(労基法20条)が必要です。「退職」する場合は、会社の規定にもよりますが2週間前の申出等(民法627条1項)が必要です。

 では、労働者側からの退職の申出がされた場合、その申出は何時でも撤回することができるのでしょうか。
 判例では、「退職の意思を撤回できるのは、退職の意思を承認する権限ある者が承諾するまでなら、退職の意思は撤回できる」とされています。
 言い換えると、人事権のある人物が退職を承認すれば、労働者側の都合で、使用者側の同意なく退職の撤回はできなくなります。退職撤回を認めないとなれば、その退職の承認が何時であったかがポイントとなります。後日のトラブル回避の為には書面で退職の申出を受け、承認後は退職受理通知などを残すことが賢明です。

 退職と解雇の取り扱いについて触れましたが、労使ともに通常は長期的な継続雇用を望むのが一般的です。「退職」「解雇」について現実的な問題点は多数ありますが、今後も会社の持続的な発展をするためには、労使の信頼関係を重視されることを望み、武田信玄の有名な言葉を引用します。
<人は城、人は石垣、人は堀、情は味方、仇は敵なり>
 この言葉は「どれだけ城を強固にしても、人の心は離れてしまったら世は治めることができない。情けは人をつなぎとめ、結果として国を栄えさせるが、仇を増やせば国は亡びる。」という言葉を残しています。
 つまり、「人材の重要性 = 組織は人間力」ということではないでしょうか。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年7月 9日 火曜日

平成25年6月23日第340号

障害年金のお話し
 
 平成25年6月12日、厚生労働省は国民年金保険料の「2年前納制度」の導入を報道発表しました。開始は平成26年4月で、試算によれば1年前納の割引率2.1%から倍近い4.0%になります。年金制度も少しずつ変わっていきます。

 さて、御承知のように公的年金は、国民の老齢、障害、死亡時に生活を補償するものです。なかでも障害年金は、関係者の主観が入り、それが障害年金の請求をより困難に、複雑にしています。もらえるのに制度がわからなかったということのないようにしたいですね。一般的な流れは、次のようになります。

1.基本方針を立てましょう
 この病気なら障害年金がもらえるというように、原因となる傷病名が限定されているわけではありません。「障害の等級・程度」は「国民年金・厚生年金保険障害認定基準について」という通知が厚生労働省から出されています。また、傷病の発生した時期や、初診の医療機関の連絡先を確認しましょう。

2.年金記録の確認
 初診日で保険料納付要件(初診日の前日において前々月までの期間または直近1年間に未納がないかを問われます)を確認しましょう。初診日が20歳前の場合は問われません。

3.受診状況証明書等の取得
 診断書作成医療機関と初診の医療機関が異なっている場合、初診の医療機関で作成していただく書類です。連絡や訪問をして作成を依頼しましょう。

4.診断書の取得
 可能な限り医師と面談し診断書のポイントを伝えるようにしましょう。

5.病歴(就労状況)申立書の作成
  「請求者本人」が「障害年金の審査担当者」に思っていることを伝える書類です。

6.戸籍などの添付書類を揃える

7.窓口に裁定請求書を提出する

 以上簡略に書きましたが、やはり時間と粘り強さが必要です。また、書類の取得もなかなか難しいものがありますので、ぜひとも国家資格であり、年金の専門家である社会保険労務士にご相談ください。       
 (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年6月20日 木曜日

平成25年6月8日第339号

派遣労働者と契約社員について

 アベノミクスは、概ね良好な評価がされている様子で、日本の経済政策は、世界の注目を集め、今後の動向が注目されています。景気回復への期待から、株価は乱高下し、金利の状況は、先行き上昇の気配が濃厚です。しかしながら、中小企業庁発表の中小企業景況調査における、各企業の雇用状況に関する今後の見通しは厳しい見方のようです。    
 派遣や有期雇用による調整局面に関与する法改正について、この時期に再度取り上げました。

1.労働契約法
 有期労働契約を反復更新している場合の雇用不安の解消と労働条件の是正を目的と
して改正されました。派遣労働者に関しても同様のスタンスで法改正がされています。
1)有期労働契約の更新拒否には、客観的で合理的な理由が必要とされ、更新を
 拒否する事が相当と認められない場合には、従前と同一の条件で更新されま
 す。
2)有期労働契約が反復更新され通算5年を超えるときは、労働者の申し込みによ
 り、無期労働契約に転換されます。

2.労働者派遣法
 名称が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」と変わり、派遣労働者の保護が前面に出ています。法改正の趣旨に注意しましょう。
1)均等待遇確保のため、正規雇用者との待遇格差について、派遣会社から正規
 雇用者の賃金・福利厚生等の情報提供を要求さ れることが有ります。
2)派遣先の都合で派遣契約を解除する場合は、派遣労働者の新たな就業機会
 の確保、休業手当等の支払いに要する費用の負担措置が派遣先の義務とな
 りました。

 派遣労働者を受け入れる場合は、正規労働者の賃金情報の流出や派遣契約解除に伴う新たな費用負担の発生等、当初に予想していなかった事態が発生することに、注意が必要です。

 契約社員や派遣社員について、その人が必要な人材か調整すべき人材かを考えたとき、客観的な評価が有効です。回復基調の出発点での円滑な労務管理を目指して、人事・労務管理の専門家社会保険労務士にご相談ください。       
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年6月20日 木曜日

平成25年5月23日第338号

おさえておきたい相続対策の基本
 
 相続対策を実行する場合には、「相続税の軽減対策」「納税資金対策」「争族対策」の3つをバランスよく組み合わせて行うことが大切です。

1.相続税の軽減対策
 次の世代へできるだけ多くの財産を承継させるためには、相続税の節税が欠かせません。
さらに、相続税が増税されてより一層の備えが求められます。
まず相続対策の基本として次のものを中心に行っていきます。
1)養子縁組の活用
2)生命保険契約の活用
3)贈与の実行
4)賃貸マンション等の建物の建築
 毎年、贈与を繰返していくなど、一見地味に思えるかもしれませんが、小さなリスクで大きな効果をあげるためには、これらの基本の対策を積み重ねて行くことが最も重要です。

2.納税資金対策
 例えば、生命保険契約を活用する方法があります。相続人が受け取った一定額までの生命保険金は、相続税が非課税となりそのまま相続税の納税資金に充当することができます。
 また、相続税は、延納や物納といった納税方法も選択でき、相続財産に占める不動産の割合は全体の半分を占めています。特に、収益性が低く、処分が困難な不動産を物納すると、相続税評価額で収納してもらうことができ、不良資産の整理にも役立ちます。

3.争族対策
 家庭裁判所における家事手続案内件数のうち相続関係は総数の約3割を占めており、件数も年間15万件を超えています。
 相続が発生した場合、相続財産は共同相続人の共有財産と解されます。このことは、相続財産を管理・処分するのに、相続人全員の合意が必要となることを意味し、この共有状態を脱するためには、相続人全員の合意に基づく遺産分割協議が必要となります。
 しかし、遺産分割協議が調わずそのまま放置しておくと、合意が必要な相続人の数が飛躍的に増えることにもなりかねません。
このような事態を避けるためには、財産所有者が自らの意思を「遺言書」という形で法的に明らかにしておく必要があります。相続対策は早く始めるほどコストとリスクを分散し、軽減することができるため効果的であるといえます。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2013年5月21日 火曜日

平成25年5月8日第337号

正社員募集と契約社員募集の違い
  中小企業では、契約労働法が4月1日から改正されたことから、「契約社員」とは何か?の定義が問われているところです。「契約社員=期間の定めのある従業員」という定義にして、その多くが過去の採用における失敗からリスク管理として「契約社員採用」という行動に出ています。

「契約社員採用」で集まる応募者側の問題
 応募者の視点で考えると、「契約更新時に交渉ができるほど実力に自信がある人」か「腰掛けで次の職場までのつなぎと考えている人」意外は、わざわざ契約社員を選んで就職したいとは思っていません。通常、契約社員の方は次回の更新に不安を感じていますし、結果として人生設計にも影響が出やすくなります。
 「契約社員という立場」であっても、どうしても入りたいほどの魅力と特長のある会社であれば別ですが、企業は「契約社員でもいいからとにかく仕事に就きたい」という方々を集めてしまいかねません。

「契約社員採用」にまつわる企業側の問題
  企業の多くが契約社員を採用するメリットまたは目的はいくつか挙げられます。
(1)契約更新時に満足な結果を出せていなければ、労基法の解雇に該当せずに雇用関係を終了させることができる(経営状態に合わせての人員整理が容易であり、試用期間のように試し雇いができる)
(2)退職金が不要
(3)一定年齢以上は更新しないことで平均年齢を保つ
(4)年俸制を適用し人件費の負担を抑えたい
など、若干不適切とも言える考えが見え隠れしていることがあります。
 「契約更新というイベントがあるから常に緊張感をもって仕事をしてもらえる」など、経営者の詭弁を聞いたこともありますが、それはマネジメント能力の不足を社員に押し付けているだけです。正社員でも従業員満足度を上げれば、緊張感をもって仕事をしてもらえます。 
   
中長期的な採用における「成功」を願うなら正社員採用を
 正社員募集と契約社員募集には差がかなりあります。また、技術の流出、従業員満足度、人材の自転車操業、会社への帰属度、社員の生活や幸せなどからも、人材戦略として中長期的な視野をもっての正社員募集をお勧めします。

 ※契約社員を正社員にすることを前提にした、月15万円×最大2年という「若者チャレンジ奨励金」が生まれました。詳細は当事務所までおたずねください。

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2013年5月21日 火曜日

平成25年4月23日第336号

労使間の慣習について

1.「労使間の慣習」は法的拘束力を持つのか? 
 民法第92条によれば、長年継続された「労使間の慣習」は、法的拘束力を持つことがあります。未然にトラブルを防ぐため、「労使間の慣習」が法的拘束力を持つのはどのような場合か把握しておきましょう。

2.「労使間の慣習」が法的拘束力を持つ要素とは
 ・同種の行為または事実が、一定の範囲において長期間反復継続され定着して
  いる。
 ・当事者双方が、明示または黙示にこれによることを排除・排斥していない。
 ・当該労働条件について、内容の決定権や裁量権を有する者が規範意識を有し
  ている。
 等を要する必要があります。
 判例でも、単に長年継続されているということだけではなく、当事者が「規範意識」を持っていることが重要となってきます。
 さらには使用者(労働条件を決定し得る権限を有する者か、またはその取り扱いに一定の裁量権を有す者)が長年繰り返してきた内容であるならば、慣習に沿った内容に就業規則を変更することになります。
 そのため、就業規則を変更できる権限を持った者が、その「労使間の慣習」の取り扱いに義務意識を持っていることが必要となり、労働者が「労使間の慣習」において権利を得るには、高いハードルがあります。
 一方で、使用者においても権利の行使が「権利の濫用」として、黙認・放置されていた一定の規律違反行為に対して無効となることがあります。

3.「労使間の慣習」例
 ・就業規則などに定められていない場合の行為準則となる場合
  (日本ダンボール研究所事件、三菱重工業事件等)
 ・就業規則など成文化されたルールを補足する場合
  (石川島播磨重工業事件、京都新聞社事件等)
 ・就業規則など成文化されたルールに反する取り扱いをする場合
  (大栄交通事件、日本大学事件等)

 すでに「労使間の慣習」が存在している場合、その慣習を労使合意のうえ廃止できれば良いですが、今後当慣習が発生しうるものであれば、就業規則等に明記してルール化すべきです。ただ、このときは労働条件の不利益変更とならないよう注意が必要になります。                 
 (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年4月16日 火曜日

平成25年4月8日第335号

マイナンバー制度

 政府は、国民一人ひとりに番号を振り、年金や健康保険などの社会保障給付と納税を一つの個人番号で管理する「共通番号制度」について、平成28年から導入する関連法案を3月1日に閣議決定し、22日衆院で審議が始まりました。
共通番号は「マイナンバー」と呼ばれ、納税や年金の照会などから番号を使った手続きが可能になります。

「マイナンバー制度」の導入についてのメリット
住民、行政の過度な負担の軽減につながります。
・住民側...社会保障給付等の申請を行う際にまた、必要となる情報につき、申請者が添付書類等を付けることなく、申請を受けた行政機関等が、関係各機関に照会を行うことで取得することが可能となるため、申請者が窓口で提出するものは、請求書のみで足りる。
・行政側...行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が保有する個人情報が、同一人の情報であるということの確認を行うことができ、行政機関、地方公共団体等の間において当該個人情報の照会・提供を行うことが可能となる。

「マイナンバー制度」に関する懸念
過去の調査では個人情報の漏洩など、政府の情報管理体制への不安が次のように大きいことが分かります。
・個人情報漏洩によるプライバシー侵害(40.5%)
・個人情報の不正利用による被害   (32.2%)
・国により監視・監督される恐れ   (13.0%)

「マイナンバー」法案のポイント
1)住民票コードから国民一人ひとりに番号を付ける
2)番号を本人に知らせたうえで、番号情報を入れた顔写真付きICカードを配る
3)納税や年金の給付申請等、当面は行政手続きに利用する
4)平成27年中に番号を通知、平成28年1月から利用開始予定
5)平成29年1月から国税庁や日本年金機構等の間で個人データーを交換する
6)平成29年7月から地方自治体も情報交換に参加する
等となっています。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年4月16日 火曜日

平成25年4月1日臨時号

若年チャレンジ奨励金
 
 
この奨励金は、若年者の正社員化を目的に、35歳未満の非正規雇用(契約期間の定め有り)の若者を、自社の正社員として雇用することを前提に、職業訓練を実施する事業主の方に奨励金を国が支給するものです。
<若年チャレンジ訓練の対象者>・・・1年度に計画できる訓練は60人月が上限
 ・35歳未満の者・過去5年以内に訓練を実施する分野で正社員としておおむね3
 年以上雇用されたことがない者
 ・登録キャリア・コンサルタントにより、若年チャレンジ訓練へ参加することが適当
 と判断され、ジョブ・カードの交付を受ける者

<対象となる訓練>・・・訓練期間は3ヵ月以上2年以下
 ・OJT(自社内での訓練)とOff-JT(座学)を組み合わせた訓練
 ・全体の訓練時間にOJTが占める割合が1割以上9割以下であること
 ・1ヵ月当たりに換算した訓練時間数が130時間以上であること
 ・訓練受講者の主要な労働条件(就業時間、賃金形態)が正社員と同じであるこ
 と

<受給金額>
 ・訓練奨励金      ・・・訓練実施期間に訓練受講者1人1ヵ月当たり15万円
 ・正社員雇用奨励金 ・・・訓練終了後、訓練受講者を正社員として雇用した場合
 に、1人あたり1年経過時に50万円、2年経過時に50万円

<受給までの流れ>
 (1)訓練実施計画を作成し、1ヵ月前までに都道府県労働局(ハローワーク)へ
  届出
 (2)労働局(またはハローワーク)が訓練実施計画の内容を確認
 (3)訓練受講者の選考・決定(ハローワーク・民間職業紹介機関への求人、
  社内訓練生募集、ジョブ・カード交付)
 (4)訓練実施計画に基づき訓練を実施
 (5)訓練奨励金の支給申請
 (6)正社員雇用奨励金の支給申請(正社員転換後、1年または2年経過時点)

 ※ジョブカードとは、履歴シート、職務経歴シート、キャリアシート、評価シートの4つからなるファイルです。ハローワークやジョブ・カードセンターで発行できます。
 詳細については、当事務所までお問い合わせください。

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2013年4月16日 火曜日

平成25年3月23日第334号

継続雇用制度の留意点 

 平成25年4月1日から改正高年齢者雇用安定法(以下「高齢法」。)が施行されます。
 平成18年4月1日から改正施行されていた高齢法では、定年の定めをしている事業主に対して、高齢者雇用確保措置が義務付けられていました。
 具体的には(1)定年の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年の定めの廃止。
 3種類のうち(2)の継続雇用制度は「再雇用」制度と「勤務延長」制度に大別されました。今年の3月末までは労使協定により基準を定めた場合は、継続雇用制度の希望者全員を対象としない制度も可能であったものが、今改正で「希望者全員雇用」が原則となります。
 一方、老齢厚生年金の支給開始年齢引上げにより、60歳定年に達しても1円の年金も貰えない無年金世代が登場するようになりました。今回の改正は、定年から年金受給までの期間をスムーズに連結するのが目的のため、受給開始年齢以上においては従来通り労使協定で対象者に係る基準を設けて良いとの「経過措置」が導入されました。
 
1.就業規則の変更 
 すでに就業規則で定年を65歳以上としている企業、定年制なしの企業、65歳まで希望者全員雇用の企業は今回の法改正に伴う見直しは必要ありません。しかし、労使協定により基準を設けて再雇用を制限している企業は希望者全員を継続雇用制度の対象とする必要があり、就業規則にもその点を変更して監督署への届出が必要になります。
 年金受給開始年齢までは希望者全員を対象とし、それ以上の年齢は基準を設ける「経過措置」を導入するにしても、厚生労働大臣が新たに定めた「指針」では就業規則に定める解雇・退職事由に該当する場合以外継続雇用をしないことができません。
 労使協定での人選ができなくなる分、継続雇用制度に労働者が申し込むことで労働者に雇用継続の合理的期待がありと判断され、継続雇用拒否には解雇に相当する客観的合理性・社会的相当性が求められることになります。 そのため、就業規則の解雇事由又は退職事由についても見直しておく必要があります。

2.再雇用後の労働条件
 前述の雇用確保措置のうち、どの制度を選択しても、「賃金」に関しては特段制約がなく、年収が6~7割程度にダウンする傾向にあります。しかし、雇用形態の違う正社員と嘱託であったとしても賃金等の労働条件が大幅に低下させるには、合理性が必要になるケースがあります。また、裁判例でも、極めて過酷で、勤務する意思を削がせると認められるような労働条件を提示することは雇用継続を排除したと判断され、認められていません。労使間で十分に協議し、納得性の高いものになるよう心掛けてください。(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年3月15日 金曜日

平成25年3月1日臨時号

正規雇用労働者育成支援奨励金
  

 この奨励金は、健康・環境・農林漁業分野等の事業における正規雇用の労働者に対し、職業訓練(Off-JT)を行った場合に、訓練に要した経費を支援するものです。
 訓練前に職業訓練計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。
研修費用が全額支給(上限有り)される珍しい助成金です。該当事業主は、この機会を利用して、従業員の方に受講させ、売上アップ、職場活性化にお役立てください。

<対象となる事業主>
・医療・介護・福祉
・情報通信業、電気業
・運輸業、郵便業
・スポーツ・健康教授業、スポーツ施設提供業
・廃棄物処理業
・建設業のうち健康・環境・農林漁業分野に関する建築
・製造業のうち健康・環境・農林漁業分野に関する製品を製造、取引
・農業、林業、漁業
・学術、研究開発機関のうち健康・環境・農林漁業分野に関連する技術開発
・その他の事業のうち健康・環境・農林漁業分野に関連する事業を行っているもの

<対象となる職業訓練>・・・受講する労働者の数に制限はありません
(1)健康・環境・農林漁業等、業務に関するもの ・・・趣味・教養等は対象外
(2)1コースの訓練時間数が10時間以上であること

<受給金額>...1年度1事業所当たりの支給限度額は500万円
(1)事業主負担の訓練費用を1訓練コースにつき対象者1人当たり20万円が上限
(2)事業社内訓練の場合、外部講師の謝金は1時間当たり3万円が上限

<受給までの流れ>・・・訓練コース追加・変更の場合は、前日までに、変更申請要
(1)受給資格認定申請・・・訓練開始1ヵ月前までに、職業訓練を作成し、申請 
(2)職業訓練計画の認定
(3)職業訓練計画の開始・・・申請日から6ヵ月以内に訓練を開始

詳細については、当事務所までお問い合わせください。

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2013年3月15日 金曜日

平成25年3月8日第333号

社会保障NEWS・もしも介護が必要になったときには

社会保障関係NEWS

1.平成24年 厚生労働省「賃上げ等の実態に関する調査から」
 平成24年中に、1人平均賃金を引上げた又は、引上げる予定の企業は、約75.3パーセントに上り、改定額は4,063円、改定率は1.4パーセントとなります。いずれも、前年の1.3パーセント、3,513円を上回り賃金等が上がります。

2.公的年金実受給者数は、3,867万人、前年度末に比べ71万人増加
 平成23年度末現在、公的年金加入者数は、6,775万人となり、前年末に比べ51万人減少、しかし公的年金の受給権者数は、3,867万人で、前年末に比べ71万人増加しています。加入者が減っている一方で、受給者は増加しています。
(平成24年12月17日の公的年金実受給者数 厚生労働省集計)

3.巳年生まれは、1,020万人、新成人は122万人
 平成25年1月1日現在の巳年生まれの人口は1,020万人で、総人口1億2,747万人に占める割合は約8パーセントと少なく、男女別では、女性が32万人多くなっています。今年の新成人は、昨年度と同数の122万人となりました。

もしも家族が倒れたら
 年金受給者が増え、受給者を支える若者が減っている中で、今まで元気だった方が突然けがや病気で体調不良となり入院する場合があります。また、退院後は介護が必要な状態になったり、認知が発症して誰かが絶えず見守りが必要となることが、考えられます。そんなもしものとき、介護施設や費用の負担等突然の事態に直面することになります。

 そんなとき、地域包括支援センターは、様々な相談に乗って支援してくれます。
 地域包括支援センターでは、ケアマネージャー・保健士・社会福祉士等が配置され高齢者の相談業務を行っています。介護が必要になったとき、介護保険の申請手続をはじめ自治体独自のサービスを受ける準備もスムーズに進められます。

 平成24年に介護保険法が改正され、高齢者が住み慣れた地域で生活ができる体制作りの整備が進んでいます。中学校区に1ヵ所あります。パンフレットだけでも取りに行かれては如何でしょうか。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年3月15日 金曜日

平成25年2月23日第332号

筆界特定制度とは?
 筆界特定制度は、隣地との境界がハッキリしないときに土地所有者の申請により、法務局が筆界の現地における位置を特定する制度です。

 筆界とは、表題登記のされている一筆の土地とそれに隣接する土地との境であり、「公法上の境界」のことです。「私法上の境界」(所有権界)とは異なり、土地所有者間で決めたり変えたりすることができません。

 しかし、長年に渡る土地の利用状況や売買、相続等で土地所有者、隣接地所有者が変わり「真正な筆界が一体どこなのか」がわからなくなる場合があります。

 筆界特定制度はこのような場合、筆界の位置を特定することができない場合でも、土地所有者の申請により、その位置の範囲を特定できる制度です。平成18年1月20日から実施されています。

1.筆界特定制度の注意点
 ・申請手数料は土地の価格(固定資産評価額)に応じて納付
 ・測量が必要な場合の費用は申請人の負担

2.制度創設の理由
 ・短期間での解決
  従来からの主流である裁判所に境界確定訴訟を起こす方法は、解決までにおおよそ2年の期間が費やされていました。筆界特定制度は比較的短期間に終了することを目的とし、解決までの期間は半年から1年を目指しています。
 ・費用負担の軽減
  従来は訴訟を起こしていたため、費用も大きな負担となっていました。この制度の申請手数料は訴訟に比べ、大きな負担とならないように定められています。

3.手続きの流れ
(1)筆界特定の申請(申請手数料の納付)
(2)申請の受付(申請情報の審査、受理)
(3)公告・通知(公告と関係人宛の通知)
(4)筆界調査委員の指定
(5)測量費用の予納(予納告知)
(6)筆界特定調査(委員:土地家屋調査士による調査・測量)
(7)意見聴取(筆界登記官による意見聴取等)
(8)筆界特定委員の意見書の提出
(9)筆界特定の公告等 (申請人に通知・筆界特定をした旨を公告・関係人に通知)
                       
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2013年2月15日 金曜日

平成25年2月8日第331号

ノーワーク・ノーペイ
 遅刻・早退と残業との関係や給与支払形態について勘違いされている方が多々います。給与計算に大きく関わってくることです。そのため、賃金の基本であるノーワーク・ノーペイについて今一度確認しましょう。

1.ノーワーク・ノーペイとは
 ノーワーク・ノーペイの原則とは「労働なければ賃金なし」ということです。つまり、出勤しない分について賃金は発生しないことが基本です。
 従って、労働者が所定労働日に欠勤、遅刻、早退などをしたときは、それは労働者の都合による労働契約の不履行に該当しますから、欠勤の日はもちろん、各種休暇であっても原則として完全月給制でない限り賃金を控除します。
 天災事変や交通ストライキで労働者の責任ではなく、出勤できない場合もその損失は労働者が負担しなければならず、控除の対象となります。

 但し、例外もあります。
(1)年次有給休暇
(2)休業手当
 ・使用者都合(機械の検査、原料の不足等の「経営障害」による休業)の場合
  ...平均賃金の60%以上の手当
 ・不当解雇など使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合
  ...平均賃金の100%の手当
 年次有給休暇と休業手当はノーワークであっても賃金を支払う義務が生じます。

2.給与の支払形態
 月給制   ...通常、完全月給制をさします。もし欠勤や遅刻があった場合でも、
         ノーワーク・ノーペイの原則に反し、欠勤分の給与を差引かない制
                       度
 日給月給制...欠勤(年次有給休暇を除きます)があった場合、ノーワーク・ノーペ
         イの原則が適用されて、欠勤分の給与は、月給額から差引く制度

3.遅刻・早退と残業時間の関係
 労働時間についての基本的な考え方は実労働時間主義です。つまり、労働時間は実労働時間が1日8時間(変形労働時間制は平均して1週40時間)を超えないかぎり残業とは解釈されません。
 但し、就業規則や賃金規程に「○○:○○以降に働いていた場合は割増賃金を支払う」等の旨を定めていれば、支払義務が発生します。これは実労働時間主義ではなく、定時制ということを就業規則や賃金規程で定めているからです。

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2013年2月 5日 火曜日

平成25年1月23日第330号

内定取消の注意点  
 大学3回生の採用活動が本格化する時期となりました。もうすでに、内定を出された企業もあるのではないでしょうか。 万が一、諸事情により内定を取消したい場合は次のことに注意しましょう。
 
1.内定は労働契約の成立
 一般的に採用内定した場合、企業と内定者間で、入社日を始期とする「解約権留保付労働契約」が成立しているものとされています。つまり、採用内定通知書に記載されている取消事由が発生した場合、新卒内定者が大学等を卒業できなかった場合等限られた場合にだけ、労働契約を解約することができる条件が付されているに過ぎません。基本的に入社後の試用期間中の労働者と同じと思ってください。
 そのため、合理的な理由もなく、内定取消をする場合は解雇権の濫用となり、内定取消が不当と判断されると、無効となります。

2.内定取消が認められる場合
 では、経済事情や経営状況の悪化など、企業の一方的な理由でも、内定取消が認められるのはどのような場合でしょうか。
(1)内定取消が経営上の十分な必要性に基づくもので、やむを得ない措置である
 こと
(2)内定取消を回避する努力を尽くしたこと
(3)内定取消対象者選定について、客観的・合理的基準を作成し、適正に運用し
 たこと
(4)内定取消を行なうにあたり当該内定者と誠実かつ十分に協議したこと
 といった整理解雇の要件と同様に社会通念上相当として認められることを要します。

3.金銭的補償
 内定取消が認められたとしても、内定取消による深刻な打撃を受ける内定者に、金銭的補償(損害賠償)を求められることも多々あります。
 補償額の基準は定められていませんが、最低でも1ヵ月分の給与は念頭においておきましょう。また、新卒内定者であった場合は、1年間就職時期が遅れることも考えられ、1年分の賃金程度の額となることもあります。

 内定取消はよほどのことがない限りできないと認識し、法的紛争への発展や企業イメージのダウンなど大きな損害を被ることがないようにしましょう。そのためにも、内定取消者との真摯な話し合いが必要です。

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2013年1月11日 金曜日

平成25年1月8日第329号

退職後の傷病手当金

健康保険加入者本人が業務外の事由で病気やケガのために仕事を休み、給与の支払いがない場合、加入健康保険制度から休業補償として「傷病手当金」が支給されます。支給要件は次の4要件をすべて満たす必要があります。
  ・ 業務以外の事由による病気やケガのため療養中であること
  ・ 療養のための労務不能であること
  ・ 連続3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
  ・ 給与の支払いを受けていないこと

退職後の継続給付としての受給要件は、次の2点です。
(1) 退職までに被保険者期間が継続して1年以上あること
(2) 退職日の前日までに連続して3日以上休業し、退職日も休業していること

(1)の要件について、保険者が変わっても1日の空白もなく被保険者資格が継続していれば、加入期間が通算され要件を満たします。この要件でトラブルとなるケースでは、社会保険料を鑑みて(末退職すれば当月分と翌月分の2ヵ月分の保険料負担が発生)、又は勘違いにより、例えば月末の31日が日曜日の場合、退職日を30日の土曜日(資格喪失日は31日)とし退職月の保険料のみ支払った場合などにおいて、当該被保険者(本来の資格喪失日は翌月1日)が、1日の空白を伴って転職することとなり、その後1年以内に業務外の傷病で傷病手当金の支給申請をしたとき、要件を満たさず不支給となりトラブルとなります。

(2)の要件の注意点は、退職日(資格喪失日の前日)に残務整理や引き継ぎ業務で出勤しても、出勤日扱いとしないことです(給与が支払われれば労務に服していると判断され、受給権を失います)。
継続給付の注意点として他には、退職後1日でも労務に服すれば権利を失うことです。たった1日でもアルバイトをして賃金を受けると以後傷病手当金は支給されません。また、雇用保険の基本手当の支給申請をすれば、労務不能ではなくなったとして継続給付は打ち切られます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2012年12月26日 水曜日

平成24年12月23日第328号

平成25年1月1日から適用される主な税制改正項目について

例年なら、12月中旬には来年度の税制改正大綱がまとまるのですが、今年は総選挙のため税制改正も予算編成も年を越します。そこで、現段階の情報をお伝えします。
1.所得税関係
(1) 給与所得控除額
給与等の収入金額が1,500万円を超える場合、給与所得控除額の上限が245万円となります。

(2)特定役員退職手当等に係る退職所得の金額の計算
退職所得の金額の計算において、勤続年数5年以下の法人役員の退職手当等に係る退職所得の2分の1課税が廃止されます。

(例)勤続年数4年の法人役員が退職金1,000万円を受け取った場合
従来は、(1,000万円-160万円※)×1/2=420万円が退職所得でしたが、平成25年1月1日以後は、勤続年数5年以下の法人役員の退職手当等に係る退職所得の2分の1課税が廃止されるので、1,000万円-160万円=840万円
となります。※退職所得控除額 40万円×4年(勤続年数)=160万円

2.住民税関係
(1)特定役員退職手当等に係る退職所得の金額の計算
住民税においても、上記1(2)と同様の扱いになります。

(2)退職所得に係る個人住民税の10%税額控除
退職所得に係る個人住民税について、従来その税額を10%減額する措置(10%税額控除)がなされていましたが、平成25年1月1日以後に支払われる退職手当等については、その10%税額控除が廃止されます。

3.消費税関係
事業者免税点制度
平成25年1月1日以後に開始する個人事業者のその年又は法人のその事業年度について、従来の基準期間(個人は、その前々年、法人は、前々事業年度)の課税売上高での判定に加えて、特定期間(原則として、個人は前年1月1日から6月30日、法人は前事業年度の前半の6ヵ月間)における課税売上高が1,000万円を超える場合には、事業者免税点制度が適用されなくなります。
(スマイルグループ 税理士)

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2012年12月10日 月曜日

平成24年12月8日第327号

年金機能強化法
平成24年8月10日、民主、自民、公明の3党の賛成多数により、社会保障と税の一体改革関連法案が参議院で可決され、それに伴い、年金に関しても大きな改正がありました。施行日等を確認しましょう。主な改正点は次のとおりです。
1.受給資格期間の短縮(施行日:平成27年10月1日)
 納付した保険料に応じた給付を行い、将来の無年金者の発生を抑えるため、老齢基礎年金の受給資格期間を現在の25年から10年に短縮します。ただし、受給資格期間を満たせば、いくらの年金額が受け取れるのかという別の問題が浮上します。
2.基礎年金国庫負担1/2の恒久化(施行日:平成26年4月1日)
平成21年度以降、基礎年金の国庫負担割合は2分の1とされてきましたが、財源は綱渡り状態でした。この財源を平成26年度からの消費増税(8%)により安定的に確保し、恒久的に国庫負担割合2分の1を維持しようとするものです。
3.短時間労働者に対する厚生年金保険及び健康保険の適用拡大(施行日:平成28年10月1日)
 社会保険における「格差」を是正するため、非正規労働者に社会保険を適用します。(1)週20時間以上(2)月額賃金88,000円以上(3)勤務期間1年以上(4)従業員501人以上の企業で適用されます。
当然に保険料は労使折半ですので、対象企業は運用面、費用等準備が必要です。
4.産休中の厚生年金保険・健康保険の保険料免除(施行日:平成26年8月21日までに施行)
  次世代育成支援の観点から、産前産後休業期間中被保険者が労務に従事しなかった期間の厚生年金保険料を免除します。また、産前産後休業終了後に育児等で報酬が低下した場合、産前産後休業終了後の3ヵ月間の報酬月額を基に、標準報酬月額を改定します。
5.遺族基礎年金の父子家庭への支給(施行日:平成26年4月1日)
遺族基礎年金の受給権者を死亡当時生計維持関係にある「子のある妻」または「子」に対してのみから、「子のある夫」に対しても拡大しようとするものです。
ただし、1、2、5については消費税改革施行時期に合わせて施行されます。かつ、消費税増税法には景気条項が伴っており、今後政局を含め、ますます情勢への注目が必要です。 
(スマイルグループ 社会保険労務士)             

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2012年11月26日 月曜日

平成24年11月23日第326号

支払督促
 本年も終わりに近づいてきました。長引く不況等で売掛金や貸付金等の回収が滞っていませんか。金銭の支払を請求しても相手が応じてくれない、反応がないといった場合には、裁判所の力を借りて相手に支払をするように請求する方法があります。その中で手軽に行なえる『支払督促』をご紹介します。

