労務ニュース スマイル新聞

2012年1月23日 月曜日

平成24年1月8日第305号

労働組合法の労働者
昨年4月、業務委託契約を結ぶ個人事業主にも団交権を認める最高裁判決が2件(カスタマーエンジニアの「INAXメンテナンス事件」、オペラに出演する合唱団員の「財団法人新国立劇場運営財団事件」)続けてあり、両裁判とも下級審の判決を破棄し、労働組合法の労働者性を認める判決を下しました。

下級審である高裁控訴審での、「INAXメンテナンス事件」の判決は、法的な従属関係を基礎付ける要素として、業務依頼に対する諾否の自由、時間的・場所的拘束、業務遂行についての具体的指揮監督、報酬の業務対価性等の有無、程度等を総合考慮すべきとして、労働者性を否定。「財団法人新国立劇場運営財団事件」においても、業務提供に関する諾否の自由、指揮監督の有無、報酬の支払い関係等から、合唱団員について、労組法上の労働者性を否定しました。

一転、最高裁判決により、労組法上の労働者は、団体交渉の必要が認められる者を範囲とし、労働基準法の労働者の適用範囲より幅広い概念としています。

判決後の厚生労働省労使関係法研究会による労組法上の労働者性判断基準として、(1)事業組織への組込み状況、(2)業務依頼に対する諾否の自由、(3)契約内容の一方的決定、(4)労務供給の日時・場所の拘束、(5)指揮監督の状況、(6)報酬の労務対価性、(7)労務供給者の事業性、(8)労務供給者の専属性を挙げています。このうち、労働基準法の労働者性判断基準になっていない項目は(1)と(3)です。

今後、企業としては、労基法上の労働者だけでなく、労組法上の労働者対策も必要となってきます。業務委託契約・請負契約でありながら、管理が甘いと、突然、組合(ユニオン)からの団体交渉があって拒否できない場合もあります。組合からの団交等に備え、日頃からの注意が必要となります。

対策としては、適法な業務委託・個人請負として、その労務供給者が(1)自由裁量権等による独立した事業者性、(2)兼業の自由、(3)労働時間の自由・自己管理、(4)勤務管理・就業管理・服務規律等の不拘束、(5)業務の外形的独立、(6)使用従属的な業務命令がない、(7)契約は対等の立場において複数の中から自由に選択、(8)請負内容等が注文指図により独立遂行が明白、(9)事業者としての報酬(源泉徴収なし)、(10)材料費等を負担し、経理・経費上の独立性等を有していることが挙げられます。

投稿者 イケダ労務管理事務所

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