労務ニュース スマイル新聞
2008年9月 8日 月曜日
平成20年9月8日(第225号)...第三者行為災害について
自動車事故等における第三者行為災害の場合、被災労働者またはその遺族など労災保険の受給権者は、労災保険から各種給付を受けることができますが、同時に、受給権者は、その災害を発生させた加害者から、民法による損害賠償を受ける権利も有していることになります。
しかし、労災保険から給付を受け、さらに、加害者からも同一の損害について賠償を受けるとすると、一つの事故による同一の損害について、二重に補償を受けることになってしまいます。
そのため、労災保険法では、国が受給権者に保険給付を行った場合には、国は、国が行った給付と同一の部分に限り、その給付の範囲内で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得(代位取得)するとしています。
逆に、受給権者が、第三者から労災保険の保険給付と同一の事由について損害賠償を受けたときは、国はその価格の限度で保険給付は行わないとしています。
では、第三者と示談を行った場合どうなるのかというと・・・・・仮に、示談によって、労災保険の受給権者が加害者である第三者に対して有している損害賠償請求権をすべて放棄した場合、その後に国が保険給付を行ったとしても第三者に対する損害賠償請求権を代位取得することができなくなってしまいます。
そのため、労災保険では、第三者行為災害に関する示談の取り扱いについての基準を定めています。(1)示談が真正に成立していること。(2)示談の内容が労災保険の給付と同一の事由に基づく損害賠償請求権の全部の補填を目的としていること。この二つの条件を両方満たす場合には、労災保険から保険給付は行われないとしています。
したがって、全損害の補填を目的としていると認められない場合は、保険給付は行われます(労災保険と同一の事由による示談金は、保険給付から控除されます)。
示談する場合の注意点
・加害者の確認(損害賠償責任は加害者本人だけでなく、その使用者や車の所有者にもある場合があります。使用者や車の所有者の氏名、住所、電話番号等も確認すること)
・金品を受領するときは、見舞金、香典、治療費等名目及び金額を明確にしておくこと
・出費はメモし、領収書を保管しておくこと
・損害の項目ごとに交渉、後遺症についての交渉は慎重に行うこと
・示談書の作成には、内容をよく確認して判を押すこと(後から変更できなくなります)
・示談書の内容は明確に(特に自賠責保険、労災保険、社会保険等の給付を含むかどうか)
(スマイルグループ 社会保険労務士)
投稿者 イケダ労務管理事務所