労務ニュース スマイル新聞

2013年12月16日 月曜日

平成25年12月8日第351号

振替加算の注意点について

1.振替加算とは
 振替加算とは、サラリーマンの夫が老齢厚生年金の配偶者加給年金額を受給している時、妻(大正15年4月1日から昭和41年4月1日まで生まれ)が65歳に達して老齢基礎年金を受給する際に支給額が上乗せされる制度です。もちろん夫によって生計を維持されている必要があります。
 夫に支給されている配偶者加給年金額は、妻が65歳になれば打ち切られますのでご注意ください。

2.振替加算の経緯と注意点
 なぜ振替加算という制度ができたのでしょうか。
 昭和61年4月1日に年金法の大改正までは、サラリーマン世帯は夫の年金で妻を扶養するという考えであったため、妻は国民年金への加入義務はありませんでした。もちろん任意で加入することはできたのですが、大半は加入せず、老後は夫の年金で生計を立てるというのが一般的でした。そのため、夫の年金には妻の分として加給年金額が加算され、独身の受給者よりも多めに年金が支給されていました。
 しかし、年金法の大改正以後、サラリーマンの妻は第3号被保険者として国民年金への加入が義務付けられました。これにより妻自身も年金がもらえる様になったのですが、今まで任意加入をしてこなかったサラリーマンの妻は60歳までに国民年金を満額でもらえる期間(40年)を満たすことができないため、もらえる年金額が少なくなってしまいます。この制度の変更による不公平を補うために妻の老齢基礎年金に一定額の加算を行う制度(振替加算)ができたのです。
 振替加算の額については夫に支給されている加給年金額に妻の生年月日に応じた一定の率を乗じて支給されます。例えば大正15年4月1日に生まれの妻は加給年金額に1を乗じるので、加給年金額の額がそのまま支給されますが、昭和41年4月1日生まれの妻は加給年金額に0.067を乗じた額となり、かなり少なくなります。
 夫の加給年金額がそのまま妻に支給されていると勘違いしてしまう方も中にはいらっしゃいますが、加給年金額よりも減額されてしまうことがほとんどですので、その点には注意が必要です。

 なお、わかりやすくサラリーマンの夫とその妻としておりますが、夫が主夫で妻が勤めている場合は、振替加算は夫に支給されます。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

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2013年12月16日 月曜日

平成25年11月23日第350号

少額訴訟
 

 裁判といえば「簡単には終わらない」というイメージがあります。
しかし、訴額が60万円以下の金銭支払請求事件については、1回で結審してその場で判決できる裁判があります。

手続の特徴
(1)簡易裁判所が管轄となり、訴額は60万円以下、内容は金銭支払請
 求に限る。
(2)口頭弁論期日は司法委員立会のもと、ラウンドテーブル法廷で開か
 れ、その日に結審することが原則。被告からの反訴の提起は出来ない。
(3)証拠調べは、期日にその場で調べることが出来るものに制限される。
(4)判決に不服があっても地方裁判所に控訴することは出来ない。判決
 をした裁判所に対しの異議申立は出来るが、言い渡される判決には
 不服申立が出来ない。
(5)裁判所は、債務者の支払能力に応じて3年を超えない範囲内で支払
 いを猶予したり、分割して支払うことを認める。また、提起後の遅延損
 害金を免除する判決をすることがある。この条件に対して不服を申し
 立てることは出来ない。
(6)相手方からの申出又は裁判所の職権によって通常訴訟へ移行する
 ことがある。
(7)同一簡易裁判所に対しては、年に10回までという回数制限がある。
(8)請求を認める判決には必ず仮執行宣言がつくので、判決の確定を
 待つことなく、強制執行をすることが出来る。

少額訴訟の利用状況(「司法統計」(H20年度~H24年度)より)
(1)利用件数 年間に約12,700件~約17,100件
(2)訴えの種類(多い順)
 1)交通事故による損害賠償請求 2)売買代金請求 3)貸金返還請求
(3)弁護士等に頼まず、原告・被告の双方が当事者本人によってなされ
 たもの88.8%~89.3%

