労務ニュース スマイル新聞
2009年5月23日 土曜日
平成21年5月23日(第242号)...無断欠勤による懲戒解雇の注意点
Q)ある日突然出社しなくなり、その後行方不明で1ヵ月以上連絡がとれない従業員がいます。就業規則には「無断欠勤が14日以上に及んだ場合には懲戒解雇する」と定めていますが、注意すべき点はありますか?
1.懲戒解雇の意思表示は、あくまで本人に対して行う必要があります
当該従業員を懲戒解雇とすることは、就業規則の定めにもあり、可能と思われます。(不慮の事故や事件に巻き込まれた場合などの特殊なケースは除きます。)
次に従業員本人に解雇の意思表示を行うわけですが、本人と連絡がとれないことを理由として、家族等に解雇の意思表示を行ったとしても有効とは認められません。
この場合の意思表示としては、民法第97条の2の規定による「公示送達」の方法があります。
2.「公示送達」は手続きが面倒~公示送達の方法~
(1)本人の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てを行い、裁判所の掲示場に掲示します。
(2)この掲示について官報および新聞に少なくとも1回掲載します。
(3)この意思表示が本人に到達したとみなされるのは、最後に官報および新聞の掲載があった日から2週間を経過したときとされます。
(4)よって、実際に解雇が成立するのは、最後に官報および新聞の掲載があった日から2週間を経過し、意思表示が本人に到達したとみなされた日からさらに30日が経過した日ということになります。(解雇予告手当を支払う場合は除きます。)
3.「就業規則の退職事由への追加」で、このケースのような場合に備えましょう
実務上、私生活での金銭トラブル等の個人的理由で正式な退職手続を行わないまま出社しなくなるなど、このケースのような従業員は少なからず存在します。
よって、従業員が行方不明となったとき、会社として解雇の意思表示をしなくてもいいように、就業規則で別途定めておくことが賢明です。
具体的には、就業規則におきまして、懲戒解雇とせず、自然退職という定めにしておきましょう。「14日間無断欠勤を続けた場合は、その最終の日をもって自然退職したものとする。」等を追加しておけば、会社からの解雇の意思表示や本人の意思表示がなくても退職が有効に成立すると考えられます。
なお、雇用保険の喪失手続きにおいては「自己都合退職」として処理をしてもらえます。社会保険についても「健康保険被保険者証添付不能届」を資格喪失届に添付し、被保険者証を回収できない旨を記入して手続きをすることになります。
また、退職金規定には、「無断欠勤で自然退職になったものには退職金は支給しない」と定めておくこともおすすめします。こうすることで、懲戒解雇とおなじような効力を発生させる事ができます。
投稿者 イケダ労務管理事務所