労務ニュース スマイル新聞

2018年9月23日 日曜日

平成30年9月23日第466号

働き方改革法案成立


1.残業時間の上限規制は罰則付き
働き方改革関連法が平成30年6月29日に可決・成立しました。この関連法案は労働基準法、じん肺法、労働安全衛生法等8つの法律を一括改正するものとなっています。主な改正内容をご紹介しますと、まず残業時間の上限規制が導入されます。労働基準法に「1日8時間、週40時間」と定められている法定労働時間、これを超えて仕事をさせることができるいわゆる「36協定」において、月45時間、年360時間という基準を明確化し、かつ臨時特別的事情のある場合でも45時間を超えての残業は6ヵ月まで、年間の上限は720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間(休日労働を含む)と定められ、違反には罰則が適用されます。ただし、自動車運転や、建設、医師等に対しては、適用は5年後、新技術・新商品の研究開発には適用されません。施行期日は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日となります。

2.長期間労働抑制・年次有給休暇の取得促進
  月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について中小企業への猶予が廃止されます。施行期日は2023年4月1日です。また、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、5日について毎年時季を指定して与えなければなりません。この施行期日は2019年4月1日です。

3.高度プロフェッショナル制度の創設
  年収1075万円以上の高度なスキルを持つ社員を、労働時間の規制対象から外すもので、一般的には研究職等、年収、専門性の高い職種が該当します。ただし、具体的な額等については省令で規定することとされています。施行期日は2019年4月1日からです。

4.同一労働同一賃金
  短時間労働者、有期雇用労働者について正規雇用労働者との待遇格差が不合理か否か、その性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨、が明確化されます。施行期日は2020年4月1日です。(中小企業は2021年4月1日)

5.まとめ
  今回の働き方改革は「戦後からの労働関係法による労働行政」の大改革の様相を呈しています。どの企業においても、適切に対処、対策の検討が急がれるところです。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2018年9月 8日 土曜日

平成30年9月8日第465号

選択制確定拠出年金について


1.老後の生活資金は自助努力が求められる時代
 公的年金(国民年金・厚生年金)は現役世代から徴収した保険料を元に老後を迎えた人に給付を行う世代間扶養の方式をとっています。個人年金の様な個人別の口座等の必要がなく合理的に運用することが可能である反面、出生率の低下による高齢化率の加速・平均余命の延長から、年金額の減少や支給開始年齢の引き上げが予想され、公的年金だけでは退職後の生活資金の確保が難しくなってきました。
2.確定拠出年金のテコ入れ策
  中小企業や個人への導入を進めるため確定拠出年金法が改正、平成29年1月1日から施行されました。そのポイントは、(1)加入対象者の拡大(2)投資教育の充実(3)企業の選択肢を充実(4)手続きの簡略化です。このうち加入者の拡大については個人型に「iDeCo」と愛称をつけ加入対象者の拡大が図られました。
3.選択制確定拠出年金の導入
  選択制確定拠出年金とは、給与の一部を切り離し、企業型確定拠出年金とするか、退職金の前払い(給与)とするかを従業員に選択させる制度です。
(1)導入するメリット
  ・ 人事評価と給与の一部を切り離して考えることができる。
  ・ 従業員自身が老後の資産形成を考える機会となる。
  ・ 社会保険料・労働保険料、所得税・住民税が減額となり、事業主の経費削減と従業員の節税が同時に可能になる。保険料掛け金の拠出額は標準報酬が1等級以上下がるよう設定するのが望ましい。
(2)導入するデメリット(主に従業員側)
  ・ 掛け金が給与に含まれないことから、雇用保険の賃金日額や社会保険の標準報酬が下がるので、老齢厚生年金の額や、失業した際の基本手当が減額となる。
・ 確定拠出金年金の掛け金は労働基準法上の割増賃金の算定に入らない。
・ 確定拠出年金の掛け金として拠出した部分は60歳まで引き出せない。
・ 退職予定者、出産が近い者、病気休職予定者は健康保険の傷病手当金や雇用保険の基本手当が減額となる。
(3)導入の手続き
   企業が単独で年金規約を作成し、厚生労働大臣に承認を得る単独型と既に厚生労働大臣から承認され年金規約を持っている企業を代表事業主とし、当該制度の実施事業主として相乗り参加する統合型が有ります。導入には、労働組合の同意書や、就業規則の変更及び、選択制確定拠出年金規程の作成等が必要となります。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

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