1.支払督促とは
 支払督促とは日本の民事司法制度の1つであり、一定の金銭などの支払いを求める場合に、相手方の住所を管轄する簡易裁判所に申立てをする手続きのことをいいます。
2.支払い督促の条件
 次の2つの条件を両方満たさなければならなりません。
 1)金銭の支払いを目的とする請求であること
  金銭の支払い以外では金銭の代替物又は有価証券に限られています。
 2)債務者(=支払いを求められている者)に送達することができること
  これは債務者が支払督促の存在を認知し、督促に対する異議申立ての機会を
 十分に確保するとともに、支払督促の濫用を防ぐことが目的です。
3.支払い督促のメリット
 1)安価
  裁判を行なう場合に比べ、印紙代が半分程度の金額で済みます。費用は印紙
 代、切手代を入れて、請求額にもよりますが、数 千円です。また、その費用は
 支払督促の際に相手に請求することができます。但し、当事者が法人であれば、
 その分の登記簿  謄本の取得代(1通1,000円)が別途必要です。
 2)郵送で申立てることが可能
 3)債権者(=支払いを求めている者)が裁判所に出頭不要
  ※但し、訴訟に移行した場合は裁判所に行かなければなりません。
 4)書類審査のみ
  裁判所は証拠調べをせずに支払い督促を実行するので、手続は簡単かつ迅速
 に進みます。しかし、近年振込め詐欺に支払督 促が悪用されているという一面
 もあります。
 5)迅速
  債務者が異議申立てをしなければ、早くて申立てから1ヵ月くらいで強制執行
 ができることもあります。

 金銭の回収にお困りの場合は、一度『支払督促』を検討してみてください。

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2012年11月 7日 水曜日

平成24年11月8日第325号

住まいの耐久性に関する基礎知識
  日本の住宅は従来まで20~30年で建て替えられてきました。  現在では60年程度を目安とし、長く住み続けられる性能の住宅が求められています。長く住み続けるためには、構造体の耐久性が重要です。これは耐震性や省エネ性とも関わりの深い事項です。
  今回は構造体に使われる素材ごとの注意点を確認します。その概要を理解しておきましょう。

  構造体ごとの耐久性についてのチェックポイント

1.木材:
  水分や湿気に強い材料か、乾燥の度合い、防蟻処理が充分か

   木材の強度や品質、精度は乾燥の度合いで異なります。従来、住宅用の木材は1年ほどの時間をかけて乾燥させていました。しかし、近年はコストの問題などがあり、専用の乾燥機を使って乾燥させることが多いです。お風呂の材料によく使われるヒノキなどの木材は湿度に強いですが、高額です。そのため、スギなどの木材が構造体に広く使用されています。そこで注意したいのが木材の乾燥状態です。
  また、木材は種類によってシロアリの被害が異なります。その点にも注意が必要です。

2.鉄骨材:
  防サビ加工が充分に行われているか

 鉄骨材は木材と比べて品質や性能、精度を確保しやすい素材です。しかし、その耐久性を損なうのはサビの発生です。そのため、住宅の構造材として加工する際には、防サビの処理が大切になります。処理の種類は様々ですが、亜鉛メッキ処理を行なうのが一般的となっています。サビ止めの塗料を塗っている場合もあります。

3.コンクリート:
  養生期間が充分とられているか、塩分が含まれている砂利(海砂利)が使われていないか、クラック(ひび割れ)が存在しないか

  住宅の基礎を形づくるコンクリートの強度は、住宅の強度全体に影響を及ぼします。
コンクリートも腐食は避けられません。コンクリートはアルカリ性なので水分中の酸性物質と反応して中性化します。それによってもろくなった部分から、水分が内部に浸透し、内部の鉄筋がさび付きます。それが強度を低下させる原因の一つとなります。
防水や断熱施工も含め、しっかりと施工を行なってくれる信頼のおける依頼先を選びたいものです。 
 (スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2012年10月24日 水曜日

平成24年10月23日第324号

労働者派遣法の改正
 平成24年10月1日から労働者派遣法改正法が施行されました。
 派遣労働者の保護と雇用の安定を図るため、派遣会社・派遣先には新たに義務が課されました。
 新たに課された主な義務は次のとおりです。

派遣会社に課された義務
(1)雇用期間が30日以内の日雇派遣の原則禁止
 但し、ソフトウェアの開発や財務処理などの政令で定める業務に派遣する場合、60歳以上の人、雇用保険の適用を受けない学生、副業として日雇派遣に従事する人※、主たる生計者でない人*のいずれかに該当する人を派遣する場合は例外として認められます。※生業収入500万以上 *世帯収入500万以上
(2)グループ企業内派遣を8割以下に規制
(3)マージン率や教育訓練に関する取組み状況、派遣料金の明示
 雇入れ時、派遣開始時、派遣料金額の変更時には派遣労働者本人への派遣料金又はッ所属する事業所における派遣料金の平均額(1人当たり)の明示が求められます。
(4)待遇に関する事項などの説明
 労働契約締結前に派遣労働者に対し、賃金の見込み額や待遇に関すること、派遣会社の事業運営に関すること、労働者派遣制度の概要の説明が義務化されました。
(5)有期雇用派遣労働者の無期雇用への転換推進措置
 有期雇用の派遣労働者の希望に応じ、無期雇用への機会の提供、派遣先での直接雇用の推進、教育訓練の実施のいずれかの措置をとるよう努めなければなりません。
(6)派遣労働者が無期雇用労働者か否かを派遣先への通知事項に追加

派遣先に課された義務
(1)派遣先の都合で派遣契約解除時に講ずべき措置
 新たな就業機会の提供、休業手当などの支払いに要する費用の負担などの措置です。
(2)労働契約申込みみなし制度の導入(平成27年10月1日施行)
 派遣先が違法派遣であると知りながら、派遣労働者を受入れている場合、違法状態が発生した時点で派遣先が派遣労働者に直接雇用の申込をした者とみなす制度です。

派遣会社・派遣先の両方に課された義務
(1)離職後1年以内の人を元の勤務先に派遣することの禁止
 直接雇用者を派遣労働者と置き換え、労働条件を切り下げることを防ぐためです。
(2)派遣先で同種の業務に従事する労働者との均衡待遇の確保



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2012年10月11日 木曜日

平成24年10月8日第323号

どんぶり勘定

1.なんのために使った費用?
 簿記を教えているときに「決算の結果は勝手に出るものではない、役員、社員皆の意思決定や活動(営業や製造など)の結果が反映されています。」と教えています。企業の経営成績である「業績」を良くしようとすれば、「皆さんの意思決定や活動を変えないと変わらない。」ということを何回も繰り返し話をしています。ところが、自分たちの取った活動の結果がどんな費用に計上されているのか、製造原価なのか、営業・管理費なのかをすべてごちゃまぜにして計算している企業が多いのです。月次の在庫も正確に把握せず(数量も原価も)すべてどんぶり勘定。これでは自分たちの企業の実態が分かりませんし、どう意思決定や活動を変えれば利益につながるのかがなかなか見えてきません。

2.製造コストは何故把握しないといけないのか?
 高度成長時代(ずいぶん昔のこと)のように需要そのものが大きく伸びているときには何をしても、どんぶり勘定でも利益が出ました。バブルが崩壊して久しいですが、特にここ10年間で海外企業との品質価格競争にさらされ、得意先からはどんどん価格下げの要求が厳しくなってくると、どんぶり勘定をしてきた企業はその要求に応えられない体質になってしまっています。1単位あたり(個数、㎡、セット等の売買単位)のコストが分からなければ勝負になりません。だからこそ製造コストの計算が必要になってくるのです。

3.どうしたらいいのか?
 まず、使った費用は製造原価と販売費・管理費に最低でも分ける必要があります。製造原価をさらに製品別等に配分し、適切な製品別コストを計算するにはやはり専門的な知識が必要です。担当されている税理士の先生方に相談され、計算の仕組みを考えてみるといいでしょう。それで、儲かっている製品、赤字を出し、足を引っ張っている製品、儲けさせてくれている得意先、要求だけきつくて儲けさせてくれていない得意先等の分析ができます。それを基にいろいろな戦略が取れるようになってきます。製造原価の計算ができるようになると、月次でも製品や材料の在庫の把握もできるようになります。それでしっかりと正確な実績を把握し、それを羅針盤として経営のかじ取りをしていくことが必要です。
 あなたは、いつまでも過去の経験と「勘ピューター」に頼った経営をしますか?

(スマイルグループ 公認会計士)

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2012年10月11日 木曜日

平成24年9月23日第322号

肢体不自由の障害年金の改正について  
 
 平成24年9月1日から肢体不自由の障害年金について、認定基準が改正されました。肢体不自由の主な障害認定基準として、上肢の障害・下肢の障害・肢体の機能の障害の3つがあり、脳梗塞や脊髄損傷のような脳・神経系統の障害や、筋萎縮性側索硬化症・リウマチ・多発性筋炎のような多発性の障害に関しては、上肢の障害・下肢の障害の基準を適用せず、肢体の機能の障害によって認定するとされております。この肢体の機能の障害に該当した場合、上肢の障害や下肢の障害と比べて等級が低くなってしまうという不利益が存在しておりました。

 例えば、事故などで神経を損傷し、右足だけ完全に麻痺をして筋力が喪失した場合ですと、「下肢の障害」であれば2級となるところ、「神経系統の障害による肢体の機能の障害」で認定され、一上肢・一下肢のみの障害の場合は3級とするとされていました。外見上、共に右足が日常生活に用をなさない状態ですが、かたや2級で、かたや3級になってしまうという不利益が発生しており、ずっと問題提起されておりました。 そのような不利益を解消するために、今回の改正では、肢体の機能の障害で認定しなければいけないと定められている障害においても、その障害が一上肢・一下肢にのみ障害が存在している場合は、それぞれ上肢の障害・下肢の障害の基準で認定すると変更になっております。 

 障害者雇用で採用された従業員さんや、脳梗塞を発症してしまった従業員さんがおられましたら、今回の改正によって障害年金の等級が変更される可能性があります。しかし、年金というのは申請主義となっており、患者さんから額改定請求という等級変更を求める申請をしない限り等級はそのままです。

 また、すでに障害年金を受給されておられる方には、定期的(数年毎:障害のケースによって、2年・3年・5年・7年・永久認定)に更新の手続きがあるのですが、その更新の際に等級が上がることはめったにありません。自分から申し出ないと等級が上がりませんし、年金機構から受給者に改正の案内が行くこともありません。該当者がおられましたら、是非今回の改正の案内をしてください。 

 (スマイルグループ 社会保険労務士 )

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2012年9月19日 水曜日

平成24年9月8日第321号

年次有給休暇

 労働基準法第39条(年次有給休暇)に「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。(以下省略)」と規定されています。

 「労働日」とは、原則として暦日計算によるものとされています。したがって、通常の勤務が時間外労働によって翌日の午前2時までに及んだ場合、当該翌日が年次有給休暇(以下、年休)取得日であれば、歴日による1労働日とはならず、年休を与えたことにはなりません。同様に、年休取得日に年休取得者を会社へ一時的に仕事で呼びつけた場合も年休を与えたことにはなりません。

 年休の不利益取扱いに関しては、労基法附則第136条に「使用者は、年休を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」と規定が置かれています。精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際し、欠勤日等として取扱うことは、権利として認められている年休取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならないとしています。

 では、年休取得時に皆勤手当を減額する措置は、上記の附則第136条に抵触し、必ず無効となるのでしょうか。

 判例では、年次有給休暇取得時の皆勤手当減額については「法の趣旨からみた場合には必ずしも望ましいものではない。」としています。
 しかし、「その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休の取得に対する事実上の抑止力の強弱等の事情を総合的に判断した結果、年休取得を抑制し、かつ、その権利の保障を失わせるとまではいえない場合、年休取得時における皆勤手当の減額は有効」(沼津交通事件、最高裁二小、平5.6.25判決)とした裁判例もあります。

 通常、年休取得時の皆勤手当減額を行う際、その減額の程度等を勘案し、年休取得を著しく抑制することのないよう取扱うことが必要となります。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2012年9月19日 水曜日

平成24年8月23日第320号

復興特別所得税の源泉徴収
 東日本大震災からの復興の財源確保のため、復興特別所得税が創設されました。
 平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に、給与や報酬などを支払う者は、その支払う給与等や報酬等について、所得税の源泉徴収に加えて復興特別所得税の源泉徴収及び納付が必要となります。
 源泉徴収する復興特別所得税は、源泉徴収すべき所得税の額の2.1%となっています。
 具体的な給与と報酬に係る源泉徴収は次のとおりです。

1.給与等に係る所得税及び復興特別所得税の源泉徴収
 給与等については、平成25年分以後の源泉徴収税額表(復興特別所得税額も含まれた税額表)に従って源泉徴収していきます。
 また、給与ソフトなども平成25年1月1日以後に支払われる給与等については、給与ソフトの更新がされていれば、復興特別所得税が含まれた金額が自動計算されます。

2.報酬等に係る所得税及び復興特別所得税の源泉徴収
 源泉徴収すべき復興特別所得税の額は、源泉徴収すべき所得税の額の2.1%です。そのため、源泉徴収すべき税率が報酬の10%の場合、所得税及び復興特別所得税の額は次のようになります。
源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額
=支払金額等×10.21%(合計税率※1)
※1 合計税率(%)=所得税率10%×102.1%

<具体例>・・・52,500円(消費税等2,500円を含む)の報酬を支払う場合
●変更前(平成24年12月31日以前)
報酬の額   50,000円
消費税等の額  2,500円
源泉所得税※2 5,000円=50,000円×10%
差引支払額  47,500円=50,000円+2,500円-5,000円
※2 請求書等に報酬の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、報酬の額の10%を源泉徴収することが可能です。

●変更後(平成25年1月1日~平成49年12月31日)
報酬の額   50,000円
消費税等の額  2,500円
所得税及び復興特別所得税  5,105円=50,000円×10.21%
差引支払額 47,395円=50,000円+2,500円-5,105円
(スマイルグループ 税理士)

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2012年8月17日 金曜日

平成24年8月8日第319号

労働契約法改正案が成立
 平成24年8月3日、有期雇用で働く人が、契約を更新して通算5年を超えた場合、本人の申し込みによって期間の定めのない(無期)雇用となること等を義務付けた労働契約法の改正案が参議院本会議で可決、成立しました。
 平成20年秋以降の経済情勢の悪化(リーマンショック)の際に、有期契約労働者の雇止めや契約期間途中での解雇が増加するなど、有期契約労働者の雇用の不安定さや、処遇格差が広く認識されるようになったことが、背景にあります。主な改正点を記載します。
 ●有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
 (1)無期転換制度
  有期労働契約期間が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みに
 より、無期労働契約に転換させる仕組みを導入。
 (2)無期転換後の労働条件
  現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く)と同
 一の労働条件(別段の定めがある部分を除く)とする。
 (3)クーリング期間
  原則として、当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が
 満了した日と当該使用者との間で締結された次の有期労働契約との間に空白
 期間があり、当該空白期間が6ヵ月(その他厚生労働省令で定める期間)以上
 であるときは通算契約期間に算入しない。
 
 ●有期労働契約の更新等(いわゆる、雇止め法理の法定化)
 有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認められる場合には解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めを制限する法理が規定された。
 
 ●期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
 有期契約労働者の労働条件が、期間の定めのあることにより無期契約労働者の労働条 件と相違する場合、その相違は、業務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合 理であってはならないものとする。
 
 無期転換の直前の雇止めや、一定のクーリング期間をおけばいくらでも有期契約を反復更新することができるという点、無期転換後であっても待遇は相変わらず正社員との格差が出るなど、問題点と課題が多く、来春(一部新聞では平成25年4月1日)施行までに大いに検討が必要と思われます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2012年8月17日 金曜日

平成24年7月23日第318号

雇用管理に関する個人情報の取扱いガイドライン
 平成16年公表の「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために、事業者が講ずべき措置に関する指針」の改定に伴い、「雇用管理に関する個人情報の取扱いガイドライン」が再編されました。適用は平成24年7月1日からです。
 ガイドラインの内容は次のとおりです。
 1.ガイドラインの適用対象
 ・5,000人分を超える個人情報を事業活動に利用、かつ、労働者を使用する民
 間事業者  
 ・上記対象事業者の雇用管理情報の取扱い
 2.情報取得・利用のルール ・雇用管理情報の利用目的をできる限り特定する。
 ・利用目的はあらかじめ公表するか、情報取得の際に本人に通知または公表す
 る。
 ・利用目的範囲内で雇用管理情報を扱う。  
 ・雇用管理情報は適正な方法で取得する。
 3.個人データ管理・取扱いのルール  
 ・個人データについては、正確かつ最新の内容に保つ。  
 ・漏洩、滅失、毀損を防ぐための安全管理措置をとる。  
 ・取扱う従業員や委託先を監督する。
 ・個人データを第三者に提供する場合は、あらかじめ本人の同意を得る。
 4.本人からデータ開示などを求められたときの対応  
 ・遅滞なく開示するなど、適切に対応する。  
 ・雇用管理情報の取扱いに関する苦情に対して適切かつ迅速な対応をする。  
 ・苦情受付窓口の設置などの体制整備に努める。
  ここでいう個人情報とは顧客情報、従業員情報など、すべての種類の個人情
 報であり、労働者等(採用応募者・退職者を含む)の氏名、連絡先、特定の労働
 者を識別できる映像などの情報、家族関係に関する情報などを指します。
  今回の再編は事業者に現在の法・指針・解説に基づく運用の変更を求めるも
 のではありませんが、改めて、企業が取扱う個人情報や労働者等やその家族
 状況等の機微に触れる情報を多く含む「雇用管理情報」の収集や管理方法等
 について、適正に実施されることが求められています。

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2012年8月17日 金曜日

平成24年7月8日第317号

家賃滞納による家屋明け渡しについて
 長引く不況で家賃滞納も増えています。ここで法律の手順を、おさらいしてみます。
 1.手紙・電話・訪問による家賃支払いの督促
  単に『忘れていた』というような改善の余地がある場合もあります。 『支払う気が
 ない』とか居留守を使ったり、約束を破るなど悪質な場合もあります。
 2.内容証明郵便(配達証明付)で、条件付解除通知による督促
  後日の証拠となります。ここまでの時点で話し合いが成立することもあります。
 解決した場合でも再発防止のため、契約書や連帯保証人を見直す必要があり
 ます。
 3.契約解除
  与えた猶予期間内に滞納賃料を支払わない場合は、契約解除となります。
 4.訴訟提起
  解除後は直ちに訴訟提起となります。第1回期日は1ヵ月以内です。 期日まで
 に任意交渉が成立し、退去となることもあります。
 5.明け渡しの判決又は和解
  賃借人が分割払いや明け渡し期間の猶予等、和解を求めてくることがありま
 す。 和解できない場合は、判決となります。賃借人に送達後、2週間で確定し
 ます。
 6.強制執行(催告)
  執行官が建物に入り『約1ヵ月後に退去するよう』書面で警告します。
 7.強制執行(断行)
  任意の退去がない場合、荷物を出し、鍵を変えてしまいます。
 8.目的外動産の保管
  保管替えを行う動産類については、破損等ないように注意が必要になります。
 保管場所を執行対象建物内とすることもあります。
 9.目的外動産の処分
  目的外動産の引き渡しや売却、あるいは廃棄処分を行います。  
 (スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2012年6月21日 木曜日

平成24年6月23日第316号

社内メンター制度
 1.メンター制度
  近年、メンター制度をとりいれる企業が増加しています。メンター制度とは、会
 社や配属部署における上司とは別に、指導・相談 役となる先輩社員(メンター)
 が、仕事の経験が足りない新入社員や中途採用者(メンティ)をサポートする制
 度のことをいいます。この制度を導入する目的は様々ですが、多くの会社では
 新入社員の定着化を目的としています。新入社員は壁にぶつかったり、悩みを
 抱え、誰かに相談したいと考えていたりしても、直属の上司にはなかなか相談
 しにくいものです。そこで、本音を真摯に聞いてもらい、アドバイスを得ることが
 できるメンター制度に注目が集まっています。
 2.メンター制度の長所  
  メンター制度を取り入れる長所は次のとおりです。
  1)新入社員等(メンティ)にとって  
   ・会社の風土や独自の制度を学び、早く馴染むことができる。
   ・将来への不安の解決ができる。  ・早期での戦力化が望める。
   ・仕事への取組み方を学び、問題解決能力や仕事に対する意欲・自主性が
    生まれる。
   ・自己洞察力・対人関係能力が高まり、コミュニケーション能力が向上す
    る。  
  2)先輩社員(メンター)にとって
   ・後輩の指導・育成を通し、マネジメント技術が向上する。
   ・人間関係力が強化され、人を育てる意識が向上する。
   ・サポートを通じて、新たな学習の機会ができ、自己成長が望める。
  3)会社にとって  ・新入社員の定着率が向上する。  
   ・先輩社員のノウハウや経験の継承ができる。  
   ・社内コミュニケーションの向上及び人間関係トラブルの回避ができる。  

   三方よしのメンター制度ですが、せっかく制度を取り入れても、形骸化しては
 意味がありません。そのためには、メンターがメンティに対し愛情をもって接する
 ことやメンターとメンティの信頼関係の構築が欠かせません。  人の成長なくし
 て、企業の成長は望めません。ぜひ、御社でも人の成長を加速させるメンター
 制度を取り入れてみませんか。

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2012年6月21日 木曜日

平成24年6月8日号第315号

吾唯知足
 吾唯知足、うん? 友人の陶芸家の個展に行くと、「口」を真ん中に「吾唯知足」こんな文字を四方 かたどった色紙が展示されていた。じっと眺めていて、やっと、「吾唯知足」と読めた。気に入ってすぐに購入してきた。どんな意味か?「吾れ、唯だ、足りるを知る」と読む。人間の欲(権力欲、金銭欲、食欲、性欲等)には際限が無い、その欲が人間の苦悩をもたらす、これは、仏教の教えである。かと言って、人間に欲が無ければ、向上心も生まれないし、努力もしなくなってしまう。その欲の過ぎるのを戒めた言葉が「知足」足りるを知るということ。

 企業に当てはめるとどうであろうか
 企業が、利益だけを追求して、何でも利益が出ればいいというような方針を出し事 業をしていけば、いずれ社会から制裁を受け、企業として成り立たなくなってしまう。 「CSR」( Corporate Social Responsibility)という企業の社会的責任が重要視されてきたのはこうした企業の利益だけを追求する行き過ぎを制限するためであろう。企業も「知足」が必要だということである。
 
 ソーシャルビジネスは?
 ソーシャルビジネスも流行りである。事業モデルとしては従来からあるものである。貧困、環境問題、失業問題等の社会的問題を企業という形態で解決していくというビジネスモデルである。日本の経済は、ここ20年の間に徐々に国際競争力を無くしてしまって、大手のメーカー企業は、賃金の安さを求め、台湾、韓国、タイから中国へ、中国からさらにインドネシア、ベトナム、インドへ、このまま続くと最後はアフリカなんていうことになりそう。こうした、製造業の空洞化の経済の穴を埋めるようにソーシャルビジネスが表面に出てきたように思う。ソーシャルビジネスとは言え、事業体として存続して行かなければ、所期の目的も達成できない。「社会性」という理念が先行してしまって、儲けなくて、ボランティアでいいなんて言っていると事業の継続が難しくなってしまう。「社会性」と「企業性」の狭間でソーシャルビジネスは苦労しているようである。
 
 儲けても構わない、「唯、足りるを知」れば。そんなところに落とし所があるように思う。                   
 (スマイルグループ 公認会計士)

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2012年5月23日 水曜日

平成24年5月23日第314号

労働組合から団体交渉を申し込まれたら
 辞めた労働者等が一人で入れる労働組合に加入して、会社に団体交渉を申し込
んでくるケースが増えています。その場合、とりあえずどのように対処するべきか
をお伝えします。

 FAX等で団体交渉を開始する通知が送られてきます。日時と場所を指定してき
ますが、殆どのケースで、御社の会議室等を指定してきます。そのような時には、
「あいにくその日時は都合がつかないので、日時と場所について後日通知します。
」と返事をしてください。無視をするのは違法行為になってしまう恐れがあります。

その上で、団体交渉を行う場所を手配します。ここでの注意点は、

・御社以外の施設を利用する。
・借りられる場所の閉館時間の1~2時間前から閉館までを抑える。

 以上の点がなぜ重要かと申しますと、労働組合はより有利な条件を飲ませようと
心理的圧力をかけてきます。そのため、御社の会議室等を使用すると、他の従業
員に聞こえるように声を荒げたり、終了時間が来ても帰らず居座ったりし、早く解決
をして問題から逃れたたいと経営者側に思わせるようにしむけます。そうなると、早
く解決をしたいばかりに向こうの言い分を飲まされてしまいがちです。しかし、場所
を会社外にしますと、他の従業員への影響は抑えられますし、閉館時間が来れば
強制的に終了される事ができますので、労働組合が交渉を粘って帰らせてくれな
いという事態は防げます。この2点だけでも相手から受けるプレッシャーを相当軽
減できる効果があります。

 次にICレコーダー等で録音するのはお勧めできません。話し合った内容を文章
に起こす作業が必要になった場合、相当な労力が必要となります。もし、労働組
合側がICレコーダーで録音するのであれば、正確性を確認するためにこちらも録
音する事をお勧めしますし、侮辱的発言をされるので名誉毀損で訴える場合も録
音は必要となりますが、それ以外は書記役がその場でまとめた方がスムーズに
進みます。労働組合側も依頼された労働者の手前高圧的な態度で臨んできます
が、決裂させてしまうと裁判するしかなくなり、労働組合に依頼した意味が無くなり
ますので、決定的な対立を望んでいるわけではありません。よって、こちらは余裕
を持って対処すればいいでしょう。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2012年5月16日 水曜日

平成24年5月8日第313号

職場のパワーハラスメント
 「パワーハラスメント(略してパワハラ)」という言葉がよく使われ、社会問題と
なってマスコミにもよく取り上げられます。パワハラとは、和製英語であるpower
harassmentの略語で、権限を濫用して嫌がらせを行うことであり、セクシュアル
ハラスメントと異なり、法律上の定義もなく、その防止を直接義務付ける法律もな
いのが現状です。

 その様な中で厚生労働省では、3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決
に向けた提言」を取りまとめ公表しました。「職場のパワーハラスメント」とは、同じ
職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係等の職場内の「優位性を背景(
上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な優
位性を背景に行われるものも含む)」に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身
体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいい、次の6類型が挙げられ
ました。

1.身体的な攻撃(暴行・傷害)
2.精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
3.人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)
4.過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、
  仕事の妨害)
5.過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低
  い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
6.個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
 
 「職場のパワーハラスメント」は業務上の指導と線引きが難しく、1~3以外の
ケースでは「業務上の適正な範囲」であれば本人が不満に感じてもパワーハラ
スメントには当たらないと指摘されています。具体的判断については、各企業・
職場で認識をそろえ、その範囲を明確にすることが望ましいとしています。
 特に今回の報告では、上下関係を示す職務上の地位だけでなく、人間関係や
専門知識等を背景にした嫌がらせによる同僚同士や部下から上司に対する行
為も「パワーハラスメント」とするよう提案をしています。

 対応策としては、予防するために
1.トップのメッセージ 2.教育する 3.ルールを決める
4.周知する 5.実態を把握する。
 
解決するためには、
1.相談や解決の場を設置する 2.再発を防止する等が挙げられています。

企業の職場環境において、また、リスク回避の為にも対応が必要です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)
 

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2012年5月15日 火曜日

平成24年4月23日第312号

平成24年度税制改正
 本年度の税制改正で、主だったものは以下のような内容で、平成24年3月30日に成立し、同年4月1日から施行されています。
 なお、社会保障と税の一体改革として、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」が平成24年3月30日に国会に提出されています。この中で、消費税法の税率の改正や、相続税の基礎控除の縮減等が改正案とされています。

1.個人所得税関係
     ・住宅ローン減税制度の拡充   (認定省エネ住宅の特例の創設)
  ・給与所得控除に上限を設定   (給与収入1,500万円超は一律245万円)
  ・特定支出控除の支出範囲の拡大及び適用判定基準の緩和 (給与所得控除
   の総額→2分の1)
  ・勤続年数5年以下の法人役員等の退職金について、2分の1課税を廃止
2.相続税・贈与税関係
 若年世代への資産の早期移転や省エネルギー性・耐震性備えた良質な住宅ストックを形成する観点から、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を拡充・延長する。
  ・住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡充・延長(3年延長)
  ・山林に係る相続税の納税猶予制度の創設
3.法人税関係
 国内での企業活動を活性化させ雇用の維持・拡充を図っていくこと、東日本大震災からの復興を着実に達成するために、企業の国際競争力の強化や経済成長につなげていくことが重要な課題となっているなかで中小企業の支援、研究開発、環境保護を図る観点から改正・措置を講じる。
  ・研究開発税制の増加額等に係る税額控除制度の延長(2年延長)
  ・環境関連投資促進税制の拡充(太陽光・風力発電設備に係る即時償却制度
   の創設)
(スマイルグループ 税理士)

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2012年4月23日 月曜日

平成24年4月8日第311号

改正・介護保険法について
 平成9年に制定、平成12年4月に施行された介護保険法も3年を1期として今年度4月から「第5期介護保険事業(支援)計画」が始まります。「第5期」は平成24年度から平成26年度の3年間です。昨年6月に成立した「介護保険法の一部改正」は、介護保険法ができてから2回目の大きな改定となりました。

 すでに65歳以上の高齢者が人口の23%を占める「超高齢社会」が、世界のどの国も経験したことのない猛スピードでさらに加速しつつある日本。今回の改定は今から13年後の平成37年、すなわち団塊世代が75歳以上になり高齢化がピークを迎え、ニーズが増大する時季に照準をあわせた皮切りとされています。
 
 今回の目玉はずばり「地域包括ケアシステム」です。現在7兆円の介護費用が、このままでは19~24兆円に増加予想、つまり、増え続ける介護費用を抑制するため地域や在宅でできることはやってください、ともとれる改正。介護保険給付をはずすため(?)の問題点も見えてきます。また、今回はあわせて老人福祉法、健康保険法、社会福祉士法及び介護福祉士法も改正されています。

 政府の法律概要説明による、「改正」ポイントは次の6点です。
 1.医療と介護の連携強
 2.介護人材の確保とサービスの質の向上
 3.高齢者の住まいの整備等
 4.認知症対策の推進
 5.保険者の主体的な取組の推進
 6.保険料上昇の緩和
 1.の中に「保険者の判断による予防給付と生活支援サービスの総合的な実施を可能とする」介護予防・日常生活支援総合事業が盛り込まれました。すなわち、総合事業を導入するかどうかは市町村の判断であり、また、導入した市町村・地域包括センターが予防給付(介護給付)で対応するのか、新たな総合事業(介護保険指定サービス外)を利用するのかも判断できると決めています。
 「要支援」者は、改正前まで予防給付(介護給付)であったものが、予防給付(介護給付)か総合事業(介護保険指定サービス外)かを自分で決めることもできず、総合サービス(介護保険指定サービス外)に振替られる可能性がでてくることになります。
 介護保険制度の限界を、「地域包括ケアシステム」の名の下、地域・市町村で取組でください、ともとれる改正です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2012年4月20日 金曜日

平成24年3月23日第310号

平成24年度助成金改正予定について 
 平成24年度厚生労働省予算案に基づき助成金の改正(改悪?)が多くあります。その一例をお知らせします。

 平成24年4月1日から「労働移動支援助成金」が一部変更されます。

労働移動支援助成金
 この助成金は、事業の縮小等に伴い、離職を余儀なくされる労働者に対して、再就職支援を行った事業主に支給されるものです。種類及び改正点は次のとおりです。

1.求職活動等支援給付金 
 求職活動等の付与した事業主が対象となり、1人につき休暇1日当たり4,000円(中小事業主の場合:7,000円)が給付される給付金です。 

 この給付金は平成24年4月1日に廃止されます。ただし、今年度3月31日までの離職者に対して休暇を与えた場合は申請できます。

2.再就職支援給付金
 民間の職業紹介事業者に再就職支援を委託し、再就職を実現させた中小企業事業主に対し、委託費用の2分の1(限度額:1人当たり40万円)が支給されます。

 この給付金の改正点は次の2点です。
 1)「求職活動などのための休暇を付与し、その休暇日に、通常支払う賃金の額
  以上支払ったこと」が要件として追加されます。
 ※ただし、今年度3月31日までの離職者に対しては現行の取扱いで、この要
  件は追加されません。

 2)55歳以上の労働者の再就職支援については、助成率が2分の1から3分の2
  に引上げられます。  
 ※ただし、このことについても、今年度3月31日までの離職者には、4月以降も
  現行の取扱いで、助成率も年齢にかかわらず2分の1のままです。     
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2012年4月20日 金曜日

平成24年3月8日第309号

終身建物賃貸借制度について 
 「終身建物賃貸借制度」とは、高齢者が賃貸住宅に安定的に居住することができる仕組みとして「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(平成13年8月施行)により、単身及び夫婦の高齢者がお亡くなりになるまで住み続けることができる制度です。

 1.制度のあらまし
 (1)住宅の構造についてバリアフリー住宅であることなど一定の基準があり、
   また、賃貸人について終身賃貸事業者であるという、知事・市長の認可を受け
   ることが必要です。
 (2)この契約を結ぶと賃借人が生きている限り契約は存続し、お亡くなりになった
   時に終了します。建物賃借権は相続されません。
 (3)賃借人の申出により、この契約を結ぶ前に、1年以内の定期建物賃貸借契
   約による仮入居、いわばお試し入居をすることができます。

 2.賃借人の資格
 (1)自ら居住するための高齢者。(60歳以上)
 (2)賃借人と同居できるのは、配偶者(60歳未満も可)又は60歳以上の親族。
 (3)配偶者又は60歳以上の同居親族が希望する場合、賃借人の死亡後1か月
   以内の申出によって、同様の契約を結び、引き続き賃借することができます。

 3.賃貸借契約が解約される場合
 (1)賃借人からの解約の申し入れ
  ①通常通り、6ヵ月前の通知によることができます。
  ②療養・老人ホームへの入所などにより居住が困難になった時や、親族と同居
   するために居住の必要がなくなった時は1ヵ月の通知によることもできます。
 (2)事業者からの解約申し入れ
   建物老朽化や、賃借人の長期不在などで、かつ、知事・市長の承認を受けた
   場合に限られています。

4.その他
 (1)借家契約と終身賃貸借を組み合わせた「期限付死亡時終了賃貸借」という形
   態も作られています。
    例えば定期借家契約が10年とすれば、10年後か死亡かのどちらか早い時
   期の到来によって契約が終了するというものです。
 (2)各自治体のホームページなどでも取り上げられています。                      
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2012年4月20日 金曜日

平成24年2月23日第308号

フィードバックは成長の鏡 
 
私たちは、成長の過程でいろいろな人に関わっています。その関係が生み出したものが今の「私」であると言ってよいでしょう。褒められたこと、叱られたこと、注意されたこと、助けられたこと、突き放されたことなどが思い出されます。そのようなかかわり方の1つとして、しかも成長に強い影響を与えるものとして「フィードバック」があります。

 フィードバックは成長の促進を援助するための1つの方法です。
 1.個人の成長を促進する
  個人の成長の促進を援助するための方法はいろいろあります。自分中心(援助
 者)から相手中心(非援助者)にならべると、支持・命令、指導忠告、フィードバッ
 クの順になるでしょう。自分で考え、行動する人への成長のために最も有効なの
 は、 フィードバックだとされています。
 2.関係の成長を促進する
  深い関係、つまり信頼関係をつくっていくためには、相手に対する今の思いを、
 ありのまま相手に返すことが大切です。
 3.チームの成長を促進する
  フィードバックは、チームの活性化を図るため有効な方法です。相互フィードバ
 ックの過程がそのままチームの活性化につながっていくと言えるでしょう。

フィードバックは日常生活そのもの 
 
フィードバックするときの留意点を述べます。
 ・できるだけ具体的に、描写的に述べる。データに基づくことで、根拠が必要。
 ・先ほどのあの場面はであなたはこうしていたという具合に、時と場面を明示する
 とよい。
 ・良い、悪いは言わない。
 ・見えたことだけでなく、私に与えた影響、特に気持ちも伝える。
 ・相手が受け入れやすいように、評価は禁物。クッション言葉などを使おう。
 ・「私は・・・」メッセージで。
 ・自分の考えを相手に押し付けない。どうするかは相手に任せる。
 ・変化が可能なことに限られる。努力しても変えようがないことは言わない。

 基本的なこととして、フィードバックは相手中心であること。相手の成長を願ってなされるものです。そのためには相手に耳を傾けること、相手の発言を相手の立場に立って聴くこと、相手をよく見て言葉ではないからだのサインを見逃さないことが重要です。フィードバックは「鏡になること」なのです。  

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2012年2月17日 金曜日

平成24年 2月8日 第307号

日本の家計
日本の経済情勢はどうなっているの?
大雑把にいって日本のGDP(国民総生産)は、500兆円、日本の国債地方債をあわせて1000兆円、支払い能力を示すプライマリーバランス(基礎的財政収支)は2倍を超えています。企業でいうと、債務超過の状態になっています。また、国有財産も道路、橋梁、国有林等を含んだ資産総額で計算しても債務超過です。さらに、昨年は、円高、原油高(震災の影響もあり)と製造業の空洞化のあおりを受けて貿易収支も赤字に転落し、今年以降もしばらくこの基調が続く見込みです。それに対して、商社は、海外での投資案件からの配当収入が入り、大幅な増益となりました。しかし、国内の雇用には結び付かず、60歳以下の働く人たちの層でも生活保護を受ける人たちが増え続けています。

分かり易く日本の財政を家計に例えてみると・・・
 景気はパッとせずリーマンショック前は、510万円もあった年収(税収)が423万円へ減ってしまいました。さらに追い討ちをかけるように出費はかさむ一方です。
(1)おじいちゃんの医療に係る費用(社会保障費)  264万円
(2)地方の中小企業に勤める長男の給料が少ないので仕送り
(地方交付税)                        166万円
(3)塾へ通いたいという次男へは予算が苦しいので据え置きそれでも授業料
(文教費・・・義務教育、国立大学への補助等)     100万円
(4)過去の住宅ローンや教育ローンの支払いは、元利合わせて
(国債元本償還資金、国債残高に対する利息)     219万円
(5)さらに、東日本大震災の被災した実家へ再建費用が新たに10年ローンを組んで何とか
 支援した(震災による補正予算)             116万円

 差引足らない資金は、長期ローン(新規国債発行額)を組んで補っています。その額は、なんと442万円にも及び年収423万円を上回ってしまっています。(毎日新聞記事から形を変えて)と言うことになるようです。こういった状況下で「一体改革」の名のもとに消費税の増税議論がなされています。一体とは社会保障費のあり方との一体です。これらの数字は、100万円を10兆円単位に読み替えると国家予算になります。
 さて、私たちの未来の生活はどうなるのでしょうか?それでも、居酒屋は繁盛しています。いつも不思議に感じるのは私だけでしょうか?

