労務ニュース スマイル新聞

2019年1月23日 水曜日

平成31年1月23日第474号

統計不正問題から得る教訓


1.統計不正問題
 昨年の年末から今年1月初めにかけて、厚生労働省による毎月勤労統計の不適切調査が明るみになりました。毎月勤労統計では、従業員500人以上の事業所を全て調べると決まっています。ところが、厚生労働省は、東京都で調査対象となる約1400のうち、3分の1しか調べていなかったのです。現段階では調査中であるものの、基幹統計という性質からすでに各方面に大きな影響を与えています。  
2.問題の原因
 この抽出調査は2004年から行われ、内部の調査手法の手引きに記載され、長年続けられてきたといいます。不正は、昨年の12月に総務省統計委員会と厚生労働省との打ち合わせで発覚しました。その際、厚生労働省の職員が「神奈川、愛知、大阪も抽出調査に変えたい」と説明したとも言われています。さらに、抽出調査の不正発覚後に、全数調査に近づけるための加工をしたというのです。このことから、問題の原因として、厚生労働省の職員が調査手法を理解していなかったこと、全数調査が職員の過度な負担となっていたこと、不正が見つかった場合の対処方法が適切になされていなかったことが推測されます。
 昨年、厚生労働省に関連する同様の不祥事として、裁量労働制のデータ問題、障害者雇用者数の水増し問題が話題となり、もっとさかのぼれば「消えた年金問題」にたどり着きます。今回の不適切調査は偶然起こったものではなく、組織全体として体質そのものを改善しなければならない問題でしょう。
3.教 訓
 国の行ったことを批判することは簡単ですが、自社で不正が行われないような体制はとられているでしょうか。従業員個人レベルでは、与えられた仕事がどのようなルールに基づいているのかを、理解することが必要です。過去の慣習やマニュアルに従うだけではなく、ゼロベースで考えることも必要です。また、管理職レベルでは、部下の職務内容が質・量・責任において、適切である能力なのかを、見極めることが必要となります。さらに、会社のトップは不正が発覚した場合、どのような対処をすべきかあらかじめ危機管理マニュアルを作成し、迅速に対応できるようにすべきでしょう。この対応を間違えて評価を落とした企業はニュースを見ていても枚挙に暇がありません。他人の不祥事を、自己を振り返る機会にしてみてはいかがでしょうか。


投稿者 イケダ労務管理事務所

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