労務ニュース スマイル新聞

2014年4月25日 金曜日

平成26年4月23日第360号

懲戒処分が認められない場合とは

1.日本ヒューレット・パッカード事件
平成24年4月27日、最高裁判所は従業員の欠勤を就業規則所定の懲戒事由である「正当な理由のない無断欠勤にあたる」としてされた諭旨退職の懲戒処分が無効であると判断しました。つまり、無断欠勤を理由にした懲戒処分は認められない、と判断した、ということです。

2.この事件のポイント
  この事案では、従業員が同僚らを通じて嫌がらせの被害を受けているとして年次有給休暇を取得して出勤しなくなり、その後も約40日間欠勤を続けています。会社側は、調査するも、そのような被害事実は見受けられなかったため、就業規則所定の「正当な理由のない無断欠勤」として、諭旨退職の懲戒処分をしました。
しかし、裁判所は「使用者は、この場合精神科医による健康診断を実施するなどした上で休職等の処分を検討し、経過を見るべき」とし、このような対応をしなかった以上、「正当な理由のない無断欠勤にあたらない」としました。
 本件では「嫌がらせ」は幻聴であることが伺われるので、形式的、客観的には欠勤の「正当な理由」にはならない、と思えます。しかし、裁判所は、使用者として適切な対応をしない限り懲戒処分を認めるべきではない、という判断をしたことがポイントです。

3.会社側に出来る対策は
  第1は、欠勤の理由が精神的不調のためと見受けられる場合には、まず、精神科医等に受診させることです。しかし、使用者側から「受診を勧めても行ってくれなくて困る」という話も聞きます。無理に通院をさせることは難しいので、就業規則の中に「必要と認めるときには従業員に健康診断を行うことが出来る」などの規定が必要です。
第2に、段階的な処分を心がける、ということです。「退職」「解雇」などは、従業員の身分を奪う重い処分となるので、裁判所は簡単に認めません。まずは、戒告、減給、休職(停職)処分等を検討し、その上で、改善が無く、やむを得ない場合にとることになります。ただ、精神的な不調の場合、従業員ご本人の責任を追及することが難しいので、実際に取り得るのは休職処分となりそうです。
 一度、就業規則、懲戒処分のありかたを見直してみるといいですね。

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2014年4月10日 木曜日

平成26年4月8日第359号

業務改善助成金について

 厚生労働省が設けている中小企業最低賃金引き上げ支援対策費補助金(通称:業務改善助成金)が平成26年度から京都府地域においても導入されることになりました。上手く活用して事業場内の一層の業務改善を図りましょう。

<制度の概要>
 労働者の地域別最低賃金を引き上げることにより、大きな影響を受ける中小事業主の支援を目的として、次の2点を実施した場合に、業務改善に要した経費の内、最大で1/2(企業規模30人以下の場合は3/4)が助成されるというものです。
(1)事業場で最も低い賃金を800円以上に引き上げる計画を策定し、かつ、1年あたりの時給が40円以上となる引き上げを実施すること
(2)賃金制度の整備、就業規則の作成、労働能率の増進に資する設備・器具の導入、研修等(当事務所の研修も対象となります)といった業務改善をすること。

例えば、
・POSシステムを導入し、在庫管理の業務効率化を図る
・業務用食洗機を導入し、機械で洗浄することで、作業時間の短縮を図る
・新型工作機械を導入し、生産スピードの向上や不良品率の低下を図る
・賃金制度の整備、就業規則の作成・改正(事業場内最低賃金の明記が必要)
・板金加工用の大型の動力切断機を購入し、作業の効率化を図る。
・販売管理ソフトを購入し、仕入・売上などをデータ管理し作業能率を上げる
など、業務や作業の効率化にかかる費用に対して助成されます。
 支給対象となるのは事業場内最低賃金が800円未満の労働者を使用している中小事業主で、賃金改善計画や業務改善計画を策定して交付申請書を提出し、交付決定を受けた事業主が対象です(税金や労働保険の未納等がある場合は支給申請できません)。

<申請の流れ>
 助成金交付申請 →助成金交付決定 →計画実施(機器の購入など) →実績報告
助成金の交付決定通知書がおりる前に機器の購入などを行った場合、その購入費用について助成金は利用できませんので、申請の手順を間違えないように気をつけましょう。