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2012年1月23日 月曜日

平成24年1月23日第306号

肺炎の予防接種を受けましょう
乾燥した天候が続き、インフルエンザが各地で流行しています。皆様の事業所ではどのような対策をとられていますか?

最近では定年年齢を引き上げたり、定年そのものを廃止する事業所が増えています。また、国も年金支給年齢引き上げを画策しているため、定年延長を法律で義務化する方向になっています。そのため、事業所で働く労働者の中に、高齢の方の割合が増えてきました。そこで高齢の従業員の健康対策として、肺炎及びインフルエンザの予防接種を受けるよう推奨してください。

 日本人の死亡率は平成17年の時点で、1位 がん:30% 2位 心疾患:16%  3位 脳卒中:12% 4位 肺炎:10% 5位 不慮の事故:4%です。肺炎で亡くなる確率は事故で亡くなる確率の倍以上となっています。事業所で重要なポジションにおられる方が、職場で流行したインフルエンザが原因で肺炎となり、亡くなるという事例もあります。その場合、会社にとって非常に大きな損失となり、業務に支障をきたす恐れもあります。そこで、会社としては、65歳以上の従業員と65歳未満でも糖尿病・肺疾患・心臓疾患等の既往症をお持ちの従業員に、積極的に予防接種を受けるよう勧めてください。

 肺炎といいましても、原因となる起因菌は様々あります。一番の起因菌はマイコプラズマと呼ばれる病原体ですが、これは、幼児・若年成人が中心にかかるもので、年齢が上がると共に感染割合は下がります。70歳以上だと1番が肺炎球菌であり、インフルエンザウイルス、嫌気性細菌、緑濃菌と続きます。高齢者が一番肺炎になりやすい肺炎球菌のワクチンを接種すると高齢者の肺炎の80%を予防できるといわれています。さらに、2番目に多いインフルエンザワクチンも併せて接種することで非常に効果的となります。

 肺炎球菌のワクチンに関して、重篤な副作用は3例報告されています。しかし、死亡した例はまだ無く、比較的安全なワクチンであり、そのリスクはインフルエンザワクチンと同程度とされています。効果も非常に高いことから、国も積極的な摂取を勧めています。

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2012年1月23日 月曜日

平成24年1月8日第305号

労働組合法の労働者
昨年4月、業務委託契約を結ぶ個人事業主にも団交権を認める最高裁判決が2件(カスタマーエンジニアの「INAXメンテナンス事件」、オペラに出演する合唱団員の「財団法人新国立劇場運営財団事件」)続けてあり、両裁判とも下級審の判決を破棄し、労働組合法の労働者性を認める判決を下しました。

下級審である高裁控訴審での、「INAXメンテナンス事件」の判決は、法的な従属関係を基礎付ける要素として、業務依頼に対する諾否の自由、時間的・場所的拘束、業務遂行についての具体的指揮監督、報酬の業務対価性等の有無、程度等を総合考慮すべきとして、労働者性を否定。「財団法人新国立劇場運営財団事件」においても、業務提供に関する諾否の自由、指揮監督の有無、報酬の支払い関係等から、合唱団員について、労組法上の労働者性を否定しました。

一転、最高裁判決により、労組法上の労働者は、団体交渉の必要が認められる者を範囲とし、労働基準法の労働者の適用範囲より幅広い概念としています。

判決後の厚生労働省労使関係法研究会による労組法上の労働者性判断基準として、(1)事業組織への組込み状況、(2)業務依頼に対する諾否の自由、(3)契約内容の一方的決定、(4)労務供給の日時・場所の拘束、(5)指揮監督の状況、(6)報酬の労務対価性、(7)労務供給者の事業性、(8)労務供給者の専属性を挙げています。このうち、労働基準法の労働者性判断基準になっていない項目は(1)と(3)です。

今後、企業としては、労基法上の労働者だけでなく、労組法上の労働者対策も必要となってきます。業務委託契約・請負契約でありながら、管理が甘いと、突然、組合(ユニオン)からの団体交渉があって拒否できない場合もあります。組合からの団交等に備え、日頃からの注意が必要となります。

対策としては、適法な業務委託・個人請負として、その労務供給者が(1)自由裁量権等による独立した事業者性、(2)兼業の自由、(3)労働時間の自由・自己管理、(4)勤務管理・就業管理・服務規律等の不拘束、(5)業務の外形的独立、(6)使用従属的な業務命令がない、(7)契約は対等の立場において複数の中から自由に選択、(8)請負内容等が注文指図により独立遂行が明白、(9)事業者としての報酬(源泉徴収なし)、(10)材料費等を負担し、経理・経費上の独立性等を有していることが挙げられます。

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2012年1月23日 月曜日

平成23年12月23日第304号

更正の請求期間の延長
平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について、更正の請求ができる期間が法定申告期限から原則として5年(改正前は1年)に延長されました。

 なお、平成23年12月2日より前に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求の請求期限は従来どおり法定申告期限から1年となります。

更正の請求の範囲の拡大
当初申告の際、申告書に適用金額を記載した場合に限り適用が可能とされていた措置のうち、一定の措置については、更正の請求(又は修正申告書)の提出により事後的に適用を受けることができるようになりました。

※当初申告要件が廃止された措置(主なもの)
所得税関係
純損失の繰越控除(所得税法70)
雑損失の繰越控除(所得税法71)
外国税額控除  (所得税法95)

法人税関係
受取配当等の益金不算入        (法人税法23、81の 4)
外国子会社から受ける配当等の益金不算入(法人税法23の2)
所得税額控除             (法人税法68、81の14)
外国税額控除             (法人税法69、81の15)

 また、控除等の金額が当初申告の際の申告書に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置について、更正の請求(又は修正申告書)の提出により、適正に計算された正当額まで当初申告時の控除等の金額を増額することができることとされました。
 この措置の適用は次のとおりとなっております。
(所得税関係)平成23年12月2日の属する年分以後の所得税
(法人税関係)平成23年12月2日以後に確定申告書等の提出期限が到来する法人税

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2012年1月23日 月曜日

平成23年12月8日第303号

退職勧奨の留意点
会社の経営難等により行なう「雇用調整」の一手段として、「解雇」以外に希望退職や退職勧奨などの人員削減施策があります。人員削減を目標とする「整理解雇」を含む「解雇」には、経営者が一方的に雇用契約を解除できてしまうため、労働契約法は使用者の解雇を制限しています。退職勧奨は業績不振の社員や、勤務態度が著しく悪い社員などを対象とする場合もあります。
メリット・デメリット
退職勧奨は経営者が一方的に行なうものではなく、社員に辞めてもらうよう依頼するものです。社員が辞めたくないと思えば、退職する必要はありません。また、退職勧奨に関する規定が就業規則や雇用契約書にない場合でも、経営者は自由に退職勧奨を行なうことができます。
 一般的に従業員には、退職金の上積みの提示、有給休暇の消化、退職後の社会保険、年金、税金、失業給付については退職理由が「会社都合」として扱われるため、特定受給資格者に該当し、7日間の待機後すぐに失業給付を受けることができる等の説明をします。
   また、経営者は解雇予告が不要になる半面、失業給付については「会社都合」による解雇のため助成金を一定期間受け取れなくなる場合があります。
退職勧奨と不法行為
 退職勧奨が執拗で、不当に強要である場合、不法行為と評価されうるというリスクがあります。(下関商業高校事件 最高裁昭和55年7月10日第一小法廷判決)
(1)「被勧奨者の意思が確定しているにもかかわらず、さらに勧奨を継続することは、不当に被勧奨者の決意の変更を強要するおそれがあり、・・・・・一旦勧奨を中断して時期をあらためるべき」こと
(2)「勧奨の回数及び期間についての限界は、千差万別であり・・・ことさらに多数回あるいは長期に勧奨が行なわれていることは、・・・不当に退職を強要する結果となる可能性が強く違法性の判断の重要な要素」であること
(3)「被勧奨者の名誉感情を害することのないよう十分な配慮がなされるべき」こと
以上のことを総合的に勘案して、被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であったか否かを勧奨行為の適法性の判断基準として、損害賠償請求が認められています。
 行き過ぎた勧奨が行なわれると退職強要となり、トラブルになれば他の従業員のモチベーションも下がります。リスクを考え、早い段階で退職に関する合意書を交わすことも大切です。

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2011年12月 4日 日曜日

平成23年11月23日(第302号)

外国では年金はどうなっているのだろう?

年金や消費税の改革が話題に上がっています。外国ではどうなっているのでしょうか。わが国では「国民皆健康保険・国民皆年金」が強調されています。一方、アメリカでは健康保険に入れず、医療の恩恵に浴せない人が多いと言われてきました。従って、年金も我が国の方が、高水準の年金を受け取っていると思っている人が多いと思います。しかし、本当にそうでしょうか。
1)アメリカの老齢・遺族・障害年金保険制度は、被用者や自営業者の大部分が加入する中心的な公的年金制度です。2009年において、約1億5,900万人が加入し、老齢年金の平均受給額は、月額1,159ドル、夫婦世帯で1,884ドルでした。
2)年金保険料は社会保障税として、給与から天引きが普通です。納付実績が延べ10年間に達すると受給資格を得ます。老齢年金の受給額は所得水準によって変わりますが、所得再分配機能が働くように設計されているため、低所得者に有利になっています。支給開始年齢は65歳でしたが、現在は67歳へ引き上げ途中です。
3)老齢年金受給者の平均的な給付水準は、加入期間中の平均所得の約40%です。給付水準はそれほど高くありませんが、65歳以上の世帯の89%が受給し、アメリカの高齢者の生活を支える重要な制度となっています。
4)財源の大半は、我が国の社会保険料に当たる社会保障税で賄われ、その税率は12.4%(被用者は6.2%)です。現役世代の社会保障税は退職世代の給付に充てられます。給付を上回る分は、高齢化による将来の支出増加に備えるため、社会保障信託基金に積み立てられています。しかし、現行制度では、この基金はあと25年で底をつくため、改善策が検討されています。
各国の年金制度を比較、評価したレポート(Melbourne Mercer Global Pension Index)によると、日本の年金システムはその制度を維持していくうえで心配があること、受給額の不足(国民年金についての評価と思われます)を指摘されており、総合評価は16ヵ国中13位、米国は10位でした。
一方、消費税の増税が討議されています。現在の5%という税率は諸外国と比べて、高い方ではありません。10%に上げてもまだ低い方です。しかし、先進国で生鮮食料品に10%の消費税を掛けている国はありません。ほとんどが0%です。消費税だけではなく、年金、生活保護を含めた総合国民福祉政策の確立と超党派の国民的審議が求められます。そして、国民も相応の負担を受け入れる覚悟が必要です。

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2011年12月 4日 日曜日

平成23年11月8日(第301号) 

不動産価格のあれこれと、その調査方法について

『不動産の価格』というものは、一物四価とも一物五価とも言われていて色々なものがあります。今回は代表的なものと、その調べ方についてまとめてみたいと思います。
1.実勢価格(時価)
(1)実際に不動産売買の契約が成立する時の価格で、時価又は取引価格ともいいます。
(2)国土交通省の『土地総合情報システム』(http://www.land.mlit.go.jp/webland/)で平成17年度後半からの実際の取引情報が検索することができます。
2.公示価格
(1)国土交通省の土地鑑定委員会が地域の標準的な地点を選定し、毎年1月1日時点の正常な価格を公表するもので、毎年3月下旬に公表されています。
(2)国土交通省の『土地総合情報システム』(上記参照)で昭和45年以降の検索が可能となっています。
3.基準地価
(1)都道府県知事が毎年7月1日時点の基準地の標準価格を判定するものをいいます。
(2)9月下旬に公表され、市役所等で閲覧可能ですが、国土交通省の『土地総合情報システム』(上記参照)でも検索可能です。
4.路線価
(1)国税庁が、市街地において主要道路に面した1㎡当たりの土地の評価額について、毎年1月1日現在を価格時点とし、毎年7月に公表されています。公示価格ベースの8割が目安です。
(2)国税庁では路線価図の冊子版は作成されなくなりましたが、
国税庁のHP(http://www.rosenka.nta.go.jp/)で検索可能です。
5.固定資産税路線価
(1)市区町村が、土地・建物にかかる税金(固定資産税・都市計画税)の課税のために算定するもので、土地の評価額は公示価格ベースの7割程度が目安とされ、原則3年に1度の評価替えをします。
(2)財団法人資産価値評価システム研究センターの「全国地価マップ」
(http://www.chikam.jp/)で固定資産税路線価・相続税路線価・公示価格・基準地価を検索することができます。
(3)証明書の種類としては、ア.評価証明書 イ.公課証明書 ウ.住宅用家屋証明書
エ.固定資産課税台帳(名寄帳)などがあります。

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2011年10月31日 月曜日

平成23年10月23日(第300号)...経営労務監査

1.経営労務監査とは
経営労務監査は、(1)労務コンプライアンスのチェック(2)部門制の役割、配置等に関する人材ポートフォリオ(3)従業員一人ひとりの満足度等を表す意識調査等の監査を三本柱にして構成されています。

2.目的
  企業活動を「資本」と「労働」の二要素に分解した場合、「会計検査」が経営を資本運動のマネジメントとして貨幣価値で量的に把握し監査する手法であれば「労務監査」は経営を組織労働のマネジメントとして質的に把握し監査する手法といえます。
経営労務監査は、企業目標の達成に向けた経営戦略と人材マネジメントとが効果的にリンクして適法、適切に運営されたか否かをチェックし、それに基づいた是正制限や改善提言を行ない、円滑な経営活動をサポートすることを目的としています。

3.労務コンプライアンス監査
 「労務コンプライアンス監査」を行なうメリットは、人事労務書類や職場をとりまく労働法令を整備することで労使間トラブルを未に防止することにあります。
労働基準監督署の行政指導も強化され、
・経営権の行使による組織的残業払いの未払い、調査
・長時間労働・労務管理状況の監査・指導
・残業計算、残業許可、労働時間管理の実態調査等が行なわれています。
労働総合案内コーナーへの平成22年の相談件数は113万件を超えています!

4.労務に関する環境を整備する
  中小企業の経営者においては、労働条件を取り巻く最新の環境の変化を「知らないまま放置してきた」として、結果的に「違法状態に陥ってしまった」という状況を生んでいるケースが多いことは否定できません。そういった最悪のパターンを回避するためにも人事労務書類や職場をとりまく労働法令を整備していきましょう。
  自治体では、業務委託等で企業の社会的責任(CSR)について責任が問われるようになったことからも労働条件審査(労務コンプライアンス監査)は、重要視しています。

投稿者 osaka-genova.co.jp | 記事URL

2011年10月31日 月曜日

平成23年10月8日(第299号)...選択と集中

リストラとは自社のマーケットの状況の変化にあわせて、事業分野・製品等の選択と集中をし、組織を再編成することです。通常それに伴い、閉鎖又は縮小される事業分野の人員が整理されるため、日本ではリストラというと人員整理の代名詞として使われています。
ポートフォリオとは元々、資産をいくつかの金融商品に分散投資することを意味します。事業・製品ポートフォリオは同じように、どのような事業分野・どのような製品に、限られた経営資源を投資するかという意味です。

縦軸の成長性のかわりに「マーケットシェア」を取ることが多いのですが、ここでは成長性を取り上げています。
「花形商品」は利益率も、成長性も高い事業・製品です。いわば現在の主役です。「ドル箱商品」はすでに最盛期を過ぎた事業・製品ですが、利益率は高く、利益に貢献していて、まだ選択され、残される分野です。「負け犬商品」は衰退期に入った分野、又は成長することなくそのまま低迷してしまった分野です。この分野がまず選択の対象になり、切り捨てられます。「問題児商品」は成長の可能性を持った分野で、今後の展開で花形商品にも、負け犬商品にもなる可能性があります。この分野は将来に関する十分な分析と対策が必要です。分析結果次第では切り捨てられるか、より大きなマーケティングコストをかけて花形分野に育てていくかの分岐点にある分野です。
さて、あなたの会社では、花形商品がどのくらいの割合を占めますか。そして、会社を維持し、成長させていくための今後の対策は十分ですか。

投稿者 osaka-genova.co.jp | 記事URL

2011年10月31日 月曜日

平成23年9月23日(第298号)...知的障害と発達障害の障害年金について



この9月から障害年金の精神障害について基準が改正されました。その中で、同じような障害である知的障害と発達障害の初診日について、取扱いの基準が示されました。
知的障害も発達障害も、共に先天的要因による障害※です。これらの初診日の取り扱いについて、昭和43年2月23日付けの通達において、「知的障害(精神遅滞)者は、医学的には先天性のものとされているので、初診日の如何を問わず20歳前の障害基礎年金として取扱うもの。」と示されていました。
しかし、発達障害(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害等)については、IQも高く、大学を卒業していているケースもあり、就職後の人間関係で症状が悪化して、初めて発達障害と判明する方もいます。このようなケースの場合、一見就職後に発病したかのように考えられます。このため、初診日の取扱いが担当者によって分かれていました。
もし、就職してからの初診日となると、障害厚生年金と障害基礎年金の両方が受給できる可能性もありますし、所得制限もなくなります。(20歳前の初診日となると、障害基礎年金しか受給できず、しかも所得制限があります。)しかし、先の通達により、窓口の担当者は知的障害も発達障害も同じと捉え、20歳前の障害としてしか受け付けない方も多くありました。ところが、厚生省の年金担当者は、先天的な要因があったとしても、その症状が陰性であり、就職後に悪化して初めて受診したのであれば、そこを初診として取扱ってよいケースと説明をしていました。
 私が扱った例でも、初診日が20歳以降にあっても、保険料納付要件が満たない方は、20歳前と認定されるように書類を整えて、障害基礎年金を請求して受給できるように申請したり、厚生年金加入期間中(就職後)に初めて異常を感じて受診しているのなら、有利な障害厚生年金を請求して受給できるように申請をしておりました。(20歳前の初診日の場合は、保険料を支払う義務がなく、国民年金の保険料を納めていたかといった事が問われません。)しかし、初診日が20歳以降の厚生年金加入期間中にあっても、役所の窓口で20歳前障害として申請するように指導されていた為に、障害基礎年金しか受給できていない方がかなりいらっしゃいます。
今回の基準改訂により、知的障害は20歳前を初診日とし、発達障害は実際に初めて医師の診察を受けた日を初診日とするとなりましたので、今後このような不利益を被る人は少なくなるでしょう。
 もし、周りの方やご家族の方で、発達障害と診断されている人がおられましたら、一度年金事務所等で障害年金の相談をしてみてください。
※:一部例外はあります。

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2011年9月12日 月曜日

平成23年9月8日(第297号)...パートタイマーの兼業


本来、法律で兼業が禁止されているのは公務員であり、私企業の労働者は法律による兼業が禁止されていません。その兼業を禁止するには、就業規則などの具体的定めによることとなります。
まず一般的に労働者に対し兼業を禁止できるかどうかが問題となります。今日、多くの企業は、就業規則などで兼業を禁止し、その違反を懲戒事由として定めています。しかしながら、本来、労働者は「労働契約により勤務時間中のみ労務に服することを原則とし、勤務時間外は使用者の支配下を離れ、自由であるはず」として、兼業について争われることがあります。
裁判例では、兼業禁止について無制限に認めてはいません。就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性に欠くとされています。しかしながら、「労働者が労働時間外に適度な休憩を取ることは、誠実な労務提供の為の基礎的条件であり、また、兼業の内容によっては、会社の経営秩序を害することもあり得るから、兼業禁止規定には合理性がある」(小川建設事件、東京地裁昭57.11.19)として一応合理性が認められています。
兼業禁止の就業規則が認められる合理性要件として
(1)その兼業職業が会社の職場秩序を妨害し、もしくは労務の提供に特別な支障を来
たすたぐいの兼業である場合
(2)会社の業務内容によっては、労働者の兼業により会社の対外的信用が傷つけられ
る場合
などが挙げられます。
例えば(1)について、労務提供になんら影響のない場合まで、兼業禁止違反を問うことは無理があることもあります。
勤務日数や勤務時間が少ないパートタイマーについて、一律に兼業を禁止する規定を適用することに合理的理由を求めることは、困難な場合が多いと思われます。
パートタイマーの兼業についても、兼業が、不正な競業に当たる、営業秘密の不正な使用・開示を伴う、労働者の働き過ぎにより生命・健康を害するおそれがある、その態様により使用者の社会的信用を傷つける、などの特別な事情がある場合を除き兼業禁止を命じることは困難となります。言い換えれば、前述に該当した場合、パートタイマーにも兼業を禁止することも可能です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年9月12日 月曜日

平成23年8月23日(第296号)...平成23年税制改革(消費税関係)


1.事業者免税点制度について(この改正は、平成25年1月1日以後に開始する個人事業者のその年又は法人のその事業年度について適用します。)
この規定は、個人事業者のその年又は法人のその事業年度の基準期間(個人事業者の場合は、2年前。法人の場合は原則として前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合について、従来は、自ら課税事業者を選択していなければ、免税事業者となっていました。
しかしこの規定では、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、その後の課税売上高の推移に関わらず、その年又はその事業年度が免税事業者になってしまいます。
これは、その年の前年又は前事業年度の原則として初めの6ヵ月(特定期間と言います。)の課税売上高又はその6ヵ月間に支払った給与等の金額の総額が1,000万円を超えていれば、免税事業者に該当せず、課税事業者として扱うというものです。
例 「個人事業者が、平成25年分の消費税の課税事業者になるかどうかの判定」
前提 ・平成23年(基準期間:2年前)の課税売上高 ・・・・・800万円
     ・特定期間(前年の上半期)の課税売上高 ・・・・・・1,500万円
    ・特定期間(前年の上半期)の給与等の金額 ・・・・・1,100万円
(1)改正前と同じようにまず、平成23年(基準期間)の課税売上高で判断します。
                                          800万円≦1,000万円 
(2)特定期間の課税売上高又は特定期間の給与等の金額が1,000万円を超えているかどうかの判定を行います。
   特定期間の課税売上高を用いて、       1,500万円>1,000万円 
特定期間の給与等の金額を用いて、   1,100万円>1,000万円 
どちらを選んでも1,000万円を超えているので、平成25年は課税事業者となります。
2.課税売上割合が95%以上場合における仕入税額控除について
(この規定は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用します。)
これは、その課税期間の課税売上高が5億円を超える事業者には、課税売上割合が95%以上の場合でも課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除ことができなくなりました。
よって、課税売上割合が95%未満の場合と同じ方法での消費税の計算をすることになって、納税額が増えることになります。また、会計ソフト等への入力の仕方が変わることもありますので、該当しそうな法人は、その事業年度の開始前にあらかじめ対応を検討して、その事業年度の記帳をスタートされる必要があります。
(スマイルグループ 税理士)

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2011年7月 8日 金曜日

平成23年7月8日(第293号)...災害に強い土地についてのポイント

3月11日に発生した東日本大震災以降、私たちが住んでいる(これから住むことを検討している)場所の安全性に関心が高まっています。それは、地震の揺れや津波の被害だけでなく、液状化や不同沈下といった現象で大きな被害が発生したためです。そこで災害
に強い土地 (地盤のよい土地)について再確認してみましょう。
軟弱地盤に注意
地盤の強弱については、大きく分けると、丘陵地(洪積層)、台地(洪積層上のローム層)、低地(沖積層)の3つに分けられます。このうち、低地の沖積層に比較的軟弱地盤が多いと言われています。その中でも最も軟弱な地盤である可能性があるのは、湾岸部の埋め立て地です。液状化や不同沈下が起こる可能性が高く、地震の揺れが伝わりやすいエリアです。
 ただ、比較的地盤が強いといわれる台地や丘陵地であっても、例えば、斜面の場合、過去に人工的な地盤の変更が行われたケースもあり、その変更の仕方の質が問題となります。一般に切り土よりも盛り土の方がやや地盤が軟弱である可能性が高いです。さらに河川や沼、湖など砂や泥が堆積しやすい場所も、地盤が軟弱である可能性があります。
地名は土地の履歴書
  科学的な手段に頼れない時代には、その土地の状況を考えて地名を付けたと言われています。つまり、地名はその土地の履歴を凝縮した標語のようなものなのです。
(1)水域にちなんだ地名:軟弱地盤の可能性が高い
水戸・清水・川口・川内・寝屋川・白河・河内・綾瀬・池袋・沼津・泉大津・湖西・海南・近江・浪速  → 水戸は水門、近江は大きな海の意味です。
(2)水辺にちなんだ地名:水域に隣接する海岸、河岸、半島や島を表す地名。
横浜・浜松・灘・磯子・高砂・横須賀・新潟・江戸・松江・住之江・浦和・浦安・三浦・川崎・茅ヶ崎・尼崎・長崎・岸和田  → 江は入り江、浦は比較的小さな湾のことです。ちなみに当社の事務所が所在している地名は「墨江」少し北側の地名は「粉浜」といい、昔はこのあたりまで海岸があったそうです。
(3)さんずい・谷・沢・田のつく地名
河・池・沼・海・沖・潮・汐・洗・浮・渋・清・渡・滝・湘南・流山・越谷・渋谷・刈谷・藤沢・米沢・金沢・荻窪・溝口・深谷・浅草・秋田・成田・野田・町田・下田・磐田・田辺・梅田

                       (スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2011年6月23日 木曜日

平成23年6月23日(第292号)...年金受給額ネットで試算

インターネット上のサービスで年金記録を確認で切る「ねんきんネット」のサービスが始まっている。秋以降は、将来に年金額が試算できる等、さらに便利になる見込み。今年4月以降に届く「ねんきん定期便」に記載された番号を」使うと、手軽に利用できる。年金記録は、毎年1回、加入者の誕生日に郵送される「ねんきん定期便」で確認できる。ただし、年金制度加入以来の詳しい記録が記載されるのは、35歳、45歳、58歳に人だけ。それ以外は直近1年分の記録しか載っていない。日本年金機構ホームページ(http://www.nenkin.go.jp/)上に2月に開設された「ねんきんネット」なら、この加入記録の全てをいつでも確認できる。記録は毎月更新され、国民年金未納期間は朱書きされている等、わかりやすく表示される。

千葉県在住の主婦(44)は、ねんきんネットで、会社員時代や、専業主婦となってからの記録を全て確認した。「記録漏れ等がないと改めて確認でき安心した」と話す。

主婦がねんきんネットに接続する際に利用したのは、4月に届いたねんきん定期便だ。今年4月以降の定期便には、「アクセスキー」と呼ばれる17けたの数字が記載されている。ホームページ上でこの番号と基礎年金番号、メールアドレス等を入力すると、即座に IDが発行され、パスワードを設定すれば、年金記録が閲覧できる。ただし、このアクセスキーは到着後3ヶ月程度で使用できなくなる。定期便が届くまで待てない場合、ホームページ上で登録手続をすることで、5日ほどで、IDとパスワードが取得できる。アクセスキーが期限切れになった人も、同様の手続で利用できるようになる。

同機構は、年金をいくらもらえるかという見込み額の試算ができる機能をを、今秋をめどに追加する予定。また、60歳以降に働きながら年金を受け取る「在宅老齢年金」」の金額や、年金を早めに受け取る「繰上げ受給」の額等も試算可能にするという。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年6月 8日 水曜日

平成23年6月8日(第291号)...プロジェクトマネジメント

1.あなたの会社はどんぶり勘定?
顧問先も含め、ベンチャー企業等たくさんの会社の支援をしていますが、儲かっていない会社が多いです。それは、何故でしょうか? 
もの造りをしている企業やソフトウェアなどをつくっているほとんどの中小企業は個別の製品の原価を把握していないのが現状です。儲かった会社も、儲からなかった会社も勘ピューターでおよその感じだけで推定していることがほとんどです。製造原価と営業費用も区分されていないところが多いのです。「計算の仕方が分からない」「面倒臭い」というのがその理由です。
見積もり段階では儲かるつもりで受注します。しかし、結果を計算してみると大幅な赤字受注になっている、なんていうことがしばしば起こっていませんか。そんな企業は特に取り組んでいただきたい管理方法です。

2.プロジェクトマネジメントって何?
何やら難しそうに聞こえますが、簡単にいうと受注案件ごとに担当者を決め、納期に間に合うように工程を管理して、さらに案件ごとに儲かっているのか、損しているのかを分かるようにすることです。そうすることによって、今後の価格交渉やコストダウンに役立ち、「筋肉質」の強い企業になってきます。

3.中小企業でもできる、プロジェクトマネジメント
その気になりさえすれば中小企業でもプロジェクトマネジメントすることは可能です。まず、経営者ご自身が、従業員にそれぞれに案件ごとの担当者になってもらって、その案件が儲かっているか、損しているのかをつかむ意識を持たせるところからスタートします。簡単なエクセルシート1枚(プロジェクト管理様式)でスタートできます。

企業にとって、「利益と資金は車の両輪」です。儲からない企業はやがて資金にも不足し、経営が行き詰まってしまいます。転ばぬ先の杖、今からでも遅くありません。

利益の出ていない企業はもちろん、利益が出ている企業はさらに筋肉質の体質の会社にしてみませんか!

