労務ニュース スマイル新聞

2016年9月 8日 木曜日

平成28年9月8日417号

就業規則の不利益が認められる場合

1.原則は不利益変更には合意が必要
法律上、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、
労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」
ただし、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、
A.変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、
B.就業規則の変更が、
(1)労働者の受ける不利益の程度、
(2)労働条件の変更の必要性、
(3)変更後の就業規則の内容の相当性、
(4)労働組合等との交渉の状況
(5)その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは」

変更が許されています(労働契約法第9条、第10条)。
つまり、A「周知」とB「合理性」をクリアした場合には、例外的に不利益変更の効
力が生じるとしているのです。

2.合理性が認められた事例
 最高裁平成9年2月28日第二小法廷判決(第四銀行事件)では、実質的に
58歳定年制であったものを60歳に延長する措置に応じて、55歳以上の労働者
の賃金を引き下げることとした労働条件の不利益変更の合理性が認められました。

具体的には、
(1)就業規則変更による労働者の不利益は、従前の定年後在職制度の下で
得られると期待した金額を2年近くも長く働いてようやく得ることができるという
のであるから、不利益はかなり大きなもの、特に、高齢の行員にとっては相当
の不利益とみざるを得ないとする一方、

(2)定年延長の要請とこれに伴う55歳以上の賃金水準の見直しには高度の
必要性が認められること、

(3)変更後の55歳以上の労働者の労働条件内容は同業他社等ほぼ同様で
あり、賃金水準は社会一般の水準と比較してかなり高いこと、

(4)本件就業規則変更は、全行員の約90%(50歳以上の行員についても
約6割)で組織されている労働組合との交渉・合意を経て行われたものであ
るから変更後の就業規則の内容は労使間の利益調整がなされた結果とし
ての合理的なものであると一応推測できるといった事情から、「合理性」を
肯定しています。

3.合理性の基準
 他方で、特定の高年層(55歳以上)の労働者に集中的に不利益になる
という変更後の労働条件の不相当性が重視され、「合理性」が認められなか
った事例もあります。就業規則の不利益変更は、使用者側の変更の「必要性」
の程度と、労働者側の受ける不利益の大きさに応じ、「相当性」があるか、
比較衡量して「合理性」を決めると言えます。

投稿者 イケダ労務管理事務所

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