 少額訴訟を提起された場合の注意点としては、起こす訴訟や事件が複
雑でじっくりと事実認定をして欲しい場合は、通常訴訟への移行をすべき
とされています。また、訴訟を放置した場合等は、欠席のまま判決される
ことがありますので、注意が必要です。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2013年12月16日 月曜日

平成25年11月8日第349号

メンタルヘルスマネジメント
 「メンタルヘルス」は文字どおり、心の健康のことですが、近年特に注目されるようになったのは、それだけ心の不調を訴える人が社会に急増しているからです。
 平成20年から施行された労働契約法では、それまで事業者の努力義務であった「労働者の安全配慮」が明文化され、法的義務が課せられるようになり、メンタルヘルス対策は、すべての企業に必須となりました。

 リスク軽減の意識も重要です。特に経営基盤が脆弱な中小企業は会社の存亡にかかわるリスクといっても良いでしょう。対策が不十分で労使紛争や訴訟などが発生すれば、企業のイメージ低下、信用の失墜などにより、大きな痛手を負う可能性は高く、賠償責任が発生すれば致命傷になりかねません。精神障害の労災申請件数・同認定件数とも、ここ10年間で約5倍に急増していることも認識しておくべきです。
 単に体制を整備するにとどまらず、常に現状チェックを行ない、より高度な水準を目指す「メンタルヘルスマネジメント(心の健康管理)」の考え方が有効です。
企業のメンタルヘルス対策の主な実施項目として
(1)産業医の選任・推進審議機関(衛生委員会)の設定・運用
 ※産業医の選任は常時50人以上の事業場で義務づけられています。
(2)過重労働者への適切な対応
(3)不調者への適切な休職措置と復職支援
(4)相談窓口の設置
(5)教育・研修
(6)職場のハラスメントの予防・ルール化
(7)メンタルチェック
 
 定期健康診断も徹底し、受診だけでなく診断結果を踏まえた事後処理まで徹底することです。月100時間超の時間外労働をした人、(過重労働者)への十分なケアも大切です。これらは不調者の予防に加え、万一の紛争時のリスク軽減にも有効です。
 ラインの管理者の負担にも十分配慮しましょう。この層は部下のメンタルヘルスケアなど大切な役割を担いますが、もともと職務の負担が重く、管理者自身が不調に陥る恐れもあり、会社としての配慮が必要です。
 また、事業所外の専門機関として「産業保健推進センター」や「メンタルヘルス対策支援センター」などの公的機関があります。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2013年12月16日 月曜日

平成25年10月23日第348号

欠勤時の通勤手当の取り扱い 
 通勤手当は、法律で支給が定められているわけではありませんが、通勤手当の支給が労働条件として定められていれば、実費弁償的に算定される出張の旅費等とは異なり、労働の対償として支払われる労働基準法上の賃金となります。したがって、支給条件が定められた通勤手当を、会社が一方的に労働者の不利益となる条件に変更することは、原則として許されません。また、個人ごとの支給に当たっては、通勤しなかった日の取り扱いにも注意を要します。

 労働契約法第8条には「労働者と使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することが出来る。」とあります。しかし、その一方、労働契約法第10条で定める例外を除いて、使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは出来ないとされています。
 労働契約法第10条で定める例外とは「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである」場合とされています。
 労働者からの合意を得るには、通勤手当を減額する理由の真摯な説明が必要ですし、合意が得られず就業規則の変更による場合には「通勤手当を減額しなければ、経営が立ち行かなくなる」ような、高度な必要性に基づく合理性が必要となります。
 
 通勤手当は、法的には賃金でも、実費弁償的な性格を有しています。そのため、出勤しない日に不支給にすることは合理性があるといえますが、適正な規定が備わっていることが前提となります。通勤手当が賃金である以上、その支給基準は、賃金の決定、計算の方法に当たり、就業規則の絶対的必要記載事項となるからです。
 労働基準法附則第136条で、使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、「賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」とされていますが、年次有給休暇の取得によって、通勤手当が日割り等で減額されることを就業規則等に明記しておくことで、年次有給休暇の取得日について賃金を減額することは可能となります。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

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