(スマイルグループ 公認会計士)

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2011年5月23日 月曜日

平成23年5月23日(第290号)...医療費の限度額適用認定書を利用しましょう



近年の医学の発展により、高度な手術や新薬が開発され、様々な医療行為が受けられるようになりました。しかし、医療費が高額になる傾向があり、心臓バイパス手術では、3割分の自己負担金が約160万円になります。また、新薬の関係でいうと、1年前に発売された血液難病の新薬は、毎月の注射代が3割負担でも約120万円になります。他にも処方される薬代が毎月数万円という薬も多くなってきております。
これら高額な医療費に関しましては、健康保険に高額療養費制度というものがあります。これは高額な医療費に月ごとの上限を設け、費用が問題で治療が受けられないという方を少なくするのが目的です。その上限額は次のように定められています。
(70歳未満の場合:1ヵ月の医療費の上限額)

・一般被保険者(標準報酬月額53万円未満)
→(医療費の総額-267,000円)×1%+80,100円=83,400円
(多数該当)

 (この他に、上位所得者や低所得者の区分もあります。)

ここで言う多数該当とは直近の1年間に高額療養に該当した月が3ヵ月以上ある場合に適用されます。一般被保険者の方で心臓バイパス手術により1ヵ月入院したと仮定しますと、医療費の総額が約530万円になりますので、高額療養費は大体13万円程となります。
 この高額療養費制度は、原則は医療費の3割を病院に支払って、その後、健康保険に差額返還の手続きをする流れとなります。ただ、一括で160万円も支払えないという方も多く、その場合は、「限度額適用認定書」を保険者からもらっておきますと、病院の支払いが高額療養費で計算された約13万円ですみます。大きな手術の予定が入っている方は、事前に「限度額適用認定書」を取得される事をお勧めします。
 ただし、この「限度額適用認定書」は、現在は入院にしか使用できません。外来で高額な治療を受けている方は対象となっていませんので、高価な注射薬を使用されておられるのであれば、病院にお願いして、一泊入院で治療を受けてください。そうしますと、限度額認定され、月々用意する医療費の負担が少なくてすみます。
 外来についても、来年の4月から「限度額適用認定書」が適用される通知が厚生労働大臣からありましたので、来年度からは外来でも利用できるようになります。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年5月 8日 日曜日

平成23年5月8日(第289号)...介護休業の回数日数及び日数

現在の法による介護休業制度での休業取得回数及び日数は「同一の対象家族について、一の要介護状態ごとに1回の介護休業を通算して93日までとすることができる」と定められています。従前の制度では「同一の対象家族について1回、連続する3ヵ月までの間の休業」を権利として保障するものとされていました。この制度改正は、介護休業の複数回取得への要望がある中で、短期間の休業で復帰する者も多く、必ずしも連続3ヵ月の休業を必要とする者ばかりでないことも踏まえ改められたものです。
「通算して93日」の日数の根拠は、従前の制度にあった「3ヵ月」の最低基準を最長の介護休業期間(介護休業開始日とされた日の翌日から起算して3ヵ月を経過する日まで)を日数換算すると、初日+31日×2+30日×1=93日(最大)となります。

育児休業期間は、子が1歳に達するまで(例外として、パパママ育休の1歳2ヵ月の間の1年、保育所に入所できない場合等1歳6ヵ月まで)と長期休業期間の取得が可能である一方、何故、介護休業期間は当初3ヵ月となったのでしょうか。
「3ヵ月」に定まった理由としては、次の4点があり、主たる要因は(1)(2)です。
(1)家族による介護がやむを得ない場合の緊急的な対応。
  (2)家族が介護に際し、施設に入れるかどうかという長期的な方針を決める判断期間。その期間が通常3ヵ月程度必要。
  (3)家族の介護をする労働者の雇用継続の必要性と、企業の労務管理負担とのバランスの考慮。
  (4)当時の調査として、介護休業制度を導入している企業では、3ヵ月以内の設定が大方を占めていた。

 回数は、従前については「同一の対象家族について1回」でしたが、現在では「一の要介護状態ごとに1回」と複数回取得可能となっています(日数は通算して93日間)。ただし、一の要介護状態に1回となっているため、同一の要介護状態が継続しているときなどは途中で中断した場合、再度の取得ができなくなります(一旦病状が回復し、異なる要介護状態となれば複数回93日の範囲で取得可能)。例えば、老親の介護のため、長期に亘り毎週1日若しくは2日の介護休業を取得し続けることは無理があります。昨年改正された介護休暇(1人の場合5日、2人以上の場合10日/年)は取得できますが、日数に制限があります。

今後の社会を考えると、介護における取得回数等について更なる改正が必要と考えられます。
                    
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年4月23日 土曜日

平成23年4月23日(第288号)...消費税の非課税取引

東日本大震災の復興財源として、消費税の増税も検討されているようです。
消費税の非課税となる取引について説明いたします。

消費税は、原則として、国内において「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け及び役務の提供」並びに「輸入取引」を課税の対象としています。
 しかし、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、課税しない非課税取引が定められています。

具体的には以下のようなものが、非課税取引になります。
(1)土地(借地権などの土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け
ただし、1ヵ月未満の土地の貸付け及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税取引には当たりません。
(2)有価証券等の譲渡
(3)支払手段の譲渡
(4)預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
(5)郵便事業株式会社、郵便局株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(6)商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
(7)国等が行う一定の事務に係る役務の提供
(8)外国為替業務に係る役務の提供
(9)社会保険医療の給付等
(10)介護保険サービスの提供
(11)社会福祉事業等によるサービスの提供
(12)助産
(13)火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
(14)一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
(15)学校教育
学校教育法に規定する学校、専修学校、修業年限が1年以上などの一定の要件を満たす各種学校等の授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明手数料など
(16)教科用図書の譲渡
(17)住宅の貸付け
ただし、1ヵ月未満の貸付けなどは非課税取引には当たりません。
(スマイルグループ 税理士)

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2011年4月 8日 金曜日

平成23年4月8日(第287号)...東日本大震災関連情報

H23年3月11日、三陸沖から茨城県沖にかけての海底を震源域とするマグニチュード9・0の巨大地震(東北地方太平洋沖地震)が発生し、多くの人命と財産が失われました。
今回の大地震におきまして、多くの方が亡くなられたことに対しお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧と皆様のご健康を心からお祈り申し上げます。

 震災に加え福島第一原発事故で、資材調達のめどが立たず受注を見合わせたり、売り上げが落ち込む企業、一方で被災地での需要急増や、被災による操業停止、計画停電で東日本の工場の代替を担い、フル操業する工場など経済もまた混乱しています。
 京都労働局は被災者や被災企業を対象に仕事を紹介したり、雇用保険や雇用調整助成金に関する相談窓口を府内のハローワークに設置、休業や未払い賃金の立て替え払いなど労働条件に関する相談窓口を同局監督課に設けています。(4月5日京都新聞朝刊)
 
以下、厚生労働省からの東日本大震災関連情報において「雇用・労働関係」について震災後公表されている対応について一部を掲載させて頂きます。
 こまめに情報を集め、粘り強く明日を信じて、この有の震災を乗り越えましょう。

◆派遣労働者への配慮について要請しました(3月28日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016av1.html
◆雇用・労働関係の特例措置をまとめたリーフレット(3月29日)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=162283
◆労働基準法等に関するQ&A(第2版)(3月31日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017f2k.html
震災の影響を受けての対応について(若年者雇用対策)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=162199
◆雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金リーフレット
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=162405
◆東北地方太平洋沖地震に伴う雇用保険失業給付の特例措置について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000015vy1.html
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年3月23日 水曜日

平成22年3月23日(第262号)...新年度からの労働法改正

労働基準法が4月1日から改正施行されることはスマイル新聞でも数回紹介しました。御社の労使協定や就業規則は改正法に適合するように改定されているでしょうか。中小企業は時間外労働に対する割増賃金率の引上げと代替休暇制度の創設については適用が猶予されますが、年次有給休暇の有効活用のための「時間単位年休制度の創設」は大企業と同様に適用されます。ただし、労使協定を締結すれば時間単位での年休取得ができるようになりますが、この制度を作る義務はありません。一方、就業規則や労使協定を監督署に提出する際には労働者代表の署名が必要ですが、代表者の選任が不適切に行われているという情報が多くなってきていますので、ご注意ください。
 また、労働基準法以外にも4月1日から改定施行される法律や通達があります。

労災法関係では、労働者死傷病報告の様式が変更
事故が3月31日以前であっても、届出が4月1日以降になるときは新しい様式で届けます。派遣労働者が労働災害によって死亡し、又は休業した場合には派遣元及び派遣先の事業所がそれぞれの所轄労働基準監督署に報告を提出しなければならないのは従来と変わりませんが、派遣先の事業所の郵便番号を記入する欄ができました。これは、派遣先会社の事業所が複数ある場合に、どの事業所で仕事に従事していたかが判るようにする為です。

安全衛生法関係では、定期健康診断における胸部エックス線検査等の対象者の見直し
 従来、胸部エックス線検査の対象者は、40歳以上は従来どおり全員に実施、40歳未満の従業員は、下記1)、2)、3)以外の方については医師が必要でないと認めた時は省略することができる、と変わりました。つまりは医師が必要でないと認めていなければ検査を受けなければなりません。検査漏れを防ぐ為に、下記1)、2)、3)に該当しない従業員(主として節目年齢以外の従業員)のリストを作って医師の認印をもらっておくのが良いでしょう。
1)5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の従業員
2)感染症法で結核に係る健康診断の対象とされている施設で働いている従業員
3)じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている従業員
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年3月23日 水曜日

平成23年3月23日(第286号)...再び第3号問題

年金裁定のときに誤って第3号被保険者期間とされていた期間をそのまま行政担当者が見逃してしまうと、本来その人の保険料納付済みではなかった期間を納付済み期間として計算してしまい、不当に高額の年金を支給することになってしまいます。更に甚だしい場合には、年金を受給するだけの納付済み期間が無いのに、誤って年金の受給権を与えてしまうことも起こり得ます。この問題は昭和61年の制度開始の時から指摘され、十数年前から対策が取られていたのですが、その実施が不十分だったと言えます。
平成22年12月15日に厚生労働省の課長通達で「運用3号」という取り扱いが公表され、平成23年1月1日から実施されました。これを下図に示します。
夫    第2号被保険者(厚生・共済)      第1号被保険者期間
              退職                    
 妻       第3号被保険者     届け忘れのため第3号登録されていた期間
      変更届を出すべき時点
               必要な変更の届出が行われなかったことが判明した期間
上のようになっていた妻は次のようになります。            2年
 妻       第3号被保険者期間     「運用3号」期間   第1号被保険者期間

 正しくは、第1号被保険者の届出をし、年
金受給の期間が不足しているなら、保険料
を追納し、まだ不足なら任意加入するべき
で、そのようにしている人もいる。
 昭和61年4月に国民年金第3号被保険者制度ができました。上の図によると、厚生年金の被保険者の配偶者が第3号被保険者として登録された数ヵ月に、夫が退職すると厚生年金の被保険者でなくなります。妻も第3号被保険者ではなくなりますが、そのままに放置しておくと、その後20年以上も第3号被保険者で居続け、最後の2年間だけ保険料を支払えば、残りの期間は第3号被保険者として扱われ、年金はその期間に応じて払われる、ということがあり得るわけです。おかしいですね。
この「運用3号」についてはいろいろの批判があり、この取り扱いは23年1月末で保留になりましたが、この間に2,300人余りの人がこの手続きの申請をしたとされています。現在、「運用3号」に関わる資格の変更や年金裁定は保留されています。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年3月 8日 火曜日

平成23年3月8日(第285号)...固定資産税の縦覧・閲覧・審査について



例年4月1日から固定資産税の縦覧が始まりますが、固定資産税は市町村が価格を決定して課税を行う賦課課税方式を採用しているため、納税者のほとんどはその計算根拠を十分に確認することなく、課された税額をそのまま納付しているのではないでしょうか。
近年あらゆるところで情報開示が進んでいますが、この機会に適正な固定資産税の課税が行われているか、しっかり確認することが必要です。(都市計画税も含みます)
土地及び家屋の評価替え年度
 土地及び家屋の固定資産税の価格は、3年に1度の基準年度において評価替えが行われ、原則としてその後2年間は価格が据え置かれることとなっています。土地の評価は我々不動産鑑定士の仕事であり、現在平成24年度の評価替えの作業をしているところです。
縦覧制度
 市町村長は、毎年4月1日から、4月20日又は納期限の日のいずれか遅い日以後の日までの間、固定資産課税台帳を縦覧に供します。
閲覧制度
 市町村長は、納税義務者その他の者の求めに応じて、固定資産課税台帳のうち、その者に係る固定資産に関する部分等を閲覧に供します。これにより、納税義務者以外でも、借地人・借家人等が、借地・借家対象資産の固定資産税額を閲覧できるため、固定資産税等の下落を材料に賃料引下げ交渉に発展することが予想されます。
審査の申出制度
 納税者は、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合には、固定資産の価格等を固定資産課税台帳に登録した旨を市町村長が公示した日から、納税通知書受付後60日までの間に、文書をもって固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができることとされています。なお、審査の申出は、原則として評価替えの年でなければ申出ることができません。
不服申立て制度
 納税者は、固定資産税の価格以外に関する事項について、不服がある場合については、市町村長に対し納税通知書の交付を受けた日後60日の間に不服申立てをすることができます。                     
 (スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2011年2月23日 水曜日

平成23年2月23日(第284号)...100年企業に学ぼう!

廃業をする製造業の事業所が増える一方で、創業100年を超える、いわゆる「長寿企業」が日本では2万2千社(個人経営、各種法人を含む)もあることが、帝国データバンクの調査でわかりました。全国各地にあるお煎餅屋さんや和菓子屋さん、さらには宿屋、そば屋の類まで含めれば、10万社に達するとさえいわれています。我が国においては技術、文化、人材が継続するという伝統的な概念があるのです。
100年以上の歴史を持つ企業は、韓国には5社しかありません。5,000年の歴史を持つ中国においても1,000社しかありません。
確認できた我が国で最も古い企業は、大阪の寺社仏閣建築の会社で創業が西暦578年とされています。聖徳太子が四天王寺を建立するために百済(くだら)から招いた工匠が始祖とされ、業歴は1,400年を超えています。
 2位は京都の生け花の振興・教授の会、3位は山梨の老舗旅館と続き、上位7位までが業歴1,000年を超えています。
100年企業の社風をまとめると、「おっとりしている」、「ロングレンジでものを考える」、「原点に回帰しながらも常に革新を継続する」、「とにかく人を大事にする」といったものが目立ちます。
 都道府県別に見ると、東京都が 2,058社(9.3%)で最多。愛知県1,211社(5.5%)、大阪府1,080社(4.9%)と続きます。
 業種別では、小売業が6,279社(28.3%)でトップ。次いで製造業の5,447社(24.5%)。卸売業の5,216社(4.9%)の順になっています。
このデータでは、東京都で小売業(できれば酒小売、呉服・服地小売などの伝統的な商売)を創業するのが、長寿企業になる近道と推測できます。現在の経済状況では、必ずしも現実的とはいえませんが、意外なヒントが隠されているかもしれません。
100年を超える企業は大手企業ばかりではありません。中小企業においても伝統的な技を活かしつつ、先端ハイテクを追求する優秀なカンパニーは、この日本には数多くあります。
古くて新しい町「京都」も100年企業の宝庫です。景気の先行きが不透明な今日、「100年企業」にヒントを学んでみてはいかがでしょうか。


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2011年2月 8日 火曜日

平成23年2月8日(第283号)...やさしい損益分岐点(儲かっていないと感じる会社編)



みなさんは、損益分岐点という言葉を聞いたことがあると思います。そして、何となくその意味も分かっていると思っているのではないでしょうか?
では、自社の損益分岐点売上を計算してみたことはありますか?ここで、簡単な損益分岐点の説明をしてみましょう。

あなたは、晴れて大阪梅田のホワイティに5坪の電子辞書を販売するお店を開くことができました。家賃は、月20万円です。いろいろな電子辞書を販売していますが、どれも売値は5万円、仕入価格は3万円とします。さて、この電子辞書を何台売れば家賃を払うことができるのでしょうか?「そんなの簡単!10台だよ。」って答えが返ってきました。そう、それで正解です。
どうやって計算しましたか?「1台売ると2万円の儲けだろ、10台売れば20万円の儲けだからそれで家賃が払えるよ。」そうです!10台売って50万円の売上、これが損益分岐点売上です。
もう少し、分析してみましょう。1台の売上高5万円から仕入価格の3万円(変動費)を引いた2万円の利益をちょっと難しいですが、「限界利益」と呼びます。1台売ると2万円の限界利益があり、家賃20万円(固定費)のうち2万円が回収できました。順番に限界利益で家賃という固定費を回収していって、10台ですべての固定費が回収され、損益はとんとんになります。これが損益分岐点の基礎です。"固定費を限界利益で回収すると損益分岐点になる"。
また、限界利益を売上高で割ったもの、これを「限界利益率」と呼んでいます。
上で示した、損益分岐点の基礎から 固定費÷限界利益率=損益分岐点売上という算式ができます。上記の事例でみてみましょう。
限界利益率は、2万円÷5万円=40%
20万円(固定費)÷40%(限界利益率)=50万円 これが損益分岐点の正体です。
売上高と費用を変動費と固定費に分けることができればあなたの会社でも簡単に損益分岐点売上が計算できます。変動費は、商品を仕入れて売るのであれば仕入価格、メーカーであれば概ね材料費が該当し、固定費は人件費や販売するための広告宣伝費等の経費、管理費用など売上によって変動しない費用が該当します。

さぁ、あなたの会社、一度損益分岐点を計算してみませんか?いくら売れば損益分岐点を超えるか、それがあなたの会社のまず目標とする売上高です!

(スマイルグループ 公認会計士)


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2011年1月23日 日曜日

平成23年1月23日(第282号)...社員教育で普通救命講習を受けましょう



消防署等で行われている、「普通救命講習」をご存知でしょうか?心肺蘇生を中心とした応急手当を学ぶ講習で、火傷や怪我の簡単な手当ても学ぶことができ、上級編では怪我の手当ての他に、搬送方法等も学ぶことができます。

これを是非社員教育の一環として採用してください。会社で従業員等が倒れたときに、救急車を呼んでも到着までに10分前後のとき間がかかります。この間に応急手当をしているか、していないかで救命率が大きく変わります。心肺停止ですと、3分間放置するだけで死亡率が50%を超えてしまいます。救急車到着までの間に心臓マッサージをしているだけで、その人が助かる確率が大きくなります。

職場でそのようなことは起こらないだろうと考えておられる方も多いでしょうが、私の関与していたある会社では、1日に救急車を2回呼ぶことになったケースがございます。幸い命に関わることもなく、労災を疑われる病気でなかったので、問題はなかったのですが、こと業場内で転倒して頭を打った等の場合、確実に労災になり、死亡と救命されたのでは、会社に問われる責任も変わります。また、障害の重さによっても会社が負う責任は変わりますので、応急手当は非常に重要となってきます。労災こと故の場合で、従業員が死亡したか、救命されたのかでは、労働基準監督署からの指導内容や、従業員及びその家族へ対する保障という点で大きく異なってきます。応急手当をしているだけで、救命率も上りますし、後遺症も軽くなりますので、会社のリスクマネジメントとしても最適です。

 この普通救命講習は無料で利用でき、しかも一定の人数が集まると出張して行ってくれます。従いまして、会社まで出向いて講習をしてもらえますし、受講終了後は応急処置技能検定講習を受講した証明書を発行してもらえます。これは公的資格の一つとなっております。

 私がサラリーマンとき代には研修を担当し、毎年この講習会を開催しておりました。消防署の方とも親しくなれますし、行政受けがよかったことも覚えております。費用の一切かからない講習ですので、是非受講することを検討してみてください。

 申し込み先は、最寄りの消防署です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2011年1月 8日 土曜日

平成23年1月8日(第281号)現代うつ

若年層である20歳代から30歳代にみられる「現代型うつ」は、「新型」「非定形型」「未熟型」などのさまざまな呼び方がされています。精神科医の間でも統一した見解がなく、臨床現場でも認識が不十分で対処方法も未確定、特効薬があるわけでもなくケースバイケースでの対応とされています。

従来、うつ病になりやすいタイプと言えば、几帳面で真面目、他人に気を遣い相手に合わせようとする物事にこだわる「メランコリー親和型」で40歳代後半から50歳代に多くみられました。このタイプは、休養や薬物療法によりある程度改善していくと言われています。うつ病の症状も変化し、最近ではこのタイプは少数派になりつつあると言われています。

 従来型と違い「現代型うつ病」の特徴は、(1)自責感や悲壮感が殆どなく、漫然とした抑うつ気分で倦怠感が目立ち、自己中心的な性格が強く、何かうまく行かないと他人のせいにし(2)自分の都合のよい出来事には気分が良くなり(会社にいるときはうつ症状)、休日やプライベートタイムなどはごく普通に過ごしている(3)人間関係への過敏性などが見られ、気分の浮き沈みが激しい、などがあげられます。

 従来型うつと現代型うつでは、全く異なる症状にて同じ様な対応を取ることは難しいとされています。従来型では、真面目で責任感が強い人に症状がでることにより自責感が強いとされているのに対し、現代型では、「上司、同僚が悪い」「会社が悪い」などと考え、休職した場合でも復職への焦りや、仕事に対する切迫感もなく、悪いことばかり目が向く傾向にあります。

 現代型では、本人には悪気がなく、また、周囲に迷惑を掛けている意識すらなく、自分自身典型的なうつ病と思い込んでることもあります。一方、落ち込んだり、気分が優れない、眠れないなどの症状も見られます。

 対応としては、従来型と同様に、休息と投薬を中心とした治療方法を取り、治癒に要する時間をある程度覚悟ください。本人との話では誠実に傾聴し、同意できないことは無理に受け入れず、職場の基本的なルールを丁寧に説明することも必要です。従来型では「『頑張れ』は禁句」と言われていましたが、通用しないこともあり、庇護的、保護的な環境をつくることばかりが良いとは限らないとも言われています。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年12月23日 木曜日

平成22年12月23日(第280号)...平成23年税制改正大綱

12月16日に平成23年税制改正大綱が発表されました。
主だったものは、次のとおりです。

1.法人税率
法人税率が、30%から25.5%に引下げられます。
資本金が1億円以下の中小法人の800万円以下の所得に適用される税率は、18%から15%に引き下げられます。(平成23年4月1日開始年度から適用)
2.繰越欠損金の控除年限
法人の欠損金の繰越控除年数が7年から9年になったものの、欠損金と相殺される所得が80%に圧縮されます(中小法人は除く)。
3.相続税
基礎控除額が、現行の5,000万円+法定相続人1人1,000万円から3,000万円+法定相続人1人600万円に減額されます。また、死亡保険金の相続人1人500万円の非課税枠は、被相続人と生計を一にしていた者等に限られます。税率も最高税率が50%から55%にアップします。(平成23年4月1日から適用)
4.給与所得控除
給与所得は給与収入から給与所得控除を引いて計算されます。今までは上限がなかったのですが、給与収入1,500万円を超えると245万円で頭打ちになります。
5.成年扶養控除
合計所得金額が400万円(給与収入568万円)超の所得者は、23歳から69歳までの成年扶養親族を扶養控除の対象とすることができなくなります。ただし、学生や65歳以上70歳未満の者、障害者などの成年扶養親族は除きます。(平成24年から適用)
6.退職所得課税
退職金は、退職金額から勤続年数に応じた退職所得控除を差し引いた額の2分の1が課税の対象になり優遇されています。勤続年数が5年以下の会社役員や議員・公務員に対する退職金については2分の1課税が廃止されます。(平成24年から適用)

※税法が改正されるにあたり、賃金規程上の家族手当や住宅手当等の扶養家族の定義の見直しが必要になるケースが出てきています。平成23年1月1日以降ご注意ください。
(スマイルグループ 税理士)

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2010年12月 8日 水曜日

平成22年12月8日(第279号)...高年齢者雇用安定法と「2013年問題」




平成18年の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、「高齢法」)の改正から4年以上が経過しました。
1.改正高齢法の概要
平成18年の改正高齢法で、企業には65歳までの雇用確保措置が義務づけられ、現在はその途上で、現時点での雇用確保義務年齢は64歳ですが、平成25年度にはその年齢は65歳になります。
ご承知の通り雇用確保義務の内容は(1)定年制の廃止(2)継続雇用制度の導入(3)定年延長のいずれかを講じることにより、雇用を確保しなければならないということなのですが、現在60歳以後の雇用はほとんどの企業が再雇用制度((2)の継続雇用制度の一つで定年退職後再雇用して雇用を継続する制度)により対応し、再雇用後の賃金は「年金」と「高年齢雇用継続給付の受給」を前提として、大きく引き下げられるのが普通です。
背景には60歳前の給与水準を維持できないことと、逆に言えば、60歳からは「在職老齢年金」と「高年齢雇用継続給付」という2つの公的給付があるという前提で60歳以後の賃金の引き下げが可能になります。
賃金の手取額に両給付の受給額を加えた「総手取額」が、一定の範囲で最大となる賃金の額を「高齢者の最適賃金設計」などという言葉で表現されています。
2.平成25年度(2013年度)以降の影響
しかし、このような継続雇用の在り方は平成25年度以降修正を迫られることになると思われます。
現在60歳になる一般的なサラリーマンは、まだ60歳から「部分年金」と呼ばれる2階建て年金の2階部分だけの年金(「報酬比例部部分」ともいいます)が支給されますが、平成25年度に60歳になる男性(昭和28年4月2日から30年4月1日生:女性は5年遅れ)からは、この部分年金の支給開始年齢が1年ずつ引き上げられます。つまり、60歳から61歳になるまでの1年間は無年金者になるわけで、雇用による収入しかない年が段階的に長くなるわけです。
60歳から年金が支給されない世代が60歳になったらどうなるの?ということが「2013年問題」といわれています。
  支給開始年齢の引き上げに合わせて、定年年齢を61歳、62歳と延長し65歳までの残りを再雇用制度でまかなうのか、60歳の再雇用時には軽い引き下げ、年金支給開始年齢時に本格的な賃金引き下げをするのか、年金支給開始年齢に関係なく60歳から大幅な賃下げをするのか、などが考えられますが、いずれにせよ3年後というと遠い話というわけにはいかないようです。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年11月23日 火曜日

平成22年11月23日(第278号)...残業は合法的に処理しましょう



年末が近づいてきました。不況と言っても年末ともなれば仕事量が増えて残業を命ずることが多くなるでしょう。御社では残業は合法的に行われていますか?"名ばかり管理職"を作っていませんか?ご点検をお願いします。
では、合法的であるためのチェックポイントを挙げてみましょう。
1.36協定はちゃんと締結されていますか?
監督署へ協定届だけは提出されていても、協定書の作成等その協定を決めた手続がちゃんと行われていなければなりません。
2.36協定の有効期間はまだ十分残っていますか?
36協定の期間は1年とするのが普通ですが、継ぎ目で空白ができないように注意が必要です。これまで、過去に36協定が有効でなかった時期があった、というだけで労使紛争になった例があります。1日も空白期間ができないように注意してください。
3.従業員代表の選出は適正に行われましたか?
事業主が署名人を指名しており、従業員によって選出されていない、とか、親睦団体の代表者が従業員代表として署名捺印している、などは違法です。
 従業員の親睦団体である「○◇社友会」の代表を労働者代表として36協定を締結していたが、この人物は労働組合の代表者でもなく、労働者の過半数を代表する者でもないから、この人物と交わした36協定は無効であり、残業命令も無効であるという判決が出た例もあります。
では、従業員代表はどのように選出すればよいでしょうか。それは「厳格な選挙等を行う必要はない。」とされていますが、次のようなことを確実に実行することが必要です。
(1)朝礼時に挙手で決める。
(2)全社員に従業員代表候補者を周知し異議がある場合は申し出るよう全員に伝える。
(3)書面で個別に同意を取っておく。
これらの経緯を文書に残しておくことが、後のトラブルを防ぐために有効です。
ファーストフード店の店長が、「自分は管理職とされていたが、実は"名ばかり管理職"であるから超過勤務給を支払え。」と会社を訴えたM社の事件は有名になりましたが、類似の事件は後を絶っていないようです。
従業員の管理職への昇進に当たっては、仕事の質、責任と権限に見合う給与・待遇を与えないと"名ばかり管理職"を作ってしまうことになります。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年11月 8日 月曜日

平成22年11月8日(第277号)...「めやす賃料」について

今年10月から賃貸住宅の募集・契約においてスタートした「めやす賃料表示」について説明します。

「めやす賃料」とは?
賃貸住宅の広告・契約時などにおいて、「実際にいくら支払えばよいのか?」が分かりにくいということがよく問題となっています。地域による慣習、賃貸人の違いなどにより毎月支払う賃料は同じでも実質的に支払う金額に差が出てしまうことが、半ば常識となっていました。これらを一定の基準で整理し、実際に支払う金額がどれだけなのかを分かりやすく表示する仕組みが、「めやす賃料表示」です。我々不動産鑑定士が従来より賃料の鑑定評価をする場合にも、やや中身が異なりますが「支払賃料」「実質賃料」という名称を使用して算定しています。
「めやす賃料表示」のガイドライン
(財)日本住宅管理協会が発表した「めやす賃料表示」のガイドラインは、次のとおりです。
「賃料、共益費・管理費、敷引金、礼金、更新料を含み、賃料等条件の改定が無いものと仮定して、平均的な入居期間とされる4年間賃借した場合(定期借家の場合は、契約期間)の1ヵ月当たりの金額」と定義されています。
つまり、4年間(48ヵ月)居住時の(賃料+共益費・管理費+敷引金+礼金+更新料)÷48ヵ月という事になります。
「めやす賃料」に含まれる項目、含まれない項目
(1)めやす賃料に含まれる項目
・賃料 ・共益費/管理費 ・敷引金(敷金・保証金の償却金) ・礼金 ・更新料
(2)めやす賃料に含まれない項目
・仲介手数料、更新事務手数料 ・町会費 ・鍵交換費用 ・原状回復特約費用
・定額の設備使用料 ・賃貸保証会社への保証委託料 ・家財保険等の保険料 等
これは、物件使用の対価のみを対象とした方が、賃料の比較が容易であるためです。また貸主毎により異なる「特約により発生する費用」は対象外としなければ市場での比較が困難となるからです。「めやす賃料表示」は賃貸住宅のみならず、事務所・店舗等の賃貸借においても考慮されるべきものです。
 (スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2010年10月23日 土曜日

平成21年10月23日(第252号)...リーダーシップが業績を決める



1.人材3分法
 人材を分けると次の3つになると言われています。良きリーダーシップをとれるのはもちろん「人財」です。さて、経営者、管理者としてのあなたはどの人材になりますか?
(1)人罪= 努力も頑張りもしない人、昇進しない・できない人、組織の足を引っ張る
人、愚痴をこぼす人 
(2)人在¬= 頑張る人、そこそこ昇進する人、指示・命令があれば動く人、指示待ち人

(3)人財= 工夫し努力する人、どんどん昇進する人、次の一歩を考えて行動する人 

2.嫌われるタイプのリーダーシップ
 こんな人は嫌われるタイプのリーダーで、他の社員から尊敬を得られず、仕事の成果も上げられません。
(1)ワンマンで人の話を聞かない、1時間でも2時間でも愚痴や精神論を振りかざし、
部下が発言すると欠点をみつけけなす人
(2)意見をまとめられない、優柔不断、結果責任も取らない人
(3)手柄は自分のもの、失敗は部下に押しつける人
(4)自分の出世だけを考えて、部下の幸せを考えていない人
(5)公正な判断ができない人、好き嫌いで物事を判断する人
(6)人材の育成ができない人
(7)先を読むための情報収集や分析をしない人
など、上げ始めればきりがありません。さて、あなたはどれかに当てはまっていませんか。

3.良きリーダーシップ
2.で上げた項目の反対をすればいいことになりますね。
 まず、部下の話をよく聴くことです。現在はバブルのころと違って「売ってこい!」の精神論だけではなかなか売れません。情報を集め、当然部下からの現場の情報は重要な情報源です。分析し、一歩先を読んで対策を取っていく、こんなリーダーになりたいですね。
結果的に部下が仕事をして業績を上げてくれるのですから、部下を育て、仕事を任せ、結果をしっかり評価してやることです。もし、結果が悪くてもそれは自分の育て方が悪いんだと責任をとるくらいの懐の広さが欲しいですね。部下はいつもあなたを見ていますよ! 
                        (スマイルグループ 公認会計士)

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2010年10月23日 土曜日

平成22年10月23日(第276号)...36協定の特別条項に記載する「労使の協議を経て」とは?



36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)に定める時間外労働の上限は、法定の時間外労働の限度基準(1ヵ月45時間・1年360時間等)を基本とします。しかし、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない「特別の事情」が予想される場合には、一定の条件の下で限度時間を超える時間を延長時間とすることが可能です。こういった協定を「特別条項付協定」といいます。
昨今、この「特別条項」が盛り込まれた36協定を届出した事業所には労働基準監督署の調査がはいりやすくなっていります。また、一般の調査でもその運用について条項どおり手続きが行われているかが、厳しく問われるケースが増えてきているため、さらに注意が必要です。
特別条項に定める内容ついては、通達に定められており、手続については次のように記載されています。
「労使当事者間において定める「手続」については特に制約はないが、時間外労働協定の締結当事者間の手続として労使当事者が合意した協議、通告その他の手続であること。また、「手続」は、一定期間についての延長時間を定めた当該一定期間ごとに当該特別の事情が生じたときに必ず行なわなければならず、所定の手続を経ることなく、原則となる延長時間を超えて労働時間を延長した場合は法律違反となるものであること。なお、所定の手続がとられ、原則となる延長時間を超えて労働時間を延長する際には、その旨を届け出必要はないが、労使当事者間においてとられた所定の手続の時期、内容、相手方等を書面等で明らかにしておく必要があること。」(平成11年1月29日基発第45号)
36協定の特別条項に「労使の協議を経て」と記載した場合で、実際に特別の事情に該当する場合には、誰と誰がどのタイミングで協議を行うかのシステムを構築し、実際のやり取りをその都度、議事録等で明らかにしておく必要があります。 
よって、従業員に時間外労働をさせる場合には労使協定を結び所轄の労働基準監督署に届け出なければならないのは当然ですが、それだけで終わらず、締結後にはその内容を遵守し、継続的に時間外労働の管理を行っていくことが義務となります。
※特別条項の運用には「通告」という方法もありますが、労使間トラブル回避のために「労使の協議を経て」とすることが原則とされています。

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2010年10月 8日 金曜日

平成22年10月8日(第275号)...残業ゼロに挑戦する


<あなたの会社は残業を当たり前と思っていませんか>
残業の多い会社は、経営者または管理者が残業を「善」だと思っていることが非常
に多いです。残業が多いと、何となくよく仕事をしているように思われがちですが、本当に欲しいのはパフォーマンス(売上高、利益)のはずです。従って、残業は追加的なパフォーマンスが上がる場合だけが「善」です。この考え方を変えないと残業は減りません。
<残業の多い会社の特徴>
あなたの会社でこんな現象は起こっていないですか?
1.残業を前提としているようにのんびり仕事をしている。
2.見た目は忙しそうだが、ミスややり直しが多く、業務の進み方が悪い。
3.初めから達成が難しい計画に基づいて仕事のスケジュールが組まれている。
4.会議が多く、しかも長い。経営者による訓示、はっぱをかけるような精神論が
多い。
 5.終業間際の時間帯になって上司から仕事に指示・命令がよくある。
 6.得意先からの注文内容の突然の変更や見直しが多く、受注側として振り回され
ている。
 7.上司がいつも残業しているため、部下も仕方なく付き合っている。
 8.社員たちの多くは、不満を抱えているが、それを聴いて活かす場がない。
さて、あなたの会社ではいくつ当てはまりますか。
<残業ゼロへの挑戦 その1>
コミュニケーションをよくとること。上下、横(部門間、同僚同士)、顧客との間でもっとも基本的に行われるのは、「報・連・相 (報告・連絡・相談)」ですが、簡単なようで簡単ではありません。
「確認」という作業も非常に大事です。事前・事後、スパンの長いものはもちろん途中経過等しっかりコミュニケーションをとってください。大層な「報・連・相・確認」を少ない回数行なうよりも、日々のちょっとした声かけを頻繁に行なうことで日常のコミュニケーションがかなり良くなるはずです。
もう一度、原点に帰って考えてみてください。ご心配ならご相談ください。
 (スマイルグループ 公認会計士)

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2010年9月23日 木曜日

平成22年9月23日(第274)...医療費の高額療養費制度について



ケガや病気で大きな手術を受ける場合、非常に高額な医療費を支払うことになります。しかし、この医療費には1ヵ月の上限が定められおり、それを超える分は還付されるという仕組みがあります。これを高額療養費制度といいます。ここでは一般的な収入(標準報酬月額53万円未満)のケースで説明します。
高額療養費の計算式は、「(総医療費-267,000円)×1%+80,100円」です。それを、1ヵ月の総医療費が400万円のケースで解説致します。

<例:総医療費 400万円>
・窓口で支払う医療費  120万円(自己負担が3割の場合)
・高額療養費  (4,000,000円-267,000円)×1%+80,100円=117,430円
・還付される金額  1,200,000円-117,430円=1,082,570円

 ご覧のように自己負担分の大半が戻ってきます。しかし、この高額療養費制度は申請をしないといけません。申請をしない限り戻ってくることはありません。親切な病院ですと、そういう制度があるというだけでなく、申請書の書き方まで教えてくれます。また、保険者からも、高額療養費に該当しているので申請するように通知してくれるケースもあります。しかし、代わりに申請をしてくれるわけではありません。忘れずに申請しましょう。
ここで、解説いたしました他に、高額所得者のケースや、世帯で医療費を計算した場合、高齢者、1年に複数月に該当した場合などは計算方法が異なります。そういった場合は病院にいるソーシャルワーカーか、社会保険労務士にお聞きください。
サラリーマンが加入している健康保険では、入院のみに関して事前に限度額認定を受けておきますと、最初から医療機関での窓口負担が高額療養費の金額で済むようにすることができます。心臓の手術など、事前に高額の医療費がかかることがわかっている場合には、ご活用ください。【高額療養費の現物給付化 限度額適用申請】
その他にも、還付金額の8割までを無利子で貸し付けてくれる制度もありますので、急な入院で限度額認定を受けられなかった場合はご活用ください。【高額療養費貸付制度】
 (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年9月 8日 水曜日

平成22年9月8日(第273号)...2010年度最低賃金、平均15円の上げ幅か?