 詳細については、当事務所までお問い合わせください。

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2014年4月10日 木曜日

平成26年3月23日第358号

平成26年4月からの国民年金・厚生年金の改正

1.産休期間中の保険料免除
 育児休業期間の社会保険料は、申し出ることで、本人も、事業主も免除されていましたが、それと同様に産前産後休業期間中(産前6週間(多胎妊娠は14週間)、産後8週間のうち、被保険者が労務に従事しなかった期間)の社会保険料が免除されます。
 また、産前産後休業終了後に育児等を理由に報酬月額が低下した場合は、子が3歳未満の期間中は、復帰後の3ヵ月間の報酬日額を基に、標準報酬月額が改定され、本人の負担が少なくなります。更に、養育期間標準報酬月額特例申請書を提出すれば、将来の年金額は、産前産後休業前の標準報酬月額で計算されます。

2.遺族基礎年金の父子家庭への支給範囲拡大
 一定の子がいる場合に支給される遺族基礎年金について、平成26年4月1日以後に死亡したことにより支給する遺族基礎年金からは、これまで支給対象が「子のある妻又は子」に限定されていたものが、「子のある夫」にも支給されるようになります。

3.70歳以後に繰り下げ請求をしても70歳からの年金を受給
 70歳に達した後に繰下げ支給の申出を行った場合に、申し出のあった月の翌月分からしか支給されなかったものが、改正後は70歳到達月の翌月分から遡って申し出があったものとみなし、70歳到達月の翌月分から支給されます。

4.未支給年金の請求範囲の拡大
 年金受給者が死亡した場合、死亡月分の年金については受取人がいないこととなり、その受給権者と生計を同じくする2親等以内の親族に限り、「未支給年金」として受給を請求することができていましたが、改正後は、その範囲が生計を同じくする3親等以内の親族にまで拡大されます。

5.付加保険料の納付期間の延長
 国民年金の上乗せの年金であり、任意加入である付加年金の付加保険料については、納付期日(翌月末日)までに保険料を納付しなかった場合、加入を辞退したものとみなされていましたが、改正により、予め付加保険料を申出ていることを前提に、過去2年分まで遡って納付することができるようになります。
※平成26年度の老齢基礎年金は0.7%引下げられ、満額で772,800円、平成26年度国民年金保険料額は15,250円(月額)となります。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年4月10日 木曜日

平成26年3月8日第357号

労働者派遣法の改正に向けての報告
 
 厚生労働省労働政策審議会の分科会が平成27年4月の施行を提言している労働者派遣制度の改正についての報告をまとめました。

1.労働者派遣における現状の問題点
(1)常用労働者の雇用確保に主眼がおかれ、派遣労働者の保護とのバランスが取れてないこと
(2)派遣労働者のキャリアアップを促進する仕組みの必要性があり、本人の希望に基づき正規雇用・無期雇用への転換やキャリア形成支援を行っていくことが重要であること
(3)労働者派遣制度が複雑で分かりにくいこと。特に派遣受け入れ可能期間の制限

2.派遣期間制限について
 派遣労働を臨時的・一時的な働き方と位置付け、派遣労働者が常用労働者の代替とならないよう、派遣労働を臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。
 26業務について、実際には派遣先の正規労働者が従事している業務が相当程度あり、26業務に該当するか否かで派遣期間の取り扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先に分かりやすい制度となるよう見直す必要がある。
※26業務とは秘書や通訳など派遣可能期間の制限を受けない業務

3.解決策としての改正
(1)製造業における派遣は経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があるため、禁止しない。ただし、有期雇用派遣労働者に対する雇用安定処置等を講じること。
(2)26業務の区分及び業務単位での期間制限は廃止とする。
(3)特定・一般の区別を撤廃し、すべての労働者派遣事業を許可制とする。
(4)労働者派遣制度は派遣労働者個人単位と派遣先単位の2つの期間制限を軸とする。ただし、60歳以上の者、育児休業の代替要員等は例外とする。
※個人単位とは派遣先の同一組織単位における同一派遣労働者の継続した受け入れ
(5)同一組織単位において、3年を超えて継続して同一派遣労働者を受け入れてはならない。ただし、過半数の労働組合から意見を聴取した場合は、さらに3年間派遣を受け入れることができ、その後3年が経過した時も同様とする。
※組織単位とは業務のまとまりがあり、その長が指揮監督権を有する単位とて契約上明確にしたもの          
 