8月5日中央最低賃金審議会において、2010年度地域別最低賃金額改定の目安について、最低賃金引き上げ幅の目安を全国平均で時給15円とすることが決定されました(前年度の引き上げ幅は10円)。全国の都道府県で10円以上引き上げることになります。結果、全国平均の時給は728円(前年713円)に上がる見通しが発表されました。
 上げ幅を巡っての協議は労使の対立が続き、デフレを背景に、厳しい経営環境を余儀なくされている企業も多く、「最低賃金の引き上げは、特に中小・零細企業の経営への打撃が大きい」と企業から言われていました。一方、労働者側は「政府目標の800円でも手取りで月13万円程度、ぎりぎりの水準」と応酬。
 その後、各都道府県地方審議会の答申にて、先に国が示した目安を上回る引き上げ幅にした地域が相次いでいます。
審議の中では、生活保護支給額との逆転解消も焦点のひとつとなっていました。2009年度で生活保護費が最低賃金より高かったのは12都道府県。この度、その生活保護支給額との差額の大きい12都道府県での上げ幅は、東京都/30円(821円〔新最低賃金 以下同じ〕)、神奈川県/29円(818円)、京都府/20円(749円)、大阪府/17円(779円)、千葉県16円(744円)、埼玉県/15円(750円)、北海道/13円(691円)、兵庫県/13円(734円)、秋田県/13円(645円)、青森県/12円(645円)、宮城県/12円(674円)広島県/12円(704円)となる答申がされました(各地域、10月から11月に改定額が発行される見通し)。
 生活保護支給額の方が高い逆転現象が続けば就労意欲が損なわれる一方で、最低賃金が引き上がれば、デフレ下での企業の厳しい現状において、特に都市部より地方の経営者へ与える影響は大きいものがあると推察されます。
 日本商工会議所の「最低賃金引き上げ」に関するアンケート調査の結果発表によると、最低賃金が現在より10円程度引き上げとなった場合に「経営に影響が出る」と回答した小規模企業は18%。また、3.8%が引き上げにより「従業員を減らす」と回答。
 最低賃金について、現民主党政権は6月の新成長戦略の中で、2020年までに名目3%、実質2%を上回る経済成長を前提に、全国最低800円、平均1,000円に引き上げる目標を掲げています(2009年度現在、最低賃金の低額な地域は沖縄県を含む4県が629円、最も高い東京都が791円)。政府の景気好転への積極的な打開策が望まれます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)


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2010年9月 8日 水曜日

平成22年9月8日(第273号)...2010年度最低賃金、平均15円の上げ幅か?



8月5日中央最低賃金審議会において、2010年度地域別最低賃金額改定の目安について、最低賃金引き上げ幅の目安を全国平均で時給15円とすることが決定されました(前年度の引き上げ幅は10円)。全国の都道府県で10円以上引き上げることになります。結果、全国平均の時給は728円(前年713円)に上がる見通しが発表されました。
 上げ幅を巡っての協議は労使の対立が続き、デフレを背景に、厳しい経営環境を余儀なくされている企業も多く、「最低賃金の引き上げは、特に中小・零細企業の経営への打撃が大きい」と企業から言われていました。一方、労働者側は「政府目標の800円でも手取りで月13万円程度、ぎりぎりの水準」と応酬。
 その後、各都道府県地方審議会の答申にて、先に国が示した目安を上回る引き上げ幅にした地域が相次いでいます。
審議の中では、生活保護支給額との逆転解消も焦点のひとつとなっていました。2009年度で生活保護費が最低賃金より高かったのは12都道府県。この度、その生活保護支給額との差額の大きい12都道府県での上げ幅は、東京都/30円(821円〔新最低賃金 以下同じ〕)、神奈川県/29円(818円)、京都府/20円(749円)、大阪府/17円(779円)、千葉県16円(744円)、埼玉県/15円(750円)、北海道/13円(691円)、兵庫県/13円(734円)、秋田県/13円(645円)、青森県/12円(645円)、宮城県/12円(674円)広島県/12円(704円)となる答申がされました(各地域、10月から11月に改定額が発行される見通し)。
 生活保護支給額の方が高い逆転現象が続けば就労意欲が損なわれる一方で、最低賃金が引き上がれば、デフレ下での企業の厳しい現状において、特に都市部より地方の経営者へ与える影響は大きいものがあると推察されます。
 日本商工会議所の「最低賃金引き上げ」に関するアンケート調査の結果発表によると、最低賃金が現在より10円程度引き上げとなった場合に「経営に影響が出る」と回答した小規模企業は18%。また、3.8%が引き上げにより「従業員を減らす」と回答。
 最低賃金について、現民主党政権は6月の新成長戦略の中で、2020年までに名目3%、実質2%を上回る経済成長を前提に、全国最低800円、平均1,000円に引き上げる目標を掲げています(2009年度現在、最低賃金の低額な地域は沖縄県を含む4県が629円、最も高い東京都が791円)。政府の景気好転への積極的な打開策が望まれます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)


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2010年8月23日 月曜日

平成22年8月23日(第272号)...財産評価について



相続や贈与により財産を取得した場合には、相続税や贈与税が課されますが、その財産の評価について、いくつか説明します。

上場株式
上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期の最終価格によって評価します。課税時期とは、被相続人が死亡した日や贈与を受けた日のことです。

ただし、課税時期の最終価格が、次の三つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
1.課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
2.課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
3.課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

家屋
家屋は倍率方式を採っており、その倍率は1.0倍です。
したがって、その評価額は固定資産税評価額と同じです。

土地
土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価します。
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。
1.路線価方式
路線価方式は、路線価が定められている地域の土地の評価方法です。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことです。
路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
2.倍率方式
倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方法です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。

(スマイルグループ 税理士)


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2010年8月 8日 日曜日

平成22年8月8日(第271号)...男性の育児休業取得率



平成21年度雇用均等基本調査
平成22年7月16日厚生労働省は「平成21年度雇用均等基本調査」の結果を発表しました。女性の育児休業取得率は20年度より5.0%ポイントも低下し85.6%となったものの、男性の育児休業取得率は20年度より0.49%ポイント上昇し1.72%と過去最高との結果です。
一方、同じく厚生労働省の20年度「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」では、男性で「育児休業制度を利用したい」と思う人の割合は31.8%。育児休業制度を利用したいとは思ってはいるものの、実際には利用できない男性が多いようです。女性の社会進出が当たり前になった昨今、厚生労働省は「男性の育児参加」や育児休業取得の促進等を目的とした「イクメンプロジェクト」を始動しています。
http://www.ikumenn-puroject.jp/index.html

夫婦そろって育児休業を
育児休業法第5条には、原則として、その子供が1歳になるまでの間、労働者は休業できると定められています。今年6月の育児・介護休業法の改正により、「労使協定を定めることで配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中である場合、他方の親は産後8週間を除き育児休業を拒むことができるという制度」が除外され、父母ともに育児休業が取得可能になりました。また、その場合、休業期間を1歳2ヵ月になるまで延長できる特典(パパ・ママ育休プラス)も付いています(ただし育休期間は父母各々1年間が上限)。また、いったん、生後8週間以内に育児休業を取得したなら、職場復帰後の再取得も可能です。
今回の改正では、残業など所定外労働の免除を制度化したり(従業員100人以下は平成24年6月30日施行)、小学校就学前の子供を看病するための看護休暇を拡充するなどして、労働者の仕事と子育ての両立を支えています。
今年4月には、東京都の文京区長が2週間の育児休業を取得して話題となりました。妻が専業主婦であったり、育児休業を取っている場合、自分が育児休業を取ることについて周囲にその必要性を説明できないと感じる人も多いかもしれませんが、父親の育児休業取得の需要は高く、法改正を絵に描いた餅に終わらせないためにも父親も育児休業を取得できるよう、環境の整備や回りの理解を深める必要があります。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年7月23日 金曜日

平成22年7月23日(第270号)...消えた年金問題(第3号被保険者)



 「宙に浮いた年金が5000万件」に代表される年金記録問題がここ数年、大問題になっています。前政権時代から始まった「ねんきん特別便」、昨年から始まった「ねんきん定期便」によって自分の年金記録を点検できるようになり、多くの人が社会保険事務所(現在は年金事務所)を訪れ、それらの人々の申告に基づいて調査と訂正作業が行われ、現在も続いています。社会保険労務士も長年、年金の記録確認作業に携わってきましたが、その中でなかなか理解されていないものの一つに「国民年金の第3号被保険者期間」があります。

 昭和61年4月1日以降、「配偶者が厚生年金または共済年金の被保険者であって、自身が厚生年金または共済年金の被保険者でない場合は、国民年金の第3号被保険者とする」ことになり、自身が保険料を支払う必要がなくなりました。しかし、この身分変更は自動的に行われるのではありません。届け出が必要です。
 自分が会社勤めをしていて、厚生年金の被保険者であった人が結婚し、退職した場合は配偶者が厚生年金か共済年金の被保険者であった時は国民年金の第3号被保険者になりますが、本人からの届け出が必要でした。
 ところが、届け出を忘れる人が多く、結果として年金保険料の納付月数が最低限度の300月に満たなくなる人が沢山できてしまいました。今でも相談窓口で、「この期間は第3号になっているのと違うのですか?」という苦情を何度も聞かされています。このように、国民年金の空白期間の発生が止まらないので、国民年金の孔を埋めるために平成7年4月から「特例届出」制度が2年間運用されて、申告に基づいて調査・確認の結果、復活された第3号期間を「特例納付」として年金記録に追加するようになりました。また、平成14年4月からは配偶者を雇用している事業主が届け出るように変更されました。しかし、未届けが続出したため、平成17年4月から再び特例届出が認められるようになりました。
 年金の期間確認に来る相談者の年金記録を見ると、まだ第3号被保険者の期間が誤っている例が時々出てきます。ご自身も第3号被保険者がどのようなものであるのか解っていない場合も多いのです。
 事業主の方は、従業員のみならず、その配偶者の身分についてもご配慮いただき、「失われた年金記録」がこれ以上発生しないよう、ご確認をお願いします。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年7月 8日 木曜日

平成22年7月8日(第269号)...平成20年分の相続税の申告事績について



国税庁から、平成20年中に相続又は遺贈により財産を取得した者について相続税の申告事績が発表されました。

相続税の申告事績
相続が発生した被相続人のうち相続税の申告が必要であった被相続人の割合は、全体の4.2%で平成16年から5年連続で同じ数値となりました。また、被相続人1人当りの課税価格及び申告税額はいずれも前年に比べて減少しています。
平成19年分 平成20年分 対前年比
1.被相続人数(死亡者数)      1,108,334人 1,142,407人 103.1 %
2.相続税申告書の提出人数         46,820人 48,010人 102.5 %
3.課税割合(2./1.)      4.2 % 4.2% ±0.0ポイント
4.納税者である相続人数   118,563人 120,127人 101.3 %
5.課税価格   106,220億円 107,248億円 101.0 %
6.税額      12,635億円 12,504億円 99.0 %
7.被相続人の課税価格(5./2.) 22,687万円 22,339万円 98.5 %
8.被相続人の申告税額(6./2.) 2,699万円 2,604万円 96.5 %
相続財産の構成比
相続財産の構成比は、土地が49.6%、現金・預貯金が21.5%、有価証券13.3%の順となっています。土地の構成比は平成4年の75.9%をピークに減少しており、平成18年から3年連続で50%を下回りました。有価証券については、平成19年後半のサブプライム問題、及び平成20年9月以降のリーマンショックの影響を反映して構成比が減少しています。
(種 類) 平成19年分 平成20年分
・土地 47.8 % 49.6 %
 ・家屋 5.3 % 5.4 %
・有価証券 15.8 % 13.3 %
・現金・預貯金等 20.5 % 21.5 %
・その他 10.7 % 10.2 %

(スマイルグループ 不動産鑑定士)


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2010年6月23日 水曜日

平成22年6月23日(第268号)...過重労働の訴訟で 和解金2億4000万円



過労死・過労障害損賠訴訟
過労による自殺で、企業に損害賠償貢任を認めた史上初の画期的判決として、電通事件があります。電通は元社員Aさんの自己申告の労働時間について過小申告を認識し、上司がAさんの健康状態の悪化に気づきながらも、業務量や労働時間の軽減を図るなどの配慮をせず、その結果、Aさんは心身共に疲労こんぱいした状態からうつ病にり患し、衝動的、突発的に自殺するに至ったものとして、最高裁は会社の損害賠償責任を認めました。会社側には長時間労働と健康状態の悪化を認識しながら負担軽減措置(安全配慮義務)を取らなかった過失があるとして、東京高裁に審理のやり直しを命じ、平成12年6月、東京高裁で合計1億6800万円を遺族に支払う和解が成立しました。
今年3月に、過労死・過労障害損賠訴訟の解決額の最高額が更新されました。外食産業企業の康正産業株式会社(鹿児島市)で、鹿屋市の元レストラン支配人が、過重な労働の結果、低酸素脳症で倒れ、寝たきりの状態になりました。鹿屋労働基準監督署は会社側の安全配慮義務違反を認めました。また従業員と両親が同社を相手取り提訴し、鹿児島地裁は、安全配慮義務違反があったことを認め、その後、同社が和解金およそ2億4000万円を支払うことで和解が成立しています。

法定労働時間は1ヵ月45時間以内に
企業は従業員の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務違反)として、民事上の損害賠償責任を負っています。労災保険法に基づく保険給付は、企業側の過失がなくても支給されるものの、補償の内容は被災者たる労働者が被った損害の一部に限られます。非財産上の損害に対する補償(慰謝料)は一切ありませんし、財産上の損害に対する補償も平均賃金(給付基礎日額)を基礎に算定された定率的な補償にとどまります。
その結果、労災保険法に基づく保険給付で補填されない損害部分(慰謝料と逸失利益)の補償を求めて、民事上の損害賠償請求訴訟が提起されます。過労死が1件発生したら約1億円の損害賠償責任が生じるものとして、企業は法定労働時間は1ヵ月45時間以内におさめるよう従業員の時間外労働の管理に改めて注意を払いましょう。

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2010年6月 8日 火曜日

平成22年6月8日(第267号)...中 国 経 済

先週の日経新聞記事によると平成32年には、中国のGNPがアメリカを抜き、世界1位になるとの記事が掲載されました。2位がアメリカ、3位がインドそして4位が日本という順位になるとの予測です。
産業の空洞化
 奈良県には奈良県立大学という公立の大学がある。この大学の県外からの就学率は、97%、そして、県外就職率も同じく97%ということである。奈良県には、それだけ雇用を吸収できる産業が少ない。アメリカについで日本も生産拠点を中国他の新興国へ移し、産業の空洞化が起こり、国内での雇用チャンスが少なくなってきている。
中国の様子
 出張で、上海、蘇州、常州の3都市をよく訪問する機会がある。上海は、人口2,000万人、蘇州で350万人くらいか、常州でも200万人くらいの都市だと思う。経済が発展し工場団地が林立し、その規模も小さな工場でも3,000坪から1万坪規模、大きくなると数十万坪にも及ぶ大工場が個々の工場団地に並ぶ。産業が発展すれば、そこの雇用チャンスが生まれ、人が地方からどんどん集まってくる。そして、都市としても発展することになる。アパートがこれでもかと建築され、周辺には、スーパーマーケットができ、道路も整備される。地震が少ないこともあり、基礎工事が日本よりはるかに簡易であり、何よりも鉄骨を組まない。ほとんどのビルは鉄骨とセメントだけで組みあがっていくので、工期はとても短い。1年後に行くとどんどん高速道路や公共施設等のインフラが整備され、驚くほどのスピードで発展している。
 今までは、外資企業(日本、韓国、台湾、EU圏、アメリカ等)が中心で発展してきたが、そこで、技術取得した人たちが、ローカル企業へ就職し、どんどん技術力を付けてきている。まだ、品質面で甘さがあるが、それを補ってあまるほどコストが安くできるようになっている。これから、日系企業も、外資系企業との価格競争ではなく、中国のローカル企業との価格競争にさらされることになる。
 8年前に行ったときは、ワーカーと言われる、工場労働者の賃金は、月額1万円前後であった。人口14億人と言われる中国では、労働者の供給は無限にあると考えられていたが、やはり優秀な人材は、高い賃金で、より条件の良いところへ転職していく。そして、賃金もその時に比べると、倍近くまで上昇してきている。それでも、まだ、私の1ヵ月の通勤費にも満たない。
中国の今後
  こうしてみてくると、日経新聞の予測記事にもうなずける。経済成長力は、徐々に落ちてくるとは思われるが、まだ、当分の間、国際競争力は勝るであろう。中国からの観光客が、Made in Japan の商品を買っていく、それほど、Made in China の品質に課題はあるが、これも、数年経てば解消されるであろう。中国の競争相手は、今後、ベトナム、インド、マレーシア等人口が多く、まだ、賃金水準の低い国々になるであろう。            (スマイルグループ 公認会計士)

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2010年5月23日 日曜日

平成22年5月23日(第266号)...障害年金の加算に対する法改正



障害年金には障害等級1級・2級に該当しますと、障害基礎年金には子供の加算が、
障害厚生年金には配偶者の加算があります。

・子供の加算  227,900円(第一子、第二子)
75,900円(第三子以降一人につき)

・配偶者の加算 227,900円(但し、その配偶者が年収850万円以下)

旧法について
 子供の加算に関しましては、対象の子供が18歳の年度末まで支給されます。また、配偶者の加算は、その配偶者が障害年金を受給するか、老齢年金を受給するまで支給されます。しかし、加算対象となるのは、障害年金を受給するに至った時点でいた配偶者と子供とされています。そのため、障害年金受給後に結婚しても、配偶者の加算は支給されませんし、妊娠して出産しても子供の加算が支給されないという状況でした。

法改正にいたる経緯
これにより子供が欲しいと意欲のある障害者の方が、子供をあきらめるという要因になっている指摘を受け、少子化対策の為にも法改正をしようという動きがありました。実は何年も前から国会には改正法案として提出されていたのですが、法案の重要度から後回しになり、毎回国会の会期末までに採決されないため廃案になっておりました。

新法について
 しかし、今回は4月13日に衆議院を全会一致で可決され、4月21日には参議院も全会一致で可決されました。これに伴い、来年の4月から、受給権発生以後に結婚された方や子供が生まれた方に加算支給されることになります。

現時点で加算対象でない配偶者や子供がおられる場合、来年の4月以降ご自身で申請に行く必要があります。従業員等身近で該当する方がおられましたらご案内ください。

(スマイルグループ 社会保険労務士)


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2010年5月 8日 土曜日

平成22年5月8日(第265号)...過労死と労災認定

長時間労働などの過重な業務に従事することにより、血管病変等が著しく増悪し、その結果、脳・心臓疾患が発症することがあります。この様な場合、過重な業務がその発症に当たって、有力な原因となったものとして、労災補償(労災認定)の対象となることがあります。また一方会社は、労働者の健康を配慮し過重労働対策を執る社会的責任を有し、万一労働者の健康が損なわれた場合、民事訴訟における損害賠償請求を提訴される可能性もあり注意が必要です。

労災の「対象疾病」
 脳血管疾患・・・・・脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
 虚血性心疾患等・・・心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤
上記疾病が「業務による明らかな過重負荷を受けたこと」により発症したこと
発症の有力な原因が仕事によることがはっきりしていることであって、医学的経験則に照らして、脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷を受けたことをいいます。

認定要件
1.発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと
異常な出来事に遭遇とは、(1)業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与し、著しい精神的負荷を受けた場合(2)事故の発生に伴って、救助活動や事故処理に携わり、著しい身体的負荷を受けた場合(3)屋外作業中、極めて暑熱な作業環境下で水分補給が著しく阻害される状態や特に温度差のある場所への頻回な出入りがある、ことなどが挙げられます。
2.発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと
評価期間は発症前おおむね1週間。特に過重な業務には、労働時間のほか、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交替制勤務・深夜勤務、作業環境(温度差・騒音・時差)、精神的緊張を伴う業務などの負荷要因が検討されます。
3.発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと
発症前1ヵ月間におおむね100時間又は発症前2ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています。
月間時間外労働が80時間を超えると労基署が労災認定をする事例が増えます。また、損害賠償請求でも長時間労働は精神障害を発症するリスクが高いとされています。会社はダラダラ残業・深夜残業等をいたずらに認めるのではなく、抑制することが必要です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年4月23日 金曜日

平成22年4月23日(第264号)...報酬に係る源泉所得税について

報酬・料金等の源泉徴収義務者
居住者に対し、国内において源泉徴収の対象となる報酬・料金等の支払をする者は、その報酬・料金等を支払う際に所得税を源泉徴収する必要があります。ただし、その報酬・料金等の支払者が個人であって、その個人が給与等の支払者でないとき又は給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに対する給与の支払者であるときは、ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はありません。またサラリーマンの方が報酬・料金等を支払われた場合、通常源泉徴収義務者になりません。
源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲
(1)報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲
原稿料や講演料など。
  ただし、懸賞応募作品の入選者などへの支払については、1人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
弁護士、公認会計士、司法書士など、特定の資格を持つ人に支払う報酬・料金
社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
(2)報酬・料金等の支払を受ける者が法人の場合の源泉徴収の対象となる範囲
馬主である法人に支払う競馬の賞金
(スマイルグループ 税理士)

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2010年4月 8日 木曜日

平成22年4月8日(第263号)...平成22年4月からの年金額について

平成22年1月29日、総務省から、平成21年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)の対前年比変動率はマイナス1.4%の旨の発表を受け、平成22年度の年金額は、物価水準が平成17年度の水準(法律でこれを下回らなければ引き下げない基準)と比較した場合、依然として0.3%上回っている状況にあることから平成21年度と同額、据置きとなりました(厚生労働省発表)。4年連続の据置きで老齢基礎年金満額は、792,100円。各月は、一人は66,008円、標準的な夫婦2人では232,592円となります。毎年、改定される年金額は複雑でわかりにくいしくみです。


物価スライド特例水準の年金額
現在支給されている年金額は、過去、物価が下がったときに、年金額を据え置いているので、本来よりも高い水準で支払われています。平成12~14年度の3年度は、前年に比べて物価が下落しましたが、社会的な影響を考えて、年金額が据え置かれました。この年金額を「物価スライド特例水準の年金額」と言います。これは、物価が上昇しても据え置きとなり、物価が直近の年金額改定の基となる物価水準(平成17年度の物価水準)よりも下落した場合にはその分だけ引き下げとなります。

本来水準の年金額
平成16年度の年金法改正で、年金額の計算方法が改正されました。物価や賃金の上昇や下落に応じて、増額、減額されるしくみです。基礎年金では「改定率」、厚生年金では「再評価率」を毎年改定することにより、年金額を決定します。
また、平成16年度の年金制度改正により「マクロ経済スライド」(物価や賃金水準の変動以外の社会的な要因、具体的には平均寿命の伸びや被保険者数の増減を反映して年金額を改定する)が導入されていますが、このマクロ経済スライドはまだ発動されていません。
今後、物価や賃金の上昇により、本来水準の年金額が物価スライド特例水準の年金額を上回れば、本来水準の年金額が支給されます。平成22年度においては、依然として特例水準の年金額が上回っており、その差は2.2%です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003zh7-img/2r98520000003zip.pdf
そして・・
「年金暮らしだから苦しくて・・・」とおっしゃっている高齢者の方々は、インフレが進んでもしばらくの間、年金額の増額には期待できません。一方で、保険料は毎年確実にアップしていきます。これを考慮した生活設計が必要になってきます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年3月 8日 月曜日

平成22年3月8日(第261号)...平成22年度税制改正大綱について

昨年12月に平成22年度の税制改正大綱が発表されましたが、相続税関係として以前から法改正を懸念する声がある小規模宅地等の課税の特例については、次の点について適用要件が厳格化されています。

1.相続人等が居住又は事業を継続しない宅地等についての軽減措置を廃止する
相続人が事業や居住を継続しない場合にも現行では200㎡まで50%減額の特例がありますが、事業用・居住用ともに、相続人が居住や事業を継続しない場合にはこの軽減措置は廃止するとされています。

2.一の宅地等について共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件を判定する
現行では、例えば、80%軽減の要件を満たす配偶者と満たさない子が一の宅地等を共同相続して共有した場合、居住をしない子にも80%軽減が適用されていますが、取得者ごとに適用要件を判定するとされています。

3.一棟の建物の敷地のうちに特定居住用宅地等とそれ以外の用途の宅地等がある場合には、用途ごとに按分計算する
宅地の上に存する一棟の建物のうちに、例えば、居住用と貸付用がある場合、現行では特定居住用宅地等があれば全体の敷地が80%減額となっていますが、これを用途ごとに按分して適用要件を判定するとされています。

4.特定居住用宅地等は、主として居住の用に供されていた一の宅地等に限ることを明確化する
特定居住用宅地等を「主として居住の用に供している土地等」には限定されないと解釈、つまり限度面積以下なら複数の土地等でも適用が可能という判決が平成21年2月4日に福岡高等裁判所において出されました。これを受け、「被相続人等が居住の用に供していた宅地等」が複数存在する場合には、「被相続人等が主として居住の用に供していた一の宅地等」が本特例の適用対象であることを明確化するとされています。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2010年2月23日 火曜日

平成22年2月23日(第260号)...改正育児・介護休業法の概要

改正育児・介護休業法(一部は平成21年9月30日から施行)が、平成22年6月30日から施行されます。改正規定を踏まえ、就業規則等の整備が急がれます。
1.3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化する。                               ※注意1,2
現行法では、3歳までの子を養育する労働者に対して(1)勤務時間の短縮(2)所定外労働の免除(3)フレックスタイム(4)始業・終業時刻の繰り上げ繰り下げ(5)託児施設の設置運営(6)(5)に準ずる便宜供与(7)育児休業に準ずる制度の(1)~(7)までのいずれかを講ずることが義務付けられていました。
施行後は3歳までの子を養育する労働者について事業主に対し(1)、(2)を義務化し(4)~(7)については小学校就学前の子を養育する労働者に対しての「努力義務」としました。  
2.子の看護休暇の拡充                         ※注意2
 小学校就学前の子が、一人であれば年5日(現行どおり)、2人以上であれば年10日取得できるようになります。
3..(1)父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2ヵ月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする(パパ、ママ育休プラス)。
(2)父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得可能とする。現行は、子が1歳未満の期間に労働者1人につき1回取得可能。
4.配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とする制度を廃止する。
現行法の規定では、配偶者が専業主婦(夫)の労働者の場合、労使協定に基づいて育児休業の対象外とすることが認められてきました。この規定が廃止されます。  
5.介護のために1日単位の休暇制度を設ける。            ※注意1,2
 労働者の申し出により、要介護状態にある家族の通院の付き添い等に対応するため、年5日までの休暇を取得できるようになります。(対象者が2人以上であれば年10日)
※注意1 常時労働者100人以下の場合、平成24年6月30日施行予定。
注意2 労使協定による除外規定あり
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年2月 8日 月曜日

平成22年2月8日(第259号)...ビジネスコーチング

1.人間関係によるストレス
企業の中での、ストレスでもっとも大きな原因の一つは、人間関係といえます。コミュニケーションがうまくとれない、話を聞いてもらえない、成果を評価してくれない、ほめてくれなくて、けなされてばかりいる、パワハラにあっている、というような人間関係によるストレスによって、ノイローゼになったり、就業不能になったりしています。

2.ビジネスコーチングの基礎
  リーダーシップの取り方によって、ずいぶんこうした人間関係のストレスは解消できます。その一つの方法として、ビジネスコーチングがあります。その基本は、部下を信じて、仕事や責任を任せてできれば評価し、ほめてやるということです。さらに、一定の結果が出るまで待ってやる、その間じっと見守り耐えることが大切です。大方のリーダーは、できないだろうなという部下に、仕事を与え、すぐ結果がでないと、やっぱりお前では無理かと仕事を取り上げ、自分でやってしまい、おまえはまだ能力不足だなとけなす。こんなことをしていたら人材は育ちませんね。これは、仕事を任せたのではなく、放任したということです。

3.教育と訓練
  さて、とは言え、まったく能力のない部下に、仕事ですから最初から信じて任せることはできません。少しずつ与えて完了を見届ける、完了したら、その次のランクの仕事を与えていき、できる仕事の質と量を増やしていく、したがって、それには必要な教育と訓練がスパイラル的に必要になります。教育・訓練の結果をしっかり判定し、その上で信じて任せてやる、こうして好循環を作り出すことができます。

4.あなたがボトルネック?
  あなたは、今、担当している仕事を部下に任せることができますか?あなたは、もっと付加価値の高い仕事が見えていますか?今の、自分の仕事にしがみつき、手放すことができない上司はリーダーの資格はないですよ。そう、そんなあなた自身が組織のボトルネックになっているのです。
(スマイルグループ 公認会計士)


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2010年1月23日 土曜日

平成22年1月23日(第258号)...健康診断の結果は大切に保管しておきましょう

事業者は、使用している労働者に対して、年1回以上健康診断を受けさせ、その記録を5年間保存しておかなければなりません。この健康診断の記録の保存が非常に重要な意味を持つことがあります。それはどういったことか、元厚生年金加入者で退職後、障害年金を受給することとなった二人のケースで見てみましょう。

<ケース1>聴力の衰えを健診で指摘された女性で、結婚退職する予定があったため、退職して2日後に受診を開始した。いよいよ補聴器が必要な状態になり、障害年金を申請しようとしたところ、病院に残っている初診日は退職後2日目であり、障害基礎年金しか申請できない。健診の記録があれば障害厚生年金と障害基礎年金の両方を受給できたのに、健康診断の記録がないために、年金額が100万円近く少なくなってしまった。

<ケース2>健康診断で尿から淡白が出ていることを指摘されるも受診せず、その後退職してずっと国民年金を支払ってこなかった。退職後15年近くたって全身の倦怠感により初めて受診すると、即入院となり透析を受けないといけなくなった。本来なら障害基礎年金のみの申請だが、そもそも国民年金保険料も15年近く未納であったために、申請する権利すらなかった。しかし、会社員だった頃の健診の記録が出てきたので、この時点で尿に淡白が出ているからすでに腎臓に異常があったと主張でき、障害厚生年金と障害基礎年金の両方(年額約150万円)が支給された。

※日本の障害年金制度は初診日主義という形をとっており、すべての基準が初診日となっています。障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金(障害共済年金)の2種類があり、初診日が国民年金の期間であれば、障害基礎年金しか受給できませんが、初診日が厚生年金に加入している期間にあると、(2級以上に該当すれば、)障害基礎年金と障害厚生年金の2種類が受給できるようになります。また、障害基礎年金では受給できない軽度の障害でも障害厚生年金のみ受給できるケースがあります。(障害等級3級)

初診日とは、基本的に医療機関に受診された初日ですが、健康診断で異常を指摘されたのであれば、健康診断を受けた日を初診日として取り扱うことが可能です。

(1)初診日に加入していた年金によってもらえる年金が異なる。
(2)初診日に前日の時点で、一定の保険料を納付している必要がある。
(3)初診日までに支払った保険料で年金額が決定される。(障害基礎年金を除く)

 このような影響がありますので、健診結果は大事に保管するようにしてください。                   
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2010年1月 8日 金曜日

平成22年1月8日(第257号)...平成22年度保険料等の変更点

平成22年度の医療・介護、年金、雇用、子育て・教育関係の保険料、給付が次の内容に新設・変更(検討中含む)予定となっています。
1.医療・介護
(1)健康保険料率(協会けんぽ)
 全国平均で標準報酬月額の8.2%から9.3%程度への引き上げ
(労使折半、4月納付分から)
(2)介護保険料率
標準報酬月額の1.19%から1.5%(労使折半、4月納付分から)
2.年  金
(1)国民年金保険料
 月額14,660円から月額15,100円(4月分から)
(2)厚生年金保険料率
 標準報酬月額の15.704%から16.058%(労使折半、10月納付分から)
3.雇用保険
(1)雇用保険料率(検討中)
 年収の0.8%から1.2%(労使折半)
(2)雇用保険の加入要件、適用拡大(検討中)
 非正規労働者の雇用見込み期間6ヵ月以上から31日以上
4.子育て・教育
(1)子ども手当
中学卒業までの子ども1人当たり月13,000円(6月から)、平成23年度から倍増予定
(所得税、住民税の15歳以下扶養控除の廃止、増税となるのは平成23年1月から)
(2)児童扶養手当
母子家庭と同様に父子家庭にも支給
(3)高校授業料の実質無償化
公立高校生の授業料(年約120,000円)は徴収しない
私立高校生は世帯の年収に応じ、年120,000円~240,000円を授業料から減額   ※高等専門学校、専修学校も対象
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2009年12月23日 水曜日

平成21年12月23日(第256号)...年金の課税関係について



個人が年金を受け取った場合や保険料や掛金を支払った場合には、その年金の種類に応じて税制上の取扱いが次のようになります。

1.公的年金等を受け取った場合(遺族が受け取る公的年金を除く。)
公的年金等とは、国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金や過去の勤務により会社などから支払われる年金等をいいます。
これらの公的年金を受け取った場合には、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算し、所得税が課税されます。(雑所得)

2.遺族が受け取る公的年金等を受け取った場合
遺族が受け取る公的年金等には、所得税や相続税がかかりません。
 
3.個人年金を受け取った場合
個人年金保険などの保険形式の年金契約で、保険料を支払っていた保険契約者が受け取る年金は、公的年金等以外の雑所得となり、所得税が課税されます。

保険形式の年金契約で、保険料を支払っていた保険契約者が受け取っていた年金を遺族が継続して受け取る場合にも、公的年金等以外の雑所得として、所得税が課税されます。

4.年金に係る掛金や保険料を支払った場合
年金に係る掛金や保険料を支払った場合には、次のような所得控除を受けることができます。
(1)社会保険料控除
国民年金、厚生年金保険の保険料で被保険者として負担するものや国民年金基金、厚生年金基金の加入員として負担する掛金
(2)小規模企業共済等掛金控除
確定拠出年金法の規定により国民年金基金連合会に拠出する個人型年金加入者掛金
(3)生命保険料控除
生命保険会社等と契約した個人年金保険契約などのうち一定に係る保険料

(スマイルグループ 税理士)


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2009年12月 8日 火曜日

平成21年12月8日(第255号)...官公需情報ポータルサイト



「官公需情報ポータルサイト」が平成21年10月1日に開設(運用開始)され、11月1日から、独自に検索システムを有している府省等への対応システムを含む本格運用が始まっています。

1.「官公需情報ポータルサイト」とは
 国や独立行政法人、地方公共団体などがインターネット上で提供している入札情報を、簡易に検索・閲覧できるサイトです。「物件・工事・役務」といった受注内容の別や、納品や工事場所などの「地域」別、「発注機関」別など、個別のニーズに応じて入札情報を検索することができます。利用料は無料です。
 「経済危機対策(平成21年4月10日)」及び「平成21年度国等の契約の方針(平成21年6月12日)」に基づき開設されました。

2.検索対象となる情報
 国(全府省)、独立行政法人等(192法人)、地方公共団体(都道府県、市町村)などがインターネット上で提供している入札情報が検索できます。

3.アドレス
官公需情報ポータルサイト  http://kankouju.jp/

4.詳細・問い合わせ先
(1)中小企業庁ホームページ  http://www.chusho.meti.
    go.jp/keiei/torihiki/2009/
090916GovInfoPortalSiteStartUP.htm
 (2)中小企業庁 事業環境部 取引課  
     電話 03-3501-1511(内線5291~7)
        03-3501-1669(直通)
 (3)平成20年度の地方公共団体における官公需の契約実績や中小企業の受注機会増
大のための取り組み事例も紹介されています。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/
torihiki/2009/091002LocalGovernmentKankouju.htm

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2009年11月23日 月曜日

平成21年11月23日(第254号)...労働基準法の改正



 先のスマイル新聞第236号(H21年2月)でもご案内しましたが、改正労働基準法が平成22年4月1日から施行されます。長時間にわたり労働する労働者の割合が高く水準で推移していること等に対応し、労働時間以外の生活のための時間を確保しながら働くこと(ライフワークバランス)が出来るようにするためです。ご準備は進んでいますか?改めて、改定の概要をご説明します。

1.時間外労働の割増賃金率の引き上げ(大企業のみ)
1ヵ月に60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が現行の25%から50%に引き上げられます。ただし、中小企業については、施行から3年経過後に改めて検討することとされていますので、3年間は25%を保つことができます。
事業場で労使協定を締結すれば、1ヵ月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、改正法による引き上げ分(25%)の割増賃金の支払いに代えて有給の休暇を付与することができます。
2.割増賃金引き上げなどの努力義務が労使に課されます(すべての企業)
 時間外労働が月に45時間を超える事業所様は、あらかじめ労使で特別条項付きの時間外労働協定を締結する必要があります。新たに、次の項目が追加されます。
(1)特別条項付きの時間外労働協定では、月45時間を超える時間外労働に対する
   割増賃金率も定めること
(2)(1)の率は法定割増賃金率を超える率とするように努めること
(3)月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること
が必要となります。
    (限度基準告示は改正法の施行までに改正されます。)
※平成22年4月1日までに新しい労使協定を締結して届ければ、この改正は適用さ
 れません。
3.年次有給休暇を時間単位で取得できるようになります(すべての企業)
 事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で休暇をとること
 ができるようになります。パートタイム労働者にも適用されます。
 年次有給休暇を日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択す
 ることができます。
 1日分の休暇が何時間分にあたるかは、改正法の施行までに厚生労働省令で定められます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)


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2009年11月 8日 日曜日

平成21年11月8日(第253号)...住宅ローンの返済が困難になったら



昨今の不景気により、失業したり、収入が減って住宅ローンの返済が困難になっている方が増えているようです。住宅ローンの返済ができなくなると、金融機関は担保となっている住宅を強制的に売却し、その売却代金を住宅ローンの弁済として充当します。これを抵当権を実行するといいます。このような状態に陥ると、もちろんその住宅に住めなくなり、事態は最悪です。そうならないために、金融機関には相談窓口を設けているところもあり、返済条件を変更できる場合があります。例えば「フラット35」を取り扱う住宅金融支援機構の場合は次のようになっています。

1.生活状況の変化に対応する返済方法変更のメニュー
(1)会社の業績が悪化し、収入が減った場合
返済期間の延長で月々の負担を軽減できます。
(2)賞与の支給額が減り、賞与払い分の支払いが厳しい場合
賞与払いの返済額を減額又は取り止め、月々の返済額を増やすことにより対応します。
(3)子供の進学等で一時的に月々の支出が増え、今の返済額では厳しい場合
一定期間毎月の返済額を減額できます。

2.返済期間の延長などにより、返済額を減額する場合
収入基準の条件はありますが、返済期間は最長15年まで延長可能となります。さらに失業中の方、または収入が20%以上減少した方は、返済期間の延長に加えて、元金の支払いを一時休止し、利息のみの支払い期間を設定することも可能です。

3.一定期間、返済額を減額する場合
子供の進学による教育費、入院による医療費など一定期間支出の増加が見込まれる場合、一定期間内において、返済額を減らすことができます。ただし、減額期間が終了した後の返済額は元の返済額と比較して増加し、総返済額も増加することになります。返済期間を延長する場合も、その分の利息が増え、総返済額は増加します。そのため、返済方法の変更は本当に必要かどうかを良く考える必要があります。

また、延滞が一度でも起こると契約違反となり、返済方法の変更自体ができなくなる場合がありますので、早めに金融機関に相談に出向くことをお勧めします。
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2009年10月 8日 木曜日

平成21年10月8日(第251号)...公的年金受給者の住民税特別徴収制度の開始



地方税法の改正により、今月の10月から個人住民税(市税・府県税)の公的年金からの特別徴収制度が始まります。
 現在、公的年金を受給されており、個人住民税の納税義務のある方は、年4回、普通徴収されていますが、今回の制度導入により、老齢基礎年金等から引き落とし(特別徴収)されることとなります。

1.対象
 この制度の対象となるのは、「平成21年4月1日現在65歳以上の公的年金受給者のうち、前年中の年金所得に係る個人住民税の納税義務のある方」です。「介護保険料の特別徴収の対象とならない方」「当該年度の特別徴収税額が老齢基礎年金等の額を超える方」等は特別徴収(引き落とし)の対象とはなりません。
 対象となる方には、平成21年度市民税・府県民税通知書により、引き落としされる税額が知らされています。

2.特別徴収の開始は平成21年10月支給分から
 平成21年度の引き落としは10月支給分から開始されます。そのため、年度前半の6月と8月は、普通徴収の方法で納付していただくことになります。
 
3.新たな税負担が生じるものではありません
 この制度は、年金所得に係る個人住民税の納税義務者(公的年金受給者)が支払うべき個人住民税を、社会保険庁等の「年金保険者」が市区町村に直接納めるように納税方法を変更するものであり、この制度により新たな税負担が生じるものではありません。
 なお、年金所得以外の所得に係る個人住民税は従来どおり普通徴収又は給与からの引き落としです。給与所得と年金所得の両方を有する人が、給与所得に係る個人住民税を給与からの引き落としの方法で納付する場合でも、年金所得に係る個人住民税は公的年金からの引き落としとなります。(事業所での給与計算の実務上の変更はありません。)

 詳しくは、お住まいの市区町村の市民税課(課税課)にお問合せください。


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2009年9月23日 水曜日

平成21年9月23日(第250号)...健康保険の改正について



1. 平成21年9月からの変更項目
昨年の10月から政府管掌健康保険は全国健康保険協会が運営していくことになり、各都道府県に支部を置き、その地域の実情に応じたサービスが展開されることとなりました。それに伴い、平成21年9月までに都道府県毎の保険料を決定すると健康保険法が改正され、今まで全国一律(8.2%)であった保険料が、この9月より地域によって変更されています。これに伴いお給料からの控除額が変わりますので注意ください。
9月分の保険料を当月のお給料から控除するのか、翌月のお給料から控除するのかで変更する時期が変わりますが、それは御社のルールを確認し、変更をお願いします。原則は翌月控除です。
次に近畿各県の保険料をお伝えします。

 滋賀県 8.18%   京都府 8.19%   大阪府 8.22%
 兵庫県 8.20%   奈良県 8.21%   和歌山 8.21%

2. 平成21年10月からの変更項目
この10月より、緊急少子化対策として出産育児一時金が4万円増額され、42万円になります。今までは出産育児一時金として35万円に産科医療補償責任保険料として3万円の合計38万円が支給されていました。それがこの10月から平成23年3月までの暫定措置として42万円の支給となります。ただし、子育て支援を、より前面に出している民主党が政権を取りましたので、期間が延長されるなり、給付額が増えるなどの措置が取られるかもしれません。

※産科医療補償責任保険制度とは、出産時の事故により重度の脳性まひになったケースに
支払われる保険料です。支給対象となる赤ちゃんは、妊娠33週以降に体重2,000g以上で誕生して脳性まひになった子とされています。従いまして、次のケースは補償の対象となりません。
(1)色体異常などの先天的な要因
(2)妊娠33週未満や体重2000g未満で誕生した子
(3)産科医療補償責任保険に加入していない施設で出産した子
(しかし、病院、診療所、助産院で加入していない施設は皆無です。)
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2009年9月 8日 火曜日

平成21年9月8日(第249号)...会社都合の休業と賃金請求権



最近の雇用環境状況下で、会社都合の休業に基づき「休業手当」の支払いが発生しているところが散見されます。労使間のトラブル回避のためにも、ここで通達・判例を紹介しながら問題点を解説いたします。

【労働基準法第26条(休業手当)】
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当
該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
【民法第536条(債務者の危険負担)】
(1)前2条(第534条、第535条)に規定する場合を除き、当事者双方の責めに
帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、
債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
 (2)債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき
は、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務
を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

1.労働基準法第26条、民法第536条、使用者の「責めに帰すべき事由」の関係
労基法第26条の「使用者の責に帰すべき事由(帰責事由)」とは、天災事変などの不可抗力に該当しない限り、帰責事由はあると解されています。したがって、雇用調整のための一時帰休や原材料の欠乏、流通機構の不円滑による資材入手難で休業した場合など、労基法第26条「休業手当」の支払いが必要となります。
ここで問題になるのは民法第536条第2項「債務者の危険負担」の規定により100%の保障をする必要があるのではないかということです。
 通説的見解では、両条文の「使用者の責に帰すべき事由(帰責事由)」の範囲が違うことがあげられています(『民法の場合』=「故意・過失または信義則上これと同視すべき事由」とあり、『労基法の場合』=「民法より広い概念で、不可抗力以外の経営障害事由を含める」とあります)。
 例えば、親会社の経営難から下請工場が資材資金を獲得できず休業した場合は、不可抗力とはいえず労基法の「休業手当」の支払い要件に該当しますが、資材資金の獲得ができず休業した理由が使用者側の原因に基づかない場合、民法の「危険負担」の要件である債権者の責めに帰すべき事由には該当しないといえます。

ここで注意すべきことは、不況を理由とした生産調整のための休業の多くは民法第536条第2項の債権者(使用者)の責めに帰すべき事由に該当する休業であると考えられることです。

通達(昭22.12.15 基発第502号)では、労基法第26条の休業手当は、民法の一般原則が労働者の最低生活保障について不十分である事実に鑑み、強行法規で平均賃金の100分の60まで保障せんとする趣旨の規定であって、民法第536条第2項の規定を排除するものでないとあります。


また判決のなかには、使用者の民事上の支払義務を減額する趣旨でないため、一時帰休の際の賃金保障につき、民法第536条第2項に基づき100%の賃金支払いを認めている事件(池貝事件、横浜地裁判決 平12.12.14 労判第802号)もあります。労働者側は、休業手当が支給されている場合、賃金全額との差額を請求できることになります。

回避する手段としては、民法第536条は任意規定と理解されているため、個別の特約(当事者間の合意)がある場合は、強行法規である休業手当分の保障で可能です。よって、休業手当のルールを、就業規則にあらかじめ定めていた場合だけでは弱く、労働協約、労働契約等で労基法に反しない形で定める必要があります。

2.一時帰休中、アルバイトで得た賃金控除
前述の通り、一時帰休を命じた場合、使用者の責に帰すべき事由に基づき「休業手当(平均賃金の100分の60以上)」の支払いが必要となります。

労働者が、休業手当の支給を受けながらこの一時帰休中にアルバイトをし、別途収入を得た場合は、賃金の二重取りとなります。このような場合は、既に協定等において、一時帰休期間中に他で働いて得た収入の取扱いについて、取り決めがあればそれによることになります。
協定等に特段の取り決めがない場合、民法第536条第2項後段の「自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない」となります。

この取り扱いについては、解雇事案ですが、駐留軍山田部隊事件(昭37.7.20最高裁第二小法廷判決)の判決のなかで、「労働者は労働日の全時間を通じ使用者に対する勤務に服すべき義務を負うものであるから、使用者の責に帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た時は、右の利益が副業的なものであって解雇がなくても当然取得できるなど特段の事情のない限り、民法第536条第2項但書に基づき、これを使用者に償還すべきものとするのを相当とする」としています。と同時に、その控除限度額は、「労基法第26条の趣旨に照らし、その減額は100分の40までを限度とする」とあります。

3.結論
(1)会社の一時帰休期間中に支払う休業手当が平均賃金の100分の60である場合、
控除することはできません。
(2)支払う休業手当が平均賃金の100分の60を超える場合、超えた額を控除するこ
とが可能です。その場合の限度は、100分の100支払っていた場合、100分の
40となります。

民法第536条第2項と違い労基法第26条は、休業手当(平均賃金の100分の60)の減額を認めていません。よって、(100分の60については)控除することは許されません。
                       (スマイルグループ 社会保険労務士)          


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2009年8月23日 日曜日

平成21年8月23日(第248号)...外国為替証拠金取引(FX取引)の課税について




外国為替証拠金取引(FX取引)で生じた利益については、雑所得となり所得税が課税されます。(以下、一般の個人を対象とした取扱いについてです。)

平成21年7月21日に、大阪証券取引所に外国為替証拠金取引市場(FX市場)が
開設され、東京金融取引所に続いて国内2ヵ所目のFX市場ができました。

以下に、FX取引の課税関係を説明します。

1.申告分離課税
FX取引を取引所※を通じて行ったものである場合には、その生じた利益には雑所得が分離課税で課税されます。(所得税15%、地方税5%)
※東京金融取引所・・・『くりっく365』
 大阪証券取引所・・・『大証FX』

 また、損失が生じた場合は、他の取引所の上場先物取引の利益と損益通算が可能で、なお損失が控除できない場合は、翌年以降3年間にわたって、『くりっく365』や『大証FX』、他の取引所上場先物取引で発生した利益から控除することが出来ます。


2.総合課税
 仲介業者による店頭取引(店頭FX)の場合は、給与所得などの他の所得と合算した総合課税となり、最大50%の税率(所得税40%、住民税10%)がかかる累進課税が適用されます。

 また、損失が生じた場合は、他の総合課税の雑所得の利益とは雑所得の区分の中で通算は可能ですが、他の給与所得などとの損益通算や他の取引所の上場先物取引との損益通算は不可となり、3年間の繰越控除もありません。

現行の税制上、一般的に所得が一定の額を超える投資家にとっては、『くりっく365』や『大証FX』などの取引所を通じた取引の方が有利と言えます。
                           (スマイルグループ 税理士)

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2009年8月 8日 土曜日

平成21年8月8日(第247号)...遅延利息権限法・年金遅延加算金法が成立




 現在の厳しい経済情勢の中、景気悪化で資金繰りに苦しむ中小企業からの「保険料滞納時の利息が高すぎる」との訴えに配慮したかたちで、平成22年1月1日から「遅延利息軽減法」が施行される予定です。あわせて、社会保険庁による年金記録漏れで、年金が未払いになっていた人に対し、過去5年を超える未払い期間を対象に、物価上昇分を上乗せして支給する「年金遅延加算金法」も、来春システムが整い次第施行されます。
1.「遅延利息軽減法」
<概要> 事業主が厚生年金・健康保険料、労働保険料を滞納したとき、現行年14.6%の遅延利息を、納期限または納付期限の翌日から3ヵ月(労働保険は2ヵ月)までの間に限っては年7.3%とする軽減措置がとられます。
<対象となる保険料>
(1)厚生年金保険料並びに厚生年金基金の掛金 (2)児童手当法の規定による拠出金 (3)国民年金保険料及び国民年金基金の掛金 (4)健康保険の保険料
(5)労働保険料            (6)労災保険法に規定する特別保険料
(7)石綿救済法に規定する一般拠出金  (8)その他9つの法律による保険料・掛金

2.「年金遅延加算金法」
<概要> 社会保険庁のミスにより、年金が長期にわたり未払いになった場合(年金の時効(5年)より遡って未払い金のある人が対象)、物価の上昇分を考慮した「遅延特別加算金」を上乗せして支給することとされました。すべての加算金は、非課税です。
<遅延特別加算金の支給>
 社会保険庁は、厚生年金保険・国民年金保険の受給権者または受給権者であった者(未支給年金の支給の請求権を有する者を含む)について、この法律の施行後に当該受給権に係る裁定が行われた場合において、その裁定による当該年金記録の訂正に係る受給権に基づき支払うものとされる年金給付の5年の時効を経過した分全額を基礎として、受給権を取得した日に適正な年金記録に基づいて裁定が行われたならば支払われることとされた日から当該年金給付等を支払うこととする日までの間の物価の状況を勘案して政令で定めるところにより算定した額を、当該年金給付等を支払うこととされる者に対し支給することとなります。
 また、この法律の施行日前に裁定が行われた者については、当該者の請求により行われるので注意が必要です。            (スマイルグループ 社会保険労務士) 


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2009年8月 1日 土曜日

平成21年8月1日(臨 時 号②)...雇用調整にまつわる支出の税務処理②



前回に引続き雇用調整に伴って支出した各種費用の税務処理について検討します。

1.解雇に伴う解雇予告手当の支払い
  解雇予告手当について、税務上は、「労働基準法第20条の規定により、使用者が予告をしないで解雇する場合に支払う予告手当は、退職手当等に該当する」こととされており、退職所得として源泉徴収の対象となります。

2.解雇処分等に係る紛争解決一時金の支出
  解雇無効の争いや過去の未払賃金の請求などに伴い、紛争解決金等の名目で金銭を支払った場合は、従業員であった者が受け取った金銭は実態により判断されます。
(1)過去の未払賃金分がある時や時間外労働手当を遡及して受給する場合は、それぞれの支給日の属する年分の給与所得として課税対象となります。
(2)紛争解決金の中に、その支払いが遅れたことに対する遅延損害金相当する部分がある場合には、その部分は雑所得として課税対象となります。
(3)不当解雇等に伴う精神的苦痛に対する慰謝料は、損害賠償金として非課税になります。

3.希望退職(勧奨退職)での優遇措置の扱い
  希望退職の募集や退職勧奨に当たって、優遇措置として退職金の加算や再就職(転職)支援を設けることが多いでしょう。退職金の加算額も含めて、企業側では全額を損金の額に算入します。従業員側は、全額を退職所得として所得税の課税対象となります。
  また、再就職(転職)支援のため人材紹介会社等への支出についても、全額を損金算入することになります。

4.休業手当の支給と雇用調整助成金の受給
  会社都合により休業手当を支払う場合は、給与として扱います。休業に伴い中小企業緊急雇用安定助成金を受けると益金の額に算入され法人税等の課税対象になります。
  勘定科目は雑収入として処理をします。助成金の収益計上は、原則として支給決定通知を受けた時点としてください。国または地方公共団体等から受け取る助成金等は、消費税の課税対象ではありません。


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2009年8月 1日 土曜日

平成21年8月1日(臨 時 号①)...雇用調整にまつわる支出の税務処理①



雇用調整の動きが非正規労働者だけでなく正規労働者にも広がり、企業と従業員等とのトラブルも増えています。雇用調整に伴って支出した各種費用の税務処理について2回に渡って検討します。

1.雇用調整にまつわる費用処理の原則
 雇用調整にまつわる費用について、企業側では、通常、全額が損金算入されます。
一方、従業員が何らかの金銭を受領した場合には、労働の対価としてであれば給与所得、退職によって受けるものであれば退職所得として、課税対象となり源泉徴収の対象となります。「損害賠償金で、心身に加えられた損害に基因して取得するもの」であれば、所得税は非課税となります。

2.内定取消しに伴う一時金(迷惑料)の支払い
  一般的には、「高校や大学の卒業予定者と企業との間に、就労の始期を卒業後としてい
 る場合には、解約権を留保した労働契約が成立したもの」と解され、採用内定を取り消しした企業が、慰謝料(迷惑料)として金銭を支払うと損金額に算入されます。受け取った側は、前項と同じく損害賠償金として、所得税は非課税となります。

3.「派遣切り」による損害賠償金の支払い
  派遣契約期間中の解除を行う場合、派遣先は派遣元に対する損害賠償金の支払いの問題が生じる可能性があります。厚生労働省は、労働者派遣法に基づく「派遣先が講ずるべき措置に関する指針」(平成21年3月31日改正指針公布)において、
・派遣先の責に帰すべき事由により中途解約する場合は、休業等により生じた派遣元の損害賠償をしなければいけないこと
・派遣契約に損害賠償に関する事項を定めることを求めています。
派遣元と派遣先との力関係や、その後の業務への影響を考慮して、実際に損害賠償金が支払われることは少ないかもしれません。法人税法上の損金性は問題ありませんが、消費税では一般的に対価性がないので、課税仕入には該当しません。



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2009年8月 1日 土曜日

平成21年8月1日(臨 時 号②)...雇用調整にまつわる支出の税務処理②

前回に引続き雇用調整に伴って支出した各種費用の税務処理について検討します。

1.解雇に伴う解雇予告手当の支払い
  解雇予告手当について、税務上は、「労働基準法第20条の規定により、使用者が予告をしないで解雇する場合に支払う予告手当は、退職手当等に該当する」こととされており、退職所得として源泉徴収の対象となります。

2.解雇処分等に係る紛争解決一時金の支出
  解雇無効の争いや過去の未払賃金の請求などに伴い、紛争解決金等の名目で金銭を支払った場合は、従業員であった者が受け取った金銭は実態により判断されます。
(1)過去の未払賃金分がある時や時間外労働手当を遡及して受給する場合は、それぞれの支給日の属する年分の給与所得として課税対象となります。
(2)紛争解決金の中に、その支払いが遅れたことに対する遅延損害金相当する部分がある場合には、その部分は雑所得として課税対象となります。
(3)不当解雇等に伴う精神的苦痛に対する慰謝料は、損害賠償金として非課税になります。

3.希望退職(勧奨退職)での優遇措置の扱い
  希望退職の募集や退職勧奨に当たって、優遇措置として退職金の加算や再就職(転職)支援を設けることが多いでしょう。退職金の加算額も含めて、企業側では全額を損金の額に算入します。従業員側は、全額を退職所得として所得税の課税対象となります。
  また、再就職(転職)支援のため人材紹介会社等への支出についても、全額を損金算入することになります。

4.休業手当の支給と雇用調整助成金の受給
  会社都合により休業手当を支払う場合は、給与として扱います。休業に伴い中小企業緊急雇用安定助成金を受けると益金の額に算入され法人税等の課税対象になります。
  勘定科目は雑収入として処理をします。助成金の収益計上は、原則として支給決定通知を受けた時点としてください。国または地方公共団体等から受け取る助成金等は、消費税の課税対象ではありません。

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2009年8月 1日 土曜日

平成21年8月1日(臨 時 号①)...雇用調整にまつわる支出の税務処理①



雇用調整の動きが非正規労働者だけでなく正規労働者にも広がり、企業と従業員等とのトラブルも増えています。雇用調整に伴って支出した各種費用の税務処理について2回に渡って検討します。

1.雇用調整にまつわる費用処理の原則
 雇用調整にまつわる費用について、企業側では、通常、全額が損金算入されます。
一方、従業員が何らかの金銭を受領した場合には、労働の対価としてであれば給与所得、退職によって受けるものであれば退職所得として、課税対象となり源泉徴収の対象となります。「損害賠償金で、心身に加えられた損害に基因して取得するもの」であれば、所得税は非課税となります。

2.内定取消しに伴う一時金(迷惑料)の支払い
  一般的には、「高校や大学の卒業予定者と企業との間に、就労の始期を卒業後としてい
 る場合には、解約権を留保した労働契約が成立したもの」と解され、採用内定を取り消しした企業が、慰謝料(迷惑料)として金銭を支払うと損金額に算入されます。受け取った側は、前項と同じく損害賠償金として、所得税は非課税となります。

3.「派遣切り」による損害賠償金の支払い
  派遣契約期間中の解除を行う場合、派遣先は派遣元に対する損害賠償金の支払いの問題が生じる可能性があります。厚生労働省は、労働者派遣法に基づく「派遣先が講ずるべき措置に関する指針」(平成21年3月31日改正指針公布)において、
・派遣先の責に帰すべき事由により中途解約する場合は、休業等により生じた派遣元の損害賠償をしなければいけないこと
・派遣契約に損害賠償に関する事項を定めることを求めています。
派遣元と派遣先との力関係や、その後の業務への影響を考慮して、実際に損害賠償金が支払われることは少ないかもしれません。法人税法上の損金性は問題ありませんが、消費税では一般的に対価性がないので、課税仕入には該当しません。


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2009年7月23日 木曜日

平成21年7月23日(第246号)...熱中症の予防



 夏も盛りになりました。夏には、毎年熱中症が新聞種になっています。職場で熱中症患者を出さないように、予防対策を進めましょう。

1.職場における熱中症の発生状況
 平成20年には17名の労働者が熱中症で死亡しています。4日以上の休業者は300名以上になっています。平成18年~20年の3年間の実績では、仕事を始めてから発症・死亡までの期間はその仕事の初日と2日目で50%を超えています。また、月別では7、8月で全体の80%以上を占めています。業種別では建設業38%、製造業19%、運輸交通業10%、商業6%など、発生場所別では屋外60%、屋内34%などとなっています。
2.WBGT値(暑さ指数)の活用
 WBGT値とは暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数で、専用の測定器があり、計器のレンタルもできます。簡単に言えば気温と湿度を考慮に入れた体感温度とでもいうものです。例えば気温28℃で湿度90%のときWBGT値は30度、気温30℃で湿度65%のときWBGT値は28度、気温32℃で湿度70%のときWBGT値は31度などとなっています。WBGT値25~28度は「警戒」、28~31度は「厳重警戒」31度以上は「危険」とされています。
3.作業管理
(1)作業時間の短縮
   作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿環境での連続作業時間を減らす。
(2)熱への順化
   作業者には計画的に高温環境への順化期間を設けることが望ましい。高温作業を
   中断すると、中断4日目から順化の喪失が始まります。
(3)水分及び塩分の摂取
   自覚症状の有無に関わらず、作業前後及び作業中の定期的な水分、塩分の摂取を
   指導してください。摂取確認のための表を作成し、作業中の巡視による確認など
   により、摂取を徹底するようにしてください。特に高年齢者はのどの渇きに鈍感
   になるとされていますので注意が必要です。
(4)服装
   熱を吸収したり保熱しやすい服装を避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用さ
   せてください。直射日光下では通気性の良い帽子等を着用させてください。
4.健康管理
 糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患など、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある病気の治療中の労働者には、産業医や主治医の意見を聴いて就業場所の変更、作業の転換などの適切な措置を講じてください。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2009年7月 8日 水曜日

平成21年7月8日(第245号)...「長期優良住宅法」について -200年住宅―

 6月4日に「長期優良住宅法」が施行されました。正式には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」といいます。「長期優良住宅法」は簡単に言うと、長持ちする住宅を広めようとする法律です。「長期優良住宅」に認定されると、住宅ローンを借入れする場合や税制面でいくつかのメリットがあります。 
(1)住宅ローン面では返済期間最長50年の「フラット50」が利用できるようになります。また、「フラット35S」の金利優遇期間は当初10年間から20年間に延長されます。
 (2)税制面では「住宅ローン減税」による控除額が一般住宅と比較して大きくなります。また、住宅ローンを借入れしない場合でも、所得税額から控除される制度もあります。登録免許税や不動産取得税、固定資産税に関しても一般住宅より税額が低く設定されています。

「長期優良住宅」は着工前に都道府県や市区町村に申請し、認定を受ける必要があります。認定基準は次の通りです。(※国土交通省ホームページから)
(1)劣化対策:数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること(少なくとも100年程度)
(2)耐震性:極めて稀に発生する地震に対し、損傷のレベルの低減を図ること
(3)維持管理・更新の容易性:耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行えること
(4)可変性:居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能なこと
(5)バリアフリー性:将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要な
スペースが確保されていること
(6)省エネルギー性:必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること
(7)居住環境:良好な景観の形成や地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること
(8)住戸面積:良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること
(9)維持保全計画:建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること(少なくとも10年ごとに点検を実施)

但し、上記の認定基準をクリアするためには、建築コストのアップは避けられません。「長期優良住宅」はマンションよりも一戸建ての方が馴染みやすい制度かもしれません。
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2009年6月23日 火曜日

平成21年6月23日(第244号)...「パワーハラスメント」労災認定の判断基準に



権利や地位を利用した嫌がらせ(主に職場の上司によるもの)、「パワーハラスメント(パワハラ)」に関する相談が、全国の労働局にある総合労働相談コーナーに相次いで寄せられています。平成20年度の件数は32,242件で、その前年度より3,907件増、6年前の5倍に上りました。
専門家は、パワハラ相談の急増について「人員削減や職場のIT化で社員同士のかかわりが減ったことも背景にある」と分析しています。
(読売新聞 平成21年6月9日夕刊)

1.相談事例
 厚生労働省によると、パワハラの相談事例としては「上司から強く叱責され、殴られそうになった」「仕事のトラブルをすべて自分のせいにされた」「人格を否定するような言葉を言われた」などが多いということです。
 実際の事例を少しご紹介します。
 (1)お客様からクレームがあった時に上司から強く叱責されたことを会社に報告すると、逆にこの上司から殴られそうになった。
 (2)「仕事が向いていないから辞めろ」と言われたり、他の社員の前で体重の測定を強要されたりした。
 (3)上司と2人で得意先を回っているのに、仕事上のトラブルをすべて自分の責任とされ、会社に報告された。
 (4)業務について叱責する時に、「体臭がする」など人格を否定するような発言を受け続けた。

2.今年度から、「パワハラ」労災判断基準に
 厚生労働省は、4月、パワハラによってうつ病などになった場合に労災認定を受けられやすくするよう判断基準を見直し、パワハラを含む「ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」という項目を新設しました。従来は「上司とトラブルがあった」という項目しかなく、労災が認められるのはまれでした。
 今回の基準見直しを受けたパワハラによる労災認定のケースは、まだ、厚生労働省に報告されていません。しかし、今後、申請の増加が予想されています。
 一方、「パワハラは仕事の延長線上で問題となることが多く、労災か否かの線引きは困難」という指摘もあります。

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2009年6月 8日 月曜日

平成21年6月8日(第243号)...経済危機対策における税制上の措置



この経済危機に対応して次のような税制上の措置が取られることになりました。

1.中小企業の交際費課税の軽減
 従来、交際費等の損金不算入限度額の定額控除は、資本金1億円以下の法人では400万円でしたが、600万円に引き上げられることになりました。
平成21年4月1日以後に終了する事業年度から適用することができます。

2.研究開発税制の拡充
 平成21年、22年度において税額控除ができる限度額が、当期の法人税額の20%から「30%」に引き上げられました。また、税額控除限度額を超過した額の繰越期間が、1年から最長「3年」(平成24年まで)に延長されます。
なお、この結果、平成21年、22年において発生した税額控除で当年度で控除できなかった税額がある場合は、平成23年、24年にその控除超過額を繰り越して控除することができる措置ができました。

3.住宅取得のための贈与税の軽減
 平成22年までの時限措置ですが、直系尊属から居住用家屋の取得に充てるために金銭の贈与を受けた場合に、500万円まで贈与税が課せられないことになりました。
平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に受ける贈与に適用されます。
 この特例は、暦年課税(110万円)または相続時精算課税(住宅の場合:3,500万円)の従来の非課税枠と併用できます。

4.環境対応車(エコカー)への買い換え等普及促進(平成21年4月10日に遡及適用)

5.グリーン家電(テレビ・エアコン・冷蔵庫)の普及加速(「エコポイント」の活用等)
省エネ家電製品を購入した際、価格の5%相当を「エコポイント」として消費者に還元する制度です。


詳しくは、専門家にお問い合わせください。
(スマイルグループ 公認会計士)

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2009年5月23日 土曜日

平成21年5月23日(第242号)...無断欠勤による懲戒解雇の注意点



Q)ある日突然出社しなくなり、その後行方不明で1ヵ月以上連絡がとれない従業員がいます。就業規則には「無断欠勤が14日以上に及んだ場合には懲戒解雇する」と定めていますが、注意すべき点はありますか?