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2014年4月10日 木曜日

平成26年2月23日第356号

不動産賃貸借契約等に係る消費税の適用税率

 4月1日から消費税及び地方消費税が5%から8%に変更となるにあたり、「賃貸借契約に基づく使用料を対価とする資産の譲渡等」に関する項目をご紹介します。

1.不動産の賃貸借契約に基づく使用料を対価とする資産の譲渡等について
 新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則2)。
(1)当月分(1日から末日まで)の賃貸料の支払期日を前月末日としている賃貸借契約で、平成26年4月分の賃貸料を 平成26年3月○日に受領する場合
→平成26年4月分の賃貸料であり、施行日以後である平成26年4月分の資産の貸付けの対価として受領するものなので、4月末日における税率(8%)が適用されます。
(2)当月分の賃貸料の支払期日を翌月○日としている賃貸借契約で、平成26年3月分の賃貸料を平成26年4月に受領する場合
→平成26年3月分の賃貸料であり、施行日前である平成26年3月分の資産の貸付けの対価として受領するものなので、支払期日を4月としている場合であっても、3月末日における税率(5%)が適用されます。
 消費税法基本通達では「賃貸借契約に基づく使用料等を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とする。」となっており、今回公表された事例によると、例えば4月分の賃料支払いの場合、法人税や所得税における資産の譲渡等の時期が平成26年3月であっても消費税の適用税率は8%となるため、結果として資産の譲渡等の時期と適用税率が必ずしも一致しないこととなります。

2.ファイナンス・リース取引について
 平成20年4月1日以後に契約を締結したファイナンス・リース取引は、「リース取引の目的となる資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時に当該リース資産の売買があったもの」(法人税法第64条の2)として取り扱われます。したがって引渡し時点(借受日時点)の消費税率が適用されます。これにより、借受日が改正法施行日前(平成26年3月31日まで)の場合は旧税率(5%)、改正法施行後(平成26年4月1日以降)の場合は新税率(8%)が適用されることになります。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

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2014年4月10日 木曜日

平成26年2月8日第355号

「タイプ別」残業の分類とその対策について

 会社は残業削減に向けて、様々な施策を講じていますが、なかなか狙い通りの成果を上げることが出来ず苦労しています。そこでムダな残業を見つけ、それらを排除することが重要となります。それではムダな残業とは一体どういうものなのか、大きく2つに分類し、さらにいくつかのタイプに分けて紹介します。

1.一見してムダだと分かる残業
 ・生活費を稼ぐために必要がない残業を行う「生活残業」
 ・成果を上げている人が遅くまで会社に残っているので帰りづらい「罰ゲーム残業」
 ・誰かが帰るまで会社に残ってしまう「付き合い残業」
 ・仕事の密度が薄く、ダラダラ仕事をしている「ダラダラ残業」
 ・計画性がなく締切前に遅くまで残業するのが当然になっている「成行任せ残業」
 
 これらについては、まず、残業は、業務が所定労働時間以内に終わらないから発生するものであり、残業代を稼ぐためにするものではないということを認識させます。そして、会社に長くいる=成果が出せていないことの責任を取る風土の確立、成果と結びつかない行動であればやめさせ、改善する、などを行います。
 また、上司は部下が残業して何をしているのかを把握し、残業を行なう場合にはどんな仕事をいつまでに行うかを事前に申請させ、上司がその内容を精査した上で残業を承認する仕組みを作ります。フォローの必要がなければ、上司が自ら早く帰ることも大事です。部下も締切間際に残業をしなくて済むように仕事のゴールや方向性、ポイントを押さえ、締切から逆算してスケジュールを立てていく必要があります。

2.むしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業
 ・すべてを完璧に仕上げないと気が済まない「自己満足残業」
 ・思い込みで仕事をし、納期間際に当初の狙いからズレていることが分かり、やり直せざるを得ない「独りよがり残業」
 ・自分の立場が奪われるという強迫観念から他人に仕事を渡せない「抱え込み残業」

  これらについては、仕事を請けた段階で仕事のゴールや方向性、押さえるべきポイントを発注者と擦り合わせた上で、どこに対して力を発揮すべきかを把握させる、ゴールまでの道筋、中間報告の日程を組み込んだ段取りも併せて描かせ、この道筋に沿って仕事に取り掛からせる、などを行います。
  日頃から職場の中で仕事の「見える化」、「共有化」を図り、万が一の時のフォロー体制及び仕事の継承体制を構築していくことも重要です。

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