1.懲戒解雇の意思表示は、あくまで本人に対して行う必要があります
当該従業員を懲戒解雇とすることは、就業規則の定めにもあり、可能と思われます。(不慮の事故や事件に巻き込まれた場合などの特殊なケースは除きます。)
次に従業員本人に解雇の意思表示を行うわけですが、本人と連絡がとれないことを理由として、家族等に解雇の意思表示を行ったとしても有効とは認められません。
この場合の意思表示としては、民法第97条の2の規定による「公示送達」の方法があります。

2.「公示送達」は手続きが面倒~公示送達の方法~
 (1)本人の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てを行い、裁判所の掲示場に掲示します。
 (2)この掲示について官報および新聞に少なくとも1回掲載します。
 (3)この意思表示が本人に到達したとみなされるのは、最後に官報および新聞の掲載があった日から2週間を経過したときとされます。
 (4)よって、実際に解雇が成立するのは、最後に官報および新聞の掲載があった日から2週間を経過し、意思表示が本人に到達したとみなされた日からさらに30日が経過した日ということになります。(解雇予告手当を支払う場合は除きます。)

3.「就業規則の退職事由への追加」で、このケースのような場合に備えましょう
実務上、私生活での金銭トラブル等の個人的理由で正式な退職手続を行わないまま出社しなくなるなど、このケースのような従業員は少なからず存在します。
よって、従業員が行方不明となったとき、会社として解雇の意思表示をしなくてもいいように、就業規則で別途定めておくことが賢明です。
具体的には、就業規則におきまして、懲戒解雇とせず、自然退職という定めにしておきましょう。「14日間無断欠勤を続けた場合は、その最終の日をもって自然退職したものとする。」等を追加しておけば、会社からの解雇の意思表示や本人の意思表示がなくても退職が有効に成立すると考えられます。
なお、雇用保険の喪失手続きにおいては「自己都合退職」として処理をしてもらえます。社会保険についても「健康保険被保険者証添付不能届」を資格喪失届に添付し、被保険者証を回収できない旨を記入して手続きをすることになります。
また、退職金規定には、「無断欠勤で自然退職になったものには退職金は支給しない」と定めておくこともおすすめします。こうすることで、懲戒解雇とおなじような効力を発生させる事ができます。

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2009年5月 8日 金曜日

平成21年5月8日(第241号)...平成21年度社会保障制度のポイント

1.医療
(1)全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率が変更されます
≪現在全国一律8.2%(労使折半。介護保険料1.19%は含みません。)≫
○公的な医療保険制度である「協会けんぽ」が9月分(徴収は原則翌月控除のため10月)から都道府県別の保険料率を導入します。
○近畿各府県の保険料率は次の通りになります。
  京都 8.19%、大阪 8.22%、兵庫 8.20%、
滋賀 8.18%、奈良 8.21%、和歌山 8.21%
○今後は、地域ごとの運営努力が保険料率に反映され、健康づくりなどに力を入れて医療費を抑制すれば、その都道府県の料率は低くなります。
(2)「出産育児一時金」が増額されます
○現在の「出産育児一時金」は原則38万円ですが、10月からは4万円アップし42万円となります(緊急少子化対策として2年間の暫定措置)。尚、10月以降は各保険制度から病院に直接一時金が支払われる方式になる予定です(今は加入者が病院に出産費を支払い、手続後、各保険制度から加入者に一時金が支払われます)。出産費用が42万円を超える場合、差額分だけ病院に払えば済みます。
2.年金
(1)「ねんきん定期便」が発送されます
  ○社会保険庁は今年4月から毎年、厚生年金・国民年金のすべての現役加入者に対し誕生日月に定期便の発送を開始します。今年度分は、厚生年金加入者の場合、勤務していた会社名やその期間、保険料額や将来の年金額を計算する際の基礎となる月給(標準報酬月額)、ボーナス額が記載されます。加入記録が抜け落ちたり、給料が不自然に下っていないか注意する必要があります。
(2)保険料が上がります
  ○国民年金は4月分から250円アップの14,660円/月。厚生年金は9月分(徴収は原則翌月控除のため10月)から保険料率が0.354%アップで15.704%(労使折半)となります。
3.雇用保険
(1)雇用保険料率(労使折半分)が引き下げられます
  ○平成21年度(4月から)に限り、0.4%引き下げ(一般の事業1.2%→0.8%)られます。
(2)「育児休業給付金」の見直しがありました
    ○休業中(育児休業基本給付金)と復帰後(育児休業者職場復帰給付金)に分けて支給している育児休業給付の暫定処置(40%→50%)が当分の間延長されます。
    ○平成22年4月1日から、休業中と復帰後に分けて支給している給付を統合し、全額休業期間中に「育児休業基本給付金」として支給されます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2009年4月23日 木曜日

平成21年4月23日(第240号)...経済危機対策における税制上の措置



麻生内閣の経済危機対策として、政策のうち税制上の措置については、次のような
ものとなっております。

1.住宅取得のための時限的な贈与税の軽減
 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に20歳以上の者が、その直系尊属である者から受ける自らの居住用家屋の取得に充てるための金銭の贈与については、当該期間を通じて500万円まで贈与税を課さない。
この特例は、暦年贈与又は相続時精算課税の従来の非課税枠にあわせて適用可能とする。

これにより、例えば、暦年贈与で、父親から子が610万円※の金銭の贈与を受けて、子が住宅を取得した場合、子が他に贈与を受けていない場合には、贈与税がかからないことになる。
※従来の暦年贈与の非課税枠 610万円=110万円+特例の非課税枠500万円 

2.中小企業の交際費課税の軽減
交際費の損金不算入制度について、平成21年4月1日以後に終了する事業年度から、資本金1億円以下の法人に係る定額控除限度額を400万円から600万円に引き上げる。

3.研究開発税制の拡充
 試験研究費の総額に係る税額控除制度、特別試験研究費の税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制について、次のように拡充する。

(1)平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に開始する事業年度  税額控除の適用を受けることができる限度額を、その期の法人税額の20%から30%に引き上げる。

(2)(1)の期間に、その事業年度の法人税額から控除することができなかった金額については、その後の事業年度※で繰越控除を受けることができるようにし、その場合には繰越控除の適用を受けることができる限度額は、その期の法人税額の30%とする。

※平成23年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始する事業年度又は
平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度
(スマイルグループ 税理士)

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2009年4月 8日 水曜日

平成21年4月8日(第239号)...平成21年5月から裁判員制度が始まります



裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)により「裁判員制度」がいよいよ平成21年5月21日から施行されます。
1.裁判員の選任方法
裁判員の選任方法については、まず、毎年9月、市町村の選挙管理委員会が、衆議院選挙の選挙人名簿から、「くじ」で裁判員候補予定者を選定して名簿をつくります。次に、地方裁判所が、その名簿をもとに裁判員候補者名簿をつくり、対象となる事件について第1回の公判期日が定まったとき、裁判所は、この名簿に記載された裁判員候補者の中から、「くじ」で呼び出しをする裁判員候補者を選定し、それに応じて出頭した裁判員候補者で所定の不選任の決定がなされなかった者の中から、裁判員を選任することとなっています。
最高裁判所からは1年当たり約5,000に1人程度が裁判員等として裁判員裁判に参加する試算が発表されています。   (「よくわかる!裁判員制度Q&A」最高裁判所発行)
2.従業員が裁判員に選ばれたら
(1)労基法7条本文では、「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。」と規定しており、裁判員等としての職務は、この「公の職務」に当たります。したがって、会社としては、従業員が裁判員等に選任され、その職務を遂行するために必要な時間を請求された場合、使用者は、これを拒否することができません。
(2)「公の職務の執行」について、法律上、有給にするか無給にするかは会社の定めにより自由に決定することができますが、従業員の裁判員としての職責負担に配慮し、「裁判員休暇」の規定を定めた場合、これを有給とすることが望ましいとされています。最高裁のHPでも、各種経済団体や企業等に対して、特別な有給休暇制度を作成するよう要望する旨が記載されています。
具体的には、就業規則への「裁判員休暇規定」の新設、特別休暇としての付与等の方法と、さらに有給・無給の取り扱い、有給とする場合の支給額等を明確に定めておくことが重要です。
3.裁判員の日当
裁判員候補者には1日当たり8,000円以内、裁判員及び補充裁判員に選ばれると1日当たり1万円以内で時間に応じ日当が支払われます。これは「報酬」ではなく、諸雑費や一時保育料等の出費、収入の減少などの一部を補償するものであり、税務上、雑所得扱いになります。年金などの他の雑所得と合わせて20万円を超える場合は、従業員は確定

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2009年3月23日 月曜日

平成21年3月23日(第238号)...リスクアセスメント[6]

これまで5回にわたり説明してきましたが、先ずは簡単なところからやってみて、「この方法は使い物になりそうだ。」ということになると、本格的に導入することになります。
リスクアセスメント導入の検討
 担当部署或いは担当者を決め、職場の安全衛生活動の問題点を明確にし、問題点をリスクアセスメントによってどのように解決するかを検討し、導入の必要性を自ら理解します。導入効果が期待できることを確認した後、リスクアセスメント導入提案書を作成します。
トップによる導入宣言
 事業場のトップがリスクアセスメント導入を決定し、自ら導入を宣言します。トップの導入宣言に基づきリスクアセスメント導入計画書を作成します。芝居じみていると思われるかも知れませんが、お祭りも必要なのです。導入計画書には次のような項目を含みます。
  1.導入の目的、目標
  2.推進組織、責任体制
     事務局、リスクアセスメント実施チーム、対策実施部署を明確にします。
     それぞれ責任者を任命します。定例的な会議を設定します。議長は「会して議せず。議して決せず。」にならないようにしなければなりません。
  3.導入対象
     最初は職場を限定して導入し、試行錯誤と改善によって習熟し、その後実施
     対象を拡大することが実際的です。
  4.実施マニュアルの作成日程
  5.実施マニュアルによる試行日程
  6.教育訓練の実施計画
  7.職場での試行日程
  8.リスクアセスメントの正式導入日程
  9.リスクアセスメント導入に必要な費用の見積り
 費用の見積り額によっては、導入対象職場を少なくするなど、計画を縮小することも必要になるでしょう。最初から完璧を求めず、小さいところから育てていくことが必要です。
 従業員数の少ない事業場では一人が幾つもの役をこなす場合が多く、リスクアセスメントを実施する場合も計画から実施までごく少数の人数で行う場合があると考えられますが、計画書や報告書は決めたとおりに作成し、他部門への連絡が滞ることのないように特に留意しなければなりません。
 アセスメントを1回で終わることなく、PDCAのサイクルを回すことによって安全度は確実に向上していきます。思い立ったが吉日、早速始めてください。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2009年3月 8日 日曜日

平成21年3月8日(第237号)...平成21年度税制改正大綱について



国土交通省はこのほど、「主要都市の高度利用地地価動向報告」を発表しました。各地域の不動産鑑定士が主要都市の高度利用地における四半期ごとの地価動向をまとめたもので、それによると、平成20年第4四半期(08年10月1日から09年1月1日)における主要都市150地区の高度利用地の地価は、ほぼ全ての地区(148地区(98.6%))で下落しました。三大都市圏では、全ての地区で下落し、東京圏及び大阪圏では、大半の地区で3%以上の下落となり、名古屋圏では、大半の地区で6%以上の下落となりました。同省は「景気の悪化、新規分譲マンションの販売不振、投資・融資等の資金調達環境の悪化等を背景として土地に対する需要が減退したことや、オフィスビル等における空室率の上昇、賃料の下落等により、収益力について一部で低下する傾向が見られたことが主な要因」と分析しています。平成21年度の税制改正大綱では需要喚起によって活性化を狙う措置として主に次のようなものがあります。


1. 住宅ローン減税の拡充
5年間延長されるとともに、最大控除額が160万円から500万円(長期優良住宅の場合は600万円)にアップしました。

2. 長期譲渡所得の特別控除制度の創設
平成21年1月1日から平成22年12月31日までに取得した土地等を5年超保有し、その後譲渡した場合には、最大で1,000万円を譲渡益から控除されます。

3. 土地の先行取得の課税の特例制度の創設
平成21年1月1日から平成22年12月31日までに、棚卸資産以外の土地等の取得後10年以内に、他の保有土地等を譲渡した場合に他の保有土地等の譲渡益の80%(平成22年取得分は60%)を繰り延べる(圧縮記帳する)制度です。従来の繰り延べはある物件を譲渡した後であって、これは譲渡に先んじて取得しても適用されます。

4.その他の期限切れとなる各種特例措置の適用期限の延長
(1)不動産の譲渡に関する契約書に係る印紙税の税率の特例措置
(2)既存住宅に耐震改修をした場合の所得税の特別控除
(3)住宅用家屋・土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の軽減税率の特例措置
(4)土地・住宅地域に係る不動産取得税の軽減税率の特例措置

   (スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2009年2月23日 月曜日

平成21年2月23日(第236号)...改正労働基準法が平成22年4月から施行されます




長時間にわたり労働する労働者の割合が高い水準で推移していること等に対応し、労働以外の生活のための時間を確保しながら働くことができるようにするため、一定の時間を超える時間外労働について割増賃金の率を引上げるとともに、年次有給休暇について一定の範囲で時間を単位として取得できることとする等の理由により「労基法改正案」が平成20年12月5日に成立し、12日公布、平成22年4月1日から施行されます。
1.時間外労働の割増賃金率の引き上げ
(1)1ヵ月に60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が、現行の25%から50%に引き上げられます。
※中小企業(資本金又は出資総額3億円、小売・サービス業5、000万円、卸売業1億円以下又は常時使用労働者数300人、小売業50人、サービス・卸売業100人以下)については、当分の間、法定割増賃金率の引上げは猶予されます。

(2)代償休暇制度の導入
労使協定を締結すれば、1ヵ月に60時間を超える時間外労働を行なった労働者に対して、法改正による引上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を付与することができます。

(3)1ヵ月45時間を超える(60時間未満)時間外労働については25%を超える率に引き上げられます。(努力義務)
※特別条項付きの時間外労働協定では、月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率も定めること

2.年次有給休暇の時間単位取得
現行では、年次有給休暇は日単位で取得することとされていますが、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。

時間外労働が月に45時間を超える事業所様は、25%を超える割増賃金率を含め、1年後のために今から対策をたてていきましょう。

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2009年2月 8日 日曜日

平成21年2月8日(第235号)...乗数効果ってどういうこと?




景気対策として、定額給付金が2兆円超の規模で決まりました。さて、この経済波及効果については賛否両論で新聞紙上でも喧々諤々の論調です。そのもとになる考え方が乗数理論です。

1.乗数理論
乗数理論とは何でしょうか?公共投資、例えば、道路工事、橋梁、箱ものと言われる各種の公共建物の建築等を考えてみましょう。まず、政府が道路工事を100億円すると、そこには、土木建設会社が請負、下請けに出したり、工事作業する人たちが雇用されたり、工事資材や建設工事のための建設機械が購入されたりして、2次所得が生まれます。
次に、工事資材の業者は、セメントや砂利、アスファルト等を購入することになり、3次所得が生まれます。こうして、最初の公共工事の発注が次から次と所得を生み出し、最終的に当初の100億円の公共投資に対してどのくらいの所得を生み出すかを計算します。その倍率を乗数と言います。所得の一部は、貯蓄に回されるので、2次所得以下は順次その効果は小さくなっていきます。

2.定額給付はどのくらいの乗数効果が見込めるのか?
ここが議論の分かれるところですね。企業へ公共投資等の形で投資されると波及効果も大きく、乗数は4倍から5倍くらいになるかもしれませんが、個人へ直接給付金として配分されてもローン返済や貯蓄に回され、企業向けの公共投資より、波及する範囲も限定されたものになり、その乗数効果は限定的だと予測されます。

3.乗数効果の大きな公共投資
しかし、従来型の公共投資も原資は国債等の国の借金であり、将来に負担を残すことになります。同じ公共投資でも、例えば、環境対策や緩和ケア向けの施設や教育投資をする等将来役に立つような公共投資をすればと思いますが、なかなか一筋縄では行きません。
将来の安定、安全のためにその保障金として備蓄した方が、はるかに国民は安心し、お金を消費に回すのではないかと思います。将来に不安があるからこそ、貯蓄する訳ですから、安心を持って生活してもらえるような公共投資をしてもらうのが乗数効果も大きくなり、私たちも安心してお金が使えるようになります。そしてその消費が大きな経済効果をもたらすのではないかと思います。皆さんはどんな意見をお持ちですか。  
(スマイルグループ 公認会計士)
  

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2009年1月23日 金曜日

平成21年1月23日(第234号)...中小企業緊急雇用安定助成金



米国発のサブプライムローンによる金融バブルの崩壊から始まった世界同時不況、また商品市場(原材料)の高騰を受け、企業経営はますます厳しくなってきています。それに伴い、派遣切り等の雇用調整に関するニュースをご覧になる機会が多いかと思います。派遣や契約社員は、期間の終了時に再度延長を申し込まなければある程度の人員調整が可能です。(※法的に争いのある部分ではあります。)しかし、正社員を簡単に雇用調整して解雇することは法的に非常に難しく、様々な条件をクリアーしていないと裁判等の争いで負けてしまいます。
 中小企業においては、派遣や契約社員より正社員をたくさん雇用されていると思います。したがって、ニュース等を賑わせている派遣切り等の雇用調整は取れませんし、正社員を簡単に解雇するわけにもいきません。そこで選択肢にあがってくるのが、従業員を休業させ休業手当を支払うというものです。休業手当は平均賃金の6割以上支払う必要がありますが、従業員を職場で遊ばせておくよりは安くつきます。しかし売り上げもないのに休業手当ですら企業にとって負担であると思います。そこで従来から、一定の要件を満たしている企業には、休業手当に関する雇用調整助成金という雇用保険が原資の助成制度がありました。しかし、従来の助成金では急激な景気悪化の状況に対応しきれないため、緊急措置として平成20年12月から当面の間、中小企業緊急雇用安定助成金という助成金が支給される事となりました。これは従来の受給要件を緩和し、受給額を増額するというものです。もし、雇用調整等をお考えの企業経営者様がおられましたら、是非この助成金も選択肢の一つに加えて検討してみてください。

<主な受給要件>
1. (1)最近3ヵ月の生産量がその直近の3ヵ月又は前年同期に比べて減少している
(2)前期決算等経常利益が赤字である(生産量が5%以上減少している場合は不問)2.従業員の全一日の休業または事業所全員一斉短時間休業をおこなうこと
3.2.または3ヵ月以上1年以内の出向を行うこと

<受給額>
~休業等の場合~
・休業手当相当額の4/5(上限あり)
・支給限度日数は3年間で200日(最初の1年間は100日まで)
・教育訓練を行う場合は上記の金額に1人1日6000円を加算
~出向の場合~
・出向元で負担した賃金の4/5

最寄のハローワークにお問い合わせください。  (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2009年1月 8日 木曜日

平成21年1月8日(第233号)...募集・採用における個人情報の取扱い

個人情報・履歴書等の取扱いについては、平成17年4月全面施行の個人情報保護法に基づき、留意が必要です。労働者の募集・採用時などに関しての注意点をあげてみました。
個人情報保護法に基づく規制
1.個人情報保護法に基づき、使用者は、応募者(労働者)の個人情報を取り扱うに際して、その利用目的を特定しなければなりません。利用目的を特定するにあたっては、厚生労働省からの指針の一部は次の表現をご参考にしてください。
・雇用契約の締結の際にご記入いただいたご家族等の氏名、住所、電話番号は、ご本人が万一のことがあった際の緊急連絡先としてのみ使用させて頂きます。
   ・当適性検査の結果は、今後、社内における人員配置を検討する際の資料としてのみ利用させて頂きます。
   ・人事労務管理にかかわる諸手続(年金・労働保険等)を行う際に、当社人事課職員がその目的に限って使用いたします。
  2.応募者(労働者)から個人情報を取得するにあたっては、使用者は利用目的の明示または通知もしくは公表を行わなければなりません。
  3.個人情報保護法では、個人情報の取得手段についても、不正の手段により取得された個人情報は、本人の権利利益を侵害するおそれが高いことから、「偽りその他の不正の手段」を用いることが禁止されています。
中途採用に際しての元勤務先からの情報収集
 募集・採用段階の情報収集において、元勤務先企業への照会は「第三者からの間接収集」に該当します。その照会自体について本人から事前同意を得る必要があります。
 照会を受けた元勤務先企業は、応募者(元従業員)の情報を提供することは、個人情報保護法23条の「第三者への情報提供」に該当し、同16条の「利用目的による制限」に抵触することから、本人から事前同意を得ない限り、情報提供を行うことは許されません。よって、照会への回答に伴う元勤務先企業の法的責任を免れるためには、「第三者への情報提供」等についても、事前に同意を得ておく必要があるといえます。
不採用者の個人情報の取扱い
不採用者の個人情報の取扱いについては、個人情報保護法は具体的義務を課していません。職業安定法5条の4に関する指針に従って、原則として、法令上保管義務のある情報を除き、速やかに返却または破棄・削除を適切かつ確実に行うべきでしょう。
(スマイルグループ 社会保険労務士) 

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2008年12月23日 火曜日

平成20年12月23日(第232号)...平成21年度の自民党税制改正大綱



12月12日に平成21年度自民党税制改正大綱が決定されました。主だったものは、以下のものです。

1.住宅ローン控除の拡充
 平成21年から25年までの間の居住分の住宅ローン控除を拡充する。
 また、同期間について認定長期優良住宅の取得にかかる住宅ローンについては、優遇した住宅ローン控除とする。

2.認定長期優良住宅の取得した場合の特別控除の創設
 住宅ローン控除との選択として、原則として取得費の10%を所得税から控除する。

3.中小企業に対する軽減税率の時限的引下げ
中小企業等の平成21年4月1日から平成23年3月31日までに終了する各事業年度の所得の金額のうち年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率を現行の22%から18%に引下げる。

4.中小企業の欠損金の繰戻し還付の復活
 中小企業等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、欠損金の繰戻しによる還付制度が適用できる。

5.取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度の創設
経営承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継相続人が納付すべき相続税のうち、相続等により取得した株式等(その会社の発行済株式等の総数の3分の2に達するまでの部分に限る。)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予する。

6.上場株式等の譲渡、配当の税金
 上場株式等の譲渡の税金と配当の税金は、現在10%(所得税7%、住民税3%)の税率となっているが、この制度は来年も延長して適用される。    
(スマイルグループ 税理士)

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2008年12月 8日 月曜日

平成20年12月8日(第231号)...衛生管理~事業所の作業環境



産業構造の変化、高齢化の進展等労働者を取り巻く環境が変化する中で、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が増加しています。また、「過労死」や、メンタルヘルスが大きな社会的関心を集めています。さらに、ダイオキシン類等の化学物質や石綿等による健康への影響が問題となっています。
事業場における衛生管理を適切に進めていくためには、事業場の衛生管理スタッフが、衛生管理に関する十分な知識を有していることが不可欠です。今回は作業環境管理の中でも気積・換気・採光・照明・トイレ・食堂について、労働者を常時就業させる屋内作業場等において定められていることを、ご紹介します。
気積について
屋内作業場の気積は、設備の占める容積及び床面から4mを超える高さにある空間を除き、労働者1人について、10㎥以上としなければならない。
換気について
換気が十分行われる性能を有する設備を設けたとき以外は、窓その他の開口部の直接外気に向かって開放可能面積が、常時床面積の20分の1以上になるようにしなければならない。屋内作業場の気温が10度以下の場合は、換気に際し、労働者を毎秒1m以上の気流にさらしてはならない。
作業面の照度について (作業の区分)  (基準)    
              ・精密な作業   300ルクス以上
              ・普通の作業   150ルクス以上
 ・粗な作業      70ルクス以上
採光および照明について
  明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせない方法によらなければならない。また、労働者を常時就業させる場所の照明設備については、6ヵ月に1回以上定期的に、点検しなければならない。
トイレについて
 (1)男性用と女性用に区別すること。
 (2)男性用大便所の便房は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上
 (3)男性用小便所の個所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上
 (4)女性用便所の便房は、同時に就業する女性労働者数20人以内ごとに1個以上
食堂について
  食堂の床面積は1人について1㎡以上とする。
単に最低基準を守るだけでなく、快適職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしましょう。

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2008年11月23日 日曜日

平成20年11月23日(第230号)...リスクアセスメント[5]


幾つかのリスクが検討・評価され、リスク低減が必要と判断された場合、原則としては、全てのリスクに対し、それらが許容可能リスク以下になるように対策を実施します。 
手順...(1)リスクの高いものから優先的に実施するように計画する。
   (2)様々なリスク低減対策案を出し合い、その中から最適な方法を選択する。
   (3)リスク対策案の実施前にその妥当性を確認する。
   (4)手順(1)で決めた計画に従い、リスク低減対策を実行する。
 リスクの程度によってどのような措置を取るか、その原則を決めておく必要があります。
リスクレベル 措    置
些細 措置不要。リスクアセスメント実施記録の保管も不要
許容可能 コスト効果の優れた解決策、またはコスト増加がない改善について検討する。管理を確実に維持するために、監視が必要。
中程度 リスク低減のための検討が必要。費用を十分検討し、実施期限を決め期限内に実行する。中程度のリスクが更に重大なリスクに関係している場合は、詳細なリスクアセスメントを行う。
大きい 大きなリスクが低減されるまで業務を開始することは望ましくない。リスク低減のために多くの経営資源を投入しなければならない場合がある。リスクに関係する作業について緊急的な措置を講じることが望ましい。
耐えられない リスクが低減されるまで、業務を開始することも継続することも望ましくない。多くの経営資源を割いてもリスクを低減する。不可能なら業務を禁止。
 リスク低減効果は一般的に(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の順序に従い対策を検討します。
リスク低減策の種類 対策の内容        具 体 例
(イ)本質的に安全な設備、機械等とする。 機械設備の改善によりリスクを低減する。 危険なシャープ・エッジをなくす。
有害な材料を無害な材料へ変更する。
(ロ)安全防護対策を採用す
る。 保護柵を設置する。
光線式の安全防護装置を採用する。
(ハ)保護具、追加安全対策
を採用する。 事故発生時に災害のひどさ、可能性を低減する。 安全帽、保護めがね等の採用
非常停止装置を設置する。
(ニ)使用上の情報により、
作業で災害を防止する 作業上で災害を防止する。 危険状態の表示、警告をする。
作業手順書に重要点を書き、重点管理する。教育訓練を実施する。
 「よく注意していれば、事故は防げるものだ。」と、事故の発生を従業員の不注意のせいにすることは、間違っています。人間は過ちを犯すものです。過ちを犯しても事故が発生しないようにするのが経営者、管理者の務めです。(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2008年11月 8日 土曜日

平成20年11月8日(第229号)...個人情報保護法について



個人情報保護法は、だれもが安心してIT社会の便益を享受するための制度的基盤として、平成15年5月に成立し公布され、17年4月に全面施行されました。この法律は、個人情報の有用性に配慮しながら、個人の権利利益を保護することを目的として、民間事業者の皆様が、個人情報を取り扱う上でのルールを定めています。そこで情報セキュリティについて解説することとします。

情報流出(漏洩)の実情
(1)漏洩数:NPO法人日本ネットワークセキュリティ協会調査結果
      平成16年   平成17年   平成18年  平成19年
対象事業者数   366件   1032件    993件   864件
合計被害者数  10,435千人   8,815千人   22,237千人  30,531千人
1件あたり人数  31,057人     8,922人    23,432人 37,554人

(2)情報流出の原因等
1.技術的要因には、人為ミスとして、設定ミス、誤操作、管理ミス等、対策不足として、ワーム・ウイルス、バグ・セキュリティホール、不正アクセス等があります。
2.非技術的要因には、人為ミスとして、紛失・置き忘れ、目的外使用、犯罪として、内部犯罪・内部不正行為、不正な情報持ち出し、盗難等があります。
 3.情報流出の経路としては、紙媒体経由が最も多く、パソコン本体、USB・FD等の可搬記録媒体、メール・Web経由等が続きます。

情報セキュリティを実践する上でのポイント
(1)組織的安全管理措置
安全管理について従業者の責任と権限を明確に定め、安全管理に対する規程や手順書を整備運用し、その実施状況を確認する。
(2)人的安全管理措置
従業者に対して業務上秘密と指定された個人データの非開示契約の締結や教育・訓練等を行う。
(3)物理的安全管理措置
入退室の管理、個人データの盗難の防止等の措置を行う。
(4)技術的安全管理措置
個人データ及びそれを取り扱う情報システムのアクセス制御、不正ソフトウエア対策、情報システムの監視等、個人データに対する技術的な安全管理措置を行う。

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2008年10月23日 木曜日

平成20年10月23日(第228号)...通勤手当の不正受給について



通勤手当は、会社によって様々な制度があります。多くは通勤にかかる費用の全部または一部を会社が負担する制度になっています。
 自宅住所によって通勤の交通費は違ってきますので、社員が虚偽の申告をして実際の交通費より多額の通勤手当の支給を受けるという例も時に発生します。
比較的よくある例に、遠隔地に自宅のあった社員が近くに転居したにもかかわらず、そのことを会社に申告せず、従前どおりの過大な通勤手当の支給を受け続けるといったものがあります。
刑法246条は「人を欺いて財物を交付させたものは、10年以下の懲役に処する」と定めています(刑事上の詐欺罪)。
民法709条は「故意又は過失によって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています(不正行為)。
詐欺によって他人に損害を与えることは不法行為に該当し、その損害を賠償しなければなりません。
通勤手当の不正受給の場合の損害額は、虚偽申請によって申請を受けた金額と、実際の住所を申告すれば支給を受けたであろう金額との差額になるでしょう。 

 どの会社にも懲戒処分の制度があります。金銭上の不正行為は、会社の信頼を裏切るものであり、また、表に出た不正以外にも隠れた不正(余罪)を強く疑わせるものです。金銭上の不正は、金額の大小にかかわらず、社員にあるまじき背信的な非違行為として重い処分をされてもやむを得ません。
 それは、経理担当者が会社の金銭を横領するというケースに限らず、一般社員の通勤手当の不正受給についても同じことです。

通勤手当の不正受給は、原則として、刑事上は詐欺罪、民事上は不正行為に該当します。会社秩序維持のため、厳しい懲戒処分も可能です。ただし、具体的な事情、反省度や被害弁償などを考慮して、適切な対処をすべきでしょう。

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2008年10月 8日 水曜日

平成20年10月8日(第227号)...ゴーイング・コンサーンってどんなこと?



最近、新聞紙上で「ゴーイング・コンサーン」って言葉を見かけますね。一体、どんな意味なんだろう?簡単に言うと「事業の継続性」ってことです。なんや、当り前のことやないか、ってことになりますが結構奥が深い言葉なんですよ。

1.経理処理の前提
経理処理は、この「ゴーイング・コンサーン」を前提として、行うことになっています。例えば、会社で売っている商品は、正常な状態で売るからその価格が成り立ちますが、「店じまい」なんて出ていると大幅に価格ダウンして売っているのと同じで、倒産!なんてなるとその会社の売る商品は相当価格ダウンしないと売れませんし、ましてや、使っていた機械等はそれこそスクラップ同然の二束三文になってしまいます。ですから、会計上の資産は、事業が今後も継続して運営されることを前提としてその評価の仕組みが成り立っているといえます。

2.上場企業のゴーイング・コンサーン
新聞紙上に取り上げられている事例は、株式を上場している企業の株主等への報告書のそのコメントが付いたときです。どんな場合にそのコメントが付けられるかというと、赤字決算が3年も4年も続き、お金の流れ(キャッシュ・フロー)もやっと銀行からの借り入れでまかなっているような会社で、もし、銀行が貸出をストップすると資金が回らなくなって倒産、すなわち、「ゴーイング・コンサーン」の会社でなくなってしまうような場合に付けられます。株主は、このコメントを見て株式を買うか、売るかの判断に役立てることになります。厳しいですね、自ら事業経営が成り立たなくなる可能性があることをコメントする訳ですから。

3.中小中堅企業も同じ
 以前212号では、「車の両輪」というテーマで書きました。利益も資金も事業を継続していく(ゴーイング・コンサーン)ためにはどちらも欠かせないということをお知らせしました。株式公開企業だけでなく、中小中堅企業もこの「ゴーイング・コンサーン」ということはとても大切なことです。さて、あなたの会社は、しっかり事業計画を立てていますか?あなたの後継者は、喜んであなたの事業を継続してくれますか?
さあ、しっかり、利益と資金を確保できるように経営をしましょう。

(スマイルグループ 公認会計士)


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2008年9月23日 火曜日

平成20年9月23日(第226号)...「名ばかり管理職」にご用心!



今年の初めに、マクドナルドの店長に関する裁判があり、店長を管理監督者として認めず、残業代を支払うよう会社側に命じる判決が出ました。あくまで地裁レベルの判決ですが、これにより労働基準監督署の動きが変わってきました。昨年まではサービス残業の問題を中心に監査をしていましたが、今年から「名ばかり管理職」の取締りを中心に監査していくことになったそうです。ある労働基準監督署の次長によると、「京都でもマクドナルドのような業態の会社を含めてどんどん監査します。」とのことでした。皆様の会社におかれましても、十分にご注意ください。また、その次長の話ですが、「最近の労働者さんは権利意識が強くなり、以前は是正勧告に入るだけで感謝されたのが、時効になっていない2年分の残業代を支払うように是正勧告しないと、苦情の電話がある。」とのことです。その流れを受けまして、「名ばかり管理職」と指摘された場合は、2年分の残業代の支払命令が出ます。景気が後退局面になっていますので、今後の資金繰りに影響をあたえかねません。今のうちに見直しをしておいてください。

次に、裁判長が管理職としてみなせるかどうかの判断をした基準を示します。ご活用ください。

(1)職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか

(2)その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か

(3)給与(基本給、役付手当等)及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされているか否か

 これらは、以前から労働基準監督署が示していた基準と、ほぼ同じです。今後は、監督署としては、(3)を中心に判断することになる予測です。私の元勤務先でも見られたことですが、課長に昇格したので、年俸制に変わり残業代がつかなくなった結果、基本給等は上昇していても、年収が下がってしまうというケースがありました。監督署とすれば、こういったケースは(3)に違反しているので、すべて「名ばかり管理職」として判断することになります。このような指摘を受けないように、今のうちから対策をしておいてください。
(スマイルグループ 社会保険労務士)


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2008年9月 8日 月曜日

平成20年9月8日(第225号)...第三者行為災害について



自動車事故等における第三者行為災害の場合、被災労働者またはその遺族など労災保険の受給権者は、労災保険から各種給付を受けることができますが、同時に、受給権者は、その災害を発生させた加害者から、民法による損害賠償を受ける権利も有していることになります。
しかし、労災保険から給付を受け、さらに、加害者からも同一の損害について賠償を受けるとすると、一つの事故による同一の損害について、二重に補償を受けることになってしまいます。
そのため、労災保険法では、国が受給権者に保険給付を行った場合には、国は、国が行った給付と同一の部分に限り、その給付の範囲内で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得(代位取得)するとしています。
逆に、受給権者が、第三者から労災保険の保険給付と同一の事由について損害賠償を受けたときは、国はその価格の限度で保険給付は行わないとしています。

では、第三者と示談を行った場合どうなるのかというと・・・・・仮に、示談によって、労災保険の受給権者が加害者である第三者に対して有している損害賠償請求権をすべて放棄した場合、その後に国が保険給付を行ったとしても第三者に対する損害賠償請求権を代位取得することができなくなってしまいます。
そのため、労災保険では、第三者行為災害に関する示談の取り扱いについての基準を定めています。(1)示談が真正に成立していること。(2)示談の内容が労災保険の給付と同一の事由に基づく損害賠償請求権の全部の補填を目的としていること。この二つの条件を両方満たす場合には、労災保険から保険給付は行われないとしています。
したがって、全損害の補填を目的としていると認められない場合は、保険給付は行われます(労災保険と同一の事由による示談金は、保険給付から控除されます)。

示談する場合の注意点
・加害者の確認(損害賠償責任は加害者本人だけでなく、その使用者や車の所有者にもある場合があります。使用者や車の所有者の氏名、住所、電話番号等も確認すること)
・金品を受領するときは、見舞金、香典、治療費等名目及び金額を明確にしておくこと
・出費はメモし、領収書を保管しておくこと
・損害の項目ごとに交渉、後遺症についての交渉は慎重に行うこと
・示談書の作成には、内容をよく確認して判を押すこと(後から変更できなくなります)
・示談書の内容は明確に(特に自賠責保険、労災保険、社会保険等の給付を含むかどうか)
(スマイルグループ 社会保険労務士)


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2008年8月23日 土曜日

平成20年8月23日(第224号)...被相続人の死亡によって受ける弔慰金等について




相続税法上の取扱い
被相続人の死亡によって受ける弔慰金や花輪代、葬祭料等については、通常相続税の対象になりません。

相続税の対象となる場合
1.被相続人の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金等に該当すると認められる部分は相続税の対象になります。

2.上記1.部分については、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額とし、その金
額を超える部分に相当する金額は退職手当金等として相続税の対象となります。

(1)被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき
被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額

(2)被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき
 被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

相続財産とみなされる退職手当金等

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金、
その他これらに準ずる給与(「退職手当金等」)を遺族が受け取る場合で、被相続人の死
亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の対象となります。
この場合において、非課税限度額を超えるときの超える部分の金額及び遺贈により受け
取った退職手当金等の金額が相続税の課税対象になります。
※非課税限度額
500万円×法定相続人の数=非課税限度額
(スマイルグループ 税務担当)


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2008年8月 8日 金曜日

平成20年8月8日(第223号)...終業後の接待飲食や宴会は労働時間?!



企業社会では、接待の飲食等が行われ、飲食中に仕事の話が行われますが、終業時刻後の取引先などとの接待飲食や宴会等については、労働時間となり時間外労働になるでしょうか? 次による判断基準をご参考にしてください。

「 飲み食い」が主たる目的の場合は、労働時間にあたらない
 【取引上の交渉等における飲食時間で、「付き合い」としての飲食懇談を目的とする場合】
飲食時間をもって労働基準法上の業務遂行時間とみることはできず、原則として労働時間にならないと考えることが適切です。
理由: いくら交渉行為を飲食中に行っても、飲食をしている時間と労働時間の区別を明確に把握することは困難なため。


 【従業員同士で行う歓送迎会・忘年会等】
労働時間にならないと考えることが適切です。
理由: 業務関連性がなく、業務遂行時間とみることはできず、明確に把握することは困難なため。

業務関連性がないため、その帰り道での事故は原則として労災保険の通勤災害に該当
しません。

業務として労働時間に該当する場合は?(下記の要件を充たす必要があります。)
 (1) 積極的な特命                  (2) 業務上の緊要性
・時間を限定した新作・新商品発表会のようなセレモニーや取引先の社長就任披露パーティー
・進水式、業務命令による得意先の開店祝い、総務課従業員が業務命令によって出席する弔事
・飲食時間そのものと、交渉時間が分離できる場合の交渉時間(ホテルで交渉中に夕食時刻となり途中で夕食をとり、その後交渉を続けた場合、前後は労働時間となる。)

「労働時間の算定しがたい場合」となる場合
事業外における飲食を伴う取引交渉時間は、労基法の「労働時間が算定し難い場合」に該当するので「みなし労働」が適用されます。
したがって「所定労働時間労働したものとみなす」取り扱いを受ける場合となり、所定の終業時刻までの労働時間をもってその日の労働時間として算定することになるので、時間外労働とはならないと考えられます。     (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2008年7月23日 水曜日

平成20年7月23日(第222号)...リスクアセスメント[4]



リスクの見積り
 第214号で述べたチェックリストに従って危険源あるいは危険事象についてリスクの大小を見積ります。リスクは、起こることが予測される災害・健康障害の重大性と、災害・健康障害が発生する可能性の2つの面から見積ることができます。
 リスク=F〔(災害・健康障害の重大性)・その障害の発生可能性〕
上の式のFは変数2個の関数であるという意味です。和にするのか積にするのかは確定していませんが、数値で評価してその和を取ることがよく行われています。また、発生可能性を「危険源に接近する頻度」と「危険源に接近したときに災害が発生する可能性」の二つに分ける方法も用いられています。後者の方法では次のように3個の点数で評価します。
                            危険源に接近した場合に
災害・健康障害の程度   危険源に接近する頻度     災害が発生する可能性
程度 点数 程度 点数 程度 点数
致命傷  10 頻度 4 確実である 6
重傷 6 時々 2 可能性が高い 4
 軽傷 3 ほとんどない 1 可能性がある 2
 些細 1 ほとんどない 1

上例の評価基準を、例えば次のように設定して、どこを改善すべきかを決めます。レベルⅣは即時改善実行、レベルⅢは即時に改善計画策定開始、3ヵ月以内に実行、などです。
リスクレベル リスクポイントの合計 判定結果
Ⅳ 14~20 受け入れられない
Ⅲ 11~13 重大な問題がある
Ⅱ 8~10 問題が多少ある
Ⅰ 1~7 許容可能
許容可能なリスク
 どのような職場にも絶対安全はあり得ないし、絶対安全を求めることは現実的ではありません。許容可能リスクとは、職場にそのまま放置してもやむを得ないようなリスクですが、どの程度まで許容するかについて決めておくことが必要です。
 ISOでは、「その時代の社会の価値観に基づいて、所定の状況の中で受け入れられるリスク」と定義しています。また、同時に、絶対安全の理想と、製品、工程またはサービスによって満たされるべき要求と、ユーザーの利益、目的適合性、費用効果の優秀性及び関係する社会の慣行との間のバランスの結果であると言っています。それぞれの会社の製品、サービス等について許容可能の限界はどこにあるのか、トップが決めておかねばならないことです。               (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2008年7月 8日 火曜日

平成20年7月8日(第221号)...中小企業の経営承継円滑化法について



平成20年5月9日に民主党を含めた与野党賛成のうえ、参議院で可決され新たに創設されたこの法律は、1.民法の特例、2.金融支援、3.相続税の課税の特例の3つが柱となっています。 そこで、この法律の概要と留意点などについて、解説することとします。
1.民法の特例
一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、以下の民法の特例の適用を受けることができることとしました。
(1)生前贈与株式等を遺留分の算定基礎財産の対象から除外できる。
(2)生前贈与株式等の評価額をあらかじめ固定できる。
従来の遺留分放棄は当事者全員が個別に申立てを行う必要がありましたが、改正後は、後継者が単独で家庭裁判所に申立てができることになりました。 民法特例の後継者は、先代経営者の遺留分権利者、すなわち、基本的に配偶者や子供のみが対象となり、かつ、合意の時点で単独で株式の過半数を保有していることが必要となっています。
2.金融支援
経営者の死亡等に伴い必要となる資金の調達を支援するため、経済産業大臣の認定を受けた中小企業者及びその代表者に対して、以下の特例を設けることとしています。
(1)中小企業信用保険法の特例 (対象 中小企業者)
(2)株式会社日本政策金融公庫法の特例 (対象 中小企業者の代表者)
この金融支援は、親族外承継や個人事業主の事業承継を含め、次のような幅広い資金ニーズに対応します。
(1)相続に伴う株式・事業用資産の散逸を防ぐための取得資金
(2)後継者の信用低下による取引先からの取引条件悪化や金融機関からの借入条件悪化時の運転資金
(3)親族外後継者が親族より株式等を取得する資金
(4)多額の相続税負担が発生したときの資金などが挙げられます。
3.相続税の課税の特例
事業承継の際の大きな障害の一つである、後継者の自社株式にかかる相続税負担の問題を解決するため、平成21年度の税制改正において、経済産業大臣の認定を受けた非上場中小企業の株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税を納税猶予(雇用確保を始めとする5年間の事業継続が要件)する制度が創設される予定で、その適用については平成20年10月1日に遡って適用される予定です。   
(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2008年6月 8日 日曜日

平成20年6月8日(第219号)...内部監査の効用について



最近、会計業界を賑わしている問題に「内部統制システム」があります。簡単に言ってしまえば、リスクマネジメントの仕組みを会社の中に作りましょうということになります。
その会社のリスクを大きく全社的なリスク、業務リスク、決算リスク及びITリスクに分けてそれぞれリスクをカバーしたり、軽減したりする仕組みを作って行きます。

三様監査とリスクマネジメント
リスクをコントロールしている仕組みがうまく機能しているかどうかを見るのが「監査」という制度になるわけですが、現在の株式会社には、監査役監査、内部監査及び外部の公認会計士による会計監査の三様の監査制度があります。監査役監査は、リスクマネジメントの中でも会社全体のリスクを取扱うコーポレートガバナンス(企業統治と訳されています)がうまく機能しているかどうかを監査します。最近だとコムスンや船場吉兆のように法令違反を犯したり、食品衛生上問題になるような行為をして、結果的に会社へ大きな損害をもたらしていないかどうかといったような大きな視点から取締役の意思決定や仕事の内容を監査します。内部監査は、社長に直属して、会社の中の各部署が会社の方針やルールに従って効率よく業務を行っているかどうかを監査します。外部の公認会計士監査は、こうした内部統制システムが有効に働いているということを確認しながら、会社が作成し株主、金融機関等へ報告する決算の内容が正しく表示されているかどうかについて監査することになります。

内部監査の効用
監査というとすぐ大きな会社を想定しがちですが、基本的な目的は業務処理が会社のルール(標準的な基準や手続)に従って効率よく行われているかどうかを見ることが目的ですから、中小企業や中堅企業でも十分役に立てることができます。その他に、内部監査の効果としては、資産が十分管理され、活用されているかどうかをみたり、不正や誤りを未然に防止したりする機能を持っていますので、優秀な人材を充てると大きな効果が期待できます。

内部監査で求められる知識・スキル
内部監査は、各部署が行っている業務処理の監査をするわけですから、仕事の流れについての知識が必要です。また、監査をするには、監査手続を実施しますのでチェックの方法に関する知識も必要になります。優秀な人材を充てれば充てるほど会社の中は、効率よく動くことが期待できます。            (スマイルグループ 公認会計士)

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2008年5月23日 金曜日

平成20年5月23日(第218号)...後期高齢者医療制度についての会社の対応について



 新聞・テレビ等で話題になっております、後期高齢者医療制度が4月から開始されました。これに伴い、社会保険に加入されている事業所では、様々な手続が必要となります。それらの対応をまとめてみましたので、ご参考にしてください。

雇用している従業員本人が75歳に達した場合
・社会保険事務所から、資格喪失届が郵送されてきますので、該当する従業員さんの保険証を添付して、社会保険事務所に提出します。

雇用している従業員本人が75歳に達し、75歳未満の扶養家族がいた場合
・社会保険事務所から、資格喪失届が郵送されてきますので、該当する従業員さんの家族も含めた全員の保険証を添付して、社会保険事務所に提出します。
                ↓
・社会保険事務所に、扶養されていた家族さん分の健康保険資格喪失証明を発行してもらい、従業員さんに渡します。
                ↓
・その健康保険資格喪失証明書を持って、住所地の市役所等に行き、家族さん分の国民健康保険の加入手続をします。(これは会社の手続きではありませんので、従業員さんに行なってもらってください。)

雇用している従業員さんの健康保険扶養家族が75歳に達した時
・社会保険事務所から、健康保険扶養異動届が郵送されてきますので、該当する扶養家族の方の保険証を添付して、社会保険事務所に提出します。

以上が現在必要な手続となります。
また、社会保険庁は、高齢者に対する医療費を現役世代が負担していることを知らしめるために、給与明細において、4月分の健康保険料から、それら高齢者に対する負担分としての特定保険料と、基本保険料を分けて表示するように求めています。ただし、システムの変更が必要なために、分けて表示することは義務化されていません。また、政局が混迷しており、今後この制度が維持されるかどうかも不透明であるため、給与計算ソフトを作成しているメーカーでも、対応を未定としている所が多いようです。これに関しましては、急いで対応する必要はないと考えます。しばらくは現状のまま運用され、今後の動向に注意をされれば良いと思います。       (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2008年5月 8日 木曜日

平成19年5月8日(第193号)...従業員さんの年金申請はお済みですか?



世間では「2007年問題」が話題になっていますが、皆様の職場ではどのような対策をなさっていますでしょうか?多くの事業所では、雇用延長や再雇用制度により65歳までの雇用の延長を実施されていることと思います。従業員さんの老齢年金の申請について、助言はなさっていますか?実は、最近、申請をされていない方が非常に多い現実があるようです。
老齢年金は原則65歳からの支給開始になっています。しかし、経過措置により一定条件を満たせば60歳から支給されます。(しかも65歳までの年金は請求しないと消えてしまいます!)それを知らずに申請をされていない方が非常に多いです。その要件とは、次の2点です。
・65歳になったら老齢年金を受給できる権利を獲得している。
・厚生年金保険に過去合算して1年以上加入している。
上述の2点を満たしている従業員の方がほとんどだと思いますので、60歳の誕生日をお迎えになる際には、一言年金を申請するようにお伝えください。
私ども社会保険労務士が、行政協力で年金窓口相談業務をしていた際にも、60歳から年金が受給できるのに、65歳になって初めて申請に来られる方が多くいらっしゃいます。年金センターの職員さんによると、60歳から受給できることを知らない方や、仕事をしているともらえないと思っている人が非常に多いとのことです。
次に年金申請に必要な一般的なものを記載します。
・ご夫婦2人分の年金手帳
・貯金通帳
・認印
・戸籍謄本(全部記載されているもので、誕生日の前日から6ヵ月以内のもの)
・住民票謄本(世帯全員が記載されているもので、誕生日の前日から6ヵ月以内のもの)
・配偶者の所得証明若しくは非課税証明
・雇用保険証(高年齢雇用継続給付の受給者は、高年齢雇用継続給付決定通知書)
・(公務員だった期間がある方は、年金加入期間確認通知書)

当事務所では、年金申請手続きだけでなく、60歳以上の方には年金を絡ませた賃金のシミュレーションをご提案させていただいています。60~65歳の年金は、賃金が高額だと支給停止になったり、また高年齢雇用継続給付を受けると併給調整がはいりますが、年金や給付を可能な限り引き出し、ご本人の手取り減少をなるべく少なくして人件費の削減効果も大きい案を検討させていただきます。詳細については、お気軽に当事務所にご相談ください。
               (スマイルグループ 社会保険労務士)


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2008年5月 8日 木曜日

平成20年5月8日(第217号)...労働基準監督官による臨検とは



臨検監督とは、労働基準監督官の事業場への立ち入り調査のことで、労働基準法第101条において、行政上の権限として認められているものです。
臨検には、各々その臨検の背景があり、(1)定期監督、(2)労働者の申告、(3)司法手続きとしての告訴のいずれによるものなのかなどを把握することが重要です。
原則として臨検は、事前に日時や必要な帳簿・書類などが知らされることが多いですが、書類の改ざんのおそれがあるときは抜き打ち臨検もあります。また、サービス残業の実態を把握するための夜間調査もあります。
具体的な調査方法としては、ビルの入出管理簿に記載されている入出時間と、タイムカードや自己申告書に記入された終業時刻との差異、パソコンに記載されているオン・オフの時間の履歴確認など具体的な労働時間管理、さらに時間外労働の賃金支払の有無、各種労使協定の作成・届出、社員の健康診断の実施など様々な内容の調査が行われます。
参考)「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関する基準」
(基発339号 平成13年4月6日)

是正勧告書とは、労働基準監督官が、法違反に該当すると判断した事項を記入し、是正するよう勧告するために交付する文書です。これは命令書ではなく、勧告書ですから、事業主側は是正することを義
務付けられることはありません。しかし、強制力がないからといって勧告に応じなければ、労働基準監督署は、法違反として捜査のうえ警察庁に送検することがあります。これはあくまでも、法違反として送検するのであって、勧告に応じなかったことを理由として送検するのではありません。

<是正勧告の例>
1.労働条件の明示(労基法第15条)
   新規採用者に対し、労働条件通知書等の労働条件を明示した書面を交付していない。2.健康診断(労働安全衛生法第66条、規則第44条)
   常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に健康診断を行っていない。
3.時間外労働等の割増賃金(労基法第37条)
   割増賃金の算定基礎となる賃金に役職手当、皆勤手当等を加算していない。
4.就業規則の作成・届出(労基法第89条)
   常時10人以上の労働者を使用しているにもかかわらず、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出ていない。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2008年4月23日 水曜日

平成20年4月23日(第216号)...<リース税制について>


平成19年度の税制改正(平成20年4月1日以後に締結する契約について適用。)で所有権移転外ファイナンス・リース取引(注)については、以下のようになっております。

1.売買取引があったものとして法人税、所得税の計算を行います。
2.リース税額控除制度を廃止する。(取得に係る税額控除の適用。)

(注)ファイナンス・リース取引(資産の賃貸借で、賃貸借期間中における契約解除の禁止及び賃借人が当該資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担等の要件を満たすもの)のうち、リース期間の終了時にリース資産の所有権が賃借人に無償で移転するもの等以外のもの
 
<中小企業の会計にかかる指針とリース取引との関係>
中小企業の会計にかかる指針では、原則的に所有権移転外ファイナンス・リース取引については、通常の売買処理に係る方法に準じて会計処理を行うこととされていますが、通常の賃貸借取引に準ずる方法(従来行ってきた処理方法)で会計処理を行うこともできることになっています。(注記が必要となる場合があります。)
→今までと同じ会計処理を行うことも可能です。

<リース取引と消費税の関係>
リース税制の改正にともなって、平成20年4月1日以後に締結する契約に関しては、リース取引の目的となる資産の引渡し時に売買取引があったものとして仕入税額控除の適用を受けることになります。

上記の取り扱いは、リース料を経費処理(賃貸借取引として処理)した場合についても同様です。この消費税の取り扱いについての変更については、注意が必要です。
                       
(スマイルグループ 税務担当)

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2008年4月 8日 火曜日

平成20年4月8日(第215号)...採用時トラブル回避実務Q&A



去る3月1日から労働契約法が施行されました。これを機に労働実務に対しよりコンプライアンス(法令遵守)の必要性が高まっています。今回は、採用時のQ&Aを記載しますので、是非、参考にしていただければ幸いです。

1.採用時の労働条件の明示方法はどのようにおこなうべきか?
労基法15条では、(1)労働契約の期間に関する事項、(2)就業の場所、従事する業務、(3)始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項、(4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算・支払の方法、締切・支払の時期、昇給に関する事項、(5)退職に関する事項について、書面で明示することとされています。また、(1)、(2)、(3)のうち「所定労働時間を超える労働の有無」を除き、いずれも就業規則の絶対的必要記載事項として記載すべきものであり、就業規則が整備されている場合には、適用される事項を明確にして就業規則を周知させる必要があります。

2.採用内定取消しをした時の法的な責任とは?
新規学卒者のいわゆる採用内定取消しの問題については、事業主が採用内定通知書を発し、学生から入社誓約書又はこれに類するものを受領した時点で一般的には労働契約が成立したとみなされる場合が多いと考えられます。この場合に成立する労働契約は、卒業できないことその他一定の事由による解約権を留保している労働契約となりますが、解約権留保付労働契約であるとはいえ、他への就職の機会と可能性を放棄するのが通例ですから、就労の有無という違いはあるものの、採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはないと見るべきであるとしています。(昭54・7・20 第ニ法廷小法廷判決 大日本印刷事件)

3.試みの使用期間中の者にも解雇予告又は解雇予告手当の支払の必要があるか?
  試用期間とは、一般的に本採用決定前の期間であって、その間に労働者の勤務態度、能力、技能等をみて、事業主が正式に採用するかどうかを判断し、決定するための期間です。事業主が試用期間中の者に対する解雇予告又は解雇予告手当の支払については、試用期間が14日以内であれば必要はありませんが、14日を超える場合には30日以上前に解雇予告を行うか、解雇予告手当の支払が必要となります。(両者の併用は可能)
(労基法20条 昭24・5・14基収第1498号)

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2008年3月23日 日曜日

平成20年3月23日(第214号)...リスクアセスメント[3]



危険源の特定       
1.職場の危険源を特定します。
2.危険源に接する人間を特定します。
3.人間と危険源がどのような状態のときにどのような危険事象になるかを特定します。
ここで大切なことは、機械は故障するものであり、人間は間違いを起こすことを前提
に考えることです。合理的に予見可能な誤操作、誤動作についても考慮することが必
要です。
具体的な進め方
職場に存在する危険源を漏れなく洗い出すためのチェックリストを準備し、危険源特定を
します。危険源は次のように分類されます。
1.機械的危険源
    はさまれ、巻き込まれ等の災害の可能性
2.作業方法と職場のレイアウトに関する危険源
    鋭いエッジ、高所作業、無理な姿勢を必要とする作業等による災害の可能性
3.電気的危険源
    電気、静電気への接触による災害の可能性
4.健康と安全に有害な物質または化学物質の危険源
健康に有害な物質による災害、健康障害の可能性、可燃性材料による火災爆発事故の可能性
5.理的物質の危険源
    電磁放射線(熱、光、X線等)、騒音、振動等による災害、健康障害の可能性
6.物学的な物質の危険源
微生物等による健康障害の可能性
7.職場環境に関する危険源
    不適切な照明、温度、湿度、換気等による災害、健康障害の可能性
8.職場とスタッフの関係等、人的要因に関する危険源
    安全衛生情報伝達方法、スタッフの知識不備等による災害、健康障害の可能性
9.心理要因に関する危険源
    作業のきつさ、単純作業等心理的要因による災害、健康障害の可能性
10.作業体制に関する危険源
作業(連続繰り返し作業、シフト作業等)による災害、健康障害の可能性
11.その他の危険源
リスクアセスメントは製造業だけのものではありません。
これを応用して企業の危険を防止しましょう。
                        (スマイルグループ 社会保険労務士)

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2008年3月 8日 土曜日

平成20年3月8日(第213号)...相続税の課税方式が変わる?



自民党が発表した平成20年度税制改正大綱で、相続税の課税方式を「遺産取得課税方式」に改めることを検討すると発表がありました。この改正が実現すると、今後の相続対策に大きな影響を与えることになりそうです。
1.現行の課税方式と遺産取得課税方式の違い (出典:自民党税制調査会 資料)          
課税方式 現行制度 (法定相続分課税方式) 遺産取得課税方式
概要 遺産取得課税方式を基本として、相続税の総額を法定相続人の数と法定相続分によって算出し、それを各人の取得財産額に応じ按分して課税する方式 相続等により遺産を取得した者を納税義務者として、その者が取得した遺産を課税物件として課税する方式
考え方 ①累進税率の緩和を企図した仮装分割への対応
②農業や中小企業の資産等分割が困難な資産の相
続への配慮
といった観点から、実際の遺産分割の状況により負担に大幅な差異が生じることを防止するという考え方 偶然の理由による富の増加に担税力を見出して相続人に課税することにより、富の集中の抑制を図るという考え方
留意点 ①自己が取得した財産だけでなく、他の相続人が取得したすべての財産を把握しなければ正確な税額の計算・申告ができない。相続人の一人の申告洩れにより他の共同相続人にも追徴税額が発生する。
②相続により取得した財産の額が同額であっても法定相続人の数によって税額が異なる。
③現行の居住や事業の継続に配慮した課税価格の減額措置により、居住等の継続に無関係な他の共同相続人の税負担まで緩和される。 ①自己が取得した財産だけで、正確な税額の計算・申告ができる。相続人の一人の申告漏れにより他の共同相続人に追徴税額が発生することはない。
②法定相続人の数に関係なく、同額の遺産を取得した者には、同額の税負担となる。(各々の担税力に応じた課税をすることができる。)
③課税価格の減額措置は、居住等を継続する者のみに減税効果が及び、他の相続人の税負担は、軽減されない。
2.なぜこのような改正が検討されているのか
これは、現行制度に基づいて納税猶予制度の適用を受けると、他の相続人の税額まで下がってしまうことが問題視されているためです。またこれとは別に、他の相続人が財産を隠蔽した場合に、そのことを知らなかった他の相続人の税額も自動的に増えてしまうことは、他の相続人の理解が得られにくいと、以前から指摘されていた問題もあります。
3.改正の影響
今までは被相続人の遺産の総額が問題でしたが、改正後は相続人がいくら相続したかだけで税額が決まることになります。今後は、相続人個人単位での対策が重要になり、今まで以上に遺産分割対策、納税資金対策が重要視されてくるでしょう。また、基礎控除も全体財産に対してではなく、相続人個人単位で設けられる可能性が高く、その額によっては相続税の課税対象者が飛躍的に増えることも予想され、影響は多大になると思われます。なお、この
改正は、早ければ平成20年10月以降の相続分から適用される可能性があります。            (スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2008年2月23日 土曜日

平成20年2月23日(第212号)...車の両輪

あなたは、自社の実体をどんな視点から見ていますか?よくアントレプレナーセミナーで参加者に次のような質問をしてみます。
"借金を返すと利益(所得)が減ると思う方、手を挙げてください"と。勇気のある方は何人か手を挙げてくれます。しかし、ほとんどの方が首をひねっています。つまり、分からないのです。

企業を車に例えて、その両輪は利益とお金の流れです。上の問に対する答えは、借金を返しても利益には影響ないので、利益は減りません。逆に、銀行からお金を借りたら売上になって利益が増えますかって質問をしてみると良く分かりますね。銀行から借金をするたびに、利益が増えて税金を払うようなことになれば大変ですよね。借金の返済はこれと逆のことですから、利益は減らないということになります。また、よく、決算期になって質問されることもこれに関連していて、"先生は所得が出て、税金を払えって言われるけど税金を払う金なんて残ってないよ。どこに行ったの?"こんな経営者は、儲かったからといって車をきっとベンツに乗り換えているのでしょう。これも利益とお金の流れを混同しているいい例ですね。

さて、資金がなければ会社は簡単に潰れます。たとえ利益が出ていても。お金は企業の血液みたいなものですから循環している限り、企業は倒産しないで維持できます。
事例で見てみましょう。
1.利益が出ているが、資金を設備に過剰投資して、手元に資金が残っていないケース。この場合は、仕入れ代金や給料の支払にさえ困ることになり、仕入れもできなくなり、従業員も辞めていってしまい、経営が困難になります。
2.赤字経営だが、個人資産を担保に銀行からお金を借りて、仕入れ代金や給料の支払に充てられるケース。この場合は、会社は、個人からの借入金が増えますが、支払資金がありますので倒産はしません。もちろん、借入余力がなくなり借入できなくなればそのときには経営の維持はできなくなりますが。

企業には、このように利益とお金が必要であり、まさに経営という車の両輪になるというわけです。
あなたの会社の利益と資金は大丈夫ですか。しっかり舵取りしましょう。
(スマイルグループ 公認会計士)


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2008年2月 8日 金曜日

平成20年2月8日(第211号)...住民税からの住宅ローン控除



平成19年から国(所得税)から地方(住民税)への「税源移譲」が実施されました。所得税が軽減されたことから住宅ローン控除額が引ききれない場合は、区役所等へ申告
することにより、平成20年度住民税から控除されます。是非とも申告ください。
1.対象となる住居の入居時期
平成11年1月1日から平成18年12月末日までに入居している。
2.平成20年度住民税から控除される要件
(1)所得税から住宅ローン控除額が引ききれないこと。
(2)「住宅借入金等特別税額控除申告書」を区役所・支所へ提出すること。
   ※ 平成19年分源泉徴収票の添付が必要です。
(3)所得税の確定申告をされる方は、所得税の確定申告とともに税務署へ「住宅借入金等特別税額控除申告書」を税務署へ提出すること。
3.住宅借入金等特別税額控除申告書の提出期限
平成20年3月17日までに、平成20年1月1日現在お住まいの区役所・支所または
住居地を管轄する税務署へ提出してください。(毎年申告が必要です。)

≪住宅ローン控除モデルケース≫
 夫婦+子ども2人、給与年収700万円、住宅ローン控除可能額:27万円の場合
 (子ども1人は特定扶養親族)
税源移譲前
税額 住宅ローン控除額 負担額
所得税 263,000 263,000 0
住民税 196,000 0 196,000
合 計 459,000 263,000 196,000
税源移譲後申告を行った場合
税額 住宅ローン控除額 負担額
所得税 165,500 165,500 0
住民税 293,500 97,500 196,000
合 計 459,000 263,000 196,000
  住宅ローン控除額が減少しないよう、住民税(所得割)から控除します。
税源移譲後申告を行わなかった場合
税額 住宅ローン控除額 負担額
所得税 165,500 165,500 0
住民税 293,500 0 293,500
合 計 459,000 165,500 293,500
  控除額が減少し、負担が増加します。

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2008年2月 1日 金曜日

平成20年2月1日(臨時号)...住民税からの住宅ローン控除



平成19年から国(所得税)から地方(住民税)への「税源移譲」が実施され、所得税が軽減されたことから住宅ローン控除額が引ききれない場合があります。この場合は、区役所等へ申告することにより、平成20年度住民税から控除されます。概要は次のとおりです。
1.対象となる住居の入居時期
平成11年から平成18年末までに入居している。

2.平成20年度住民税から控除される要件
(1)所得税から住宅ローン控除額が引ききれないこと。
(2)「住宅借入金等特別税額控除申告書」を区役所・支所へ提出すること。
   ※ 平成19年分源泉徴収票の添付が必要です。
(3)所得税の確定申告をされる方は、所得税の確定申告とともに税務署へ「住宅借入金等特別税額控除申告書」を税務署へ提出すること。

3.住宅借入金等特別税額控除申告書の提出期限
平成20年3月17日までに、平成20年1月1日現在お住まいの区役所・支所または
住居地を管轄する税務署へ提出してください。(毎年申告が必要です。)

住宅ローン控除モデルケース
(夫婦+子ども2人 給与収入700万円(住宅ローン控除可能額:27万円)の場合)

※ 夫婦+子ども2人の場合で子どものうち1人が特定扶養親族に該当するものとしています。
※ 一定の社会保険料が控除されるものとして計算しています。


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2008年1月23日 水曜日

平成20年1月23日(第210号)...障害年金の障害認定日について



病気や怪我により、不幸にもお体に障害が残った場合、障害の程度及び初診日に加入していた年金の種類によって、それぞれ障害年金が支給されます。自営業者の方や厚生年金・共済年金に加入している方の扶養されている配偶者の方ですと「障害基礎年金」が、厚生年金にご加入されていますと、「障害厚生年金」だけか、「障害厚生年金と障害基礎年金」の両方が支給されます。さて、この障害年金ですが、申請することのできる時期というものがあります。原則は、

・ 初診日から1年6ヵ月を経過した日
・ それまでに治った日(症状固定日)

と規定されています。しかし、これには様々な例外がありまして、次にその一覧を記載いたします。

・ 四肢の切断は切断した日
・ 人工骨頭、人工関節の場合は挿入、置換した日
・ 心臓ペースメーカー、ICD、人工弁の場合は装着した日
・ 人工透析は透析開始から3ヵ月を経過した日
・ 人工肛門は造設した日
・ 新膀胱や尿路変更の場合は作った(手術を受けた)日
・ 脳梗塞の場合は1年6ヵ月を経過するまでに症状固定をした場合、初診日から6ヵ月を経過している日以降

脳梗塞の場合は少し注意が必要で、6ヵ月を過ぎて症状固定をしたのに申請を忘れていて1年6ヵ月を経過してしまった場合は、症状固定日に遡らず1年6ヵ月を経過した日でしか申請をできなくなってしまう都道府県があります。これを知らないと最大で1年分の年金が支給できなくなりますので、事例によっては百数十万円も損をされる方がおられます。皆さんはこのようなことがないようにご注意ください。
詳細については、お気軽に当事務所にご相談ください。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2008年1月 8日 火曜日

平成20年1月8日(第209号)...有期雇用契約について



厚生労働省は、雇用期間を定めて働く有期雇用労働者の解雇規制を今後強化する方針です。企業が3回以上契約を更新した場合、次に契約を更新しないときは契約終了の30日前までの予告を義務付けます。現在、雇用されて1年以内の有期雇用労働者に対しては、事前の予告は必要ありませんでした(労基法に基づく「有期労働契約の基準」を改正、3月から適用予定)。

有期雇用契約(期間の定めの有る雇用契約)の現行制度のポイントを以下に整理しました。

1.契約期間の上限
  一定の事業の完了に必要な期間(土木工事、ダム建設工事等)を定めるもののほかは、契約期間の上限は3年です。例外として、専門知識等を有する労働者・満60歳以上の労働者との契約期間の上限は5年となります。

2.契約締結時の明示事項
 (1)当該契約の更新の有無を明示することが必要。
 (2)契約を更新する場合又は更新しない場合の判断基準を明示することが必要。

3.雇止めの予告及び雇止めの理由の明示
 (1)契約期間が1年を超える場合や、更新して1年以上雇っている場合、次に契約を更新しないときは契約期間満了日の30日前までに予告をしなければなりません。
 (2)雇止めの予告後(雇止めの後)、労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なく交付しなければなりません。

4.使用者が講ずべき措置の基準について
  行政官庁は、雇止めに関する基準に定める内容に反した使用者に対して、「必要な助言及び指導を行うことができる」ようになっています。

                       (スマイルグループ 社会保険労務士)



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2007年12月23日 日曜日

平成19年12月23日(第208号)...<平成20年度の税制改正大綱>



12月13日に平成20年度税制改正大綱が決定されました。主だったものは、以下のものです。
1. 法人事業税の改正
地方税である法人事業税の税率を半分くらいに引き下げました。その代わり法人事業税額に税率を掛けて国税である地方法人特別税が新たに創設されました。国は、この地方法人特別税を都道府県へ地方法人特別贈与税として配分するのです。平成20年10月1日以後開始事業年度から適用されます。
2.試験研究費に対する優遇税制
試験研究費を支出した場合